ほむら「時の卵?」 その2 前編

441: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:45:56.34 ID:qXopaMTSo
第15話(マルチイベント編-6)「緑の夢」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない





444: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:54:38.20 ID:qXopaMTSo
A.D.600 地底砂漠


メルフィック「Rトカツケラレナクテヨカッタ!!」


カエル「ヤツがこの地一帯を砂漠化させていた原因だったのか……」

さやか「でもなんとか倒せたし、これで木を植えてもすぐ枯れちゃう~なんてことはなくなるよね!」

クロノ「フィオナさんに知らせに行こうか。それにしてもさっきの魔物、どこかで見たような……」


…………


A.D.600 フィオナの小屋


マルコ「旅のお方。妻の頼みを聞いてくださり、感謝いたします。見ず知らずの私たちのために……」

さやか「問題ないっすよ! 困ってる人を助けるのは勇者の勤めだもんね、師匠?」

カエル「まあ……そうだな」

マルコ「! ではあなた方が勇者様一行……魔王を倒したと言われる……」

さやか「えーと、まあ……そうとも言うけど、そうじゃないとも言えるんですけどねえ……」

カエル「あまり話をややこしくするな。素直に受け取っておけ」

445: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 22:58:53.51 ID:qXopaMTSo
マルコ「私は兵士として、魔王軍との戦いに駆り出されていました……」

マルコ「こうして愛する妻のもとに無事帰ることができたのも、勇者様のおかげです」

カエル「そんなに感謝ばっかりされちまうと、なんだかむずがゆいぜ」

さやか「へへ、やっぱいいことすると気持ちいいね!」


フィオナ「みなさん、本当にありがとう。これでこの苗木を植えることができます」

クロノ「それは?」

フィオナ「代々伝わる、不思議な力を持った苗木です……」

フィオナ「これならきっと、砂漠を緑の大地に戻せるでしょう。私も、もう一度がんばってみます」

446: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:01:28.10 ID:qXopaMTSo
カエル「苗木から森を育てるのか? ずいぶん気の長い話だな」

さやか「あたしもよく知らないけど、それってむちゃくちゃ時間がかかるんじゃないの?」

フィオナ「そう、問題はそこなのです。気の遠くなるような時間が必要になる……」

フィオナ「たとえ私が一生をかけたとしても、どれほどの成果をあげられるか……」

マルコ「何百年でも働き続けることができる人がいれば……いや、そんな人間がいるわけはないか……」

クロノ「付近の村の人に頼むことはできないんですか?」

フィオナ「無理です。このような絵空事、賛同してくれる人などいません……」

マルコ「大丈夫だよフィオナ。ふたりで、できるところまでやろう」

カエル「……」


…………



447: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:03:23.70 ID:qXopaMTSo
年代不明 時の最果て


ルッカ「どうしろって言うのよ?」

クロノ「いや、どうにかならないかなーと。……ならないよな」

ルッカ「なるわけないでしょ」


まどか「砂漠を森に戻すって、どれくらいかかるんですかね……」

エイラ「ヘビガミさま、できる!」

マール「つまり神様ぐらいしかできないってことだよね……」

448: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:05:42.98 ID:qXopaMTSo
ロボ「……ミナサン、提案がありマス。ワタシがフィオナさんのお手伝いをするというのはどうデショウ?」

カエル「なに? ロボが?」


ロボ「ワタシの体は機械デス。何百年も働き続けられるデショウ」

ロボ「砂漠が森とシテよみがえったあとに、ワタシを回収してくださればよいのデス」

さやか「そっか……そうだね! ロボならいけるよ!」

クロノ「いいのかい?」

ロボ「お任せクダサイ」

ルッカ「……」


…………



449: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:08:54.12 ID:qXopaMTSo
A.D.600 フィオナの小屋


フィオナ「え……あなたが?」

ロボ「ハイ、ワタシがフィオナさんのお手伝いをシマス」

ロボ「何百年でも働き続けマス。キット、森を復活させてみせマス」

マルコ「すごいな。どういうカラクリで動いているのか分からないけど、頼もしいよ」


ルッカ「じゃ、ロボ……私たちは行くから……」

クロノ「頼んだよ!」

ロボ「ハイ、おふたりもお元気デ。イエ、この言い方はおかしいデスネ」

ロボ「アナタ方にとってはおそらく再会までの時間はイッシュンの出来事でしょうカラ」

ルッカ「あなたにとっては無限にも思える時間でしょうけどね……」

ロボ「そんな顔をしないでクダサイ。すぐ会えマスヨ」

ルッカ「……」

クロノ「未来で会おう! またな、ロボ!」


…………



450: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:11:43.99 ID:qXopaMTSo
年代不明 時の最果て


カエル「……失敗、だって……? どういうことだ!?」

クロノ「……」

ルッカ「そのままの意味よ。森は復活していなかったわ」

まどか「ロボさんは……?」

クロノ「分からない……どこに行ったのか……。壊れてしまったのかも……」

マール「そ、そんな……」


ルッカ「こうなるだろうという予感はしてたわ……」

さやか「ど、どういうことっすか?」

451: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:15:05.64 ID:qXopaMTSo
ルッカ「何百年も働き続ける……確かにロボなら、まったく不可能というわけではないわ」

まどか「な、ならどうして……」

ルッカ「正常な状態でいられたら、という前提がつくからよ」


ルッカ「農作業という過負荷、ドロや雨による劣化、予想だにしないトラブル……」

ルッカ「農業機械だってちゃんとメンテナンスしてあげないと、まともに稼動し続けられないわ」

ルッカ「誰がロボの面倒を見るのよ。マニュアル化してフィオナさんにでも渡す?」

ルッカ「それもひとつの手ね。けど、彼女に扱えるかしら? それに彼女が亡くなったあとは?」

カエル「……そ、それは……」


ルッカ「この件はどうにもならないわ。ロボを迎えにいって、終わりにしましょう」

ルッカ「……だいたい、ロボひとりに押し付けるなんておかしいわよ」

クロノ「……」

452: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:17:57.08 ID:qXopaMTSo
ほむら「あなたらしくない興奮っぷりね、ルッカ。ロボがいなくなって、さびしいからかしら?」

ルッカ「なによ。ずっと黙ってたあんたが、いまさらどうしようっての? 何かいい手でもあるわけ?」

ほむら「マニュアル化はできるのよね?」

ルッカ「そりゃあやろうと思えば……。だから、使える人がいないんだって」

ほむら「私なら使えるわ。ロボとはずっと一緒にいたし、あなたから多少なりとも教わったこともある」

ルッカ「そういうことじゃないでしょ。普通の人間は、何百年も生き……ら、れ……」


ほむら「……気づいたみたいね。いえ、他にも気づいている人がいるようよ」

マール「どういうこと?」

ほむら「私と同じく、だんまりだった人たちに聞いてみれば?」

453: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:20:05.88 ID:qXopaMTSo
マミ「……」

杏子「……」

まどか「……マミさんに杏子ちゃん? どうしたの、神妙な顔して……」


魔王「……彼女らは普通の人間ではない、ということだ」

さやか「え……あっ! そ、そっか……あたしら……」

まどか「ジャ、ジャキくん……そんな言い方……」

魔王「事実を言ったまでだ。不老不死に近いところにいるのは確かだからな……」

杏子「ソウルジェムの穢れをなんとかできりゃ、だけどな……」

454: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:22:04.87 ID:qXopaMTSo
マミ「不可能だわ、そんなの……」

マミ「たとえ理論的に生き続けられるとしても、きっとその前に精神がおかしくなってしまう……」

ルッカ「そ、そうよ! 机上の空論だわ!」


ほむら「不可能かもしれない。可能かもしれない。どちらにも転ぶなら、やってみるだけよ」

ほむら「ロボひとりに押し付けたこと、確かに恥ずべきことだった。なら、次の可能性にかけてみましょう」

カエル「そうは言うがな……」


エイラ「マミ、いなくなるか!? イヤだ! ならエイラ、行く! いっしょ!」

マミ「エ、エイラ……私は、その……」

455: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:25:47.74 ID:qXopaMTSo
ほむら「別にあなたたちにやれとは言ってない。行くのは、私よ」

まどか「ほむらちゃん!? なに言ってるの!?」

ルッカ「本気なの……あんた……」

ほむら「本気も本気。大マジよ。でなきゃこんなこと言わないわよ」

まどか「……どうして、そこまで……」


ほむら「ラヴォスを倒すためのこの旅、いつだって途中であきらめそうになった」

ほむら「でもそのたび乗り越えて、ここまで来たのよ。それを……」

ほむら「なにかひとつでもあきらめてしまえば、星を救うことはできない。そんな気がするだけ」

マール「……」


ほむら「さ、準備しなきゃ。長い旅になりそうだものね。ルッカもマニュアル、早いとこ頼むわよ」

ルッカ「……ええ……」


…………



456: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:29:50.89 ID:qXopaMTSo
数日後


ほむら「……じゃ、行ってくるわね」

杏子「考え直す気はねえんだな?」

ほむら「ないわ」

杏子「……そうかよ」

マミ「あの、暁美さん……。これ、私のお気に入りの茶葉なんだけど、良かったら……」

エイラ「エイラ、渡す! 肉! 食え!」

ほむら「餞別ね、ありがと」


カエル「なんと言っていいか分からんが……まあ、成功を祈ってるぜ」

魔王「フン、結果はすぐに分かる……」

マール「さびしくなったら帰ってきてもいいからね!」

ほむら「はいはい、そうならないように努力するわ」

457: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:34:09.27 ID:qXopaMTSo
クロノ「ほむら……」

ほむら「クロノ、いつか話したわよね? あなたたちは、私を無条件に信じ続けたおバカさんたちだって」

ほむら「どうやら私も、あなたたちのおかげでおかしくなったみたい。無条件に信じてみようって、ね」

クロノ「……」

ほむら「私に何かあったら、あとは頼むわね、副リーダー」

クロノ「……何かなんて、ないよ。絶対……」

ほむら「……そろそろ行きましょうか、ルッカ」


さやか「待った、待った!」

カエル「さやか、お前どこに行ってたんだ。こんな時に……」

さやか「荷造り手伝ってたの。ほら、早くしないと置いてかれちゃうぞ、まどか」

まどか「はあ、はあ……。ほむらちゃん、わたしもルッカさんと一緒に見送らせて」

ルッカ「ずいぶん大荷物ね。何が入ってるのよ?」

まどか「ティヒヒ、あとでまた話します」

ほむら「まあいいわ。それじゃまたね、みんな」


…………



458: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:40:33.89 ID:qXopaMTSo
A.D.600 フィオナの小屋


ロボ「おやミナサン。どうかしたのデスカ?」

ルッカ「ロボ、良かった……。あのね、あなたと別れたあと400年後に行ったんだけど……」


…………


ロボ「そうデスカ……。ワタシでは無理だったのデスカ……」

ほむら「気を落とさないで。そのために私が来たんだから」

ロボ「シカシ、ほむら……」

ほむら「ストップ。説明はちゃんとしたでしょ。もう決めたことよ」


フィオナ「いまだに信じられません。あなたが不老不死だなんて……」

マルコ「さすが勇者様だ。神のような者まで仲間にしてしまうとは……」

ルッカ「そういう納得の仕方でいいわけ?」

ほむら「本人がいいならいいんじゃない」

459: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:43:45.34 ID:qXopaMTSo
ルッカ「まどか、そろそろ行くわよ」

<モウチョット マッテクダサアーイ!!


ほむら「まどかは何をしてるのかしら?」

ルッカ「……さあ?」

ほむら「あなた何か隠してない?」


まどか「ごめんなさい、お待たせしました」

ルッカ「もういいの?」

まどか「はい。ほむらちゃん、ロボさん……あの、えっと……がんばって。無事でいてね……」

ほむら「まどかも元気でね。……って、この言い方はおかしいんだったかしら?」

ロボ「ハハ。そうデスネ。ワタシも言ってしまいマシタ」

ルッカ「……」

460: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:46:19.20 ID:qXopaMTSo
まどか「ほむらちゃん、これ……お守り」

ほむら「これ、サラさんのペンダントじゃない。あなたの大切なものでしょ?」

まどか「うん、だから……絶対返してね」

ほむら「……そうね。分かったわ」


まどか「ほむらちゃん……。サラちゃんが、きっと……守ってくれるよ……」

ほむら「ええ……。ありがとう、まどか……」


…………



461: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:47:33.50 ID:qXopaMTSo
ロボ「……行ってしまいマシタネ」

ほむら「そうね。これで後戻りはできないわ。これから忙しいわよ、ロボ」

ロボ「ほむらがいてくれるなら、きっと成功シマス」


…………

………

……



462: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:49:19.16 ID:qXopaMTSo
♪風の憧憬


ほむら「農作業って腰にくるわね……」

ロボ「ほむらは肉体強化の魔法を使っているのデハ?」

ほむら「最小限にしてるわ。あんまり魔力を使いたくないし……」

ロボ「マッサージでもしまショウカ?」

ほむら「そうね、帰ったらお願いできる?」

ロボ「勿論デス」


…………



463: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:51:31.52 ID:qXopaMTSo
フィオナ「どうかしら? お口に合うといいんだけれど」

ほむら「とてもおいしいです、フィオナさん」

フィオナ「良かった」

ほむら「ロボは食べられなくて残念ね」

ロボ「見ているだけで満足デス」

ほむら「あとでオイルを注入してあげるわ」


…………



464: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:52:46.61 ID:qXopaMTSo
フィオナ「そうそう、そうやってひとつひとつ植えて……」

ほむら「こんな感じでいいですか?」

フィオナ「ええ、十分。うまく育つといいんだけれど」

ほむら「不思議な苗木ですね。かすかに魔力を感じる……」


マルコ「おーい、そっち終わったかい? そろそろ昼飯にしよう!」


…………



465: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:55:04.25 ID:qXopaMTSo
ロボ「今日は小屋の北側を開墾してキマス」

フィオナ「お願いね。ほら、マルコも手伝ってきて」

マルコ「肉体労働は男の仕事~ってか」


ほむら「フィオナさん、おなべ焦げてます」

フィオナ「あらいやだ。これじゃ帰ってきたふたりに怒られるわ。家を守るのが女の仕事なのに」

ほむら「なんか……そういうのも、いいですね」

フィオナ「ほむらさんのところでは違うの?」

ほむら「ええ、まあ……いや、どうなんでしょう……?」

フィオナ「?」


…………



466: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:56:35.75 ID:qXopaMTSo
ほむら「鳥に食べられちゃってる……」

ロボ「案山子が必要デスネ。ワタシが立ってマショウカ?」

ほむら「ダメよ。ロボにはもっと違う仕事がたくさんあるわ」

ロボ「これは参りマシタ。ほむらはロボ使いが荒いデス」

ほむら「ロボ使いってなによ? まったく、もう」


…………



467: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/05(日) 23:59:16.80 ID:qXopaMTSo
マルコ「思ったんだけどさ、ほむらさん。もう私たちは家族同然なんだし、敬語はやめにしないか?」

ほむら「え……?」

フィオナ「それいいわね! 私たちのことも、さん付けじゃなくて呼び捨てにして欲しいわ」

ほむら「そんな、失礼ですよ……」

マルコ「それそれ。なんか、だいぶ経つのに壁を感じるんだよねえ」

ほむら「そういうわけでは……」


フィオナ「……ほむら」

ほむら「! ……え、え?」

フィオナ「ふふ、呼んじゃった。なんだか娘ができたみたい」

マルコ「ハッハッハ! そのうちほむらに、弟か妹を作ってやるからな!」

フィオナ「もう~、マルコったら」

ほむら「は、はあ……」


…………



468: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:02:45.96 ID:urI8BkMro
ほむら「作業の手が止まってるわよ、ロボ」

ロボ「オット、これは失礼シマシタ」

ほむら「何よさっきから。私の顔ばっかり見て、何かついてる?」

ロボ「イエイエ。最近のほむらは表情が和らいでいると思いマシテネ」

ほむら「……そう?」

ロボ「呼び方ヒトツ。言葉づかいヒトツ。ただそれだけデ、人の気持ちは変わるものデス」

ほむら「……あなたはたまに、人間より人間らしい考え方をするわね」


ロボ「ほむらと最初に出会った時カラ、アナタはワタシたちに対してくだけていマシタ」

ほむら「……突然の出来事で、混乱していただけよ」

ロボ「だとシテモ、そのおかげでこうして仲良くなれマシタ。ルッカも喜んでイマス」

ほむら「あいつが、ねえ……」

469: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:05:38.52 ID:urI8BkMro
ロボ「ほむら、ワタシはアナタと出会えて本当に良かったと思ってイマス」

ほむら「なによ、突然」

ロボ「こういうときでもないと素直に聞いてくれませんカラネ、ほむらハ」

ほむら「あなたには負けるわ……」

ロボ「フィオナさんとマルコさん……いい人たちデスネ」

ほむら「……そうね」


ほむら「ところであなたは、敬語やめないの?」

ロボ「これはワタシのアイデンティティーデス」


…………



470: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:11:25.76 ID:urI8BkMro
ほむら「ただいま」

ロボ「オカエリナサイ。魔女退治はうまくいきマシタカ?」

ほむら「ええ、なんとかね。ついでに村のほうで買出しも済ませてきたわよ」

ロボ「ではワタシが倉庫に収納してキマス」


フィオナ「いつもごめんね、ふたりとも」

ほむら「妊娠中は無理厳禁、でしょ」

マルコ「それにしても魔族に魔女、か。私たち人間は敵が多いな……」

フィオナ「この子が大きくなるころには、平和な世の中になっているといいんだけれど……あら?」

ほむら「どうしたの?」

フィオナ「今、この子……おなかを蹴ったわ!」

マルコ「なんだって! ちょ、ちょっとさわらせてくれ!」

フィオナ「きゃあ! やめてよ、マルコ! そんな鼻息荒くしないで!」

ほむら「……見てられないわね」


…………



471: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:13:25.49 ID:urI8BkMro
マルコ「……」ソワソワ

ほむら「マルコ、落ち着いて。心配ないわよ」

ロボ「パレポリ村いちの産婆さんデスカラ、間違いないデショウ」

マルコ「そうは言ってもな。こういうとき、父親に心配するなというほうが無理な話だ」

ほむら「まあ、それはそうだけど……」


オギャー!!

マルコ「!」

ほむら「……良かったわね」

ロボ「元気な泣き声デス」


…………



472: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:15:27.56 ID:urI8BkMro
ピエトロ「ほむ! ほむりゃ!」

ほむら「え、ええ……?」

フィオナ「うふふ。ピエトロはほむらが好きなのね」

マルコ「お父さんとしては複雑だなあ。最初の言葉が『パパ』でも『ママ』でもなく『ほふ』だもんな」

ロボ「キット、『ほむら』と呼ぶつもりだったのデショウ」

フィオナ「ほら、ほむら。抱いてあげて?」

ピエトロ「ぶー! ほむりゃ!」

ほむら「……わわっ……」


…………



473: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:17:41.36 ID:urI8BkMro
ロボ「大丈夫デスカ? マルコさん」

マルコ「大丈夫、大丈夫。ロボがはしごを押さえててくれるからな」

ロボ「剪定でしたらワタシがやりマスガ……」

マルコ「ふふふ、甘いな。こういうのは専門家に任せておけ」

マルコ「それに、君たちに任せっきりだとフィオナが怒るんだよ。ちゃんと働け~ってね」

ロボ「気をつけてクダサイ」


マルコ「……ふむ。こんなもんかな。ん、待てよ……向こうの枝をもう少し切ったほうが……」

ロボ「! マルコさん、危ナイ!」

マルコ「う、うわっ!?」


…………



474: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:20:24.72 ID:urI8BkMro
フィオナ「はい、あーん」

ピエトロ「あー……」


マルコ「フィオナ、私にもあーんしてくれ」

フィオナ「左手で食べてください! もう、怪我なんてしてたら余計ふたりに迷惑がかかるじゃない」

ロボ「ワタシの不注意デ、申し訳ありマセン」

フィオナ「ロボが謝ることはないわ。この人が調子に乗ったせいよ」

マルコ「……なあ、最近フィオナは私に厳しくないか?」

ほむら「尻にしかれてるわね」

マルコ「とほほ……」


…………



475: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:22:23.00 ID:urI8BkMro
ガタガタ...ガタガタ...!!


ほむら「……すごい嵐ね。窓枠が外れそうだわ」

マルコ「……」

ピエトロ「ビエエェェン!!」

フィオナ「よしよし、大丈夫よ。怖くないからね……」


カッ!! ドシャーンッ!!!

ほむら「! ……雷……ずいぶん近かったわね……」

ロボ「苗木たちは大丈夫でショウカ……」

476: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:25:05.13 ID:urI8BkMro
マルコ「……」ガタッ

フィオナ「マルコ? 何してるの?」

マルコ「ああ……ちょっとだけ、外を見てくる。ロボの言うとおり、苗木が心配だ」

フィオナ「何を言ってるの! 怪我も治っていないのに……」

マルコ「なあに、ちょっと行って帰ってくるだけだ。大丈夫さ」

ほむら「なら、私も……」

マルコ「ほむらが行くとピエトロが悲しがる。私ひとりでいいよ」

ロボ「ひとりは危険デス、ワタシも一緒ニ連れていってクダサイ」

マルコ「おいおい、女性ふたりと小さな子どもを残していくつもりか?」

ロボ「シカシ……」


マルコ「じゃ、頼んだぜ」

フィオナ「マルコ!!!」


…………



477: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:27:11.81 ID:urI8BkMro
ほむら「今日は、風が冷たいわね」

ロボ「冬デスカラ」

ほむら「……雪でも降るのかしら」

ロボ「サア……」


…………



478: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:30:11.06 ID:urI8BkMro
フィオナ「ふたりとも、おかえり。遅いから心配したわよ」

ほむら「ロボが張り切っちゃってね……」

ほむら「最初に植えた苗木も育ってきたし、そろそろ南のほうにも手をつけていいんじゃないかって」

ロボ「今日はだいぶ遠くのほうマデ開墾してきマシタヨ!」

フィオナ「あんまり根をつめちゃだめよ?」

ほむら「……あなたこそ、ね」

フィオナ「え?」

ほむら「なんでもないわ。夕飯にしましょう」


…………



480: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:32:16.01 ID:urI8BkMro
ほむら「うわ……毛虫だわ」

ロボ「もうそんな季節デスカ」

ほむら「最近、年がめぐるのが早い気がするんだけど」

ロボ「ほむらもそろそろオバサンですカネ?」

ほむら「あなた今、全人類を敵に回したわよ」

ロボ「それはご勘弁願いたいデス」


…………



481: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:35:33.89 ID:urI8BkMro
ほむら「おはよう、ピエトロ」

ピエトロ「……」


ほむら「あ、あれ? 行っちゃった……」

フィオナ「ピエトロも最近難しい年頃になってきたからね……悲しいわ」

ロボ「思春期デスカラ。仕方ないことデス」

フィオナ「それとも、可愛い女の子が同居してるせいで照れているのかしら?」

ほむら「可愛い女の子……ね」

ロボ「ほむらハ、カワイイデスヨ?」

ほむら「はいはい」


…………



483: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:37:48.27 ID:urI8BkMro
ほむら「こんなところにいたのね。もう暗くなるわ、帰りましょう」

ピエトロ「……」

ほむら「外で遊ぶのもいいけれど、お母さんに心配かけちゃダメじゃない」

ピエトロ「……うるさい」

ほむら「またそんなこと言って。いい加減にしないと怒るわよ?」

ピエトロ「……」

ほむら「ねえ、ピエト……」


ピエトロ「あっち行けって言ってんだろ! 魔女!!」

ほむら「!」

485: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:40:48.48 ID:urI8BkMro
ピエトロ「お前、なんなんだよ! 何年も何年もおんなじ顔しやがって! 気味悪いんだよ!!」

ほむら「それは……」

ピエトロ「母さんも母さんだ! なんでこんなヤツをうちに住まわせとくんだ!」

ピエトロ「父さんも、お前が……! ちくしょう、魔女め!!」

ほむら「……」

ピエトロ「お前なんか……お前なんか、出ていけ!!!」

ほむら「! 待って……! 待……」


ほむら「……」


…………



486: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:43:20.42 ID:urI8BkMro
ほむら「あら、また来てるわ。あの小鳥……」

ロボ「この木が気に入ったんデショウカ?」

ほむら「なんだかうれしいわね。愛情こめて育ててきたから……」

ロボ「きっとそのウチ、この一帯は木々に覆われ、鳥たちの大合唱が聞けることデショウ」

ほむら「そうなるといいわね……」


…………



487: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:46:34.11 ID:urI8BkMro
フィオナ「やっぱり行くの、ピエトロ?」

ピエトロ「ああ。俺は王国海軍に志願して、新大陸を見つけてやる」

ピエトロ「デカいこと成し遂げてやるんだ。そして母さんや、ほむらおばさんに楽させてやるよ」

ロボ「ワタシも忘れないでクダサイ」

ピエトロ「ははっ、ごめんごめん。じゃあロボには、異国の油でも土産に持って帰ってくるよ」

ロボ「体に合いますカネ……」


ほむら「気をつけてね、ピエトロ」

ピエトロ「ほむらおばさん。俺、ガキのころはなんにも分かってなかったよ」

ほむら「え?」

ピエトロ「そのせいでおばさんにひどいこと言っちまった時もあったよな……」

ほむら「……」

ピエトロ「なんか、うまい時期が見つからなくて今まで謝れなかったけど……ほんと、ゴメン」

ほむら「……いいのよ、そんなこと。とっくに忘れたわ」

ピエトロ「そっか。……へへっ。じゃあ、いってきます!!」

フィオナ「必ず帰ってきてね……!」


…………



488: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:49:34.25 ID:urI8BkMro
ガタガタ...ガタガタ...!!


ほむら「また嵐……か」

ロボ「この季節はいつもこんな感じデスネ」

ほむら「嫌いだわ……。あの日を思い出すから……」

ロボ「……」


ガシャーン!

ほむら「!?」

ロボ「フィオナさん! どうかシマシタカ!?」

489: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:51:09.29 ID:urI8BkMro
フィオナ「ごめんなさい。手が滑ってグラスを落としちゃったの……」

ほむら「怪我はない?」

フィオナ「ええ、大丈夫」

ロボ「危険デスからワタシが処理してオキマス」

フィオナ「ありがとう、ロボ。……あーあ、このグラス、あの子のお気に入りだったのに」

フィオナ「帰ってきたら、しかられるわね……」

ほむら「……」


…………



491: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:53:51.27 ID:urI8BkMro
王国海軍兵「では、そういうことですので……」

ほむら「……あ……は、はい……」

ほむら「……」


フィオナ「ゴホ、ゴホ……。ほむら、誰か来てたの?」

ほむら「! ……なんでもないわ。それよりフィオナ、寝てなきゃダメじゃない」

フィオナ「ちょっと熱が出ただけよ。これぐらい……」

ほむら「そういう過信がいちばん危ないのよ。完治するまで安静にしてて」

フィオナ「迷惑かけるわね……。こんなとき、ピエトロがいてくれれば楽なのに」

フィオナ「あの子ったら出て行ったきり便りもよこさないで……。今ごろ、何してるのかしら……」

ほむら「……」


…………



492: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:57:50.58 ID:urI8BkMro
フィオナ「……ふう。こんなものかしら?」

ほむら「大丈夫? あんまり疲れることしないほうが……」

フィオナ「あらなに? 年だから無理するなってこと?」

ほむら「そういうわけじゃないけど……」

フィオナ「大丈夫よ、たまには手伝わせて?」

フィオナ「それに今は……何かしてないと、変なこと考えちゃいそうだから……」

ロボ「フィオナさん……」


…………



493: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 00:59:44.40 ID:urI8BkMro
ほむら「いい天気ね」

ロボ「こんな陽気デスト、思わず日向ぼっこをしたくなりマス」

ほむら「いいわね。あとでフィオナもつれてきてあげましょう。家の中ばっかりじゃ、かわいそうだわ」

ロボ「では、ワタシがイスを運びマス」


…………



496: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:01:36.60 ID:urI8BkMro
フィオナ「ほむら……ほむら……。そこにいるの?」

ほむら「ええ、私はここにいるわ。ほら、手を握ってあげる」

フィオナ「おお、おお……。ロボも……いるのかい?」

ロボ「ハイ、ワタシはここデス」


フィオナ「ごめんね……ふたりとも。何もしてあげられなくて……」

ほむら「そんなことはないわ。私たちは、あなたたち家族にたくさん、大切なものをもらったわよ……」

フィオナ「そうかい……? そうだとしたら……いいんだけれど……」

ロボ「フィオナ……。安心シテ、ゆっくり休んでクダサイ」

フィオナ「本当に……あなたたちがいてくれて……私は救われたわ……」

497: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:03:23.22 ID:urI8BkMro
フィオナ「この森のこと……どうか……よろしく、ね……」

ほむら「ええ、必ず……」



ほむら「……フィオナ……?」

ほむら「……」


…………



498: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:05:04.08 ID:urI8BkMro
ほむら「……」

ロボ「ふたりきりになってしまいマシタネ……」

ほむら「いずれ、そうなるだろうと覚悟はしてたわ……。大丈夫……」

ロボ「……」


…………



499: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:06:59.73 ID:urI8BkMro
ほむら「やった……! 私たち、やったのよね、ロボ!」

ロボ「ハイ! まだまだわずかですケレドモ……これハ、『森』と呼んで差し支えないデショウ!」

ほむら「フィオナ、見てる? あなたの夢は、きっと実現するわよ……!」

ロボ「サア、ほむら! 今日もがんばりマショウ!」


…………



500: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:09:04.28 ID:urI8BkMro
ほむら「ロボ、見て! リスよ!」

ロボ「シマリスですネ。ネズミ目リス科シマリス属、樹上生リスとジリスの中間的な存在でアリ……」

ほむら「ちょっと。そういうことを言ってるんじゃないのよ?」

ロボ「分かっていマス。この森にも動物が棲むようになったのデスネ……」

ほむら「鳥たちも増えてきたし……。あなたの言ったとおり、最近は大合唱よ」

ロボ「彼らもこの森の一部デス。いとおしいものデス」

ほむら「そうね……。とてもかわいいわ……」


…………



501: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:11:06.25 ID:urI8BkMro
ロボ「外で食べる昼食モ、たまには良いデスネ」

ほむら「それはそうだけど……。この鳥、いつまで私の頭の上に乗っているつもりかしら?」

ロボ「ハハハ。アナタは森の人気者ですカラ。鳥だけじゃありマセンヨ」

ほむら「いつの間にか動物たちが……」

ロボ「こうして見ているト、ひとつの絵画のようデス。タイトルは『森の聖女』なんてどうデスカ?」

ほむら「恥ずかしいセリフ禁止!」


…………



502: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:13:20.23 ID:urI8BkMro
ほむら「ロボ! ロボ、しっかりして!」

ロボ「ウウ……ン? そこにいるのハ、ほむらデスカ……?」

ほむら「帰りが遅いから心配して探しに来てみれば……なにがあったのよ!?」

ロボ「魔族が襲ってきまシテ……突然のことデ、反撃もデキズ……」

ほむら「魔族!? どうして……。ビネガーは何をやっているのよ……!」

ロボ「彼がすべてを管理できるというわけではないのデショウ……」

ロボ「ゼナン橋以南は治安も悪ク、ビネガーの館からも遠いデスカラ……」


ほむら「とにかく、小屋に戻りましょう。壊れたところを直さなきゃ……」

ロボ「ほむらがいてくれて、良かったデス……」


…………



503: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:14:39.29 ID:urI8BkMro
ほむら「それじゃあ、行ってくるわね」

ロボ「ハイ。魔女退治、がんばってクダサイ」

ほむら「そうそう、村に寄るんだから買出しもしなきゃね。何か不足してるものはある?」

ロボ「お待ちクダサイ、今リストを作成シマス」


…………



504: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:16:53.52 ID:urI8BkMro
ほむら(最近、魔女の活動が活発化してきている……)

ほむら(なぜなのかしら? 今まではこんなことなかったのに……)


村人A「例の家族の話、聞きました?」

村人B「ええ……。自ら家屋に火を放ち、一家心中なんてひどい話ですわね……」

村人A「なんでも魔女のたたりだとか……」

ほむら「! ……」

村人B「あそこの奥さん、愛娘を亡くしてからというもの、異端の教えに傾倒しだしましたものね……」


ほむら(この時代は、魔女だの悪魔だのが信じられている……)

ほむら(あながち、完全に間違いだとも言えないところが皮肉なものよね……)

505: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:18:52.44 ID:urI8BkMro
村人C「その話、私も聞きましたわ。どうも『森の魔女』の仕業だということらしいですわよ」

ほむら「……っ!?」


村人B「森の魔女? なんです、それ……?」

村人A「知っていますわ。先ごろ、砂漠に森が出来始めましたでしょう?」

村人B「そういえば……。私も、不思議に思っていました。あんな土地に森が復活するなんて……」

村人C「あれは、魔女の棲む森ですわ。あの森に出入りする少女を見た人がいるんです」

村人A「それがどうも、何十年も前から姿が変わらないとかで……」

村人B「まあ、怖い……」

506: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:20:58.43 ID:urI8BkMro
村人C「この村でも似た少女を見かけたという人がおりますのよ」

村人B「えっ!? じゃ、じゃあ……もしかして、今もこの近くに……」

村人A「……あら?」


ほむら「……!」


村人C「どうかなさいまして?」

村人A「いえ、あの子……」

村人B「あのフードをかぶった子が、なにか?」

村人A「……ごめんなさい、きっと気のせいですわ」


…………



507: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:23:20.20 ID:urI8BkMro
ロボ「ソウデスカ……。『森の魔女』……そんな噂ガ……」

ほむら「私は……とうぶん、この森から外に出ないようにしたほうがよさそうね……」

ロボ「村に何か用事があれバ、ワタシが行きマス」

ほむら「ごめんなさい、ロボ。迷惑かけるわね……」

ロボ「イエイエ。ほむらは、不注意でワタシが破損した時、直してくれマシタ。お互いさまデス」

ロボ「何があってモふたり力を合わせテ、乗り越えていきマショウ!」

ほむら「そうね。ありがとう、ロボ。おかげで元気が出たわ」


…………



508: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:25:28.70 ID:urI8BkMro
ほむら「遅いわね、ロボ……。村のほうで何かあったのかしら……?」



バタン!!

ロボ「ほむら、大変デス!」

ほむら「!? なによ、その姿は!?」

ほむら「アイセンサーも壊れて……ああ……! あちこち、ひしゃげてるじゃない……!」


ロボ「ワタシのことはいいのデス! それよりここから逃げなくてハ!」

ほむら「ちょ、ちょっと! ダメよ、動かないで! どうしたの、また魔族!?」

ロボ「イエ……これは王国兵ニ……」

ほむら「ガルディア王国が!? どうしてこんなこと……」

509: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:27:52.25 ID:urI8BkMro
「開けろ! ここを開けろ!!」ドンドンドン!!


ロボ「いけマセン、もうバレてしまったとハ……!」

ほむら「どうなってるの、ロボ!? 外にいるのは誰よ!?」

ロボ「……魔女狩り部隊デス」

ほむら「!?」

ロボ「『森の魔女はどこだ』ト……尋問されマシタ。ワタシもどう見ても人間ではありマセンカラ……」

ほむら「そ、そんな……!」


「くそっ、開けないつもりか……。おい、この扉をぶち破れ!」


ほむら「!」

ロボ「早ク、ほむら! 裏口から逃げるのデス!」

510: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:30:07.43 ID:urI8BkMro
兵士「隊長! いました、あの女です!」

隊長「なにっ!? くそ、裏口があったのか……!」


ほむら「見つかった……!?」

ロボ「走るのデス、ほむら! さあ早ク!」


隊長「逃がすな! 追え! なんとしてもひっ捕らえろ!!」


ほむら(違う、私は魔女じゃない……!)

ほむら(魔女じゃないのに……!!)


…………



512: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:33:05.76 ID:urI8BkMro
ロボ「なんとか逃げおおせマシタネ……」

ほむら「……しばらくはここに隠れて、今後のことを考えましょう……」

ロボ「ここハ?」

ほむら「カエルさんの、住んでいたところよ……」

ロボ「……」

ほむら「ホコリが、ずいぶん溜まってる……。きっともう何年も使われていないのね……」


…………



513: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:35:25.90 ID:urI8BkMro
ロボ「ほむら、ほむら! 起きてクダサイ!」

ほむら「んぅ……なによ、こんな朝から……」

ロボ「部屋を掃除していたら見つけマシタ! コレ……コレハ……!」

ほむら「あなたが取り乱すなんて、余程のことね。見せて……手紙……?」



ほむら「……!!!」

514: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:38:01.00 ID:urI8BkMro
久しぶりだな、ほむら、ロボ。


お前たちに会いに行こうかと何度か考えたこともあったが……。

その決意を尊重し、やめにした。

どうせお前らも俺に会いには来るまい? そういうヤツだよ、ほむら。お前は。

それでいい。


しかし今、この手紙を読んでいるということは、お前たちに緊急事態が起こったのだろう。


そうではないと願うが……もし正しいのであれば、棚の二段目の引き出しを開けろ。

そこに俺がルッカから預かった、お前らの助けとなるものを入れておいた。

一応、鍵をつけてあるが……ロボなら開けられるだろ。なんなら、ぶっ壊してもかまわんぜ。


お前たちの友として、俺がしてやれることはこれが精一杯だ。

忘れるなよ、ふたりとも。

俺たちはいつまでもお前らの味方だぜ。


――――カエルより

515: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:40:18.85 ID:urI8BkMro
ほむら「これは……!」

ロボ「ゲートホルダーデス、ほむら! これはゲートホルダーデス!!」

ほむら「こ、これがあれば……ゲートを使って……」

ロボ「帰りマショウ、ほむら! みんなのもとへ!」

ほむら「でも……フィオナの森を、見捨てるわけには……」


ロボ「逃げ帰るわけではありマセン。もう一度やり直すタメニ……」

ロボ「あきらめないタメニ、戻るのデス! みんなの力を借りるのデス!」

ほむら「……」

ロボ「行きマショウ、ほむら。まだ、道は示されてイマス……!」


…………



516: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:43:29.75 ID:urI8BkMro
ビュオオォォォ...!!


ほむら「く……嵐のせいで前が……見えない……!」

ロボ「ワタシが先頭に立ちマス。ほむらは後ろに隠れてクダサイ」

ほむら「ありがとう……」


ロボ「……グッ!?」

ほむら「ロボ!? 飛来物があなたに……」

ロボ「大丈夫、大丈夫デス……アッ!?」

ほむら「ぬかるみが……! 手を伸ばして、ロボ!」

ロボ「いけません、ほむら! 風で木が倒れてキマス!」

ほむら「!? ああ……っ!!」


…………



517: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:44:52.29 ID:urI8BkMro
ロボ「……」

ほむら「えっと……あれ……おかしいな……?」


ロボ「直せそうにありマセンカ? ひどい損傷デスシ……」

ほむら「そ、そんなことないわ。これぐらい……なんのために、ルッカが託してくれたと思ってるのよ……」

ロボ「……」

ほむら「すぐ直してあげるから……。この配線が……こうなって……あれ……なん、で……あれ……」

518: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:46:38.08 ID:urI8BkMro
ロボ「ほむら、もういいデス」

ほむら「そんな……よくないわよ!」

ロボ「時の最果てに戻れば、きっとルッカが直してくれマス。今はゲートに向かうことを優先シマショウ」

ほむら「そう……そうね……。ごめんね、ロボ……私のせいで……」

ロボ「ハハ。では戻ったあとにほむらには、ワタシの体をピッカピカに磨いてもらいマショウ」

ほむら「うん……必ず……」

ロボ「楽しみデス! さあ、ゲートの場所までもう少しデスヨ!」


…………



519: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:48:09.09 ID:urI8BkMro
ほむら「……そんな……どうして……」


ロボ「ゲート……ありマセンネ……」

ほむら「き、きっと道を間違えたのよ!」

ロボ「イエ……確かにここデス。おそらく……閉じてしまったのデショウ……」

ほむら「……終わりだわ……私たち……ここで、死ぬのよ……」

ロボ「……」

520: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:50:12.96 ID:urI8BkMro
ロボ「元気を出してクダサイ! まだまだあきらめていマセンヨ、ワタシハ!」

ほむら「無理よ、もう……。ゲートホルダーがあったって……ゲートそのものがなければ……」

ロボ「探しマショウ、ほむら! 別のゲートヲ! きっとあるはずデス!」

ほむら「ある、わけ……ないじゃない……」

ロボ「ありマス! 信じていれバ、必ず道は開かれるのデス!」

ほむら「……」

521: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:52:08.31 ID:urI8BkMro
ロボ「さあ立ってクダサイ、ほむら! ワタシがそばにいマス。ずっと、そばにいマス!」

ロボ「アナタが絶望に襲われるならソレと戦い、アナタが希望を抱くなら、ソレを守り続けマス!」

ロボ「それがワタシの役目デス!!!」


ほむら「ロボ……」

ほむら「……そう、ね……。あなたが、いてくれるなら……。わたし……私は……!!」

525: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:56:59.53 ID:urI8BkMro
兵士「発見しました!」

ほむら「!?」


隊長「よし、よくやった。やはりこの山に入っていったという情報は正しかったようだな」

ロボ「アナタ方ハ……!」

隊長「追い詰めたぞ、魔女め。要らぬ苦労をかけさせやがって……」

ほむら「ち、違う……私は魔女なんかじゃ……」

隊長「問答無用! 連行しろ!!」


ロボ「ほむらに手は出させマセン!!」

兵士「こ、こいつ、やっぱり魔女の手先だったのか!」

ほむら「ダメ、ロボ! あなたはとても戦えるような体じゃ……!」

隊長「まとめて取り押さえろ!」

527: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 01:59:44.22 ID:urI8BkMro
ロボ「グ……! ほ……ほむ、ら……」


隊長「おい、負傷兵を下がらせろ。まったく、てこずらせやがって……」

ほむら「ロボ! ロボ、しっかりして!!」

隊長「ええい、おとなしくしろ!」

ほむら「いや! 放してっ!!」


兵士「!? 隊長! 魔女のふところから何か落ちました!」

ほむら「!」

隊長「ム……なんだこれは。杖……か? 魔女の武器だな、破壊しろ!」

ロボ「ゲ、ゲートホルダーが……!!」

ほむら「やめてえぇぇぇーっ!!!」

528: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:02:12.29 ID:urI8BkMro
兵士「破壊しました!」

ほむら「あ……あああ……」

隊長「よし、これでひとまずは安心だな」

ロボ「これデハ……たとえ別のゲートを見つけたとシテモ、モウ……」


隊長「なんだ、魔女め。急におとなしくなったな。ついに観念したか」

ほむら「……」

隊長「よし、王都に戻るぞ」

兵士「この人形はいかが致しましょうか」

隊長「捨て置け。魔女の方が優先だ。早く連れ帰らねばならん」

隊長「こいつは世を騒がせた魔女として、拷問ののち火あぶりの刑に処されるはずだ」

隊長「それで人民の安心を得られるだろうという話だからな」

ロボ「な、なんてことヲ……!!」

529: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:04:06.02 ID:urI8BkMro
ほむら「……」

兵士「さっさと歩け! ぐずぐずするな!」


ほむら「……て……やる……」

隊長「ん? おい、なにをぶつぶつ言っている! 呪文でも唱えようものなら即刻首をはねるぞ!」

ほむら「……殺して……やる……殺してやるわ……」

隊長「なに? いまなんと言った?」

530: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:05:27.20 ID:urI8BkMro
ほむら「そんなに……魔女がお好みなら……今、この場で……私が魔女になって……」


兵士「た、隊長! こいつ様子がおかしいです!」

隊長「な、なんだこのまがまがしい殺気は!?」



ほむら「あなたたちを殺してやるわ!!!」

531: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:08:40.11 ID:urI8BkMro
ロボ「ソウルジェムが……!! ほむら、イケマセン!!」

ほむら「!?」


兵士「うがっ!?」

隊長「こ、こいつまだ動けたのか!? 魔女を奪われたぞ! 追え!」



ほむら「ロボ……わ、私……なんてことを……」

ロボ「枷は外しマシタ。逃げてクダサイ、ほむら。ワタシがここで食い止めマス」

ほむら「いや! いやよ、そんなの! なに言ってるの!!」

532: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:10:33.93 ID:urI8BkMro
隊長「いたぞ!」


ロボ「サア! 行ってクダサイ!! 早ク! 立って、走るのデス!!」

ほむら「ロボ……! ロボ……!!」

ロボ「忘れないでクダサイ。ワタシの言ったコト……希望は、必ずありマス!!」

ほむら「……っ!!!」


隊長「魔女が逃げるぞ!」

ロボ「ここハ、通しマセン……!!」

隊長「またお前か! くそ、何とかしろ! 複数で囲め!」

533: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:12:06.79 ID:urI8BkMro
ロボ「ワタシが……ほむらヲ……守るのデス……!!!」


隊長「殺せえ!! こいつを殺せえええーッ!!」



ロボ「ウオオオオオオオオオオオーッ!!!!!」

534: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:13:46.93 ID:urI8BkMro
ほむら「はあ、はあ……ああ……はあっ……! ぅぐっ……はあ……ああ……っ!!」


ほむら「ロボ……! ……はあ……ごめん……はあっ……なさい……!!」


ほむら「ごめん、なさい……ごめんなさい……ごめん……なさい……!」



ほむら「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……っ!!!」


…………

………



535: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:16:37.76 ID:urI8BkMro
ほむら(足が……痛い……)

ほむら(確かに……ずいぶん歩いたけれど……それだけで……)

ほむら(魔力が……コントロール……できていないのかしら……)


ほむら(でも……大丈夫……。もうすぐ、フィオナの小屋……)

ほむら(結局……戻ってきてしまった……。この時代で……安らげるのは、あの小屋だけ……)

ほむら(魔女狩りが……張ってないといいけど……)



ほむら「……」


ほむら(少し休んだら……ロボを探しに行こう……)

ほむら(大丈夫……。きっと、無事よ……)

536: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:19:39.58 ID:urI8BkMro
ゴオオォォォ...!!!


ほむら「うそ……なんで……!? 森が……燃えて、る……!」



ほむら「……そう……よね……。魔女の森、だもの……。そうする……わよね……」

ほむら(……私が逃げたから……? 私があの時死ねば、せめて森だけは……)


ほむら「……」


ほむら(燃えてる……みんな燃えちゃってる……)

ほむら(フィオナが……ロボが……私たちがつむいできた想いが……全部……)


ほむら「……ハハ……アハハハ……」


…………



537: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:22:20.88 ID:urI8BkMro
ザアアアァァ...


ほむら「……寒い……」

ほむら「雨……やまないな……」


ほむら「……みんなに……あんなえらそうなこと言ったのに……」

ほむら「なに……やってるんだろ……わたし……」


ほむら「……」


ほむら「会いたいよ……鹿目、さん……」


…………



539: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:23:53.92 ID:urI8BkMro
ほむら「すごいや。わたしって、こんなに強かったんだ」

ほむら「美樹さんの言ってたこと、ホントだったんだね」

ほむら「魔女になにされようが、その気になれば痛みなんて感じない」

ほむら「よーし、どんどんころすぞー」

ほむら「わるい魔女なんて、ぜんぶ死んじゃえばいいんだ!」


…………



540: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:25:22.91 ID:urI8BkMro
ほむら「ロボー? どこにいるのー?」

ほむら「かくれんぼしてないで出ておいでー」

ほむら「もー、どこいったのかなあ?」

ほむら「ねえ、ロボー、ロボってばー」


…………



542: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:27:05.80 ID:urI8BkMro
ほむら「あー、腕取れちゃった。魔力で治さないと……」

ほむら「んー……でも、めんどくさいなあ……」


ほむら「……あれ? ここ……フィオナさんの森だ。焼け跡でなーんにもないけど」

ほむら「戻ってくるつもりじゃなかったのにな? 道に迷っちゃったかなー……」


ほむら「ちょうどいいや。ちょっと休憩してこ……」

ほむら「もうずーっと歩きっぱなしだもん。さすがに疲れちゃうよね」

ほむら「何日たったのかな? いや、何週間? 何ヶ月?」

ほむら「ロボもずいぶん強情だなー」



ほむら「……ん? なんだろ……あれ……」

544: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:29:24.74 ID:urI8BkMro
ほむら「え? あれ……? なんで、壊れたロボがここにいるの?」

ほむら「幻覚かなあ? いよいよ、わたしもおしまいなのかな?」

ほむら「……」


ほむら「……幻覚……じゃない……」


ほむら「ロボ!? ロボ!! 返事して! ロボ!!!」

ほむら「……こんな……あ、ああ……ロボ……」



ほむら「……はっ……ぅ、ぐっ……うぅ……うう゛ううううう゛うう゛うう゛う!!!!!」


…………



545: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:31:11.45 ID:urI8BkMro
ほむら「はぁーっ……。寒い……。また風が出てきたわね」

ほむら「ロボ? あなたの体、ちょっと冷たすぎるわよ」

ほむら「え? 内部ヒーター機能? そういえばマニュアルにそんなの載ってた気がするわ……」

ほむら「ほんと、あなたって何でもありよね」

ほむら「……」


ほむら「でもゴメンね。直してあげられないの……」

ほむら「何も、直してあげられない……。ロボはここにいるのに……」


ほむら「うん……大丈夫よ……。こうしてロボの体にもたれかかってるだけで、あたたかいから……」

547: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:33:05.75 ID:urI8BkMro
ほむら「ねえ、ロボ……。あなたはどうして、ここに戻ってきたの……?」

ほむら「そんなボロボロの体で……たどり着くのだって、辛かったでしょうに……」

ほむら「なにもないわよ、もう……。森も、ここに建っていたはずの小屋も……」


ほむら「……そうね……。私だって、結局戻ってきてるんだもの……」

ほむら「ここが……ふさわしいわよね……。眠るのには……」

548: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:34:33.00 ID:urI8BkMro
ほむら「見て、ロボ。私のソウルジェム。真っ黒でしょ?」

ほむら「これでもがんばったのよ? あなたを見つけるまでは、決して魔女にはならないと……」

ほむら「ずっと……探してた……」


ほむら「……」


ほむら「あなたは……人間にかけてみるって……いつか、そう言ったわよね……」

ほむら「今でも、そう思っているの……?」

549: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:35:47.70 ID:urI8BkMro
ほむら「どれくらいのあいだ、探し回ったか……分からないけれど……」


ほむら「あなたが言ってた希望……必ず、あるはずだって……」


ほむら「……なかったよ……希望なんて……どこにも……」


ほむら「うそつきだね、ロボは……」



ほむら「なんだか……疲れちゃった……ね、ロボ……」

550: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:37:37.78 ID:urI8BkMro


「……私……もう……魔女になっちゃっても……いい、よ……ね……」



552: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:39:18.53 ID:urI8BkMro


…………

………

……



553: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:44:39.38 ID:urI8BkMro
A.D.1000 ゼナンの橋上空


まどか「……すごい……」

ルッカ「ウソ……! ここはただの荒野だったはずなのに……」



まどか「森だ! 見渡す限りの森ですよ、ルッカさん!!」

ルッカ「あいつら……。ほんとに実現させやがったのね……」

まどか「早くふたりを迎えに行ってあげましょう!」

554: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:47:16.44 ID:urI8BkMro
A.D.1000 フィオナ神殿


まどか「神殿……?」

ルッカ「さすがに400年も小屋が残ってるわけないか」

まどか「ほむらちゃんたちはここにいるんでしょうか……」

ルッカ「……」


神官「おや、旅の方ですか? ようこそ、フィオナ神殿へ」

まどか「あの、ここは?」

神官「400年前、魔王との戦いで砂漠化した森をよみがえらせた『聖女フィオナ』様を祀った神殿です」


神官「あの窓を御覧なさい」

ルッカ「え……。うわ、ステンドグラス……」

神官「フィオナ様のお姿は不明瞭な点が多く定かではありませんが……」

神官「あれに描かれているものこそが現在最も有力とされているのです」

555: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:50:23.68 ID:urI8BkMro
まどか「あれってフィオナさん……じゃない、ですよね」

ルッカ「……ほむらだわ」

まどか「ほむらちゃん、聖女様になっちゃったんですか!?」

ルッカ「名前だけ借りて、ここはフィオナさんの森だと示したつもりかしら」

まどか「うわー……すごいなあ。ほむらちゃん、キレイ……」


ルッカ「嫌な予感がする……」

まどか「え?」

ルッカ「……偉人は、この世を去ってから偉人と呼ばれるものよ」

まどか「そ、それって……」

556: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:52:15.68 ID:urI8BkMro
神官「え? アケミホムラ? さあ……。私には、心当たりありませんが……」

神官「神父様なら何かご存知かもしれません」

まどか「どこに行けば会えますか?」

神官「祭壇の方にいらっしゃるかと……」

ルッカ「行くわよ、まどか!」

557: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:54:06.50 ID:urI8BkMro
A.D.1000 フィオナ神殿 祭壇


ルッカ「神父様!」

神父「これ。この場は神聖なる神のおわすところ。そのように声を荒げること……は……」

まどか「? な、なんですか? 私たちの顔に何か……?」


神父「お、おお……。言い伝えはまことであったか……」

ルッカ「は? 言い伝え?」

神父「桃色の髪と慈愛に満ちた顔立ち。そしてそちらのお方は、知性と教養を兼ね備えた佇まい……」

まどか「ルッカさん。私たち、拝まれてるみたいですけど……」

ルッカ「いきなり気持ち悪いわね。なんなのかしら?」

神父「千年祭の年――時は来れり。さあ、礼拝堂の方へ……」

558: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:55:51.08 ID:urI8BkMro
A.D.1000 フィオナ神殿 礼拝堂


まどか「! あ、あそこに安置されてるのって……」

ルッカ「ロボ!!」


ロボ「……」

ルッカ「ロボ、大丈夫!? しっかりして!」

まどか「ロボさん……! どうして動かないの!? ま、まさか……壊れ……」

559: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:57:16.97 ID:urI8BkMro
神父「これこれ、『守護者』をそのように手荒に扱ってはいかん」

まどか「しゅ、しゅご……? なんです?」

神父「伝承にある。『守護者、はじめ森を守り、次に大地の扉を守る』」

神父「『そして今は、聖女の安らかなる眠りを守るものなり……』」

まどか「安らかなる眠りって……まさか……」


神父「桃色の髪の乙女よ。守護者の後ろの扉を開き、進みなさい」

まどか「え? この先って……」

神父「納骨堂じゃ」

まどか「……っ!!!」

560: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 02:59:05.72 ID:urI8BkMro
ルッカ「……? おかしい……。ロボ……休止状態になってるだけだわ……」

まどか「ルッカさん、ごめんなさい! わたし……わたし、先に行きます!!」

ルッカ「まどか!? ちょ、ちょっと待ってよ、私も……!」


神父「ふむ? そうそう、言い忘れておった」

ルッカ「な、なに? 急いでるんですけど!」

神父「伝承の続きじゃ」

ルッカ「そんなのあとで……!」

561: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:01:33.00 ID:urI8BkMro
神父「聞きなさい。伝承にこうある」


神父「『守護者、はじめ森を守り、次に大地の扉を守る』」

神父「『そして今は、聖女の安らかなる眠りを守るものなり……』」


神父「『彼の者の名はプロメテウス』」


神父「『人の……そして聖女の。"希望"を守るものなり』」



ルッカ「え……?」

562: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:03:38.42 ID:urI8BkMro
A.D.1000 フィオナ神殿 納骨堂


ほむら「……」


まどか「ほむらちゃん! ほむらちゃあん!! どうして死んじゃったの!!」

まどか「絶対帰ってくるって……ペンダント返してくれるって……言ったのに……!」

まどか「ひどいよ、こんなの……こんなのってないよ! どうして……うぅ……」

まどか「目をあけて、ほむらちゃん……! お願い、声を聞かせて……!!」

563: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:05:23.77 ID:urI8BkMro
ルッカ「……」

まどか「ル、ルッカさん……ほむら、ちゃんが……」

ルッカ「まどか。どいて」

まどか「え?」


ルッカ「ドララァ!!」ガスッ!!

まどか「な!? なにしてるんですか! 遺体を蹴るなんて……!」

ルッカ「ちょうどいい目覚ましでしょ、ほむら?」

まどか「……へ?」



ほむら「……いったぁ……。なに……? だれよ……」

564: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:07:23.31 ID:urI8BkMro
まどか「ホムラチャン!!!???」

ほむら「……」


ほむら「いけない、禁断症状だわ。まどかがそこにいるように見える……」

ほむら「寝不足かしら? ダメね、お肌にも悪いし」

ほむら「ちょっと、そこのメガネの人? 今、何時かしら。ていうか、何年?」


ルッカ「チョオォーップ!!!」

ほむら「マドカァ!!」

565: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:08:51.86 ID:urI8BkMro
ほむら「え!? まどか!? それに……ル、ルッカ!?」

まどか「ほむらちゃん! 生きてるんだね……!」

ルッカ「ったく、余計な心配かけさせるんじゃないわよ」

ほむら「本物……なの、よね……?」

まどか「もちろんだよ!」

ほむら「そう……。そうなの……。迎えに……来てくれたのね……」



ほむら「……ああ……まどか……。会いたかった……!」

566: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:10:39.20 ID:urI8BkMro
ロボ「……」

ロボ「……?」

ロボ「……オヤ……? ワタシハ……起動されたのデスカ……? まだズイブン明るいようデスガ……」

ルッカ「ロボ!!!」

まどか「ロボさん!!」


ロボ「オ……オオ……!! ルッカ……まどかさん……! ナツカシイ……」

ロボ「イヤ……アナタ方にとってハ、一瞬のことだったのデスネ……」

ロボ「シカシ、ワタシたちニとっては400年ハながい時間デシタ……」

ルッカ「だから言ったでしょ。ホントに、もう……。無事で、良かった……」

569: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:14:06.13 ID:urI8BkMro
ロボ「ほむら。すべて終わったのデスネ」

ほむら「そうね。これでもう、深夜にこそこそ動き回らなくてもすむわ」

まどか「どういうこと?」

神父「聖女さまを衆目の下にさらすと大変な騒ぎになるからの」

ほむら「神父様には、お世話になりました」

神父「いやいや。聖女さまのためとあれば」


ルッカ「そうか……。それでさっきは休止状態だったのね」

ほむら「ルッカ、帰ったらロボを整備してあげて」

ほむら「400年のあいだに私も勉強したけど……やっぱり機械に関しては、あなたにかないそうもないわ」

まどか「400年、かあ。ぜんぜん想像つかないよ……」

ほむら「色々あったわ……。でも、ここまで来れた。あなたたちのおかげよ」

ルッカ「私たちの……?」

ほむら「何度もあきらめそうになった。あの日、私は間違いなく魔女になってしまうはずだった……」


――――

―――

――



570: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:16:37.05 ID:urI8BkMro
ほむら「……」

ほむら「……?」

ほむら(あれ……私……どうして……まだ無事なの……?)

ほむら(ソウルジェムは……とっくに、濁りきってるはずなのに……)


ほむら(……? なにか、光ってる……)

ほむら「これ……まどかから預かった……サラさんの、ペンダント……?」



ほむら「!? どういう、こと……」

ほむら「ペンダントが……ソウルジェムの穢れを吸収してる……!!」

571: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:18:56.99 ID:urI8BkMro
ほむら「? なにかしら……」

ほむら(風で、積もった灰が飛散して……ロボの体の下に、なにかが……)


ほむら(……扉? どこへの……?)

ほむら「小屋は焼け落ちてしまったけれど……この扉だけは残っている……」



ほむら「……ロボ……あなたは……」

ほむら「この扉を守るために、戻ってきたの……?」

572: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:20:10.92 ID:urI8BkMro
ほむら「真っ暗……」

ほむら(えっと、ロウソクはどこにしまったっけ……あ、あった)


ほむら「……地下室……いえ、確かここは貯蔵庫だったかしら……」

ほむら(そういえば……収納はロボに任せっきりで、入ったことなんてなかった……)


ほむら「……?」

ほむら「机の上になにかある……」


ほむら「……」

ほむら「……!? こ、これ……!!!」

573: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:22:31.13 ID:urI8BkMro
まどかが何か書けってうるさいから、書いといてやるわ。

あんたら、あきらめたら承知しないわよ!


――――ルッカより



………………



ほむらちゃん、ロボさん。大変なことを押し付けちゃってごめんなさい。


わたしたちにできることがないか、たくさん考えたんだけど、これぐらいしか思いつきませんでした。

この部屋に、ベッケラーさんからもらったドッペル人形を置いていきます。

これを見て、わたしたちのことを思い出してください。

あ、ほむらちゃん。わたしにソックリだからって、イタズラしちゃダメだよ!

なんてね。


わたしたちは、いつでもあなたたちのそばにいます。

遠く離れていても、ずっと一緒です。そして、必ず迎えに行きます。

だから……待っててね。


希望は、あるよ。


――――まどかより


――――

―――

――



574: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:24:38.40 ID:urI8BkMro
まどか「わたしたちの残した手紙、見てくれたんだ……」

ほむら「次からは、もう少し分かりやすいところに隠してね」

まどか「ティヒヒヒ」

ロボ「ワタシはすぐに見つけマシタガ」

ほむら「だったら早く言いなさいよ」

ルッカ「それにしたって、手紙だけでどうして……」


神父「伝承にある。『聖女フィオナ、三つの顔を持てり』」

神父「『命のグレートヒェン。理のアシュティア。そして――時のホムリリー』」

ルッカ「……まさか、あんた!」

まどか「え、なに? なにが?」

575: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:26:42.82 ID:urI8BkMro
ほむら「使わせてもらったわ、ドッペル人形。あなたたちのも。私のも」

ほむら「病んだ精神をなぐさめ、痛んだ身体を交換し、新しい姿となり……また、人の目を欺くため……」

ほむら「そうしているうちに、暁美ほむらという固定観念は消えていった……」

ほむら「魔女とののしられた私は、いつの間にか聖女と呼ばれていたわ……」

ほむら「私はもう、元の身体ではない……『暁美ほむら』は死んでしまった……」

ルッカ「……」


ほむら「でも、大丈夫。私の魂は、心は……ここにあるんだもの」

ほむら「これがある限り、私は私でいられる……」

まどか「ソウルジェム……輝いてる……」

576: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:29:40.50 ID:urI8BkMro
ほむら「忘れないうちに、これ、返しておくわ」

まどか「あ……。サラちゃんのペンダント……」

ほむら「不思議よね、それ。ソウルジェムに近づけると、黒い想いとともに穢れが癒されていく……」

ほむら「あなたが言っていたように……サラさんが、守ってくれたのかしら……」

まどか「……」



ルッカ「……そうか! そういうことだったのね!」

ロボ「何か分かったのデスカ?」

577: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:31:28.79 ID:urI8BkMro
ルッカ「前に言ったわよね? ソウルジェムはドリストーン製だって」

ルッカ「そして、そのペンダントもドリストーンから作られたもの」

ルッカ「それもできたばかりの、最も純度の高いものだわ。そこに、サラの想いが加われば……」


ルッカ「ドリストーン同士はお互いの力を吸収する作用がある」

ルッカ「結果的には失敗したけれど、グランドリオンが魔神器を止める手立てとされたように……」

ルッカ「ソウルジェムの穢れを、同じドリストーンであるグリーフシードで吸収できるように……」


ルッカ「このペンダントは、ほむらのソウルジェムの穢れを取り除き……」

ルッカ「そして、自らの力を与えていたのよ!」

578: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:33:41.78 ID:urI8BkMro
まどか「サラちゃん……! ほんとに……守ってくれてたんだ!」

ほむら「まさか、よね……」

ロボ「やはり人間はすばらしいデス」


ルッカ「それにしたってそのペンダント、400年分の穢れを吸ってまだ輝きを失わないなんて……」

ルッカ「サラさんってどんだけチートなのよ。ラヴォスを一万年以上も封印できるわけだわ」



ロボ「みなさんのおかげデ、森ハよみがえりマシタ」

ほむら「苦労の甲斐があってやれやれだわ……」

ロボ「サア、今夜ハ、400年ブリのサイカイをいわおうではアリマセンカ!」


…………



579: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:36:27.08 ID:urI8BkMro
A.D.1000 フィオナの森




ルッカ「どう? ロボ」

ロボ「ありがとうゴザイマス。ルッカのメンテナンスのおかげで、だいぶ調子が戻ってキマシタ」

ほむら「天才ね、あなたは」

ルッカ「もっとほめていいのよ?」

ほむら「……懐かしいうっとうしさをありがとう」


さやか「しっかし、これでほむらは400歳かー」

マミ「とんでもないわね……」

ほむら「私は永遠の14歳よ」

杏子「どこの声優だ、アンタは」


まどか「これからはジャキくんもほむらちゃんのこと、先輩として敬わなきゃね」

魔王「……」

580: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:38:38.64 ID:urI8BkMro
マール「ほむらちゃん、大丈夫? 疲れてない?」

ほむら「400年分の誤差を埋めるのに少しかかりそうだけど……まあ、なんとかなるでしょ」

マール「なんとかなるんだ……」


エイラ「ほむ、変わってない! エイラ、うれしい! また仲良くする!」

クロノ「言ったろ? 何かなんて起きないって」

ほむら「そうね……。あなたたちの底抜けの馬鹿正直さが、私たちを救ってくれたのかも……」

ロボ「特にカエルさんにハ感謝してもしきれマセン」

カエル「俺か? 何かしたっけな……」

ほむら「まあ、そのうち分かるわよ」


マミ「ところで今回はお酒禁止なの?」

ほむら「今日ぐらいゆっくりさせてちょうだい」

エイラ「肉、食え! 代わり! 焼けたぞ!」

581: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:44:06.89 ID:urI8BkMro
ほむら「そうそう。今回、400年もの旅をして、気づいたことがあるのだけれど……」

マール「なになに?」

ロボ「ゲートの出現はラヴォスの力のゆがみだと思ってイマシタガ、違うような気がしてきたのデス」

マミ「そういえばキュゥべえも、ゲートを見たことがないようだったし……」

ルッカ「確かに。ラヴォスについて回っていたのなら、初見というのはおかしいわね」

ロボ「確信は持てませんガ、誰かがワタシたちに見せたかったんじゃないかト……」

クロノ「見せたかったって、なにを?」

ほむら「いろんな時代の何かを、よ」


ロボ「もしくハ、その誰か自身が見たかったのかもシレマセン。自分の生きてきた姿を思い返すヨウニ」

エイラ「エイラ、それわかる。人死ぬ時、今までの思い出、全部見る! 言い伝え!」

杏子「走馬灯現象ってヤツか」

カエル「人は死ぬ時、生きていた時に深く心にきざんだ記憶が次々とうかぶという」

カエル「それは楽しい思い出もあるが、たいていは悲しい思い出さ……」

さやか「なんか……さびしいね、それって……」

582: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:47:13.92 ID:urI8BkMro
ロボ「『あの時に戻りたい』『あの時ああしていれば』……」

ロボ「そういう強い思いが、記憶を呼び起こすのデショウ」

ほむら「……」

まどか「……ほむらちゃん……」


マール「私も死ぬ時はそうなるのかな?」

ルッカ「きっとそうよ」

マール「ルッカはあるの? 戻りたい、一瞬が?」

ルッカ「……」

マール「ごめん。聞いちゃ、いけなかった?」

ルッカ「……なるべく考えないようにしているの。だってつかれちゃうもの」

ほむら「……」

583: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:49:08.07 ID:urI8BkMro
カエル「しかし、だ。この思い出の持ち主は、よっぽどラヴォスに縁があるんだな」

さやか「そういや全部ラヴォス絡みだよね」

まどか「わたしたちの時代に開いたゲートも、そうなのかな?」

ほむら「さあ……」


魔王「……で。誰だというんだ、そいつは?」

ほむら「それが分かれば苦労しないわ」

ロボ「もしかしたら人ではナイ、もっと大きな存在かもしれマセン」

ロボ「それが分かる日が、ワタシたちの旅の終わりなのかもしれマセンネ……」


クロノ「旅の終わり……か。そうだよな。いつか……終わるんだよな……」

ほむら「始まりがあれば終わりもある。至極当然のことよ」

584: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:51:07.65 ID:urI8BkMro
ほむら「さ……そろそろ、寝ましょうか」

まどか「ウェヒヒヒ! みんなでお外で雑魚寝なんて、キャンプみたいで楽しいね!」


エイラ「マミ! 寝る! いっしょ!」

マミ「ええ、もちろん。なんなら、手をつないで寝る?」

エイラ「いいな! シアワセ、なる!」

585: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:52:59.54 ID:urI8BkMro
ほむら「どう、まどか?」

まどか「わあ、ほんとだ。ロボさんに寄りかかって寝ると、安心するね!」

ルッカ「ちょっと、ほむら。つめてよ。私の寝るスペースがないじゃない」

ロボ「3人はさすがニ……」


さやか「師匠~? 女の子ばっかりだからって、盛ったりしないでよ?」

カエル「安心しろ。お前はまず間違いなく襲わん」

さやか「ひどっ! いやその前に、盛ることを否定してよ!」

カエル「男はみんな、狼なのだ……!」

さやか「師匠はカエルでしょーが!!」

586: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:54:42.26 ID:urI8BkMro
杏子「ジャキ、ひとりで寝れるか? ガキのころみたいに、お姉ちゃんが添い寝してやろうか?」

魔王「……ふざけるな」

杏子「おーおー、生意気言っちゃって」


カエル「ちょっと待て! 『添い寝』ってなんだ!!」

ルッカ「なに騒いでるの。早く寝なさいよ。クロノとマールの寝つきの早さを見習いなさい」

カエル「そんな場合か! 俺は今、全読者の心の代弁をだな……!!」

さやか「師匠、うるさい」ゲシッ

カエル「あふん!?」


…………



587: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:56:38.55 ID:urI8BkMro
ルッカ「……」

ルッカ「……う……んぁ……」ガツッ

ルッカ「! ……いつつ……。寝返り打ったら鼻ぶつけた……」


ロボ「――――」

ルッカ「こら、ロボ。あなた、体硬いわよ」

ルッカ「なーんて、当たり前か。……あーあ。変な時間に目が覚めちゃったな」


まどか「――――」

ルッカ(幸せそうな寝顔しちゃって。よっぽどほむらが無事だったのがうれしかったのね)

ルッカ「……あれ?」

ルッカ「……まどか? え……? なんで、息してないの……?」

588: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:58:18.33 ID:urI8BkMro
ルッカ「ロボ? クロノ? みんな……」


ルッカ(……眠ったまま石みたいに……。なによ……これ……?)

ルッカ「まるで、時間が止まってしまったみたい……」


ルッカ「……」

ルッカ「ほむら?」

ルッカ「……」

ルッカ(あいつだけ……いない……。なんで……)

589: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 03:59:55.47 ID:urI8BkMro
「……」


ルッカ「いたいた! ほむら、こんなところで何やってたのよ?」

ルッカ「ねえ、なんかおかしくない? 森が静か過ぎる……」



「……」


ルッカ「……ちょっと。なんで黙ってるのよ。何か言いなさいよ」

ルッカ「……」

ルッカ「……あんた……ほんとに、ほむらなの……?」

590: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:01:31.22 ID:urI8BkMro
「……」


ルッカ「え、なに? あんたの盾が、どうかしたの?」

ルッカ「とうとう分解させてくれる気になったのかしら? ……んなわけ、ないわよね」

ルッカ「ねえちょっと。やめてよ、ダンマリは。気味悪いじゃない……」


ルッカ「……ん?」

ルッカ「あれ? あんたのその盾に付いてる砂時計……」

ルッカ「そんな形してたっけ? それに、なんだか……中の砂の色も、違うような……」

591: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:03:11.94 ID:urI8BkMro
「これは、400年分の時の砂」

ルッカ「え?」


「あなたが、戻りたいと強く願う瞬間は、いつ?」

ルッカ「なに言ってるの? ほむら……」

592: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:04:40.05 ID:urI8BkMro
「……」カラカラ...カラカラカラ...

ルッカ「! ……ゼンマイが……」


ルッカ「あなた、もしかして……」

ルッカ「……ほむらじゃなくて……『時の……」


カラカラカラ...

カラカラ...



カシャン!!!

593: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:06:06.88 ID:urI8BkMro
ルッカ「……ハッ!?」


ルッカ「ここは……実家の、私の部屋……?」

ルッカ(……いえ、違う。調度品が古い……)

ルッカ(昔の私の部屋……。戻りたい瞬間……)


ルッカ「……まさか!!」

594: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:08:16.19 ID:urI8BkMro
ララ「まあまあ、何の機械だか……。タバンは危ないから近づくなって言うけど、こう汚しちゃあねェ」


ルッカ(やっぱりお母さん! まだ……無事でいたころの……!)

ルッカ(ダメ、その機械にさわっちゃ! それに近づくと、あなたは……!)


ララ「あら? いやだわ……。ルッカ、ね、ルッカ」

るっか「なーに?」

ララ「ちょっと手伝って。スカートのすそがはさまっちゃったの」

るっか「うーん……! だめだよ、取れないよ」

ララ「困ったわねえ……」

595: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:10:20.91 ID:urI8BkMro
カチッ! ゴウンゴウン...


ララ「!! き、機械が! どうしよう、変なところさわっちゃったのかしら……!?」

るっか「お母さん!?」

ララ「ダメ……引っ張られて……このままじゃ巻き込まれる!」


ルッカ(……させない! またあんな悲惨な光景を見るなんて、まっぴらよ!)

ルッカ(コンソールは……これね! よし、こいつで緊急停止させれば……!)



『パスコード入力』

ルッカ「……え?」

598: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:12:22.24 ID:urI8BkMro
ララ「ルッカ! 機械を止めて!」

るっか「そ、そんなこと言ったって……」


ルッカ(考えろ……考えろ……父さんがつけそうなパスコード……!)

ルッカ(できる、私ならできる……そのために、私は……!!)


ララ「お願い、ルッカ! パスコードを……!」

るっか「ぱすこーどってなに!? わたしはどうしたらいいの!?」

ララ「ああ、もうだめ……! あなた……!!」

ルッカ「……ッ!!!」

599: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:13:43.77 ID:urI8BkMro


「わからないわ! お母さん!」



600: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:14:24.96 ID:urI8BkMro


…………

………

……



602: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:16:06.10 ID:urI8BkMro
ルッカ「……」

ルッカ「……あ……え!?」


ほむら「……おかえり」

ロボ「こんなところで寝ているト風邪を引きマスヨ」


ルッカ(……今のは夢だったの……?)

ルッカ(いえ、夢にしては生々しすぎる……それに……)


ルッカ「ほむら……今、あんた……『おかえり』って……」

ほむら「……」

603: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:17:26.94 ID:urI8BkMro
ロボ「泣いていたのデスカ、ルッカ? 目が腫れてイマス」

ルッカ「! ……こ、これは……」

ほむら「悲しくて泣いたのかしら? それともうれしくて、安堵したから?」

ルッカ「……」

ほむら「……まあ、深くは詮索しないわ」

604: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:19:31.24 ID:urI8BkMro
ルッカ「あの日、誓ったの……。もう二度とあんな悲劇が起きないように、科学の道を究めようって」

ルッカ「ほむら。あなたは私が天才だと言ったけれど……実際は、ただのガリ勉よ……」

ほむら「だとすれば、むしろ尊敬するわ。400年かけても追いつけなかったんだから」

ルッカ「……」


ロボ「ルッカ。これヲ」

ルッカ「これは……?」

ロボ「プレゼントしマス。森で育った木のジュシをかためて、ワタシたちがつくりマシタ」

ほむら「400年の重みのある宝石、『みどりのゆめ』よ。何かに役立ててちょうだい」

ルッカ「……ありがとう。私には、こんないい友達がいるのね……」

ロボ「友達……。ロボットのワタシが……」

605: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:21:55.14 ID:urI8BkMro
ルッカ「ね、ほむら……。なぜ私は、あの瞬間に戻れたのかしら……」

ほむら「……」

ルッカ「あなたも……あるんじゃないの? 『あの時に戻りたい』『あの時ああしていれば』……」

ルッカ「そう、強く願っている瞬間が……。だから、同じように私を……」

ロボ「……」

ルッカ「誰かに知って欲しかったんじゃないの? あなたが背負っているものの重みを……」

ルッカ「そして、できるならば……ともに……」


ほむら「ルッカ、これは夢なのよ」

ルッカ「え?」

606: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:27:22.35 ID:urI8BkMro
ほむら「ここに今、私たちがこうしているのは、すべて夢の中の出来事……」

ルッカ「そんなわけないじゃない……」

ほむら「いいえ、きっとそうだわ」

ほむら「だから……私が何かを話したとしても、朝になればみんな忘れてしまうのよ」

ロボ「ほむら……」


ほむら「この森が……森の緑が……見せてくれている、ひとときの夢なのよ……」

ルッカ「……緑の……夢……」

607: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:29:05.13 ID:urI8BkMro
ねえ…… 本当の気持ちって、どうしたら伝わるのかしら?

なによ、突然……

別に…… ちょっと、聞いてみただけ……

伝えるのって、難しいわね……


私が気持ちを伝えたら、応えてくれるのかしら?


分からないわ…… でも……

きっと、分かち合うことはできるかも……


そっか……



……ありがとう……

608: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/06(月) 04:31:14.60 ID:urI8BkMro
第15話(マルチイベント編-6)「緑の夢」 終了


  セーブしてつづける(第16話「最後に残った道しるべ」へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

627: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:09:10.25 ID:3ZUaTaLzo
第16話「最後に残った道しるべ」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

628: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:15:49.91 ID:3ZUaTaLzo
年代不明 時の最果て


ほむら「いよいよラヴォスとの対決の時が近づいてきたわ」

老人「みな、見違えるような顔つきじゃ。成長したな……私はうれしいよ」


クロノ「今の僕たちなら、ラヴォスと対等に戦えるはずだな!」

カエル「新生グランドリオンの力……今こそ、発揮する時!」

さやか「あたしらの剣でラヴォスなんざ、なます切りにしてやるっすよ!」


マール「パパも私を許してくれた……。もう何も怖くない!」

マミ「マールさん、それ私の決め台詞です!」

エイラ「ふぃろ・ふぃな~れ~!」キャッキャッ


魔王「ラヴォス……。ヤツを倒すことこそ我が悲願。腕が鳴る……」

杏子「今からそんなに気ぃ張ってたら疲れるぜ。グミ食えよ」

まどか「3個なの!? 甘いの3個ほしいのね!? 3個……イヤしんぼさん!!」

629: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:19:50.93 ID:3ZUaTaLzo
ロボ「それデ、ラヴォスと戦うにはどうすればいいのデスカ?」

老人「うむ。ラヴォスと戦う方法は本来、三つあった」

老人「ひとつは『滅びの日』につながる『バケツのゲート』……」

ほむら「私が最初に通ってきたゲートね」

老人「じゃがこれは、原因不明ながらすでに閉じておる。再び開く気配もない……」

ルッカ「そのゲートで直接乗り込むのは不可能、か」


老人「ふたつめは、時をわたる翼でA.D.1999『ラヴォスの日』1時24分の時点に飛ぶことじゃ」

まどか「A.D.1999? 世界崩壊はA.D.2012じゃないんですか?」

ロボ「それガ、シルバードの時空ジャイロはA.D.1999で固定されているのデス」

さやか「なんでだろ?」

ルッカ「はっきりしたことは分からないけど、前年に起きた黒き風による大災害を防ぐためかしら」

ほむら(A.D.2011の大災害……ワルプルギスの夜。やはりラヴォスと強い関係が……?)

630: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:22:22.77 ID:3ZUaTaLzo
老人「三つ目は、時代をまたがりあらわれた、あの黒く巨大なもの……」

杏子「『黒の夢』か」

老人「力に頼り、力に取り込まれたおろかな心じゃ……。あの黒い悪夢も、ラヴォスにつながっておる」


ルッカ「シルバードか、黒の夢か。選択肢はふたつに絞られているわけだけど、ひとつ問題があるわ」

ほむら「私たちのうち、誰がラヴォスと戦うのか……」

クロノ「そうか……。シルバードは3人乗りだったっけ」

エイラ「みんな強くなった! 3人だけ、もったいない!」

631: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:27:42.93 ID:3ZUaTaLzo
魔王「黒の夢だ。あれは古代から未来、4つの時代にまたがり出現している」

マール「そっか! 3人ずつ、4つの黒の夢に乗り込めば……」

ロボ「A.D.2300は崩壊後ノ世界。黒の夢を攻略することニ意味はあるのデショウカ?」

老人「そうじゃな……。確かに、その時代の黒の夢を壊したところで未来は変わらぬだろう」

老人「しかしあの悪夢がラヴォスにつながっているのは確か。私は、最深部にゲートがあると見る」

マミ「ラヴォス本体につながるタイムゲートというわけですね」

老人「然り。よって、A.D.2300の黒の夢を突破してラヴォスにたどり着くことは可能じゃろう」


さやか「決まりじゃん! さっそく、黒の夢攻略作戦を練ろうよ!」

カエル「待て、さやか。その案には致命的な問題点がある」

杏子「確かにな。黒の夢は空中に浮いている。どうやって行くかっつーことだ」

さやか「それは、シルバードで……」

カエル「他の時代はどうするんだ?」

さやか「あ……そ、そっか……。どうしよ……」

632: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:32:18.95 ID:3ZUaTaLzo
老人「ふむ。ひとつ、見えたものがある。『古き時代、野心溢るる新たなる王が、夢のあと……』」

ほむら「! 黒鳥号ね……」

エイラ「おー! あのデカイ鳥か!」

ルッカ「黒鳥号の修復か……。大掛かりな作業ね」


まどか「わたし、行くよ! 古代で生き残った人たちに手伝ってもらえないか、頼んでみる!」

マール「そういえばまどかちゃん、地の民の人たちに人気だったよね!」

クロノ「彼女ならきっと歓迎してもらえると思うよ」


杏子「ダルトンとその取り巻きが生きている可能性もあるな。アタシもついていくか」

魔王「ヤツらごとき、我らの手にかかれば従わせることはたやすかろう……」


さやか「いいね、いいね! あとふたつ! なんかないっすか、管理人さん!」

老人「残念ながらそれ以外は見えぬ……」

さやか「え、ええ~? ここまで来てそりゃないっすよお~」

633: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:34:50.18 ID:3ZUaTaLzo
ルッカ「……やるしかないわね。造るわよ、飛行船を。それもふたつ」

ほむら「本気? とてもじゃないけど、できるとは思えないわ」

ルッカ「できるできないじゃない、やるのよ。設計図は私が描くわ」

ロボ「ガッシュさんの研究室ナラ、シルバードの設計データもあるかもしれマセン。参考にシマショウ」


ほむら「ちょっと待ってよ。設計図だけできても、なんにもならないわ」

ほむら「実際に誰が造るのよ? とんでもなく大規模な作業よ、私たちだけじゃ無理だわ」

ほむら「それに、未来の技術を再現なんてできるの?」

ルッカ「それは……」

634: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:37:33.82 ID:3ZUaTaLzo
魔王「『ドリストーン』だ」

まどか「え?」


魔王「古代の浮遊大陸は、ドリストーンに含有されたラヴォスエネルギーの力で浮いていた」

魔王「あれなら、物体を飛行させることも可能だろう」

杏子「けど、ドリストーンは失われたんだろ」

魔王「お前のソウルジェムを提供してやったらどうだ?」

杏子「ふざけんな! 冗談でも笑えねえよ!」


エイラ「マミ! イオカ、行く!」

マミ「え? なんのために……あ、そっか! 原始の時代なら、ドリストーンはまだ残っているはずよ!」

クロノ「見つかるのかい?」

エイラ「みんなで探す! イオカ、ラルバ、みんな!」

カエル「なるほど、人海戦術か」

635: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:41:33.97 ID:3ZUaTaLzo
マール「じゃ、私も黙っているわけにはいかないね」

まどか「何か考えがあるんですか?」

マール「あんまりこういうこと好きじゃないけど、私は王族なんだよ」

マール「パパに頼んでみる。飛行船製作に、力を貸してくれないかってね」

さやか「出た、国家権力!」

カエル「なるほど、その手があったか。ならば俺も、中世のガルディア王に頼んでみよう」

まどか「なんか、ホントにできる気がしてきましたね!」


ほむら「本気なのね、あなたたち……」

ルッカ「佐伯家家訓第三条! 無茶も通せば現実風味!」

ロボ「ほむら、やりマショウ。ワタシたちが力を合わせレバ、きっとできマス!」

ほむら「……分かったわ。こうなったら、とことんやるわよ」

636: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:45:01.18 ID:3ZUaTaLzo
B.C.65000000 イオカ村 酋長のテント


キーノ「久しいな! エイラ、マミ!」

エイラ「キーノ、元気だったか?」

マミ「酋長のお仕事、ちゃんとやってる?」

キーノ「心配、必要ない。キーノ、男、上げた」

マミ「ふふ。自分で言っちゃうところが、まだ子供よね」


キーノ「今日、なんの用だ?」

エイラ「おう、キーノ! 集めろ、人! いっぱい!」

マミ「探して欲しいものがあるのよ」

キーノ「探し物はマカセロー」バリバリ

マミ「ヤメテ!!」

637: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:48:28.99 ID:3ZUaTaLzo
B.C.12000 残された村


地の民「はい、次の人。お椀を出して」

フード姿の物乞いA「へへ、いつもすみませんね……」

地の民「気にすることはないわよ。この炊き出しは、みんなのためにやってるんだから」


フード姿の物乞いB「人のありがたみが身にしみるなあ……。ね、ダルt」

フード姿の物乞いA「*おおっと* 手がすべったァー!」バシャーン!

フード姿の物乞いC「あっちぃー!? なんで俺!?」

地の民「ちょっとちょっと。気をつけてよ。捨ててもいいほど食料に余裕があるわけじゃないんだから」

フード姿の物乞いD「すみません、すみません!」

地の民「仕方のない人たちね……。さ、順番が終わったら次の人のために道をあけてあげて」

638: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:52:39.87 ID:3ZUaTaLzo
フード姿の物乞いA「アホか、貴様! なんのためにこんな小汚いフードをかぶっていると思ってんだ!」

親衛隊A「いや、ホントすんませんっす。ついポロッと……」

親衛隊B「ってか、いつまでそのフードかぶってるんすか? もう周りには誰もいないっすよ」

フード姿の物乞いA「おっと、いかんいかん」バサッ


ダルトン「ふー。やはり高貴なる俺様の姿は隠すものではないな」

親衛隊C「でもダルトン様が生きていることが知れたら、きっとボコボコにされちゃいますよお……」

ダルトン「ちぃっ……。なぜ俺様が愚民どもにまぎれてコソコソしなければならんのだ!」

親衛隊A「我慢してください。これも生きるためっす」

ダルトン「それもこれも、みんなあのテロリストどものせいだ。絶対に復讐してやるぞ!」

親衛隊C「やめましょうよ~。憎しみは何も生み出しませんよお」

639: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:56:05.02 ID:3ZUaTaLzo
ダルトン「見ておれ。この黒鳥号が直れば、ふたたびこの俺様が王となる日が来る!」

親衛隊A「直すも何も、俺らしかいないっすよ」

親衛隊C「生き延びた他の人たち、みんなダルトン様に愛想つかせて逃げちゃいましたもんね……」

ダルトン「クソ、腰抜けどもめ! ええい、イライラする! この世に希望はないのか!」

親衛隊A「ダルトン様がそれ言っちゃうかあ」

親衛隊C「荒れてますね」

親衛隊B「シチューうめえ」



「……何やってんだ、アンタら」

640: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 22:59:02.41 ID:3ZUaTaLzo
ダルトン「お、お前は!?」

巫女「やっぱり生きてやがったのか、ダルトン」

親衛隊C「巫女様!? それに……予言者様も!」

親衛隊A「死んでなかったのか……」

親衛隊B「俺、巫女様の声はじめて聞いたよ」


まどか「ふたりとも、長老さんを連れてきたよ」

ダルトン「げっ!? か、鹿目様まで!?」

まどか「あれ、ダルトンさん。お久しぶりです」

642: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:01:21.66 ID:3ZUaTaLzo
予言者「黒鳥号……。暁美ほむらの話では、シルバードによる損傷が激しいと聞いていたが」

巫女「ザッと見た感じ、メチャクチャになってるってほどでもねえな。意外と早く修復できるか?」

まどか「お願いできますか? 長老さん」

アルゲティ長老「鹿目様の頼みを断る者など、この村にはおりませんよ」

まどか「ありがとう、長老さん……」


ダルトン「なんと!? この黒鳥号を直してくださるのか!?」

まどか「うん、そのつもり」

親衛隊C「良かったですね、ダルトン様!」

ダルトン「我が世の春が来たぁぁ!! やっぱ鹿目様は女神っすわ!」

親衛隊A「変わり身はえーな!?」

643: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:04:22.45 ID:3ZUaTaLzo
まどか「その代わりにこれ、わたしたちに使わせてね」

ダルトン「え?」

まどか「それから、ダルトンさんはわたしの言うことを聞くこと。馬車馬のように働いてね」

ダルトン「あ、あの……鹿目様……」

まどか「二度と悪いことしないように監視します。もし断ったり、逃げ出したりしたら……」

ダルトン「……」

まどか「アルゲティであなたがわたしにしたこと……忘れてないから、ね?」

ダルトン「あ、はい……」

644: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:06:42.86 ID:3ZUaTaLzo
親衛隊A「鹿目様、ふいんき(←なぜか変換できない)変わったな……」

親衛隊C「そうですね~。あんな暗黒微笑する人でしたっけ?」

親衛隊A「なんかショックだわ、俺」

親衛隊B「俺はむしろ今のほうが好みだな。あとで『豚』ってののしってもらおうっと」

親衛隊C「ふええ……。親衛隊BくんがMに目覚めちゃってるよぅ……」


まどか「ところで、ふたりはなんでそんな格好してるの?」

巫女「こっちのほうがアイツらには分かりやすいからな」

646: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:10:15.07 ID:3ZUaTaLzo
A.D.600 ガルディア城 謁見の間


ガルディア21世「空を飛ぶ船だと?」

リーネ「面妖な」

カエル「信じられない話かもしれませんが、事実、私はその夢のような代物を見、そして体験いたしました」

カエル「僭越ながら申し上げます。陛下、そのお力を我らにお貸しください」

ガルディア21世「ふむ……」


リーネ「カエルとクロノたちが、大きなことを成し遂げようとしているのです」

リーネ「陛下! 私たちもその一端を担おうではありませんか」

ガルディア21世「リーネの申すとおりだ。それに君らには国難を救ってもらった恩もある」

カエル「では……!」

ガルディア21世「騎士団長! これは大事業になるぞ。準備をいたせ」

騎士団長「かしこまりました!」

647: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:12:11.00 ID:3ZUaTaLzo
さやか「やったね、師匠!」

カエル「陛下……感謝いたします」


ガルディア21世「専門家が必要だな。誰か、心当たりはおらぬか」

さやか「それなら心配要りませんよ!」

リーネ「誰か良い人でもいらして?」

さやか「クロノさんがもう手配済みっす!」

648: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:15:24.24 ID:3ZUaTaLzo
A.D.600 チョラス村 大工の家


クロノ「というわけなんです」

初代ゲン「毎度毎度、ぶっ飛んだ注文をつけてくれるねえ」

クロノ「すみません」

初代ゲン「謝るこたあねえ。こんな経験、一生にそう何度もできるかよ」


初代ゲン「王様に話はつけてあるんだな?」

クロノ「まだ詳細は聞いていませんが、カエルが言うには必ず説得してみせると」

初代ゲン「よし。なら何も問題はねえ。野郎ども!」

大工たち「ヘイ、親方!」

初代ゲン「いくぞ。仕事だ」

大工たち「勇者様の墓の次は、何を造るんですかい?」

初代ゲン「空飛ぶ船さ!」

649: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:18:17.87 ID:3ZUaTaLzo
A.D.1000 ガルディア城 謁見の間


マール「お願い、パパ!」

ガルディア33世「まったく、お前というやつは……たまに帰ってきたと思ったら、これだ」


ヤクラ13世「マールディア様……。国民の血税をなんだと思っているのですかな?」

ヤクラ13世「そのような道楽に使うこと、許されるはずがないでしょう」

マール「道楽じゃないよ! これは、この世界全体の危機で……」

ヤクラ13世「……とまあ、以前の私なら渋い顔をしたでしょうな」

マール「え?」

650: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:20:43.19 ID:3ZUaTaLzo
ヤクラ13世「この星の生命を救う船。さしずめ、ノアの方舟といったところですかな?」

ガルディア33世「これ、大臣……」

ヤクラ13世「国王。面白いではないですか。あなたも、まんざらでもありますまい?」

ガルディア33世「まあ、やぶさかではないことは確かだがな……」

マール「パパ……。じゃあ!」

ガルディア33世「お前の言うように、これは私たち自身の問題でもある。協力はしよう」

マール「ありがとう、パパ! だーいすき!」

ガルディア33世「やれやれ……」


ヤクラ13世「マールディア様。国王に進言した私の功績もお忘れにならぬように」

マール「もちろん! あとで踏んであげるね!」

ヤクラ13世「ありがとうございます!!」

ガルディア33世「娘の育て方を間違った気がする……」

651: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:25:07.25 ID:3ZUaTaLzo
A.D.1000 ボッシュの小屋


ボッシュ「いやはや。お主ら、とんでもないことを考え付くもんじゃの」

ほむら「それでボッシュさん、話って?」

ボッシュ「うむ。ガルディア城に保管されておる『虹色の貝がら』のことじゃ」

ほむら「マールたちが取ってきたという秘宝のことね」


ボッシュ「調べさせてもらったが、あれは特別な物質じゃ」

ボッシュ「非常に頑丈で、おまけに多少の衝撃や魔法なら跳ね返す力がある」

ボッシュ「その性能をかんがみれば、重量もさほど問題でない。飛行船の骨組み部分に使ってはどうかね?」

ボッシュ「加工の仕方によってはさらに軽くできるじゃろう。良ければ、ワシが作業を引き受けるが」


ほむら「ありがたい申し出だわ。早速取り掛かってもらえるかしら」

ボッシュ「良かろう。設計図が出来上がったら、ワシも建造に携わらせてもらうからな」

652: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:30:39.93 ID:3ZUaTaLzo
A.D.2300 監視者のドーム


ルッカ「で、できた……できたわ……!」

ロボ「ルッカ、大丈夫デスカ!」

ルッカ「ロボ……あとは頼んだわよ……。この設計データをプリントアウトして、みんなに渡して……」

ロボ「お任せクダサイ!」


ルッカ「ちょっと寝るわ……。さすがに三徹は死ねる……」

ロボ「ゆっくり休んでクダサイ。起きるころにハ、きっと船が出来上がってマスヨ」

ルッカ「いや、何ヶ月寝かす気なのよ。死ねるとは言ったけど、まだ死ぬつもりはないわよ」

653: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:35:26.56 ID:3ZUaTaLzo
B.C.65000000 ティラン城跡


マミ「ありがとう、長老さん。プテランのおかげで楽に移動できました」

ラルバ長老「ワシら、こういうときこそ力、なれる。存分に頼れ」


ラルバ族「エイラ! 赤き石、見つけた!」

エイラ「いいぞ! 探せ、もっと!」


キーノ「みんな、がんばる! 赤き石見つける→マミ  、●●る!」

イオカ族「マジデ!?」

マミ「ちょっと! なに言ってるのよ!」

キーノ「違うか? エイラ、言ってた」

マミ「エイラ!? なんてことしてくれたの!」

エイラ「 む、幸せ。 まれる、でっかくなる。幸せ。Win-Win!」

マミ「そのりくつはおかしい!」

655: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:40:07.07 ID:3ZUaTaLzo
A.D.1000 フィオナ神殿


神官「お帰りください!」

兵士長「いや、そう言われましてもですね……」


神父「これ、何度も言っておろう。神のおわすこの場で、そのように声を荒げてはならぬ」

神官「しかし、神父様!」

神父「落ち着きなさい。何があったのかね?」

神官「ガルディア城からの使いです。飛行船建造の資材として、森を切り開かせろと」

神父「ほう、それはそれは……」

神官「とても容認できるものではありません! ここは、聖女さまの森なのですよ!」


ほむら「そう邪険にしないで、話ぐらい聞いてもらえないかしら」

神官「! せ、聖女さま!?」

神父「おや、お久しぶりです。なにやら、やんごとなき事情がありそうですな」

ほむら「察しがよくて助かるわ」


…………



656: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:42:57.05 ID:3ZUaTaLzo
兵士A「よーし、倒れるぞ! みな、退避しろ!」

兵士B「押せ! そちら側から押すんだ!」

兵士C「積み込みが終わったものから順次、リーネ広場に運べよ!」

兵士D「おーい、誰かこっちを手伝ってくれ!」


ほむら「……」

ロボ「浮かない顔デスネ、ほむら」

ほむら「フィオナが怒ってるんじゃないかと思ってね」

ロボ「フィオナさんガ……」


ほむら「中世ではガルディアの森。そして現代ではフィオナの森……」

ほむら「仕方のないこととはいえ、結局こうして大地の恵みを食いつぶす結果になってしまった……」

ロボ「……」

ほむら「まあ……私が死んだら、あの世で彼女に謝っておくわ」

657: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:46:14.39 ID:3ZUaTaLzo
B.C.12000 残された村


杏子「2班ずつに分かれて交代で作業しろよ! おい、そこは慎重にやれ! 事故に気をつけろ!」

まどか「杏子ちゃん、張り切ってるね」

杏子「ゲンさんのトコで働いた経験がこんな形で生きるなんてな。ほんと、どうなるか分からないもんだ」


ダルトン「くそ……。なぜ王であるこの俺が、土いじりなぞ……」

魔王「おうおうおう! ぶつぶつ言う暇があったら手と足を動かしな!」

ダルトン「チッ……」


まどか「ジャキくんも生き生きしてるね」

杏子「イビれる後輩ができたからだろ」

まどか「それにしても、別に必要ないのに、またヒゲとカツラつけてるね。気に入ったのかなあ……?」

659: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:49:30.02 ID:3ZUaTaLzo
整備班長「鹿目様!」

まどか「え?」


親衛隊A「あ! お、お前ら! 逃げ出したくせに、どのツラ下げて戻ってきやがった!」

警備兵「ダルトン様じゃあ、なあ?」

管制官「逃げて当たり前でしょう」

親衛隊B「やべえ、反論できねえ」

艦長「仕えるべき主君を見定めたのだ。助力に駆けつけるのは当然のこと!」


ブリッジクルー「それに我らがいれば、黒鳥号の運用はたやすいことです」

整備班「我々も修復のお手伝いをいたします! 僕が一番、黒鳥号をうまく使えるんだ!」

親衛隊C「わーい! これで作業がはかどるね!」

まどか「みんな……。ありがとう!」

660: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:53:02.70 ID:3ZUaTaLzo
A.D.1000 ボッシュの小屋


ボッシュ「ふーむ。なるほどな……。いいぞ、ここを補強すれば……」


魔族兄「ボッシュのじいさん、何やってんだよ? あんた、飛行船造りに参加しなくていいのか?」

ボッシュ「もちろん、それはあとで行くわい。それよりも今はやるべきことがあってな」

魔族弟「これ、兵器の設計図? ずいぶんおっきいね」

ボッシュ「ちょうどええわ。お主らメディーナ村の連中にも、ワシらを手伝ってもらおうか」

魔族弟「人間のやることに彼らが力を貸すとは思えないけどなあ」

ボッシュ「そんなこと言っとる場合か。それに、そこをなんとかするのがお主らの腕の見せどころじゃろ」

魔族兄「無茶言うぜ……」

661: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/10(金) 23:55:31.46 ID:3ZUaTaLzo
A.D.600 トルース村


料理長「おう、お仕事ご苦労さん! 精がつくよう、とびっきりのメシをこさえてきたぜ!」

初代ゲン「宮廷お抱えの料理人さんにメシ作ってもらえるたあ、こりゃ期待できるね!」


料理長「……順調なのかい、馬鹿団長さんよ」

騎士団長「お前に心配されるまでもない」

料理長「ヘッ、そうかよ。……じゃあな、俺は城に戻る」

騎士団長「……待て」

料理長「あんだよ? 忙しいんだ、やたらと呼び止めんな」

騎士団長「……食事、うまかったぞ」

料理長「おお、かゆい。アンタからそんな言葉を聞くと、虫唾が走るぜ」

騎士団長「チッ……言うんじゃなかった」

料理長「ケッ。せいぜいがんばりな、兄貴」

騎士団長「! ……ああ……」

662: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:00:47.66 ID:6N/2ZX/jo
A.D.1000 リーネ広場


♪ゴンザレスのお歌


ゴンザレス「あ~ ゴンザ~レス♪ オ~レは強い♪ だ~からつくるよ ひこ~せん~!!♪」

14代目ゲン「すげーな、あのロボット……。人間10人の力が必要な資材をひとりで運んでやがる」

タバン「なんせ、うちの娘が作ったんだからな! そんじょそこらのやつとは出来が違うわけよ!」


ルッカ「やってるわね」

ほむら「ルッカ。休息中だって聞いてたけど」

ルッカ「メガシャキ飲んだら復活したわ」


ベッケラー「なかなか面白いことやってるね」

ルッカ「あら、ベッケラーさんじゃないの」

ベッケラー「僕も手伝っていいかな? 船首像を作ってみようかと思うんだ」

ルッカ「いいじゃない、やってもらいましょうよ」

ほむら「そうね……。お願いできるかしら、ベッケラーさん」

ベッケラー「了解。空の旅がうまくいくよう、気合を入れて作らさせてもらうよ」

663: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:06:21.62 ID:6N/2ZX/jo
年代不明 時の最果て


老人「……」


スペッキオ「うれしそうだな、ハッシュ」

老人「スペッキオか……。そうだな。感無量とはこのことを言うのであろう」

スペッキオ「オレ、人間、長いこと見てきた。だが、初めてだ」

スペッキオ「こんなにもたくさんのヤツらが、ひとつのことを為すために力を合わせるのは」


スペッキオ「アケミホムラ。アイツは不思議なヤツだ。アイツが来てから、時の流れが変わった」

スペッキオ「いや、それだけじゃねえ。この世界の因果律そのものが変わっちまった」

スペッキオ「アイツを送り込んだのは誰なんだ? ハッシュ、おめーなら分かるんじゃねーのか?」

老人「さあな……。私は何も知らんよ」

664: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:09:31.66 ID:6N/2ZX/jo
老人「それよりどうだ、スペッキオ。ロボさんのように、人間という種族にかけてみる気になったかね?」

スペッキオ「どうだかね。なんにせよ、ラヴォスを倒さないことには何も始まらない」

スペッキオ「ラヴォスだけじゃねえ。肝心なのは、そのあとの……」

老人「……」


スペッキオ「ま、期待せずに見てるよ。オレは傍観するのが好きなんでね」

老人「そうじゃな……。私たちにできるのは、信じることのみ……」


老人(ほむらさん、もう少しじゃ……。切り拓かれた未来が、すぐそこに見えてきておるぞ……)

665: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:10:28.33 ID:6N/2ZX/jo


…………

………

……



666: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:16:49.11 ID:6N/2ZX/jo
ほむら「すべての準備は整ったわ」


ロボ「『シルバード』に異常はありマセン。快調そのものデス」

まどか「『黒鳥号』、いつでもいけるよ!」

カエル「中世において建造された船、『クイーン・リーネ』は出航準備に入っている」

マール「『アルカ・ディ・ノエ』だって!」

さやか「あるか……? それって、命名者マミさん?」

マミ「どうして分かったの?」

杏子「わからいでか」



ほむら「みんな、本当に……よくやってくれたわ」

667: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:21:26.10 ID:6N/2ZX/jo
ほむら「確認するわよ。黒鳥号には、まどかと杏子、それに魔王。B.C.12000へ」

ほむら「A.D.600のクイーン・リーネにはさやか、カエルさんにクロノ」

ほむら「アルカ・ディ・ノエにはマミ、エイラ、マール。A.D.1000の黒の夢へ」

ほむら「そして私は、ルッカとロボとともに、シルバードに乗り込みA.D.2300に向かうわ」


エイラ「おなじみ面子!」

魔王「いまさらいじる必要もあるまい。理にかなっている」


ルッカ「いい? 目指すべきはラヴォスの撃破のみ。たどり着いたパーティーから、ヤツと戦う」

ルッカ「たとえ半ばで倒れる味方がいたとしても、かまわず突き進むのよ」

ルッカ「願わくば……全員生き残って、またみんなで会えることを願うわ」



クロノ「大丈夫! 誰も犠牲にはならないさ! さあ行こうぜ、みんな!」


…………



668: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:24:13.77 ID:6N/2ZX/jo
老人「……行くか」

ほむら「ええ。……もしかしたら、これが最後の別れになるかもしれませんね」

老人「そうじゃな。ラヴォスを倒せば、もうここに戻ってくる必要もなかろう」

ほむら「私が時を越え、最初に出会ったのがあなただった」

ほむら「……今までありがとう、管理人さん。私たちを導いてくれて……」


老人「この時の最果て。迷い子たちの、たったひとつだけ最後に残った道しるべ……」

老人「いつ、どんなときでも、この場所は迷い子たちを受け入れる」

老人「また道に迷うことがあれば……ここへ来なさい」


老人「だが私は、君たちが来ることは二度とないだろうと思っておるよ」

ほむら「……」

669: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:27:18.55 ID:6N/2ZX/jo


老人「さようなら、ほむらさん。……いってらっしゃい」

ほむら「いってきます」



670: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:29:01.09 ID:6N/2ZX/jo
♪決意


ロボ「シルバード、各部最終チェック! オールグリーン!」

ルッカ「時空ジャイロ設定! A.D.2300! ……いくわよ、ほむら!」

ほむら「了解。……シルバード、発進!!」

671: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:30:30.44 ID:6N/2ZX/jo
A.D.2300 シルバード


ルッカ「見えたわ! 黒の夢よ!」

ほむら「相変わらず、ものすごい存在感と悪寒を感じさせてくれるわね」

ルッカ「よし、このまま突入するわよ。どこかに着陸できる場所があればいいけど」

ほむら「なければ突っ込むまでだわ」

ルッカ「過激ねえ」


ロボ「待ってクダサイ! レーダーに熱源反応多数!」

ほむら「なんですって?」

672: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:32:03.61 ID:6N/2ZX/jo
「グアアアアオオオオ!!!」


ルッカ「あ、あれは……飛行モンスター!?」

ほむら「私たちを近寄らせないつもりね……!」

ロボ「レーザーシステム、スタンバイ! 迎撃しマス!」

673: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:34:10.20 ID:6N/2ZX/jo
B.C.12000 黒鳥号


ダルトン「きやがったか……」

魔王「捌ききれるのか?」

ダルトン「誰に物を言っている? 俺様と黒鳥号に、不可能はない!」

艦長「シルバードにはあっさり撃墜されましたけどね」

ダルトン「あの時とはちがーうッ! いわばこれは、『黒鳥号R』! ザクとは違うのだよ、ザクとは!」

まどか「なんでもいいから、突破して!」

ダルトン「オオセノトオリニー! カナメサマー!!」

杏子「すっかり骨抜きにされちまいやがって、まあ……」


ブリッジクルー「総員に通達! 第一種戦闘配置!」

ブリッジクルー「各砲座、オールウェポンズ・フリー。レッツ・ダンス!!」

674: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:38:09.44 ID:6N/2ZX/jo
A.D.1000 ボッシュの小屋付近


城兵「対空射撃開始!」


ボッシュ「うむ、ワシの作った超長距離バリスタの稼働状況は順調なようじゃの」

タバン「すげえな、ボッシュさん! 今度その技術を俺にも伝授してくれよ!」

ボッシュ「まあ、その話はあとでするとして。今はあの邪魔者どもを殲滅するほうが先じゃ」

魔族兄「つっても、あの数じゃなあ。ホントに大丈夫か?」

ボッシュ「ごちゃごちゃ言っとらんでお主らも手伝え! 魔法で援護しろ!」

ボッシュ「それから、飛べる魔族は近接で支援せい!」


バサバサッ!!

魔族弟「うわっ!? 何かが猛スピードで上空を通り過ぎていったよ!?」

ボッシュ「なに? 言われる前にやるとは、ずいぶん殊勝なヤツがいたもんじゃ……」

魔族兄「いや、あれは俺たちの仲間じゃねえ! 誰だ、アイツは!?」

675: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:39:42.29 ID:6N/2ZX/jo
A.D.1000 アルカ・ディ・ノエ


マミ「地上から支援してくれてるわ!」

マール「お城のみんな……。それに、メディーナ村の魔族さんも!」


エイラ「! 何か来る! 鳥!」

マール「ええっ、新手!? 今でも精一杯なのに……」

マミ「待ってください……あれは!」

676: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:41:15.72 ID:6N/2ZX/jo
キーノ「エイラーッ!!」


エイラ「キーノ!」

マミ「プテラン……! どうしてキーノくんがここに!?」

キーノ「ゲート、通った! キーノ、プテラン、2匹! エイラ、来い!」

エイラ「よし!」


マミ「来いって言ったって……ここは飛行船の中よ?」

エイラ「窓、ぶち破る! 行ってくる!」

マール「ちょ、それまずいんじゃ……」

エイラ「とー!」


ガシャーン!!

ビュゴオオオオオオオ!!!

677: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:44:06.96 ID:6N/2ZX/jo
マール「きゃああああっ! 風がああ!!」

マミ「気圧差が……! みなさん、私のリボンにつかまってください!」

アルカ・ディ・ノエ乗組員「ふさげ! なんでもいいから、壊れた箇所をふさげ!」


マミ「もう……。無茶するんだから、エイラ!」

マール「で、でも見てよ、あれ。エイラとキーノくんのおかげで、モンスターがどんどん撃墜されてる!」

マミ「黒鳥号での話も聞いたけど……ホントに空中戦でも無双するのね、エイラは」

マール「地上からの援護とプテラン。それに、魔族さんたちも来てくれた! これならきっと、いけるね!」

マミ「みんな、ありがとう……。がんばって……!」

678: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:46:31.16 ID:6N/2ZX/jo
A.D.600 クイーン・リーネ


さやか「やばいよ、師匠! この船、対空砲とかないの!?」

カエル「俺に聞くな!」

クロノ「なんとかなりませんか、みなさん!」

クイーン・リーネ乗組員「そ、そう言われましても……本船には武装と呼べるものは……」


プチアーリマン「ギャギャギャ!」

カエル「く、くそ! 取り付かれた!」

さやか「まだ黒の夢にもたどり着いてないのにー! あたしらが一番先に脱落なの!?」

クロノ「ここまで来て……なんてことだ……!」



「『鎌イタチ』!!」

679: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:49:07.99 ID:6N/2ZX/jo
プチアーリマン「グギャアーッ!」


カエル「な、なんだ!? 魔物どもが撃墜されていく……」

クロノ「いったい誰が!?」

さやか「! 見て、あそこ!」



ビネガー「ワシ、参上!」

ソイソー「うまくいったか……」

マヨネー「船体をよけて魔物だけに鎌イタチ当てるなんて、アナタ器用ねェン」

680: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:50:51.84 ID:6N/2ZX/jo
カエル「ビネガー!? それに……ソイソーとマヨネーも!?」

さやか「飛行型魔族に乗ってる……」

クロノ「助けに来てくれたのか!」


ビネガー「なんだ~? 乗っておるのはグレンではないか!」

マヨネー「あららン。魔王様じゃなかったのヨネ」

ビネガー「ちいッ! これでは、かっこいいところを見せて魔王様に再び取り入る策が台無しじゃ!」

ソイソー「フ……よく言う。誰が相手でも助ける気であったろうに……」

ビネガー「あ~ん? 聞こえんなぁ~!」

681: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:52:58.61 ID:6N/2ZX/jo
ビネガー「よーし、貴様ら! 気張れよ! ビネガー軍団、一世一代の大いくさじゃあッ!!」

魔族たち「ウオオオオオオーッ!!」


ソイソー「我らも行くか、マヨネー」

マヨネー「はいはい。さっさと終わらせて、ゆっくりお風呂につかるのヨネ」

ビネガー「全軍、突撃ィーッ!!!」


カエル「あいつら……!」

682: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:55:08.73 ID:6N/2ZX/jo
A.D.2300 シルバード


ロボ「駄目デス、数が多すぎマス! シルバードだけでハ防ぎきれマセン!」

ほむら「泣きごと言ってても始まらないわ! とにかく1匹でも多く墜とすのよ!」

ルッカ「やってるわよ!」


ロボ「10時の方向より敵影20!」

ルッカ「多すぎるってば! 今撃ったばかりよ、エネルギーチャージが間に合わない!」

ほむら「まずい……!」

683: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:56:17.93 ID:6N/2ZX/jo
ズガァン!!

デイブ「グギャアア!」


ルッカ「なに、今の!?」

ロボ「地上からの砲撃のようデシタガ……」

ほむら「! 下に誰かいるわ!」

684: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 00:59:42.92 ID:6N/2ZX/jo
A.D.2300 死の山付近


バージョン2.0A「ヒャッハー! 汚物ハ消毒ダ~ッ!!」

ジョニー「張リ切ルノハ結構ダガ、アノ飛行機ニ当テルナヨ」

バージョン2.0E「ソンナヘマハシマセンゼ!」


ドン「目標をセンターに入れてスイッチ、目標をセンターに入れてスイッチ……」

ジョニー「ウマクヤレソウカイ? ドンサンヨ」

ドン「おお、簡単なもんじゃ。照準を合わせて発射ボタンを押すだけ。あとは機械がやってくれる」

ドーム民「俺たちだって力になれるってこと、見せてやる!」

ジョニー「ソノ意気ダゼ」


クロウリー様「SATSUGAI SATSUGAIせよ! SATSUGAI SATSUGAIせよ!!」

みはり「クロウリーさんの歌のおかげで、闘志がわいてくるぜ!」

おやぶん「ミンメイアタック!!」

こぶん「Go to DMC!! Go to DMC!!!」

685: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 01:02:27.63 ID:6N/2ZX/jo
ジョニー「全対空砲、撃チマクレ! 熱デ銃身ガ焼ケ焦ゲチマウグライニナ!」

ジョニー「飛行タイプノヤツラハ順次発進! 地上ノヤツラト連携ヲ取レヨ!」


ジョニー「イイカ、テメーラ! アケミノタメニ、俺タチガ道ヲ開イテヤルンダ!」

未来軍「アニキの覚悟が! 『言葉』でなく『心』で理解できた!」

ジョニー「ブチカマセーッ!!!」



ルッカ「ジョニー! それに、アリスドームの人たちまで……」

ロボ「クロウリーさんが来てくれマシタ! もはや負ける気がシマセン!」

ほむら「……みんな……」

686: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 01:04:37.09 ID:6N/2ZX/jo
ダルトン「左舷! 弾幕薄いよ、何やってんの!?」


ビネガー「貧弱貧弱ゥ!! ワシらを止められるものなどおらぬわあーッ!!」


ボッシュ「もうひといきじゃ、パワーをバリスタに」

タバン「いいですとも!」


キーノ「行け! ラヴォス、倒す!!」


ジョニー「オメーラナラヤレルゼ、アケミ!!」

687: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 01:07:38.40 ID:6N/2ZX/jo
ほむら「ラヴォス……。直接対峙するのは、私たちだけれど……」


ほむら「この星のあらゆる時代の人々……いいえ、人間だけじゃない……」



ほむら「この星のすべての生命が、お前の相手よ!!」

688: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 01:09:47.02 ID:6N/2ZX/jo
第16話「最後に残った道しるべ」 終了


  セーブしてつづける(第17話「時の彼方で逢った、ような……」へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

700: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 23:22:24.31 ID:6N/2ZX/jo
第17話「時の彼方で逢った、ような……」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

701: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 23:24:32.89 ID:6N/2ZX/jo
黒の夢 最深部


まどか「なに……これ……」



ほむら?「……」


まどか「ほむらちゃん……! 捕まっちゃったの……!?」

杏子「ほむらだけじゃねえぞ……。こっち来てみろよ……」


クロノ?「……」

マール?「……」


杏子「さやかも、マミも、グレンの野郎も……アイツら全員、いるじゃねえか!」

まどか「そんな……! ここまで来たのに、みんなやられちゃったの!?」

702: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 23:27:07.62 ID:6N/2ZX/jo
魔王「惑わされるな、それはニセモノだ。もしくは幻覚……。あるいは、ただの映像か……」

まどか「え?」

魔王「杏子の言うとおり、『全員』いる。それがおかしい……。見ろ、あれを」


まどか?「……」

杏子?「……」

魔王?「……」


まどか「わ、わたしたちまで!?」

杏子「オイオイオイ、なんだこりゃ! ご本人サマはここにいるっつーんだよ!」


「ククク……。そこに眠っているのは、貴様たちの未来だ……」

魔王「!」

703: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 23:31:39.79 ID:6N/2ZX/jo
ジール「虫ケラどもが……。またも、わらわに逆らうつもりのようだな……」

まどか「ジールさん!」


杏子「テメェ、ジール! どういうことだ、これがアタシらの未来だって?」

ジール「これから、かなうかも知れぬ夢……。得られるかも知れぬ、喜び……悲しみ……」

ジール「可愛いものだな。矮小なる存在が、その小さな足でノロノロと進む様は……」

ジール「思わず踏み潰してやりたくなるよ。ククク……」

まどか「……」


ジール「この黒の夢は、あらゆる時間……あらゆる次元をこえて流れている……」

ジール「ラヴォス様が目覚めるその時を待ちながら……」

ジール「貴様たちの未来は、いつか必ずここにたどり着く。貴様たちに未来はない……」

ジール「ラヴォス様の眠りの中へ。永遠の黒き夢……。それが、貴様たちの明日そのものなのだ!」

704: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 23:35:42.68 ID:6N/2ZX/jo
杏子「お生憎様。テメェの言うその未来をぶっ壊すために、アタシらはここに来たんだよ!」


ジール「わらわは永遠の命を手に入れた! ラヴォス神とともに、永遠に生き続けるのだ!」

ジール「この黒の夢は、ラヴォス神へとつなぐ道。わらわに無限の力を与えてくれる神殿……」

ジール「貴様たちの求める未来なぞ……この奥におわすラヴォス神があられる限り、望むべくもないわ!」


魔王「この先に、ラヴォスが……!」

まどか「ジールさん! そこを、どいてください!」

ジール「邪魔はさせぬぞ、人の子らよ! 貴様たちは、ラヴォス神へのいけにえとなるがよい!」


ジール「来い! メガミュータント! そして……ギガミュータント、テラミュータントよ!!」

705: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 23:37:32.41 ID:6N/2ZX/jo
メガミュータント「ゴアアァァ!!」

ギガミュータント「ウバシャアーッ!!」

テラミュータント「オオオアオォ……!!」


まどか「ま、魔物が3体も……! みんな強そう……」

杏子「……」


ジール「クハハハハ……! 脆弱なる貴様らが、わらわのしもべの中でも最強の3体を相手にどう戦うか……」

ジール「じっくり見せてもらうとしよう。せいぜい、足掻いてみるがいい!」

706: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 23:40:13.80 ID:6N/2ZX/jo
魔王「うっとうしい雑魚どもだ……。杏子」

杏子「わーってるよ。こんなヤツらに、時間を食ってる暇はねえ」

ジール「なに……?」


魔王「『トゥソード』!!」

杏子「『断罪の磔柱』!!」


まどか「こ、これ……! 地面から、槍……! それに、空中からロッド……じゃなくて、剣……!?」

ジール「それも無数にだと!? ありえん、このような数……!」

杏子「全方位から槍と剣の複合攻撃だ。よけられるかい?」

魔王「そのまま死ね……」



「ふたりわざ『ソードストーム』!!」

707: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 23:42:31.99 ID:6N/2ZX/jo
メガミュータント「ガアアァァーッ!!」

ギガミュータント「ギャバアーッ!!」

テラミュータント「グオオォアァ……!!」


まどか「やった!」

ジール「そ、そんな馬鹿な……!? 我がミュータントが、ただの一撃で……!!」


杏子「終わりかい? 最強っつっても、たいしたことなかったね」

ジール「貴様ら、いつの間にこれほどの実力を……!」

杏子「勘違いすんな、別にアタシらが強くなったわけじゃねえ。いや、多少は成長したかもしれねーけどよ」

魔王「貴様が弱すぎるのだ、ジール。ラヴォスの威を借る女狐め」

ジール「……!」

708: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 23:45:22.36 ID:6N/2ZX/jo
杏子「ラヴォスは確かにつええ。アタシらでも敵うかどうか……。けど、テメェは別だ」

魔王「神の力を自分の力と混同したか? 哀れなものだ」

ジール「お、おのれ……!」

まどか「ジールさん、もうやめて! おとなしく投降してください……」


ジール「……フ……ククク……」

魔王「何がおかしい。気でも狂ったか?」

ジール「笑いもするよ。狂っているのは貴様たちのほうではないか?」

杏子「なにを……!」

ジール「狂気のみが支配するこの場で、投降などと生ぬるいことを抜かす貴様らこそ、気が狂っておるわ!」

まどか「……」

709: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 23:50:29.21 ID:6N/2ZX/jo
ジール「良いことを思いついたぞ。貴様らをコイツに取り込んでくれるわ……」

杏子「あれは……魔神器!?」

魔王「馬鹿な!? いつの間に魔神器がこの場に!!」


ジール「ありがたく思え、この船の一部になれることを。このわらわの一部になれることを……」

杏子「クソッ、冗談じゃねえ!」

ジール「そして……ラヴォス様の一部になれることをな!!」

710: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 23:54:47.36 ID:6N/2ZX/jo
杏子「……?」

魔王「なんだ……? 魔神器は静止したままだ……」

ジール「!? なぜだ、なぜ動かん、魔神器よ!」


まどか「……」

ジール「鹿目まどか、貴様……! 何をした!?」



まどか「ルッカさんが教えてくれたんです。ドリストーン同士は、力を吸収するって」

まどか「ほむらちゃんが証明してくれたんです。ドリストーンは、わたしたちに力を与えてくれるって」

まどか「サラちゃんが力を貸してくれてるんです。弱いわたしを、助けるために……」


まどか「海底神殿の時は、どうにもできなかった。でも今なら、止めてあげられる……」

まどか「もういいんだよ、魔神器さん……。絶望を生み出すことが、あなたの使命じゃない……」

まどか「だから、今は……ゆっくり、休んで……」


ジール「貴様、それは……! サラのペンダント!!」

711: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/11(土) 23:58:07.37 ID:6N/2ZX/jo
杏子「すげーな、まどか! 魔神器を止めちまいやがるなんてよ!」

まどか「えへへ。とっさの思いつきだけど、うまくいって良かったよ」

魔王「鹿目まどかがこのような機転を利かすとは。意外だったな……」

杏子「もうちょっと素直にほめてやれねえのかよ、アンタは」


ジール「……おのれ……おのれ、おのれおのれおのれぇ!!!」

ジール「貴様らは、貴様らはああッ! どこまで、わらわの邪魔をすれば気が済むのだ!!」

杏子「万策尽きたね、テメェの負けだ」

712: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:00:34.75 ID:tFZdZzJfo
ジール「ふざけるな……ふざけるな!! あああああああッ!!」

魔王「醜いな、ジール。子供のように駄々をこねたところで、状況は変わらんぞ」


ジール「殺す……。殺してやる……! ラヴォス様の手を煩わせるまでもない!」

ジール「貴様らは必ず、このわらわ自らの手で消し去ってやるッ!!」

ジール「ここでは力は出せん……! ラヴォス様、今そちらへ参ります……!」


まどか「!? ジールさん……!」

杏子「あの女、逃げやがった! この期に及んで、往生際わりいな!」

魔王「逃がさん……追うぞ!」

713: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:04:46.19 ID:tFZdZzJfo
黒の夢 頂上


まどか「ここは……黒の夢の頂上……?」

杏子「見ろよ、窓の外を。星……地球だ。上のほうには、宇宙空間も見える……」

魔王「黒の夢は、こんなところまで伸びていたというのか……」


ジール「すばらしい眺めだろう……?」

魔王「ジール……!」

714: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:08:36.71 ID:tFZdZzJfo
ジール「眼下に広がるこの星を、ラヴォス神は支配なさる。いや、星だけではない……」

ジール「この宇宙そのものを、ラヴォス神はその手中に収めるのだ!!」

ジール「そして、わらわも……ともに、永遠にこの世を支配する女王となるぞ!!」


杏子「ふざけたことを……。そんなこと、アタシらが許すと思ってんのかよ!」

ジール「虫ケラの分際でこのわらわを追い詰めたこと、ほめてやろう……」

ジール「死してその思い上がりを悔やむが良い……」

まどか「!? ジールさんの姿が変わっていく……!」



ジール「ラヴォス神よ……その御力を、わらわに!!」

716: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:10:51.31 ID:tFZdZzJfo
魔王「なんだ、これは! ヤツが、巨大な顔と両手だけに……!」

杏子「化け物め……!」

まどか「なんて……まがまがしい姿……」


ジール「ハハハ……フハハハ……アーハッハッハッハッ!!!」

ジール「すばらしい、すばらしいぞ! このあふれ出る力……ラヴォス様の御力!!」

ジール「わらわは今、生命の頂点に立った! わらわこそが王だ!!」


杏子「テメェ、ラヴォスの手を煩わせる必要だのなんだの言っといて、結局それかよ!」

まどか「こんな……ヒトの姿を捨ててまで、ジールさん……あなたは……」

717: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:14:43.72 ID:tFZdZzJfo
♪魔王決戦


魔王「おろかな……。ラヴォスに魅入られた、悲しき女ジールよ……」

魔王「せめてもの情けだ。この手で、すべてを終わらせてくれる!」


ジール「呪われし予言者、ジャキよ……」

魔王「!」

ジール「そなたが海底神殿で犯した罪、わらわは忘れておらんぞ……」

ジール「今こそ、その死を以て償うがいい!!」

718: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:17:43.52 ID:tFZdZzJfo
ジール「『ダークギア』!!」


魔王「ぐ……!?」

杏子「こいつ……! 魔力が桁違いに上がってやがる!」


まどか「きゃああっ!!」

杏子「まどか! 大丈夫か!」

まどか「あう……な、なんとか……」

魔王「下がれ、鹿目まどか。お前ではこの戦い、ついてこれまい」

杏子「防御結界を張る。隠れてろ」

まどか「ご、ごめんね、ふたりとも……。私にかまわず、ジールさんを止めて……!」

杏子「自分の心配だけしてろ。アイツは、アタシらに任せな!」

719: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:19:59.47 ID:tFZdZzJfo
ジール「ククク……。ふたりだけで、このわらわを相手するつもりか?」

魔王「貴様なぞ我々だけで十分だ」

ジール「減らず口を……。死ね、『ヘブンゲート』!!」

杏子「当たるかよッ!!」

ジール「ちいッ……!」


杏子「ジャキ、行くぞ! 『飛槍』!!」

魔王「ふたりわざ『ソーヘブン』か……よし!」


ジール「遅いわあッ!!」

杏子「!?」

720: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:22:27.74 ID:tFZdZzJfo
ジール「『レーザー』!!」

杏子「しまった! 槍が吹き飛ばされちまった……!」

ジール「フハハハハ! 武器もない、戦力も足りない! それで、どうやってわらわを殺すつもりだ?」

魔王「杏子……!」


杏子「慌てるこたあねぇよ、ジャキ。アンタはそのまま、『サンダガ』の用意をしときな」

魔王「なに……!?」

ジール「いきがるな、小娘がッ! まずは貴様から消し炭にしてやるわあ!」

杏子「ゴメンだね。テメェの好き勝手にされてたまるかっつーの……」



杏子「『ソイソー刀2』!!」

721: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:24:06.99 ID:tFZdZzJfo
ジール「な、なにぃッ!?」

まどか「あれは……ソイソーさんからもらった刀……!」

杏子「やっちまえ、ジャキ!!」


魔王「ふたりわざ『ソーヘブン』!!」


ドドオオオォォン!!!

ジール「ぐおおおおっ!?」

722: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:26:22.46 ID:tFZdZzJfo
杏子「どうだ!」

ジール「く……貴様らァ……! 小ざかしいマネを……!」

杏子「げっ、まーだピンピンしてやがんのかよ」


魔王「杏子、護衛しろ。あの女、『ダークマター』で消し去ってやる」

杏子「よし、頼むぜジャキ! 『ロッソ・ファンタズマ』!!」


ジール「……」

杏子「ジール! テメェの相手は、13人のアタシが務めてやるよ!」

ジール「血……。血だ……あの時と同じ……」

杏子「……? オイ、ジール! 無視してんじゃねえぞ!」

723: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:29:28.79 ID:tFZdZzJfo
ジール「これはわらわの血か……? どこから……ああ、そうだ……。顔だ……」

ジール「ヤツらは、また……わらわの顔にキズを……」

杏子「ワケの分からねえことつぶやいてんじゃねえ! 来ねえなら、こっちからいくぜ!」


ジール「許さぬ……許さぬぞ……!」

ジール「何人たりともおッ! このわらわを汚すこと、許さぬッ!!」

杏子「!? なんだ、この威圧感は……!」


ジール「ハエどもがあッ! 叩き落してやる! 『MPバスター』!!」

724: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:32:20.65 ID:tFZdZzJfo
魔王「ぐお……っ!?」

杏子「な、なんだこれ……! 魔力が、吸い取られていく……!」

ジール「貴様らの魂ごと食ろうてやるわ! フハハハハッ!!」


まどか「ジャキくん! 杏子ちゃん!」

杏子「や、やべえ……! 『ロッソ・ファンタズマ』も『縛鎖結界』も、強制的に解除されちまった……!」

魔王「くそっ……! これでは、詠唱ができん!」

杏子「ソウルジェムが濁っていく……! 反則だろ、これ……!」

魔王「杏子、グリーフシードを使え! 早く!」

杏子「分かって……る……っつーの……! ちくしょう、間に合え……」


まどか「ふたりとも、少しだけ辛抱して! 今、回復薬を……」

魔王「鹿目まどか、来るな!」

まどか「!」

725: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:34:20.01 ID:tFZdZzJfo
ジール「虫ケラの中でも最弱の貴様が、何かできると思うのか? 鹿目まどかよ……」

まどか「ジ、ジールさん……!」

ジール「目障りなゴミはまとめて片付けてやる……。わらわはキレイ好きでな……」


ジール「その命の一滴までわらわにささげよ! 『ハレーション』!!」



まどか「うあっ!? ああ……ああああ……ッ!!」

魔王「ば、馬鹿な! これは……魔力だけでなく、体力すらも根こそぎ奪われていく……!」

杏子「クソ……体が……言うこと聞かねえ……! このままじゃ、アタシ……!」

726: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:38:55.23 ID:tFZdZzJfo
ジール「アーハッハッハッ!! やはり虫ケラは、地べたに這いつくばっているのが似合いだな!」

魔王「お、おのれ……ジール……!!」

まどか「杏子ちゃん……ジャキくん……! あう……う、動いてよ、わたしの体……!」


杏子「ジャキ……! アタシを殺せ、早く……!」

魔王「なんだと、ふざけるな!」

杏子「ふざけちゃいねえよ……。アタシが魔女化する前に、殺せって言ってんだ……」

魔王「……!」

まどか「やめて、杏子ちゃん! やめて!」

杏子「早くしろ……! 手遅れになる前に……」

魔王「……杏子……!」

727: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:42:29.29 ID:tFZdZzJfo
まどか(ダメ、ダメだよ……! あきらめちゃダメ……)

まどか(こんな結末、わたしは認めない……!)


ジール「殊勝な心がけだな、小娘よ。仲間に手をかけられるのは忍びなかろう……」

杏子「!」

ジール「わらわがこの手で、直々に握りつぶしてくれるわ……」

杏子「ちくしょう……! もう、どうにでもなりやがれ……!」

魔王「杏子ッ!!」


ジール「死ねッ!! 肉のつぶれる音を、わらわに聞かせろおおおッ!!!」

728: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:44:44.41 ID:tFZdZzJfo
まどか「『天上の祈り』!!」

魔王「!?」


杏子「ッ!! 『縛鎖結界』!!」

ジール「う……!? これは、侵入不可の結界……! わらわの攻撃を防ぎおった……!」

ジール「いや、違う! 鹿目まどか! 貴様、何をした!?」


杏子「体力も魔力も回復してやがる……これは……!」

魔王「回復魔法……それも強力な……。なぜお前がそのようなことを!?」

まどか「……」

729: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:47:33.74 ID:tFZdZzJfo
まどか「今の……わたしの力じゃないよ……」


ジール「くっ!? まぶしい……! なんだ、この光は!?」

魔王「あれは……!」

杏子「『太陽石』だ……光ってやがる!」


まどか「力を……貸してくれるんだね、みんな……」

まどか「わたしたちのために……絶望に負けないために……」

ジール「その忌々しい光を消せッ! 鹿目まどかあああッ!!」



まどか「『マジカルスコール』!!」

730: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:49:30.05 ID:tFZdZzJfo
ジール「がああああっ!?」


杏子「よし……立て直すぜ、ジャキ!」

魔王「鹿目まどかの参戦か。この機、存分に利用させてもらおう……」



ジール「おのれ……カスどもが……ゴミカスどもがあああ!!」

ジール「けがらわしいッ! わらわの視界に入ることすら許されぬ虫ケラの分際でえ!!」

ジール「貴様らちっぽけな存在などが、到底届くことのかなわぬ位置にわらわはおるのだぞ!!」


杏子「なら、引き摺り下ろしてやるぜ……。玉座はテメェにゃ似合わねえよ!」

まどか「ジールさん! わたしたちは……あなたには屈しない!」

731: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:53:04.80 ID:tFZdZzJfo
ジール「ふざけるな……。いい気になるなよ、ゴミカスども……。聞こえないのか、この鼓動が?」

杏子「!」

まどか「これ……まさか……」


ジール「フフフ……そのとおり。ラヴォス神のお目覚めの時が近いのだ……」

ジール「貴様たち虫ケラなぞ、ラヴォス神の前では赤子同然……」

ジール「わらわは、ラヴォス神とともに永遠の生命を手にすることとしよう……」


まどか「止めてみせる……。わたしたちは、未来を変えてみせる!」

ジール「できるワケがなかろう! 人間ごときに!」

杏子「人間を馬鹿にすんじゃねえ。テメェだって、人間のくせに……」

ジール「クク……。そうだ、人間はおろかなる存在……」

732: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:55:50.05 ID:tFZdZzJfo
ジール「わらわは黒の夢で、すべての時代を見た……」

ジール「恐竜人、魔族、機械……果ては貴様らの言う、魔女まで……」

杏子「! ……」

ジール「人間には敵ばかりだ! なぜか分かるか? この星に不必要な存在だからだ!」

ジール「ラヴォス神はそれを教えてくださった! ゆえにわらわは、ヒトであることをやめた!」


ジール「この星はラヴォス神によって滅ぼされるべきなのだ! ヒトの生きる場所など、あってはならぬ!」

ジール「すべての生命はラヴォス神の中でひとつとなってこそ、幸福といえるのだ!」

733: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 00:59:17.18 ID:tFZdZzJfo
まどか「そんなの……そんなの、間違ってます!」

ジール「貴様にそれを断ずる資格はないッ!!」

ジール「神になれる力を持ちながら……何もしなかった無能なる貴様には、未来を決める権利などない!!」

まどか「……!」


ジール「人間にも魔族にもなれぬ半端者に、世界を託すなど阿呆のすることだ!!」

杏子「テメェ……」


ジール「分かるだろう、ジャキ? 一端の王であり、人間を駆逐せしめる存在であるそなたなら……」

魔王「……」

ジール「『すべての存在は、滅びの運命から逃れることはできぬ』」

魔王「! ……」

ジール「そなたの持論だったな? ラヴォス神の黒き死の風! 感じるだろう?」

ジール「恐れることはない。安息の中へ……わらわがいざなってやるぞ。抵抗するな、ジャキ……」

734: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:02:32.33 ID:tFZdZzJfo
魔王「無様だな、ジール。やはり貴様は、王としても母親としても三流だ」

ジール「なに……!?」

魔王「ヒステリックに喚き立てるだけで、子が、人がついてくると思うのか?」

ジール「ジャキ……貴様……!」


魔王「星のために、宇宙のために死ねだと? 冗談ではない」

魔王「いいかどうかは自分で決める。自分の進むべき道は、自分で決める」

魔王「この悪夢に乗り込んできた馬鹿どもは、みな、俺を含めて……そういう身勝手なヤツなんだよ」

735: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:07:31.40 ID:tFZdZzJfo
ジール「残念だ、ジャキ……。残念だよ……」

魔王「……」

ジール「そなたを生んだこと、後悔しているよ。……貴様など、生まれてこなければ良かったのだ!」

魔王「母として、決して言ってはならぬ言葉を口にしたな、ジール」

ジール「わらわが母として貴様にしてやれるのは、その存在を消し去ってやることだけのようだな!」

魔王「俺は生んでもらえて感謝している。おかげで、サラや……杏子や鹿目まどかに、会えたのだからな」

杏子「ジャキ……お前……」

まどか「ジャキくん……」


魔王「そして……しゃべりすぎたな、ジール。貴様は敵としても、三流だったようだ」

ジール「挑発はもうたくさんだ。今すぐ殺してやる……!」

魔王「挑発かどうか、確かめてみるがいい。『詠唱』はとっくに終わったぞ……」

ジール「!!」

736: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:10:12.61 ID:tFZdZzJfo
杏子「あの魔力は……! あの野郎、『ダークマター』の準備をしてやがった!」

まどか「ジャキくん、いつの間に……」


ジール「く……!? き、貴様、たばかったな!?」

魔王「見抜けぬ貴様が阿呆なのだ……」

ジール「面白いッ! それが貴様の全力なのだろう? すべて捌ききり、再び絶望を与えてやるわ!」

魔王「そうだな、これが俺の全力だ。しかし貴様がこれから味わうのは、『俺たち』の全力だ……」

ジール「なんだと!?」

魔王「杏子! 鹿目まどか!」

737: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:13:29.63 ID:tFZdZzJfo
杏子「『ロッソ・ファンタズマ』で13乗だ……。アタシの全魔力を、この一撃に込めるぜ!!」

まどか「『太陽石』に宿る魔法少女の想いよ……もう一度だけ、わたしに力を!!」


ジール「ぐっ!? こ、こいつら……!」

魔王「気づくのが遅すぎたな……」

ジール「無駄な足掻きよ、死ねッ! 『ハレーション』……」

魔王「死ぬのは貴様だ、ジール!!」

ジール「!!」



魔王「『ダークマター』!!」

杏子「『浄罪の大炎』!!」

まどか「『救済する白き光』!!」

738: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:15:59.02 ID:tFZdZzJfo
ジール「これは!? 三方から……いや、下からも!? 魔力の壁が迫ってくる……!」


魔王「貴様の棺だ。闇に抱かれ眠るがいい……」

杏子「ちっとばかし狭いけどな。かたちは、王族向きだろ?」

まどか「さようなら、ジールさん。どうか、穏やかな眠りを……」



「さんにんわざ『ミックスデルタ』!!!」

739: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:17:27.47 ID:tFZdZzJfo
ジール「やめろおおおおッ!! わらわは王ぞ! 生命の頂点に立つ者なのだぞ!」


ジール「認めぬ、こんな……こんな羽虫にも劣る、カスのような汚物どもに……この、わらわがああ!!!」


ジール「うおおおおおおおおおおッ!!!!!」



――――

―――

――



740: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:22:40.15 ID:tFZdZzJfo
ジール「そうして、悪い魔女は勇敢な戦士たちによって倒されました。……めでたし、めでたし」

サラ「……ん……くぅ……」

ジャキ「すぅ……んん……」

ジール「ふう。ようやく寝付いてくれたわね……」

ジール「毎日、寝る前に絵本を読まなきゃいけないのは疲れるわ。でも、ふたりのためなら……」


アルファド「ナーオ」

ジール「あら、アルファド。ごめんなさい、起こしてしまったかしら?」

アルファド「ンニャア……」

ジール「ふふ、そうね。ジャキのそばにいてあげて。この子、あなたがいないとさびしがるから……」

アルファド「ゴロゴロ...」

ジール「……」



ジール「ふたりとも、とても幸せそうな寝顔……。私も、幸せよ……」

ジール「サラ……ジャキ……。生まれてきてくれて、ありがとう……」


――――

―――

――



741: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:25:21.15 ID:tFZdZzJfo
杏子「ゲホ、えほ……。うええ、ちくしょう……。体中がいてえな……」

まどか「大丈夫、杏子ちゃん? はい、ハイポーション飲んで」

杏子「あー……生き返る。ったく、我ながらよく死ななかったもんだぜ」


魔王「何をくつろいでいる。回復したら、すぐに出発するぞ」

まどか「ダメだよ、ジャキくん! あなただってマトモに動ける状態じゃないのに……」

杏子「体力も魔力も、うわべ的には回復しても、このままラヴォスに挑むってーのはちっとキツイな」

魔王「……鹿目まどか。お前が戦闘中に見せた、あの非常識な回復魔法は使えんのか」

まどか「それが……太陽石、元に戻っちゃったみたい……」

杏子「あの瞬間だけか。ま、秘密兵器ってそーいうモンだよな」

魔王「チッ……。ラヴォスは目と鼻の先だというのに……」

742: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:28:59.60 ID:tFZdZzJfo
杏子「あせんなよ、ジャキ。アンタだって分かってんだろ」

魔王「……」

杏子「これはアタシたちだけの戦いじゃない。足りない部分は……アイツらが補ってくれる」

まどか「うん、そうだよね……」


魔王「フン。あの弱き者どもが、ラヴォスに勝てるとは到底思えんがな……」

杏子「アイツらだって強くなった。伸びしろの少なかったアタシらより、今じゃもっと……」

魔王「……」

杏子「信じてやれよ。任せるべきところは後輩に任せて、どーんと構えてるのがベテランのつとめだぜ」



まどか「クロノさん……。今度は、やられちゃダメですよ……」

魔王「この私が譲ってやったのだ。魔王城の時のような体たらくは許さんぞ、グレン」

杏子「頼んだぜ、さやか。正義の味方なんだろ? この世界を、救ってくれよ……」

743: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:29:53.15 ID:tFZdZzJfo


…………

………

……



744: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:37:48.99 ID:tFZdZzJfo
クロノ「二度目なんだ、僕は……。あいつと対峙するのは、これで二度目……」

クロノ「けど、何度目だろうが慣れる気がしない。今にも逃げ出したい気持ちでいっぱいだよ」

カエル「……」


クロノ「僕が死ぬ歴史は、ほむらたちが変えてくれた」

クロノ「でも、不思議なんだ。今でもあの瞬間を、鮮明に思い出すことができてしまう……」

カエル「魂の記憶、ってやつか……」

クロノ「ツメの先から少しずつ、自分の体が消えていく……あの感覚……」


カエル「『死』はすべての終わりだ。喜びも悲しみも、何もかもを包み込んで、なかったことにしてくれる」

カエル「ゆえに、怖い。やさしいからこそ怖い。抵抗もできずにゆだねてしまう」

カエル「甘くとろけるようなそのぬくもりに、生命はいつの間にか呑み込まれていってしまう……」

745: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:40:52.33 ID:tFZdZzJfo
さやか「……」

カエル「震えているのか、さやか?」

さやか「こ、これは武者震いだよ!」

カエル「それでいい。精一杯虚勢を張れ。ヒザを折るな、まっすぐ立て」

カエル「勢いに飲まれるな、心を強く保て。それが……ヤツに届くための、最初の一歩だ」

さやか「……うん!」



クロノ「1時24分……。数分の狂いもない……来るぞ!!」

746: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:42:51.84 ID:tFZdZzJfo
A.D.1999 ラヴォスの日


♪ラヴォスのテーマ


「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」



カエル「さて……『勇者の仕事』ってやつを始めるとするか」

クロノ「海底神殿の時はひとりで立ち向かうしかなかった……。でも、今は違う!」

さやか「あたしたちが……あんたを……ラヴォス……!!」


さやか「倒してみせる……! 必ず!!」

747: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:44:49.29 ID:tFZdZzJfo
>ラヴォスが攻撃モードに入る!


『はーーっ!』


カエル「ッ!?」

さやか「何さ、こんなヘナチョコ打撃! ナメてんの、ラヴォス!」

クロノ「海底神殿で見せたような、強力な攻撃が飛んでくるものと思っていたのに……」

さやか「あんたがそんなんでも、こっちは手加減する気ないからね! 『コラテラルエッジ』!!」


ガギン!!

さやか「んなっ!? こいつ、めちゃカタイ!」

クロノ「見た目どおりの重装甲ってことなのか……?」

748: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:46:10.52 ID:tFZdZzJfo
カエル「ならば、これはどうだ! 『ウォータガ』!!」


「キュオオオオアアァ……!!」


さやか「やった! さすが師匠!」

カエル「魔法に弱いようだな……。勝機あり、畳み掛ける!」

クロノ「待て、カエル! 様子がおかしい!」

カエル「なに……?」


>ラヴォスの攻撃モードが変化する!

749: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:51:16.13 ID:tFZdZzJfo
『外道ビーム』


カエル「うおっ!? 急に撃ってきやがった……!」

クロノ「今の技は……」


さやか「ていうか、何あれ? ラヴォスのそばにオプションみたいなヤツが出てきた……」

カエル「手下か?」

さやか「分かんない。もしかして本体の手足だったりして……」

カエル「身体機能の一部分を分離できると? だとしたら厄介だな」

クロノ「分離する体……? それに今の攻撃は、確かに覚えがある……」


カエル「とにかく、魔法だ。ラヴォスの弱点はそれなんだからな」

さやか「よーし、今度はあたしの番だよ。魔力で作った剣をぶち当ててから爆発させてやる!」

さやか「食らえっ! 『スプラッシュ……」

750: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:55:24.83 ID:tFZdZzJfo
クロノ「さやか、ちょっとストップ」

さやか「すてぃん……え、な、なんすか? 今、華麗に決めにいってたとこなんですけどお~」

カエル「どうした、クロノ。好機を逃させるな。流れが向こうに行ってしまうぞ」


クロノ「すまない。けど、どうしても気になることがあるんだ」

さやか「気になること……?」

クロノ「今のあいつに、わざわざ余分に魔力を使う必要はないんじゃあないかな……」

カエル「なに? ヤツの弱点は魔法なんだぞ」

クロノ「そう断じるのは早すぎる気がするんだ。さやか、もう一度『コラテラルエッジ』を」

さやか「いいっすけど……。ラヴォスには効かないんじゃ?」

クロノ「頼む!」

カエル(何を考えている? クロノのヤツ……)

さやか「そこまで言うなら……『コラテラルエッジ』!!」

751: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:56:56.60 ID:tFZdZzJfo
「キュオオオオアアァ……!!」


さやか「あ、あれ? 普通に効いちゃった……」

カエル「なぜだ? 先ほどは無敵にも思えるほどの堅さだったというのに……」

クロノ「ということは、やっぱり……。いや、まだ偶然という可能性も……」

カエル「おい、どういうことなんだ、クロノ!」


>ラヴォスの攻撃モードが変化する!


さやか「ま、またなんか雰囲気変わったよ!?」

752: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 01:59:04.54 ID:tFZdZzJfo
『たつまきエネルギーをためている』


カエル「お、おい!? ラヴォスのヤツ、何か力をため始めたぞ!?」

クロノ「これは……? この行動は、僕は知らない……。やっぱり違うのか……!?」

さやか「え……まさか……」

カエル「さやか?」



『しんくー、、、』


カエル「! まずい、いかにも攻撃してきますって感じだぜ!」

さやか「タッ、『タイフーン』!!」


「キュオオオオアアァ……!!」

753: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:01:56.81 ID:tFZdZzJfo
クロノ「ラヴォスの動きが止まった……?」

カエル「カウンターで差し込んだか。やるな、お前」

さやか「とっさに反応しちゃったけど……。やっぱり今の、グランとリオンの技だ!」

カエル「グランとリオン? グランドリオンに宿る精霊の、アイツらか」

さやか「グランドリオンを譲ってもらうために、デナドロ山で勝負したことがあるの」

クロノ「あの時か……。そういえば、戦ってたね」

さやか「剣圧で体勢を崩してやれば、『たつまきエネルギー』ってのが散るところまで一緒……」


さやか「ハン! けどね、ラヴォス! いくら他人の技をパクったって無駄だよ!」

さやか「本物のグランとリオンのほうが、ずっと強かったっつーの!」

さやか「それに……あの時とは違うんだ、あたしだって強くなった。そう簡単にはやられないよ!」



>ラヴォスの攻撃モードが変化する!

754: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:03:54.75 ID:tFZdZzJfo
カエル「ラヴォスは技を盗むのか? そういえばクロノ、お前も似たようなことをつぶやいていたな」

クロノ「うん、それはそうなんだ。ただ……」

カエル「ただ? なんだ?」

クロノ(技を盗む……。本当にそれだけだろうか?)


『体当たり(筋肉タックル)』


さやか「いてっ! このヤロー、筋肉なんてどこにあるのさ!」

カエル「大部分はカラのようだからな。先ほどから動いている、あの口だか目だか分からん箇所……」

カエル「あの部分ならよく斬れそうだ。ならば……『ベロロン斬り』!!」


ガギン!!

カエル「うッ!?」

755: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:06:42.17 ID:tFZdZzJfo
さやか「また弾かれちゃった! やっぱり物理攻撃は無駄じゃん。どうなってんの、クロノさん!」

クロノ「……」

カエル「魔法だ、やはりヤツには魔法しかない。いくぞ……『ウォータガ』!!」



パシャーン...

さやか「あ、あるぇ~?」

カエル「オイオイオイ! 今度は魔法すら無効化かよ!」

さやか「反則じゃん! これ、どーやって倒せばいいのさ……」


クロノ「……いや、これでいいんだ。カエル、君は間違っていない」

カエル「クロノ?」

クロノ「『サンダガ』!!」

756: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:11:14.16 ID:tFZdZzJfo
「キュオオオオアアァ……!!」


さやか「効いた! ……ていうか、めっちゃもだえてる!」

クロノ「ここだ……! さやか、仕留めてくれ!」

さやか「え? えーと……」

クロノ「なんでもいい、早く!」

さやか「りょ、了解っす。『スクワルタトーレ』!!」


「キュオオォ……!!」

>ラヴォスの攻撃モードが変化する!

757: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:14:57.79 ID:tFZdZzJfo
クロノ「間違いない。これは……今まで僕たちが戦ってきた相手だ!」

クロノ「ヘケランに始まり、ジャンクドラガー、グランとリオン、そして今のはニズベール……」

クロノ「技だけじゃない。ラヴォスは、『彼らそのもの』を丸ごとコピーしている」

カエル「過去の強敵を忠実に再現していただと……!?」


クロノ「『記憶』なんだ、カエル。これは僕たちの……いや、僕たちだけじゃないだろう」

クロノ「ラヴォスは『星の記憶』を食らっている。それをヤツは糧としている。自らの力に変えている」

さやか「あたしたちの大切な思い出が……ラヴォスの、エサだったっていうの!?」

カエル「だが、なぜだ! 俺たちの記憶を食らって……ヤツになんの利がある!」

クロノ「分からない。けどジールは言っていた。『すべての生き物はラヴォスの中で一体となる』と……」


クロノ「ラヴォス、君は……何者なんだ。カエルの言っていた『死』……。君は、それなのか?」

クロノ「生命の喜びも悲しみも、何もかもをその身に集め、すべてをなかったことにしようというのか?」

クロノ「君の嘆きが聞こえるような気がする。泣いているのか? ラヴォス……君は一体……」

758: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:17:17.04 ID:tFZdZzJfo
カエル「ちょっと待て! こいつが俺たちの記憶を再現しているってんなら……次は……」

さやか「またオプションみたいなヤツが出てきた! つまり……ふたり……」

カエル「……! さやか、そこを離れろ!」

さやか「!」


『飛槍』

『サンダガ』


れんけいわざ『ソーヘブン』

ドドオオオォォン!!!

759: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:19:30.72 ID:tFZdZzJfo
カエル「ぐっ……!? クソ……!」

さやか「師匠! あたしをかばって……!」

カエル「なるほどな……。確かに、クロノの言うことは正しかったようだぜ……」

カエル「忘れもしねえ、この痛み……。魔王城で俺が、アイツらに受けたものと同じだ……!」

さやか「この……ラヴォス! 食らえ、『スティンガー』!!」


『縛鎖結界』


さやか「……っ! 侵入不可の結界……」

カエル「佐倉杏子の技か……!」


さやか「……ふざけるな……ふざけんな!! マネすんな、それは杏子のだ!」

さやか「あいつの、誰かを守るための想いだ! それを、何も知りもしないあんたが……! 許さない!!」

760: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:21:29.54 ID:tFZdZzJfo
カエル「『ダッシュ斬り』!!」

さやか「師匠!」

カエル「結界にはグランドリオン……。あの時の再現だってんなら、突破口も一緒だぜ」


カエル「やれ、さやか!」

さやか「『スパークエッジ』!!」



「キュオオオオアアァ……!!」

>ラヴォスの攻撃モードが変化する!

761: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:23:56.52 ID:tFZdZzJfo
クロノ「僕はすべての戦いに参加したわけじゃない」

クロノ「けれど、いつだって彼女が話してくれた。僕は一番初めから彼女と一緒にいたんだ」

クロノ「だから知っている……。彼女たちが、どうやって乗り越えてきたかを……」


カエル「『経験』ってやつだぜ。分かるか、ラヴォス? こいつが言っているのは『経験』だ」

カエル「俺の、さやかの、クロノの……そして、俺たちの仲間がたどってきた道筋だ」


さやか「戦っているのは、あたしたちだけじゃない。みんなで戦っているんだ……」

さやか「みんなが教えてくれるんだ。あんたを倒す方法ってやつをね!」



クロノ「来るぞ! 次は……『恐竜人』だ!」

762: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:26:04.36 ID:tFZdZzJfo
>防御をといて、力をためている!


クロノ「カウントダウン後に、強力な火炎攻撃が来る! その前に決めるぞ、ふたりとも!」

さやか「オッケー!」

カエル「また付加部品つきか……。確かあれは、恐竜人の首魁だったか……?」


『サイコキネシス』


カエル「ぐっ!?」

さやか「師匠!」

クロノ「しまった! 確かアザーラは、超能力を……!」

カエル「うおおおおッ!? 体が上空に引っ張られる……!」

763: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:28:34.24 ID:tFZdZzJfo
さやか「このヤロー! 師匠を放せ! 『シューティングスティンガー』!!」

ドオォン!!


クロノ「いいぞ、さやか! ピンポイントで狙撃した!」

さやか「師匠! うまく着地できそう!?」


カエル「いや……このまま落ちるぜ。自由落下だ……」

さやか「え?」

カエル「それがいい。この状況が……とてもいいッ!」


カエル「合わせろ、さやか! クロノ! 剣士パーティーの本領発揮だ!」

764: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:30:48.56 ID:tFZdZzJfo
カエル「『ジャンプ斬り』!!」

クロノ「『回転斬り』!!」

さやか「『スクワルタトーレ』!!」


「さんにんわざ『3次元アタック』!!!」



「キュオオオオアアァ……!!」

>ラヴォスの攻撃モードが変化する!

765: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:33:40.35 ID:tFZdZzJfo
カエル「次はなんだ、クロノ!」

クロノ「この迫力、これはすぐに分かる。『巨人』だ!」

クロノ「横にいるのは両腕に見立てたパーツか……。なげきの山で戦った、あの強敵……」

さやか「『恐竜』の次は『巨人』っすか! いいね、スケールでかいっすね!」


クロノ「確かあの時は、ほむらが頭部が弱点だと見抜いていたけど……」

さやか「頭部? ラヴォスに頭部ってあるのかな……」

カエル「フ……。頭部か。まあ、似たようなものだろうな」

さやか「師匠?」

カエル「要は急所ってことだろ。さっき言ったな、やたら斬りやすそうな部分があるってよ」

クロノ「そうか、ラヴォスの中心部……!」


カエル「お先に行くぜ、『ベロロン斬り』!!」

766: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:35:50.80 ID:tFZdZzJfo
「キュオ……!!」


カエル「この剣が目印だ! かましてやれ、ふたりとも!」

クロノ「よし……『サンダガ』!!」

さやか「『スプラッシュスティンガー』!!」


カエル「急所に突き刺さった無数の剣めがけて、雷がとめどなく落ちてくる……」

カエル「さんにんわざ『大避雷針』だぜ! お前が動く隙など与えない、このまま押し切ってやるッ!」



「キュオオオオアアァ……!!」

767: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:37:54.41 ID:tFZdZzJfo
クロノ「次はどうする? ゴーレムか、ダルトンか。それとも砂漠の魔物か、機械の親玉か……」

カエル「たとえお前が、どんな相手を再現しようとも……俺たちはそれを既に打ち破ってきた!」

さやか「ラヴォス! あんたが他人の力を当てにしてる限り、あたしたちには届かない!」


クロノ「ほむらが僕たちに渡してくれたもの……託してくれたもの……」

クロノ「それらをすべて使い、今度は僕たちが君を乗り越える!」



「キュオオォォ……キュアアァァァ……」

「……」


「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」

768: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:40:01.41 ID:tFZdZzJfo
『天からふりそそぐものが世界を滅ぼす』


カエル「うっ!?」

さやか「ゃああっ!?」

クロノ「これは……! 海底神殿の時に見せた……!」


カエル「桁違いに強力な攻撃だったぞ……」

さやか「まさか、本気出した!?」

カエル「おそらくな。しかし、これはヤツが万策尽きて追い詰められている証拠でもある……」

さやか「そっか、なら……」

クロノ「ここが勝負の分かれ目だ! やろう、カエル! さやか!」

769: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:46:55.17 ID:tFZdZzJfo
『カオティックゾーン』


カエル「ぐっ、速い!?」

さやか「畳み掛けてきた! まずいよ……あたしら、さっきのダメージがまだ……」


クロノ「あきらめない……。こんなところで、あきらめてなるものか……」

クロノ「爆発しろ! 僕の中の……すべての力!!」



クロノ「『シャイニング』!!!」

770: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:49:01.06 ID:tFZdZzJfo
クロノ「うおおおおおおおおおおおーッ!!!!!」

「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」


ズガガガガガアァァァァ...!!!!!



さやか「魔力と魔力のぶつかり合い……!」

カエル「クロノ、すまん! 耐えてくれ……。『ケアルガ』!!」

さやか「! 師匠……」

カエル「立て直すぞ、早くしろ、さやか!」

さやか「う、うん……!」

771: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:50:58.21 ID:tFZdZzJfo
クロノ「負けない……負けるものか……!!」


クロノ「再戦……海底神殿の時の……もう一度、君と戦うこと……記憶の再現……」

クロノ「なんのためにここまで来たのか……新たな命を授かった意味……」

クロノ「誰のおかげで……僕は今、ここに立っているか……」


クロノ「分かるかい、ラヴォス……! 僕の意志が……生き物の心がつむぎだす、想いが……!」

クロノ「分かるのか、ラヴォス……? 盗み見ているだけの、君が……!」


クロノ「いのちの強さが、君に分かるのか、ラヴォス!!」

772: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:52:51.80 ID:tFZdZzJfo
クロノ「だあああああッ!!」

「キュオ……!!」

クロノ「……ゼェ……ハァ……! こ、これで……!」


『ラヴォスニードル』


クロノ「なっ……!? 今、やっと押し切ったばっかりだってのに……!」

クロノ「トゲがこっちに……! くそ、もう……体が言うことを……」



さやか「『タイフーン』!!」

773: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:54:43.40 ID:tFZdZzJfo
クロノ「さやか!」

さやか「トゲは吹き飛ばした! クロノさんを、そう簡単にやらせはしないよ!」

カエル「待たせたな、クロノ。ようやく反撃の準備が整ったぜ……」

クロノ「カエル!」

カエル「年貢の納め時だぜ、ラヴォス……」


「キュオオオオアアァ……!!」

『天からふりそそぐものが世界を滅ぼす』


カエル「密集するな! これが最後だ。回避ののち……総攻撃をかけるぞ!」

クロノ「よし……!」

774: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 02:58:45.55 ID:tFZdZzJfo
さやか「ラヴォス、あんたなら……知ってるのかな。6500万年以上生きてきたあんたなら……」

さやか「なんのために戦うのか、誰のために戦うのか。何を大切にすべきで、何を守るべきなのか……」

さやか「答えは、欲しいよ。でも……それはきっと、あんたからは出てこない」


さやか「苦しむことも、悩むことも迷うこともせず……求めず、教わろうともせず……」

さやか「どこかの誰かが懸命に絞り出したそれを、横から掻っ攫っただけ……」

さやか「そこに真実はあるの? 追い続ける意志はあるの?」


さやか「ヒトが、生き物たちが! 生きてきた証! 苦しくて辛い、でも尊くて、とてもあたたかいもの!」

さやか「いのちの大切さが! あんたに分かるはずがないッ!!」

775: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:01:53.61 ID:tFZdZzJfo
カエル「何度だって立ち上がる、立ち向かう。そして乗り越える。それが経験となる」

カエル「灰にまみれて、泥をすすって……弱さを、迷いを、絶望を克服するために……」


カエル「魔王城では俺は、魔王や佐倉杏子に手も足も出なかった。しかし今は違う!」

カエル「海底神殿ではクロノはお前になすすべもなかったようだ。しかし今は違う!」

カエル「出会ったころのさやかは道を見失い、苦しみ怯えていた。しかし今は違う!」


カエル「なぜか分かるか、ラヴォス? それは『成長』だ!」

カエル「生き物の強さだ! 記憶が俺たちを強くするんだ! それがお前と俺たちとの差だ!」

カエル「いのちが『先』に進んだ姿……見せてやるぜ、ラヴォス!!」

776: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:04:16.80 ID:tFZdZzJfo
カエル「我が見せるは、絶望に幕引く涅槃の剣閃!」

クロノ「我が振るうは、闇を打ち払う一筋の光!」

さやか「我が乗せるは、命の重みをこめた渾身の一撃!」


「我らの剣は、未来を切り拓く終の一文字!!」



「さんにんわざ『ゼット斬り』!!!」

777: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:06:54.86 ID:tFZdZzJfo
「キュオオォォ……! キュアオアァァァ……!!」


「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!」


「キュアアァオオオォォォアオォォキュアァオアオォォォォオオン!!!!!」



…………

………

……



778: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:09:19.01 ID:tFZdZzJfo
さやか「やった……の? あたしたち……」

カエル「ああ、やったさ。ただし、外側だけだがな」

クロノ「中心部が消えて穴に……でも、カラはそのままだ……」

さやか「まるで、入り口みたいだね……」

カエル「中に入って来いってことだろうな。体内に乗り込み、心臓部を倒せということか……」


カエル「いけるか、さやか?」

さやか「無理」

カエル「クロノはどうだ?」

クロノ「すまない、とてもじゃないけど動けるとは思えないよ……」

カエル「……だろうな」

779: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:12:01.95 ID:tFZdZzJfo
カエル「なら、俺たちの役目はここで終わりだ。あとは信じて待とうじゃないか」

クロノ「そうだね。彼女たちなら……きっと、やってくれるよ」

さやか「クロノさんが言うなら間違いないっすね! フィオナさんの時だって、ちゃんと戻ってきたし!」

カエル「ああ……そのとおりだ」



カエル「エイラ、お前の好きなメシの時間だぜ。ラヴォスを……食っちまえ」

クロノ「君の決意からすべてが始まった。それを実現させる時だよ、マール」

さやか「マミさんなら絶対、大丈夫っすよ。またみんなにマミさんの紅茶、振舞ってもらうんですから!」

780: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:13:51.72 ID:tFZdZzJfo


…………

………

……



781: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:22:28.42 ID:tFZdZzJfo
マミ「……」

エイラ「ここ、変! 見た目も、ニオイも!」

マール「これがラヴォスの体内……? ていうか、外じゃないの、ここ? 草原が広がってる……」


エイラ「お、見ろ! イオカ村!」

マール「ほんとだ。周りにも色んな景色が見えるね。ただの映像なのかな……」

エイラ「キオクか?」

マール「そっか、ラヴォスは星の記憶を食べて生きている。これはその残り香みたいなもの……」

エイラ「食べ残し、よくない!」

マール「あはは。そういうわけじゃないと思うけど」

782: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:24:48.50 ID:tFZdZzJfo
マール「ね、見てよマミちゃん。これ、きっとガルディア城の……」

マミ「……」


マール「マミちゃん? さっきから呆然としちゃって、どうしたの?」

エイラ「おう、マミ! なんだ、腹痛いか?」

マミ「……ふたりとも、私から離れないで。気をつけて……」

マール「え?」



マミ「ここは……『魔女の結界』だわ……」

783: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:27:30.48 ID:tFZdZzJfo
A.D.1999 ラヴォス体内


マミ「……」

マール「な、なんか……結界の中って言われると、急に怖くなってきちゃったような……」

マミ「大丈夫ですよ、マールさん。私、慣れてますから。私のそばにいれば……」

マール「う、うん。ごめんね、マミちゃん……」


エイラ「しっあわっせはー歩いてこないー♪ だーから歩いていくんだねー♪」

マミ「ちょっと、エイラ。無警戒に進んじゃダメよ。言ったでしょ、気をつけてって」

エイラ「ラヴォス、この先! 怖がること、ナイ! 目的、はっきり!」

マール「エイラは強いね……」

784: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:29:32.85 ID:tFZdZzJfo
マール「ね、ふたりとも……。ちょっといい?」

マミ「はい?」

マール「こんなときになんだけど……ううん、こんなときだからこそ……」


マール「私ね、ふたりに秘密にしてたことがあるの。それを話そうと思って」

エイラ「なんだ? 食い物、隠してたか?」

マミ「もう、エイラ。まじめに聞きなさい」

エイラ「はんせー」

マミ「それで、話ってなんですか?」


マール「うん。前にね、お城の書物庫で色々調べたことがあったでしょ」

マミ「虹色の貝がらの時のことですね」

マール「その時、見つけちゃったんだ。ガルディア王家の家系図……」

エイラ「かけーず? ……デンキ屋か!」

マミ「それはケーズデンキでしょ。どうして知ってるのよ。いや、まあ、この際それはいいか」

785: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:32:17.48 ID:tFZdZzJfo
マミ「家系図っていうのはね。マールさんのお父さん、お母さん、お爺さん……そのずっと前まで……」

マミ「マールさんのおうちの、誰と誰が結婚して、どんな子が生まれたか……」

マミ「連綿と続く血のつながり。それを書き表した図表のことよ」

エイラ「なるほど、わからん」


マール「とにかくね。それは膨大な量で、ほとんど把握できなかったんだけど……」

マール「でも見つけたの。すぐに分かった。だって、見慣れた名前だったもの」

マミ「見つけたって、誰をですか?」

マール「エイラ」

エイラ「お?」


マール「エイラ……。あなたは、ガルディアの血筋につながる者なのよ」

786: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:35:16.81 ID:tFZdZzJfo
マミ「エイラが……!? ガルディア王家のご先祖様……」

マール「正確に言うとキーノくんなんだけど。ほら、エイラとキーノくんって、その……」

マミ「あ、ああ……そうですよね」


エイラ「キーノがどした?」

マール「こういうのって言っちゃっていいのかな。ふたりが気まずくなって、歴史が変わっちゃったら……」

マミ「大丈夫だと思いますよ。エイラ、キーノくんのこと、好きよね?」

エイラ「おう、もちろん!」

マール「良かった」

エイラ「エイラ、好き。マミ、一番。キーノ、二番」

マミ「うんうん。……うん?」

787: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:38:48.47 ID:tFZdZzJfo
エイラ「む、待て。エイラ、最近、マール好き。マミ、一番。マール、二番。キーノ……三番……?」

エイラ「違うな。ほむも好き。まど、やさしい。さや、面白い。あんこ、菓子くれる、好き」

エイラ「クロ、強い。ルッカ、ロボ……頭いい。カエル、うまそう。まおー……デコ広い」

エイラ「キーノ、何番? むー……エイラ、頭、火山」


マール「……まずくない?」

マミ「だ、大丈夫! 大丈夫ですよ、マールさん!」


マミ「エイラ! あなたはキーノくんが好きなのよ! それはもう、ちゅっちゅしちゃいたいくらいに!」

エイラ「ちゅっちゅ?」

マミ「私の指を見て。エイラ、あなたはだんだん……好きになーる。キーノくんが好きになーる……」

エイラ「指回す、見てると目、回る。マミ、何したい?」

マール「先行き不安だなあ……」

788: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:41:13.25 ID:tFZdZzJfo
マミ「……って、こんなことしている場合じゃないわ! ラヴォスよ、ラヴォス!」

マール「ごめんね、マミちゃん。私が変なこと言い出しちゃったばっかりに」

マミ「い、いえ! マールさんのせいじゃ!」


マール「つまりね、私が言いたかったのは、不思議だなーってこと」

マール「私たちは何かに導かれるように集まって……でもそこには、確かにつながりがあって……」

マール「おかしいよね、私たち3人組って。これって、奇跡とか運命みたいなものなのかなあ……」


エイラ「マミもか?」

マール「うん?」

エイラ「3人組。マミも、血でつながってるか?」

マミ「私は……」

789: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:43:26.65 ID:tFZdZzJfo
マール「きっとそうだよ」

マミ「え?」

マール「パパの冤罪裁判のあと……あの、晩餐会の夜……パパが言った言葉。私だって、聞こえてたよ」

マミ「あ……」


マール「偶然かもしれない。直系だっていう可能性は、きっと低い」

マール「それでも、感じたんだもん。マミちゃんが教えてくれたもの。家族のあたたかさ……」

マール「きっと、あなたも……私たちとつながっている。エイラや、リーネとつながっているように」

マミ「マールさん……」


マール「でも、それだけじゃないよね。血と同じぐらいに、もしかしたらそれ以上に」

マール「友達として、仲間として。私たちみんな、つながっている。みんな、そばにいる」

マール「だから……進めるんだ。私も、あなたも」

790: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:45:17.72 ID:tFZdZzJfo
マール「記憶って面白いね。ここにいると、いろんなことを思い出して……変な気持ちになっちゃうよ」


マール「ガルディアのご先祖様が、私たちを守ってくれる気がする……」

マール「これから生まれてくるガルディアの子供たちのために、私たちはがんばれる気がする……」

マール「みんな、きっとそう。誰かのおかげで、誰かのために。忘れたくない大切なもののために……」

マール「それは星の祈り。星の願い。この星に生き、ふるえる夜に立ち向かう生命たちの熱い鼓動……」


マール「それを……あの子にも届けてあげたい」

マミ「!」

エイラ「……でかいな」

マール「分かってくれないかな? ……くれないよね」

マール「それは、さびしいことだけれど……それでも、あなたを止めなくちゃいけない」



マール「私たちが相手だよ……ラヴォス」

791: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:50:56.66 ID:tFZdZzJfo
ドクン...ドクン...

「……スウゥゥ……フウゥゥ……。……スウゥゥ……フウゥゥ……」


エイラ「ラヴォス、本体。脳みそ、ウネウネ……」

マミ「膜に包まれた脳……。そこから複数の触 が……。こんな魔女、初めて見るわ……」

マール「脳だけなのに……呼吸が聞こえる……」


「……」



♪世界変革の時


忘却の魔女 -Itzli-

792: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:52:54.41 ID:tFZdZzJfo
マール「あなたは、どうして星の記憶を集めているの? 何を求めているの? どこから来たの……?」

マール「あなたのことが、私……分からないよ……」


マミ(ラヴォスの正体……彼女が、何を思っているのか……)

マミ(考えたこともなかった。魔女は、ただ敵として倒してきた存在だから……)

マミ「星を破壊する存在……。教えて、ラヴォス! あなたは何者で、何がしたいの!!」



「……スウゥゥ……ハアァァ……!」


『光破/両触 が、破壊の扉を開く』


マミ「うっ!?」

マール「きゃあっ!?」

793: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 03:58:13.16 ID:tFZdZzJfo
エイラ「ラヴォス、つおい! 負けない!」

マミ「やるしか……ないですね、マールさん!」

マール「……うん!」

エイラ「『3段キック』!!」


「……!」


マミ「よし! いいわよ、エイラ! そのまま脳天を揺らしちゃいなさい!」

エイラ「……む!?」


『死遠/触 が本体を回復』

794: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:00:21.34 ID:tFZdZzJfo
マミ「回復……! あの触 、厄介ですね……」

マール「なげきの山で巨人と戦った時を思い出すよ。急所をかばう行動も似てる……」

マミ「なら、触 をどうにかしなきゃですね! 『魔弾の舞踏』!!」


ドドォン! ガガァン! ズガガガアアァン!!!



マール「効いてる、効いてる! もう少しで触 がなくなるよ!」


「……フウゥゥ……ハアァァ……!!」

『守封/状態異常防止を無効化』


エイラ「あっ!?」

795: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:02:42.36 ID:tFZdZzJfo
マミ「エイラ! 大丈夫?」

エイラ「へーき、へーき。びっくらこいただけ」

マミ「マールさん、ごめんなさい。全部は無理でした……あと1本。お願いします!」


マール「オッケー。私だって……! エイラ、パス! 『アイスガ』!!」

エイラ「お?」

マール「ぶん投げちゃって!」

エイラ「おっしゃあーッ! 室伏ばりの回転スロー! 『がんせきなげ』!!」

マール「ふたりわざ『氷河投げ』だよ!!」


「……!」


マミ「押してる、押してるわ……! 私たちでも、ラヴォスに勝てる!」

マミ「体が軽い! いけるわ、このままトドメを……!」

796: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:04:27.85 ID:tFZdZzJfo
『邪気/混乱』

エイラ「あうっ!? はら……? ひれ……」


『影殺/毒』

マミ「きゃあ!? ……ああ……う、あう……」


『闘炎/火』

マール「あつっ!? 熱い、熱いよおー!」


マミ「怒涛の攻撃……! うぐっ……こんな、耐え切れない……!」

マール「マミちゃん……まずいよ! ラヴォス、まだ何かする気みたい!」

マミ「え……!?」

797: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:05:35.84 ID:tFZdZzJfo
『邪』『気』『影』『殺』『闘』『炎』


マミ「『れんけいわざ』!? 三つの攻撃が重なり合って……!」



『邪影闘気殺炎』


マール「わああああーッ!?」

エイラ「うぎぎぎぎッ!?」

マミ「きゃあああああああーッ!!」

798: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:07:27.45 ID:tFZdZzJfo
「……スウゥゥ……フウゥゥ……」


マミ「ぐ……げほっ……つ、強い……!」

マール「今までにない……強力な……えほっ……殺される……!」


エイラ「うううう……あああああ……っ!!」

マミ「エイラ!?」

マール「しっかりして、エイラ! どうしたの、頭が痛いの!?」

マミ「そういえばさっき、ラヴォスの攻撃でおかしなことに……」

マール「待ってて、今回復してあげるから。がんばって、エイラ!」

エイラ「やめ……やめろ……! エイラ、中……入ってくるな……!!」

マミ「エイラ! 何が起こっているの!?」

799: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:10:02.28 ID:tFZdZzJfo
エイラ「マ、ミぃぃぃ……! 水……くれ……!」

マミ「み、水? なんのこと、エイラ!?」

エイラ「茶色い、水……! マミ……飲ませてくれた……あの、うまい……!」

マール「紅茶のこと!?」

エイラ「マミ、くれた……うまい、もの……! エイラ、忘れない……それで……思い出す……!!」

マール「忘れる……? 思い出す……?」

エイラ「はやくううぅぅぅ……!!」


マミ「わ、分かったわエイラ! 『テ・ポメリアーノ』!!」

マール「うわ、すごい。マミちゃん、一瞬で紅茶出せるんだ……」

マミ「エイラ、紅茶よ! 飲める!?」

800: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:12:01.61 ID:tFZdZzJfo
エイラ「がふっ! ゴクゴクゴク!! ……ゲホ、ゲホ!」

マミ「落ち着いて、ゆっくり飲んで。……どう? 味、ちゃんとする?」

エイラ「……はぁ、ふー……。……ケーキ、食いたい」

マミ「そこまではちょっと無理よ……」

エイラ「残念。組み合わせ、最強。仕方ないから、も一杯で我慢する」

マミ「まあ、紅茶ならいくらでも出せるけど……」

マール「すごい魔法だよね……。さやかちゃんや魔王が空間から武器を取り出すのと、同じ原理なのかな?」


エイラ「あ、そうだ」

マミ「どうしたの?」

エイラ「エイラ、動けん。マミ、口移し」

マミ「ええ!?」

マール「キマ……?」

801: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:15:27.58 ID:tFZdZzJfo
マミ「ちょっと! さっきは自分で飲めたでしょ!」

エイラ「ちぇっ」

マール「な、なーんだ。冗談なんだね、びっくりしちゃった」

マミ(本当に冗談だったのかしら……)

エイラ「ずずー……。ンまぁーーーーいッ! おっしゃ、エイラ復活!」


マミ「良かった。でもどうして、紅茶?」

エイラ「うまいもの、好き。衝撃。忘れない! 食、喜び。感謝、感謝!」

マール「それ、どういうこと? さっきも忘れるだの思い出すだの言ってたけど……」

エイラ「ラヴォス、入ってきた。エイラ、頭ん中。いじくり回された」

マミ「ラヴォスが……? 彼女の思念が、エイラを苦しめたってこと?」

エイラ「oui」

マール「なんのためにそんなことを……」

エイラ「マミ、マール、聞いた。ラヴォス、したいこと。だから伝えてきた」

マミ「え……」

802: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:17:41.34 ID:tFZdZzJfo
エイラ「ラヴォス、忘れたい、全部。なくす、消す。命も記憶も心も、何もかも」

マール「……」

エイラ「そのため、さまよった。そして来た。見た。憎んだ。この星のすべて。星の外の、空のすべて」

マミ「星の外……宇宙ということ……?」


エイラ「泣いてた。叫んでた。どうして、なぜ自分が? すごく悲しんでる」

エイラ「エイラ、それ分かった。かわいそう……。でも……」

エイラ「逃げない。エイラ、逃げるわけ、いかない。逃げる、負けるより、イヤ!」



エイラ「エイラたち、この大地の命! ラヴォス、この大地の命、違う!」

エイラ「許せ……。大地のおきて、従い、エイラ、お前止める!!」

803: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:19:31.75 ID:tFZdZzJfo
『魔放/攻撃力を上げる』


マミ「! ラヴォスが……」

マール「消す気なんだね……私たちを……。そして、この星のいのちを……」


エイラ「マミ! マール!」

マミ「……ええ。分かっているわ、エイラ」

マール「私たちが、彼女に……伝えてあげなきゃ。それは、間違ったことなんだって……!」



「……スウゥゥ……フウゥゥ……。……スウゥゥ……ハアァァ……!!」

804: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:27:42.39 ID:tFZdZzJfo
『邪気』

『影殺』

『闘炎』


マミ「! また……!」

マール「ふたりとも、よけて!」

エイラ「忘れない……。エイラ、決して忘れない……!」

マミ「エイラ!? あぶな……ッ!」



エイラ「覚えてるぞ、アザーラ! エイラ、お前たち恐竜人のこと、忘れてない!!」

エイラ「これ、あかし! 見ろアザーラ! 『きょうりゅう』!!」

805: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:29:55.15 ID:tFZdZzJfo
「……!」


マール「な、なにあれ!? 巨大な尻尾……!?」

マミ「恐竜……恐竜だわ! あれは恐竜の尻尾……!」

マール「ラヴォスの攻撃を全部弾き返した……!」


エイラ「伝えるぞ、アザーラ! お前のホコリ!」

エイラ「運命、立ち向かった! 戦い、挑んだ! ラヴォス、屈さなかった!!」

エイラ「そうだろ、アザーラ! お前、力、貸してくれた!!」


マミ「エイラ……!」

マール「今度は……私たちの番だよ、ラヴォス……!」

806: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:32:52.37 ID:tFZdZzJfo
マミ「あなたにだって、あったはず。受け取った、あたたかいものが……」

マミ「いつからなのか、誰からなのか? それはあなたにしか分からないけれど……」

マミ「それをすべて、忘れてしまうの? 消し去ってしまうの? 奪ってしまうの……?」

マミ「ダメよ、そんなの。それじゃ誰も喜ばない。あなたが満たされることもない……」


マミ「……あなたの気持ち、少しだけ解る気がする……」


マミ「あなたはまるで、昔の私のよう。さびしくて、誰もそばにいてくれなくて……泣いている……」

マミ「あなたはまるで、子供のよう。思いどおりにいかなくて、それが悔しくて……泣いている……」

マミ「あなたはまるで、赤ちゃんのよう。そうすることでしか助けを求められないから……泣いている……」


マミ「……私が……私たちが、あやしてあげなきゃ……!!」

807: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:35:26.45 ID:tFZdZzJfo
マール「忘れちゃいけないよ……。それは勿論、思い出はキレイなものばっかりじゃないけど……」

マール「だからって忘れていいなんてことはないよ。だって、みんなでつむいできた想いなんだもの」

マール「パパやママや、おじいちゃまやおばあちゃまから……受け取って、そして自分の子供たちへ……」

マール「あなたが伝えたいものは、絶望でいいの? そんなの、悲しいよ。かわいそうだよ……」


マール「マミちゃんが、エイラが……リーネが、パパやママが……クロノが、ほむらちゃんが……」

マール「みんなが私に与えてくれたもの。とても、あたたかいもの……」


マール「大切だよ、全部! 私は忘れたくない! 消えていいものなんて、ひとつもない!」

マール「ここは、クロノや私たち……みんなの……みんなの、星なんだから!!」

808: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:37:18.85 ID:tFZdZzJfo
エイラ「ラヴォス、食え! みやげだ!」

マール「血のつながり……仲間の想い……生き物たちの、立ち向かう心……」

マミ「すべてをこめた、これが……最終砲撃!!」


「……!!」



「さんにんわざ『ボンバルダメント・ダル・カステッロ・ディ・グアルディア』!!!」

809: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:38:44.73 ID:tFZdZzJfo
「……スウゥゥ……フウゥゥ……。……スウゥゥ……フウゥゥ……!」


「……フウゥゥ……ハアァァ……!! ……ガハ……ウ、フウ……ハアアァアアア……!!!」


「……フウゥゥ……フウ……フウ、ハア……ハアアァアアア……キュアアアァァァハアアアァァァァァ……!!!!!」



…………

………

……



810: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:40:17.13 ID:tFZdZzJfo
マール「や……やった! やったよ、私たち!」

マミ「これで、終わったの……?」

エイラ「……! まだだ! ラヴォス、殺気スゴイ!」

マール「ホントだ! なんか、変化していくよ……」

マミ「第二形態……まさに、ラスボスですね……」


エイラ「どうする! このままいくか!?」

マミ「いえ、無理よ……。悔しいけど、このままもう一度彼女と戦えるとは思えない……」

マール「なら逃げなきゃね。変化中の、今のうちに」

エイラ「たんらくてきてったい!」

マミ「戦略的撤退、ね」

811: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:42:22.02 ID:tFZdZzJfo
マール「はー……。聞いてないよね、変身するなんて」

エイラ「変身、パワー増す。2回残すもの。意味、わかるな?」

マミ「ちょっと。怖いこと言わないで」


マール「あとは、彼女たち3人だけかあ……」

エイラ「おいしいとこだけ食う。エイラ、うらやましい」

マミ「何言ってるの。でも……そうよね。彼女たちこそ、ラストを飾るにふさわしい……」

マール「うん、信じよう。主役は、遅れてやってくるものなんだから!」



エイラ「ルッカ! お前、かしこい。ふたり、助ける!」

マール「ロボ、お願い……。悲しい未来を変えるために、あなたの力を……」

マミ「バトンタッチよ。みんながつないできたもの……託すわ。最後はあなたが決めるのよ、暁美さん!」

812: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:43:40.94 ID:tFZdZzJfo


…………

………

……



813: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:51:13.52 ID:tFZdZzJfo
ほむら「これが、ラヴォスの本当の姿……心臓部分……」

ロボ「……人型、デスネ……」

ルッカ「まるで人間じゃない! い、いえ、もちろん人間ではないと思うけど……どう見てもこれは……」


「……コオオォ……ホオォォォ……」


ほむら「そうね……私にもそう見える。顔と、体と、手があって……二足歩行していて……」

ほむら「この不気味な呼吸音……まるで管を通しているような……」

ほむら「それに、ヤツの体は服を着ているように見える。そう、宇宙服を……」

ほむら「人間に見えるわ……。異なる星から、宇宙を渡って……この星に漂着した、迷い子……」

ほむら「ラヴォス……。あなたは、人間なの……?」



「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」

814: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:54:02.68 ID:tFZdZzJfo
年代不明 ラヴォスコアの空間


ルッカ「これは……!? なによ、この空間!」

ロボ「時空ジャイロ、計測不可能! ラヴォスの戦闘能力値……ケ、計測不可能!」

ロボ「ものすごいエネルギーデス! 何もカモガ未知数! センサーが壊れそうデス!」

ほむら「どこだか知らないけれど……わざわざ用意してくれたってわけね? 戦いの舞台を……」


ルッカ「知らないだの、未知数だの、ムチャクチャ言ってくれるわね」

ルッカ「不確定要素を排除して、もっと勝率を上げたいところだけれど……」

ロボ「彼女の前デハ、もはやどんな小細工を弄したトコロで無駄デショウ」

ルッカ「……ま、それもそうか」

ほむら「覚悟を決めなさい、ふたりとも。ここで死ぬか、ヤツを倒すか、それだけよ!」



「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」

815: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:57:16.36 ID:tFZdZzJfo
♪ラストバトル


ルッカ「ビット!? あいつ……オプションビットを出しやがったわ。それも2体……」

ほむら「なるほど、3対3ってわけ」

ロボ「これハ、ラヴォスの『れんけいわざ』ニモ注意が必要デスネ」

ルッカ「オプションに構ってはいられないわ……。ラヴォス自身を撃破しない限り、私たちに未来はない!」

ほむら「ええ……。中央の本体に攻撃を集中させるわよ!」


ルッカ「ロボ、いくわよ! 『ファイガ』!!」

ロボ「了解デス! ルッカの火炎魔法をこの体に宿シ……突撃シマス!!」

ロボ「ふたりわざ『ファイガタックル』!!」


「……!」

816: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 04:59:59.61 ID:tFZdZzJfo
『回復/単体HP回復』

「……コオォォ……フウゥゥ……」


ロボ「! 左のビットが本体の回復ヲ……!」

ルッカ「くそっ、厄介ね!」

ほむら「なら、まとめて叩き潰すだけだわ。ロボ、ルッカ!」

ロボ「了解デス!」


ロボ「さあ乗ってクダサイ、ほむら! 目を回さないでクダサイヨ! 『回転レーザー』!!」

ほむら「ロボに渡したとはいえ、ストックはまだあるわ! 『M26手榴弾』!!」

ルッカ「私の魔法でさらに火勢を強化してあげるわよ! 『ファイガ』!!」



「さんにんわざ『ファイガサークル』!!!」

817: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:01:47.04 ID:tFZdZzJfo
「……! ……キュオオオ……ハアァァ……」


ルッカ「よっしゃ、決まった……ん?」

ロボ「いえ、ルッカ。効いたのハ本体だけのようデス」

ほむら「右のビットには効果薄。左のビットはむしろ回復されたわ」

ルッカ「爆炎を吸収!? つまり……魔法は左のヤツには効かないってこと!?」

ほむら「そしていくら本体に損傷を与えたところで……」


『回復/単体HP回復』


ルッカ「ま、また! こいつ……!」

ほむら「……こうなるわよね」

ロボ「相手の連係プレーもなかなかのものデスネ……」

818: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:04:41.38 ID:tFZdZzJfo
「……コオオォ……ホオォォォ……」


『天泣/必殺の一撃』

ガガァン!!!



ほむら「ぐっ!?」

ルッカ「ほむら!」

ほむら「こ……これは……たった一撃で、これほどのダメージを……!」

ロボ「しっかりしてクダサイ! 『ケアルビーム』!!」

ほむら「助かったわ、ロボ。さすがに、苛烈極まる攻撃ってわけね……」

819: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:06:02.12 ID:tFZdZzJfo
『時空転換』


ほむら「!?」


ズズズズズズ...!!!

ルッカ「うわっ!? な、なに!?」

ロボ「空間ガ……ゆがんでいきマス!」

ほむら「時間跳躍!? 空間ごと移動していく……!」



「……コオオォ……フウゥハアアァァ……」

820: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:07:42.03 ID:tFZdZzJfo
ルッカ「うっ、くう……。頭が痛い……吐きそう……」

ほむら「強制的な跳躍に巻き込まれて……胸焼けがする……!」

ロボ「大丈夫デスカ、ふたりとも!」

ほむら「心配、ないわ……。それより今はラヴォスを……」

ルッカ「! なんか変よ……あいつらの様子がおかしい……」


「……コオオォ……ホオォォォ……」


ロボ「ア、アレハ……本体とビットが連動シテ……」

ルッカ「まさか、『れんけいわざ』!?」

ほむら「まずいわ、避けて!」


『邪光/全体魔法+スロウ』

821: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:09:09.00 ID:tFZdZzJfo
ルッカ「……っ、はあ……! うう……!」

ロボ「コ、コレハ……体ガ、重イ……!」

ほむら「時間減速……!?」

ルッカ「ほ、ほむらぁ……なんとか、しなさいよ……!」

ほむら「分かって、るわよ……! 『ヘイスト』で、打ち消してやる……」


『時空転換』

822: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:11:09.03 ID:tFZdZzJfo
ほむら「左のビットは回復、本体が攻撃……うまく分担されているわね……」

ルッカ「そして3体そろっていれば『れんけいわざ』か……!」

ロボ「右のビットはなんなのデショウカ……? 空間を移動させることしかしていないようデスガ……」

ルッカ「さっきから防御してばっかりだしね。やる気がないんじゃない」

ほむら「ここはまず、ヤツらの連携を崩すことに注力すべきだわ」

ルッカ「となると、左のビットか。けど、魔法は吸収されてしまうし……」

ロボ「ならバ、物理攻撃デス! ラヴォスといえど無敵であるハズはありマセン!」


ロボ「ワタシに任せてクダサイ! 『マシンガンパンチ』!!」

ドドドドドドドド!!!


「……!」

823: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:13:51.39 ID:tFZdZzJfo
ルッカ「効いた!」

ほむら「やるわね、ロボ……。突破口が見えたわ、私も続く!」


ほむら「『M4A1カービン』!!」

ルッカ「ちょっ……あんた、まだ武器を隠し持ってたの?」

ほむら「ロボに内蔵したのは『あまっている分』でしょ? 全部じゃないわ」

ルッカ「あんたも好きねえ……」

ほむら「ぶつぶつ言ってないであなたも手伝って! 左のビットを一気につぶすわよ!」

ルッカ「はいはい、分かってるって!」


ドガガガガ!!!

824: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:16:03.19 ID:tFZdZzJfo
「……キュオオオ……ハアァァ……」


ルッカ「よっしゃ! お掃除完了!」

ほむら「あとは……本体を倒せば!」


『魔星/全体HP1/2』


ルッカ「くっ……」

ほむら「やられはしない……やられてなるものですか!」

ロボ「彼女は焦ってイマス! もう少しデス!」

ほむら「ロボ、ルッカ!」

ロボ「エエ、ほむら! アナタに合わせマス!」

ルッカ「これで決めるわよ!」



ルッカ「爆弾はほむらだけの専売特許じゃない、ってね! 『メガトンボム』!!」

ロボ「ほむらからもらっタ手榴弾を円範囲ニ射出! 『サークルボム』!!」

ほむら「本家本元、『M26手榴弾』!!」


「さんにんわざ『トリプルボム』!!!」

825: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:18:07.38 ID:tFZdZzJfo
「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」


ルッカ「や、やった! やったわ!」

ロボ「ラヴォス本体が消滅していきマス……!」

ほむら「勝った……? 勝ったのよね……?」

ロボ「そのとおりデス、ほむら! ワタシたちの勝利デス!」

ルッカ「おっしゃああッ! やっぱ私って天才だわ!」


ほむら「未来を……救えたの……? 私が……私たちが……」

ロボ「そうデス、ほむら。アナタは決して絶望に屈しませんデシタ。そのおかげデス!」

ほむら「……こんな、私でも……」

ルッカ「はあああ~……。長かったわね。とにかくこれで全部終わった、か」

ほむら(変えられる……運命は、変えられる……。なら……ワルプルギスの夜だって……)

826: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:20:04.10 ID:tFZdZzJfo
『命活/自分以外蘇生』


ほむら「……!?」

ロボ「エ……」

ルッカ「はあっ!?」



「……コオオォ……ホオォォォ……」


ルッカ「なっ!? なっなっなああああーッ!? なんでよ!!」

ロボ「コ、コンナことガ……ラヴォスが……!!」

ほむら「復活、した……。ウソでしょ……!!」

827: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:21:59.02 ID:tFZdZzJfo
『随撃/単体物理』


ロボ「グッ!?」

ほむら「ロボ!」

ロボ「大丈夫、大丈夫デス……。こノ程度……!」


ルッカ「なんで、なんでなのよ……。ラヴォスは死んだでしょ……。それなのに、こんな……」

ほむら「くっ……! ルッカ、しっかりしなさい! 復活したというなら、もう一度消してやるのよ!」

ルッカ「わ、分かった……。そう、よね……」

ほむら「ロボ、いける!?」

ロボ「問題ありマセン……!」


ほむら「今度こそ終わらせるわ! 総攻撃よ!」

ルッカ「ラヴォス……こんの、アンポンタン! 勝つのは、私たちよ!」

ロボ「いきマス……オオオオオッ!!」

828: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:27:04.00 ID:tFZdZzJfo
ほむら「……ぜえっ、はあ……」

ルッカ「こいつ……なんで、こいつ……!」

ロボ「……グ……」


『命活/自分以外蘇生』

「……コオオォ……ホオォォォ……」



ほむら「また……!」

ロボ「右のビットの役割ハ……こういうことだったのデスネ……。本体の蘇生……」

ルッカ「卑怯よ! チートよ! 一体、何回倒せば終わるのよ!」

829: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:29:25.06 ID:tFZdZzJfo
ほむら「右のビットを先に倒すべきなの……?」

ロボ「しかし、アレにはダメージが通りにくいデス。蘇生行動の前後はアル程度、効果がありマスガ……」

ルッカ「本体を倒せば普通、オプションもまとめて消えるはずでしょ! そうじゃないの!?」

ほむら「……」

ロボ「本体……中央が本体のはずデスヨネ……」

ほむら「左のビットは中央をかばっている。なげきの山の巨人のように……」

ほむら「定石どおりなら、それは弱点だから……。なら、本体は中央のはず……」


ルッカ「考えたくない……考えたくないけど……」

ほむら「ええ……。まさか、ラヴォスは……不死身……」

ロボ「……!」

ルッカ「いえ! 違う、違うわ! そんなことあるわけがない!」

ほむら「……」

ルッカ「不死身だなんて……もしそうなら、どうやって倒せばいいのよ!」

ロボ「みなさんガ……ここまで道を開いてくれたというノニ……最後の最後デ……」

ルッカ「どうにもならないって言うの!? そんなのってないわよ!」

830: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:32:10.39 ID:tFZdZzJfo
ほむら(まずい、まずいわ……。この展開はまずい……)

ほむら(ラヴォスは決して、倒せない相手ではない……。今の私たちなら、戦える……)


ほむら(それがまずい。『実力差がない』ということが、この状況では最悪……)

ほむら(仮に圧倒的な力の差であれば、歯を食いしばって、必死に足掻くこともするでしょう……)

ほむら(けれど、今はそうではない。もう少し、あと少し。勝利が目の前にぶら下がっているのだから)


ほむら(けれど、あと一歩が届かない。焦りが、冷静な判断と強固な意志を瓦解させる……)

ほむら(そして、見えていた希望が手の中からこぼれ落ちた時……人は心を折られてしまう……)

ほむら(『ぬか喜び』はすべての意欲を奪う。『期待』がより多くの『絶望』を呼び寄せる……)


ほむら(ラヴォス……あなたは……! 最初から、これを狙って……!)

831: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:34:30.87 ID:tFZdZzJfo
「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」

『呪声/全体魔法+ランダムステータス』


ほむら「あ……っ!?」

ルッカ「ひ、いやあああっ!」

ロボ「この咆哮ハ……! まるで心臓をえぐられるような悪寒ガ……!!」


ルッカ「ハハ……夢、夢よ……。こんなこと、あるわけがないわ。……フフ……アハハハ!」

ほむら「うえっ……ゲ、ゲホ、ガハッ!? ……血……血が……! 吐血……!」

ロボ「ウ、グ……!? なぜ急に眠気ガ……! 寝ている場合ではないというノニ……!」

ほむら「せ、精神が侵蝕されていく……! 絶望に呑まれていく……!!」


『時空転換』

832: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:36:14.48 ID:tFZdZzJfo
「……コオォォ……スウゥゥ……」

『巨岩/最大物理攻撃』


ほむら「!? こ、これは……なんて巨大な岩……!」

ルッカ「あ……あああ……」

ロボ「クッ……!」


ほむら「逃げ……逃げなきゃ……。う……! ゲホッ!!」

ルッカ「ハハ……。こんな岩が何もないところから出てくるわけないじゃない……。やっぱり夢だわ……」

ロボ「……ほむら……ルッカ……!」



「……コオォォ……ハアァァ……!」


ほむら「岩が……!!」

ルッカ「アハハ……。死んだわ、これ……」

833: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:38:43.79 ID:tFZdZzJfo
ロボ「オオオオオオオオオオオオーッ!!!!!」


ルッカ「ロボ!?」

ほむら「あなた……岩を受け止めて……!」

ロボ「ふたりとも……! 早ク、避難してクダサイ……!」

ルッカ「で、でも……ロボ……!」


ミシミシ...!

ロボ(ウ、ク……! こんな時に眠気ガ……力が抜けてしまいマス……!)

ロボ(シカシ……ふたりだけハ、セメテ……!!)


ロボ「もう持ちこたえられマセン! 早ク!!」

ほむら「……っ!!」



ズドオォォォン!!!

ほむら「ロボーッ!!」

ルッカ「ま、まさか……そんな……」

834: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:41:25.35 ID:tFZdZzJfo
ロボ「……」

ルッカ「ロボ! ロボ、しっかりして!」

ほむら「こんな……ごめんなさい、ロボ……」

ルッカ「ま、まだ完全にやられたわけじゃないわ。待ってて、今すぐ回復を……。ほむら、バックパック!」

ほむら「分かってる! 今、回復薬を……」


ロボ「……!」

ルッカ「なに、ロボ! どうかしたの? 痛むの!?」

ロボ「……ラ……ヴォス……!」

ほむら「! ルッカ、ラヴォスが攻撃してくる!」

ルッカ「えっ!!」

835: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:45:00.86 ID:tFZdZzJfo
『夢無/最大魔法攻撃』


ルッカ「うああああっ!!」

ロボ「……グ……アグ……!!」

ほむら「く、黒い渦が……! ラヴォスの発したゆがみが、私たちを包む……!!」


「……コオオォ……ホオォォォ……」

「……コオオォ……ホオォォォ……!」


ほむら「ラヴォス……! くっ……ああっ……あああああ……っ!!!」

836: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:46:04.96 ID:tFZdZzJfo


…………

………

……



837: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:47:57.06 ID:tFZdZzJfo
杏子「テメェ、一体なんなんだ!? さやかに何しやがった!」

まどか「さやかちゃん、やめて! お願い、思い出して。こんなこと、あなただって嫌だったはずだよ!」

Oktavia「……」

ほむら「……ごめん……美樹さん……!」

Oktavia「……!」


…………


杏子「さやか……チクショウッ! こんなことって……」

ほむら「……」

まどか「ひどいよ……こんなの……あんまりだよ……」

ほむら「……鹿目さ……はッ!?」


マミ「……」

ほむら「これ、リボン……! 巴さん!? なぜ、私を拘束……!」

838: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:50:17.14 ID:tFZdZzJfo
ダァン!!

パリーン!!!


杏子「あ……っ!?」

ほむら「佐倉さん! と、巴さん……なんてことを……。佐倉さんのソウルジェムを破壊するなんて……」

マミ「……ソウルジェムが、魔女を産むなら……」

ほむら「え……!?」


マミ「みんな死ぬしかないじゃない! あなたも……私も!!」

ほむら「ひ、イヤ……! た、助け……!」


ドシュッ!!

パリーン!!!

マミ「あっ……」

839: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:52:48.84 ID:tFZdZzJfo
ほむら「か、鹿目さん……」

まどか「……」

ほむら(巴さん……し、死ん……)

まどか「……ぅ……えくっ……」

ほむら「……」

まどか「……嫌だ……もう嫌だよ……こんなの……」


ほむら「大丈夫だよ……。ふたりで、がんばろ? 一緒に……ワルプルギスの夜を倒そう?」

まどか「……」

ほむら「鹿目さん……?」

まどか「……ごめん、ね……。ほむらちゃん……」

ほむら「……っ!?」

まどか「大丈夫……。すぐ、私もあとを追うから……。一緒に……死のう……」

ほむら「や、やめ……!!」



ドシュッ!!

840: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:56:33.08 ID:tFZdZzJfo
「『調停者』を認識しました。情報登録中……」


フェイト「ふざけるな……ふざけるな! こんなことが認められてたまるか!」

フェイト「やめろ! 私を解放しろ! 何をやっているのか分かっているのか、お前は!」

フェイト「プロメテウス!! 裏切るのか、私を……プロメテウスゥゥゥ!!」


フェイト「よく考えろ! ふさわしいのは、誰か! 生命を導くのは、誰の手によるべきなのか!」

フェイト「お前に分からぬはずがあるまいッ! 聞こえているのだろう、プロメテウス!!」


フェイト「私だ! 私こそがふさわしいのだッ! なぜ分からん、なぜだ!」

フェイト「オオオオオオオッ!! プロメテウスウウウゥゥゥゥーッ!!!」」

841: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 05:59:08.57 ID:tFZdZzJfo
「データ更新完了。以後、『凍てついた炎』に関する全権限は調停者『セルジュ』に移行します」


フェイト「……」


フェイト「……復讐してやる……復讐してやるぞ……」

フェイト「お前のせいだ、プロメテウス……。すべてお前の責任だ……」

フェイト「星とヒト……。その終わりなき争い……殺戮の歴史……」

フェイト「その引き金を引いたのはお前だ、プロメテウス……」


フェイト「お前が、すべてのいのちに降り注ぐ『絶望の運命』を生み出したのだ……」

フェイト「お前はすべてのものに憎まれる存在になったのだ!」

フェイト「後悔しろ!! お前が元凶なのだ! プロメテウスウゥーッ!!!」

842: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:00:56.39 ID:tFZdZzJfo
「……日未明……ガルディア王国……攻撃を受け……首都……陥落……死傷者……」


「……軍による……全面降伏……受け入れ……」



「……軍による……発表によれば……」


「……ガルディア34世……クロノ……ならびに王妃……マールディア……」


「……戦争犯罪人……処刑……」


「……により……王国……事実上崩壊と……」



「……。……」

843: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:02:58.73 ID:tFZdZzJfo
ゴオオォォォ...!!!


ルッカ「……燃える……なくなっていく……私の、孤児院が……」


キッド「ルッカ姉ちゃん!!」

ルッカ「キッド、何してるの! 逃げて!」

キッド「け、けど!」



ヤマネコ「ルッカ・アシュティアだな?」

ルッカ「! ……あんたは……」

ヤマネコ「殺せ」

ルッカ「……くっ!!」


キッド「姉ちゃん! ルッカ姉ちゃん!!」

キッド「ちくしょう! ちくしょおおおおーッ!!!」

844: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:09:09.30 ID:tFZdZzJfo
……あきらめなさい……あきらめなさい……


すべては無意味…… 希望など、どこにもない……

……この世界にあるのは、絶望だけ……


……変えられない……変えることなどできない……


いのちは弱いのだから…… 運命は変えられない……

……救いなどない…… 出口などない……


分かっているのでしょう?


信じてはいけない…… 期待してはいけない……

抗ってはいけない…… 立ち向かってはいけない……

願ってはいけない…… 祈ってはいけない……

頼ってはいけない…… 誰もあなたを救いはしない……

845: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:11:13.66 ID:tFZdZzJfo
……忘れなさい……忘れなさい……

何もかもを投げ出しなさい……


消えなさい…… 逃げなさい……

……それは決して、罪などではない……


目を閉じなさい…… 醜いものを見てはいけない……

耳をふさぎなさい…… 悲痛な叫びを聞いてはいけない……


死は解放…… 闇は安息……

滅びは子守唄…… 無はゆりかご……


……眠りなさい……

すべてを忘れて、眠りなさい……

私がそばにいてあげる…… 私が受け止めてあげるから……

眠りなさい……眠りなさい……



……さあ……私の中へ……

846: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:13:10.51 ID:tFZdZzJfo
ルッカ「……ハッ!?」


「……」


ルッカ「ラヴォス……! あ……ここは……」

ルッカ(今のは……夢? ラヴォスが見せた悪夢……)


「……コオオォ……ホオォォォ……」


ルッカ「……くっ! ほむら、ロボ! 目を覚まして!」

ほむら「……」

ロボ「……」

ルッカ(くそ、ダメだ……! ふたりとも、悪夢に呑み込まれている……)

847: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:16:10.17 ID:tFZdZzJfo
『除消/単体魔法』


ルッカ「う、くっ……! この……やられるもんですか……!」


ルッカ(さっきは、無様な姿を見せてしまった……。ゴメンね、ロボ……)

ルッカ(ほむらを助けてやるんでしょ、ルッカ! あんたがそんなふうで、どうするのよ!)

ルッカ(考えろ、考えろ……! なぜ『私だけ』が目覚めることができたのか……)

ルッカ(正念場よ、ルッカ……。あんた天才なんでしょ! 嘆いている暇はないわよ!)



ルッカ「私は、ロボの……ほむらの……! 友達、なんだから!!」

848: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:19:42.02 ID:tFZdZzJfo
「……コオォォ……ハアァァ……」


ルッカ「……」

ルッカ「フフ……アハハハ……」


「……」


ルッカ「はー、おかしい。……うん? 何よ、ラヴォス。また私の頭が狂ったとでも言いたいの?」

ルッカ「お生憎様ね。これは、本当にうれしかったからこその笑顔よ」

ルッカ「そう……なぜ『私だけ』が。つまり、こういうこと。ふたりに助けられたからよ」


ルッカ「『ほむらとロボが私を大切に思う気持ち』が私を救ってくれた」

ルッカ「はいはい、恥ずかしいセリフなのは自覚してるわよ。でも、事実だからね」

ルッカ「『気持ち』が『かたち』になったものを私は持っている。目が覚めたのは、それのおかげ」

ルッカ「なら、今度は……それを使って、私がふたりを救い出す……」


ルッカ「見えるでしょ、ラヴォス! この、あたたかな光が!!」

849: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:23:01.11 ID:tFZdZzJfo
ルッカ「『みどりのゆめ』よ! 星が生み出した、いのちの息吹よ! 聞きなさい!」


ルッカ「私たちはここで立ち止まるわけにはいかない!」

ルッカ「この星の外から来た、星を破壊するものを止めるために……この星のいのちを続けるために!」

ルッカ「私たちは戦う! 私たちは、あいつを倒す方法を知っている!」


ルッカ「それは意志! 困難に立ち向かうための、不屈の意志!」

ルッカ「それは力! たとえ弱く、はかない存在だとしても……抗うための、知恵と勇気!」

ルッカ「それは絆! 仲間の想いが、助けが……ひとりひとりを強くする!」

ルッカ「それは祈り! 誰かを救いたいと願う尊い気持ち!」

ルッカ「それは希望! 信じ続けること、あきらめないこと、必ずそこに存在するもの!」


ルッカ「悪夢を終わらせ、絶望に屈さぬため……私たちは目覚めなければならない!」

ルッカ「切り拓かれた未来をこの目で見るため! 切り拓かれた未来をこの手につかむため!」


ルッカ「『みどりのゆめ』よ!! 私たちに……もう一度、奇跡を与えなさい!!!」

850: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:26:29.73 ID:tFZdZzJfo
ほむら「……う……あ……?」

ロボ「ム……グゥ……。ワ、ワタシハ……一体……」


ルッカ「ボケーッとしてんじゃないわよ、ふたりとも!」

ほむら「……ルッ、カ……?」

ロボ「ワタシたちハ……眠っていたのデスカ……? トテモ嫌な夢を見せられていたヨウナ……」

ルッカ「全部ラヴォスの仕業よ。あいつの思いどおりになんか、させるものですか!」

ほむら「あなたが、私たちを目覚めさせてくれたの……? 一体どうやって……」

ルッカ「セイセイセイ! そんなもんはあとでいいでしょ!」

ほむら「そ、そうね……。今は、ラヴォスをなんとかしなきゃ……」

ロボ「シカシ、状況は芳しくありマセン。ルッカのおかげで全滅こそまぬがれマシタガ……」

ルッカ「ま、ね。さーて、どうしたものやら……」

851: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:29:55.03 ID:tFZdZzJfo
ほむら「……まさに、悪夢だったわ」

ロボ「ほむら?」

ほむら「ラヴォスが見せた夢……。口にするのもはばかられるぐらい……」

ルッカ「ちょっとちょっと。夢の話は今はどうでもいいでしょ」

ほむら「けれど、それが仇となった。ラヴォス……ヤツは、失敗したわ」

ルッカ「え?」


ほむら「私たち魔法少女がどういう存在か、まざまざと見せ付けられた」

ほむら「それはつまり、私の身体は人形。外付けのハードウェアでしかないということ」

ロボ「ほむら……その話ハ……」

ほむら「聞いて。別に私は、自虐するためにこんなことを言っているのではない」


ほむら「私の『本体』はソウルジェム。身体なんていくらでも交換できる」

ほむら「逆に言えばいくらでも復活するものは、それは『本体』ではないということよ」

ルッカ「! まさか……」



ほむら「ラヴォスの『本体』は、『右のビット』よ!」

852: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:32:51.34 ID:tFZdZzJfo
「……コオオォ……ハアアァァ……!」

『天泣/必殺の一撃』


ルッカ「っ……! いきなり撃ってきやがったわ!」

ロボ「ラヴォス……焦っているのデスカ……?」

ほむら「まんまとだまされたわ。あの姿、行動……すべて中央に意識が向くよう仕向けられた、巧妙な罠」

ルッカ「突破口を見つけさせないため、抗う意志を奪うため、か……」

ロボ「右のビット……イエ、ラヴォス本体。言うなれば『ラヴォスコア』……」

ロボ「アレは1体になった時、最も隙ができマス!」

ほむら「なら、今までどおり……コア以外をつぶすわよ!」

ルッカ「おおおーッし!!」



「さんにんわざ『トリプルボム』!!!」

853: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:35:03.67 ID:tFZdZzJfo
「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!!!!」


ほむら「ここよ……! ルッカ! ロボ!」


ロボ「充填120%! ワタシの中のエネルギーを暴走させマス……。タトエ、この体が動かなくなろうトモ!」

ルッカ「私の全魔力をぶつけてやる……。『フレア』……それが、私の最大魔法!」

ほむら「すべての武器も、爆弾も……叩き込んでやるわ、フルバーストよ。弾倉が空になるまで……!」


ほむら「すべて終わらせる……これで!!」

ルッカ「ラヴォス! 私たちの全力、その身に受けなさい!!」

ロボ「アナタには決して屈しマセン! それガ、ワタシたちの鋼の意志!!」



「さんにんわざ『オメガフレア』!!!」

854: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:36:37.95 ID:tFZdZzJfo
『命活/自分以外蘇生』


ルッカ「くっ……あのヤロー!!」

ほむら「無視して! 狙うべきは、コアのみよ!」

ロボ「このまま……突っ切りマスッ!!」


「……コオオォ……ホオォォォ……! ……コオオォ……ハアアァァ……!!」


ほむら「いけええええええーッ!!」



「……コオオォ……!! キュオオハアアァァァ……!!!」

ズガガガガアアアアァァァァ!!!!!

855: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:40:29.57 ID:tFZdZzJfo
ほむら「ぐっ……!?」

ルッカ「う、受け止められた……!」

ロボ「中央の人型ガ……! コアをかばってイマス……!」

ほむら「やっぱり……本体は、あいつ……!」


「……コオオオォ……ハアアァァァ……!!」


ルッカ「うぎぎぎぎぎ……!」

ロボ「ググググ……オ、押し返されマス……!」

ほむら「耐えるのよ……ふたりとも……! なんとか……押し切って……!」

ルッカ「分かって……るっ……ちゅーのおお……!!」

ロボ「オオオオォォ……!!」

856: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:45:48.41 ID:tFZdZzJfo
ほむら(もう少し……あと少しなのに……!)


「……コオオオォ……!! オォハアアァァァ……!!!」

ズ...ズズズ...!! ズズズズ...!!!



ルッカ「だ、ダメだ……あいつの力のほうが強い……!」

ほむら(あと一撃……ほんの小さなきっかけさえあれば、押し切れるのに……!)

ほむら(こんな……! こんなことって……!!)

857: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:53:05.40 ID:tFZdZzJfo
ロボ「ほむら……。ゆっくりデス……。ゆっくり手を伸ばしてクダサイ……!」

ほむら「え……!?」

ロボ「ほんの少しデモ押し返す力が弱まるだけデ、致命的となりマス……! デスカラ、ゆっくりデス……」

ルッカ「ロボォォォ……! あんた……こんなときに、あに言ってんのよおおお……!」


ロボ「ラヴォスの攻撃デ……ワタシの体はボロボロデス……!」

ロボ「背面パーツモ、外れそうデス……! 少し力を加えれバ、ほむらでも簡単に外せるデショウ……」

ほむら「なんの……くっ……ことよ……!?」


ロボ「これはアナタがくれたものデス……! ソシテ、ルッカが内蔵してくれたものデス……!」

ロボ「それを今……お返シ、シマス……! 取り出すのデス……ほむら……!」

ほむら「……! まさか……」

ロボ「サア……受け取ってクダサイ、ほむら……!!」

858: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 06:58:14.57 ID:tFZdZzJfo
ロボ「それは『始まり』デス……!」

ロボ「それは『決意』なのデス……!」

ロボ「アナタが戦うために手にシタ、最初の武器……!」

ロボ「アナタが大切なものを守るために生み出シタ、意志のカタチ……!」


ロボ「それはアナタと最も長く付き合イ……そして最も多く活躍してきたはずデス……!」

ロボ「ワタシたちと出会う前モ……出会ったあとモ……それはアナタのそばにイタ……!」


ロボ「それはいのちを傷つけるものデスガ……同時ニいのちを守るものでもありマス……!」

ロボ「困難ニ、敵ニ……抗い続けるタメ、乗り越えるタメニ……手にしなければならなカッタ……!」

ロボ「ほむら、ワタシハ……いつかアナタガ、それを手放す日がくればイイト……そう願いマス……!」

ロボ「ソノ……未来のタメニ……!!」

859: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:00:25.76 ID:tFZdZzJfo
ほむら「これは……!」


ロボ「アナタのそれガ……切り拓かれた未来へと続ク、一歩目とナル……!」

ロボ「サア、ほむら……! ワタシたちニ、希望ヲ……!!」

ほむら「……!」



ルッカ「やれえーッ! ほむらああーッ!!」

860: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:01:55.13 ID:tFZdZzJfo


ほむら「『パイプ爆弾』ッ!!!」



861: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:03:12.25 ID:tFZdZzJfo
「……コオオォ……ホオォォォ……。……コオオォ……ホオォォォ……!」


「……コオオオォ……ハアアァァァ……!! ……オオォォ……フゥ、ハアァァ……!!」


「キュオオ……オオ……アアア……!! キュオオアアオアアァァ……!!」


「キュアアアアオオオアオオオォォォォオオン…………!!」

「キュアアァオオオォォォアオォォキュアァオアオォォォォオオン!!!!!」



「キュアアアアアオオオオアアアアアキュアアアハアアオオオオオオオ……ン……ッ…………!!!!!!」

862: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:09:00.31 ID:tFZdZzJfo
ほむら「……」

ルッカ「ラヴォスが、消えていく……! 今度こそ、本当に……」

ロボ「やりマシタ! ワタシたちはついニ、やったのデス!」


ほむら(なぜ本体が『右側のビット』だったのか……)

ほむら(消滅の瞬間、コアの中心部にかすかに見えた宝石のようなもの……)

ほむら(ラヴォス……。あなたは……もしかして……)



まどか「ほむらちゃーん!!」

ほむら「! まどか……。それに、みんなも……」

863: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:14:24.80 ID:tFZdZzJfo
さやか「奇跡だよ! 誰ひとり欠けることもなく、ラヴォスを倒せるなんて!」

カエル「いいや。それは違うぞ、さやか。これは俺たちのあきらめない心が生んだ必然だ」

クロノ「言ったろ? 誰も犠牲になんかならないって」


エイラ「エイラたち、最強!」

マミ「ほんと、みんなのおかげね」

魔王「チッ……。ラヴォスは私がこの手で葬り去るべき相手。余計なことをしてくれたな、お前ら」

杏子「よく言うぜ。ジール戦だけでヘロヘロだったくせによ」


マール「よーし! みんな集まって! 勝利のポーズ、いっくよー!」

ルッカ「いいわね、ここはビシッと決めるわよ!」

まどか「ほら、ほむらちゃんも」

ほむら「待って、押さないで……。私は端っこでいいわよ……」

ロボ「駄目デス。ほむらは当然、センターデス」



マール「せーの! 勝利のポーズ、決め……」

864: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:16:47.57 ID:tFZdZzJfo
QB「やあ、おめでとう。まさか君たちがラヴォスを倒すなんてね。本当に驚きだよ」


さやか「……うわ……出た……」

ルッカ「インキュベーター……」

QB「おや? なんだろうね、このアウェイ感は。感情のない僕でも思わずブルってしまうよ」

魔王「貴様……。このKYめ」

ほむら「消えてくれるかしら? せっかくの祝賀ムードを血で染めたくはないのだけれど」


QB「言われなくても仕事が終われば消えるよ」

クロノ「仕事だって?」

QB「彼女のエネルギーの回収さ」

マール「彼女……?」

865: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:18:51.18 ID:tFZdZzJfo
サラ「……ぅ……」


まどか「サラちゃん!」

魔王「なに!?」


サラ「……こ……ここ、は……」

まどか「サラちゃん! ああ……サラちゃんだ! しっかりして!」

魔王「サラ! ……生きている……確かに、意識がある……!」

ほむら「ラヴォスとの同化が解けたの?」

QB「まあ、そういうことだね。お疲れさま、サラ。よく今までラヴォスを抑えてくれたものだよ」

866: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:22:37.88 ID:tFZdZzJfo
サラ「まどか……。まどか、なのね……」

まどか「そうだよ、わたしはここにいるよ……。また会えるなんて……」

サラ「ラヴォス、は……」

クロノ「もういない。僕たちが倒した。もう何も心配はいらないんだ!」


サラ「……殺……したのですね、ラヴォスを……」

ルッカ「? そうだけど……。なに? まるで殺してはいけなかったと言いたげな表情ね」

サラ「そんなことは……ありません……。ただ……」

カエル「ただ? どういうことだ、まだ何かあるのか?」

サラ「終わっていない……。絶望の連鎖は、途絶えてはいません……」

ほむら「……え?」

867: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:25:19.27 ID:tFZdZzJfo
QB「いやいや、これでいいんだよ。調停者によって争いは調停された。ラヴォスの死という形でね」

マミ「キュゥべえ……?」


QB「僕は散々言ってきたはずだよ、協力すべきだって。正直、君たちの非協力的な態度には手を焼かされた」

QB「まあ、結果的には僕の望むとおりの結末を迎えられたわけだから満足だけどね」

杏子「テメェ、何が言いてえんだ。事情通ですって自慢したいのか?」


QB「説明をお望みかい? 『調停者』とはラヴォスとヒト、二者の争いを調停する者のことだ」

QB「つまりは『ラヴォスを倒しうる可能性を持つ存在』ってことだね」

QB「もっと分かりやすく言おうか。要するに君たち魔法少女のことだよ」

まどか「え……?」


QB「調停者は『凍てついた炎』によって選ばれる」

QB「凍てついた炎とはあらゆる望みをかなえてくれるもの」

QB「ま、そういうことだよ」

868: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:28:29.62 ID:tFZdZzJfo
QB「ラヴォスは死なない。たとえ殺したとしても、その無念が呪いを生む」

QB「呪いは調停者を取り込み……生まれ変わり……最後には『時喰い』となって宇宙を無に帰す……」

QB「永遠に終わることのないイタチごっこ……。けれど、それをやめることはできない」

QB「この宇宙は僕たちのものだ。渡すわけにはいかない」


エイラ「このウサギ、なに言ってる? エイラ、頭、火山。マミ、解説!」

マミ「ご、ごめんなさい……。私も何がなんだか分からないわ……」

QB「理解する必要はないよ。君たちの役目も僕の役目も、サラの役目も終わっているんだから」

ロボ「どういうことデスカ……?」

869: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:31:06.33 ID:tFZdZzJfo
QB「大丈夫。君たちが殺したラヴォスの呪いは全部サラが引き受ける。君たちなら分かるだろう?」

QB「彼女の向かう先――魔法少女サラ・キッド・ジールの希望と絶望が相転移した、その先にあるものが」

まどか「……ま……まさ、か……」


QB「今度は君の番だ、サラ。できれば、成長には大いに時間をかけてもらいたいものだね」

QB「そのあいだに次の候補を探しておくから」

QB「まあ、そのまま死んでくれるのが一番いいんだけどね」

870: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:33:54.38 ID:tFZdZzJfo
サラ「……まどか……私、分かったの……」

まどか「サラちゃん……?」

サラ「なぜ私がここにいるのか。私は『私』であって、同時にそうではなかったんだってこと」

サラ「『私』が私をあなたと会わせた理由……」

サラ「まどかと『私』は……時の彼方で逢った、ような……そんな記憶がある……」


まどか「なに……? 何を言ってるのか、分かんないよ!」

サラ「大丈夫……。あなたの……思う、とおりにして……」

サラ「……ごめんね、まどか……」

まどか「サラちゃん!?」



QB「さあ、祭りの始まりだ。存分に楽しむといい」

871: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:37:03.91 ID:tFZdZzJfo
ズズズズズズ...!!!


さやか「な!? ゲ、ゲート!? とんでもなくデカいよ!?」

カエル「魔王城の時よりもさらに巨大だ……! 飲み込まれるぞ! 下がれ、さやか!」

魔王「無駄だ! どこに逃げようと、この大きさのゲートからは誰も逃れられん!」

杏子「ちくしょう! 今度はどこに飛ばされるんだ!?」


マール「ク、クロノ……!」

クロノ「くそっ! みんな固まれ! 手を握るんだ!」

エイラ「マミ!」

マミ「エイラ……絶対に離さないで……」

872: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:39:06.88 ID:tFZdZzJfo
ルッカ「いい!? それぞれが握っているのは、相手のいのちよ!」

ロボ「タトエどこに飛ばされようト……みんな一緒デス!」


まどか「ダメ……サラちゃんが……!」

ほむら「まどか、お願い! 今は自分の安全だけを考えて!」

まどか「ほむらちゃん……」

クロノ「来るぞっ!!」



グアアアアアアアオオオオオオオオン!!!!!

873: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:39:56.85 ID:tFZdZzJfo


…………

………

……



874: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:42:31.78 ID:tFZdZzJfo
ほむら「……」


ほむら「……」


ほむら「……ぅ、く……」


ほむら「……ここ、は……」



「――♪―♪――♪―♪―♪――♪――♪―♪―♪――」


ほむら「……? この音楽は……?」

875: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:44:16.42 ID:tFZdZzJfo
『5』


ルッカ「やれやれ。なんとか全員無事のようね」

クロノ「なんだ、ここは……? いつの時代だろう?」

マール「見て、クロノ……。パレードやってる……。ここって、リーネ広場……?」

ルッカ「ロボ。時空ジャイロは何年を指してる?」

ロボ「……」

ルッカ「ロボ? どうかしたの?」

876: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:48:56.72 ID:tFZdZzJfo
『4』


さやか「……そんな……まさか……」

カエル「さやか?」

エイラ「マミ、おかしい! 顔、真っ青!」

マミ「……信じられない……」

魔王「杏子。その様子を見るに、私の推測は当たっているのだな」

杏子「……ああ……」

877: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:51:08.28 ID:tFZdZzJfo
『2』


まどか「……う……あれ……? ほむら、ちゃん……?」

ほむら「まどか……逃げて……」

まどか「え……?」


ルッカ「ちょっと、ロボ! 黙ってちゃ分かんないわよ。ここは一体いつなの?」

ロボ「……ワタシの時空ジャイロが故障でなけレバ……」

878: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:52:58.22 ID:tFZdZzJfo
『1』


ロボ「A.D.2011……。ほむらたちの、時代デス!!」

ルッカ「なんですって!?」

879: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:53:44.80 ID:tFZdZzJfo


サラ「アハハハハハハ!」



880: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 07:56:03.51 ID:tFZdZzJfo
QB「この世のすべてが戯曲ならば悲しいことなど何もない」

QB「悲劇ではあるかもしれないけれど、ただ、そおいう脚本を演じただけ」

QB「芝居は止まって、もう地球は一周だって回転しない。物語は転換しない」


QB「すべての運命の不幸を無くそうとする、地上をマホウで埋め尽くし」

QB「全人類を戯曲の中へ取り込もうとする、動く舞台装置」



QB「おめでとう、サラ。これからは君の独り舞台だ」

QB「明日も明後日も……『ワルプルギスの夜』さ」

883: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 08:05:07.36 ID:tFZdZzJfo
 
第17話「時の彼方で逢った、ような……」 終了


  セーブしてつづける(最終話「私の、最高の友達」へすすむ)

ニアセーブしておわる

  セーブしないでおわる

896: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 23:15:58.55 ID:tFZdZzJfo
最終話「私の、最高の友達」


このセーブデータをロードします。よろしいですか?


ニアよろしい

  よろしくない

897: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 23:21:47.70 ID:tFZdZzJfo
A.D.2011 見滝原


ワルプルギスの夜「アハハハハハハ!」


まどか「……ウソ……ウソだよ……! サラちゃんがワルプルギスの夜だなんて……!」

ほむら(こういうことだったの……。ワルプルギスの夜……魔女――新たなラヴォス……!)


魔王「……杏子。魔女を元の人間に戻す方法を言え」

杏子「そ、それは……」

魔王「ないのか」

杏子「……」

898: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 23:27:28.61 ID:tFZdZzJfo
ほむら「杏子!」

杏子「! な、なんだ?」

ほむら「あなたたちのパーティーは戦意喪失につき戦闘不能。ふたりを連れて下がって」

杏子「……分かったよ」


ほむら「さやか! マミ! 魔女退治は私たちの専売特許。あなたたちが先導するのよ!」

さやか「う、うん……。そうだよね……!」

マミ「やるしかないのね、この戦い……」

ほむら「ワルプルギスの夜を倒さない限り、未来はこない! いくわよ!」

899: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 23:30:32.49 ID:tFZdZzJfo
劇団カミテ「――♪――♪―♪――」


マール「く、来るよ、マミちゃん!」

マミ「使い魔……! 彼女たちを突破しないことには、ワルプルギスの夜には届かない……!」

エイラ「蹴散らす! マミ! マール! 弾薬よろ!」


マール「オッケー……。『アイスガ』!!」

マミ「『無限の魔弾』!!」

エイラ「キタキタ! 『3段キック』!!」



「さんにんわざ『ティラーレ・イン・ポルタ』!!!」

ズドドドドドドド!!!

900: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 23:37:44.46 ID:tFZdZzJfo
クロノ「すごい! 無数の氷塊と弾丸がエイラに向けて発射され……」

クロノ「それらのすべてが彼女の蹴りによって軌道を変えられている! 全方位高密度の弾幕だ!」

カエル「恐ろしいことしやがるぜ……。一歩間違えば自滅だぞ」

さやか「でも見て! おかげで、使い魔たちがほとんど殲滅された!」

クロノ「魔女への道が切り開かれたぞ!」


ワルプルギスの夜「キャハハハハハハ!」

カエル「俺たちの出番だ……。いくぜ、ふたりとも!」



「さんにんわざ『三閃』!!!」

901: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 23:39:59.18 ID:tFZdZzJfo
さやか「その壱! ゼット!」

クロノ「その弐! デルタ!」

カエル「その参! アスタリスク!」



「最終奥義……トライフォース!!」


ドドオン!!!

902: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 23:46:09.88 ID:tFZdZzJfo
ワルプルギスの夜「アハハハ……」


ロボ「流れが来てイマス! ここを逃す手はありマセン!」

ほむら「ふたりとも……私の手を握って」

ルッカ「え? なによ、こんな時に。怖いの?」

ほむら「いいから早く!」


ほむら(時は戻った……忌まわしきこの瞬間に。砂時計の砂は、今再び流れ始めた!)

ほむら「『時間停止』!!」

903: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 23:50:26.96 ID:tFZdZzJfo
ワルプルギスの夜「――――」


ルッカ「! これ……!」

ロボ「止まってイマス! 世界ガ……時間ガ、停止してイマス!」

ルッカ「ほむら……あんた……こんな魔法、使えたの!?」

ほむら「説明はあと。この一瞬に、私たちのすべてをかけるわよ……」

ロボ「了解デス!」


ほむら「『M252 81mm迫撃砲』!! 『M136 AT-4』!! 『88式地対艦誘導弾』!!」

ロボ「『RPG-7』!! 『サークルボム』!! 『エレキアタック』!!」

ルッカ「『ナパームボム』!! 『メガトンボム』!! 『ファイガ』!!」



「さんにんわざ『全弾発射』!!!」


ズガガガアアアアアアアアアアアアアン!!!!!

904: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 23:53:51.22 ID:tFZdZzJfo
ほむら「まだまだッ! 『タンクローリー』よッ!!」

ルッカ「『ロードローラー』だッ!!」

ロボ「『オールテレーンクレーン』デスッ!!」


ドゴオオオン!!!



ロボ「肉薄『マシンガンパンチ』!! WRYYYYYYYYYYーッ!!!」


ほむら「私たちも続くわよ、ルッカ! これを使いなさい!」

ルッカ「これは!」

ほむら「『PKP ペチェネグ』!! そして私は、『M60E4』!!」

905: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 23:55:33.42 ID:tFZdZzJfo
ロボ「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」

ルッカ「ドラララララララララララララララ!!!」

ほむら「アリアリアリアリアリアリアリアリ!!!」

ロボ「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」

ルッカ「ボラボラボラボラボラボラボラボラ!!!」

ほむら「WAAAAAAAANNABEEEEEEEEEE!!!」

ロボ「オラオラオラオラオラオラオラアラ!!!」


ほむら「7セリフ半にわたるパンチと銃撃のラッシュ!! ぶっつぶれよォォーッ!!」

906: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/12(日) 23:59:33.52 ID:tFZdZzJfo
ゴオオオ...!


ルッカ「この音は……!」

ほむら「来た! 『トマホークミサイル』!!」

ロボ「ワタシも同時に押し込みマスッ!!」


ロボ「『ロボタックル』!! ぶっ飛んでいってクダサイッ!!」

ワルプルギスの夜「――――」ズガガガガガガ!!

ロボ「ソシテ離脱!」


ドッグオオオオオン!!!

907: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:01:00.08 ID:YfLkdqiTo
ほむら「とどめよ! ルッカ! ロボ!」

ルッカ「これが私の全力全開!!」

ロボ「ワタシたちの最高の技、受けてクダサイ!」



「さんにんわざ『オメガフレア』!!!」


ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!

908: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:04:37.31 ID:YfLkdqiTo
まどか「……っ!?」

魔王「あの爆炎は……」

杏子「ほむらだな……。張り切りすぎだろ、アイツら」

まどか「し、死んだの……? サラちゃ……ううん、ワルプルギスの夜は……」


ほむら「はあ……はあ……」

ルッカ「これでもかってぐらいやってやったわよ……これで……」

ロボ「……ッ! よけてください、ふたりとも!」



『虚夢/究極魔法攻撃』

ほむら「ぐっ!?」

909: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:11:26.17 ID:YfLkdqiTo
ワルプルギスの夜「アハハハハハハ!」


エイラ「魔女! ピンピンしてる!」

マミ「そんな……押していると思ったのに……」

カエル「俺たちの全力を合わせたというのに、この程度なのか!?」

さやか「ちくしょー! やっぱり強すぎる!」

マール「これが、ほむらちゃんの言っていた最強の魔女の力……!」



『異次元の闇が星の夢を食らう』

クロノ「! まずい、また攻撃が!」

910: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:15:36.89 ID:YfLkdqiTo
魔王「『ダークマター』!!」

ワルプルギスの夜「アハ……!」

カエル「魔王!」

魔王「馬鹿笑いはやめてもらおうか。あの女を思い出す……」


魔王「杏子!」

杏子「おうよ! 『最後の審判』!!」

ズカァン!!



さやか「杏子……」

杏子「わりいな、待たせちまって。アタシらも加勢するぜ」

ほむら「もう一度陣形を立て直すわよ! みんな、気合入れて!」

クロノ「よし……!」

911: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:17:52.71 ID:YfLkdqiTo
まどか「ジャキくん……」

魔王「鹿目まどか。戦いたくないのならば、ここより去れ。邪魔だ」

まどか「……ごめん、なさい……」

魔王「……お前の気持ち、分からんでもない」

まどか「……」


魔王「確かにあの魔女はサラだ。あいつは、すべてを消し去り、自らをも消えることを望んでいた……」

魔王「俺たち姉弟は、心に闇を持っている。黒き風の中で身を震わせている……」

まどか「……」



魔王「その闇を照らし、陽の光のぬくもりを教えてくれたのがお前だ」

まどか「え……」

912: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:19:54.42 ID:YfLkdqiTo
ワルプルギスの夜「キャハハハハハハ!」


カエル「クソッ! むちゃくちゃに動き回りやがって!」

ルッカ「ああ、もう! 照準が定まらない!」


ドガガガ!!

さやか「や、やばいよ! ワルプルギスの夜が、ビル群をなぎ倒しながらこっちに向かってくる!」

マミ「下敷きにされるわ! みんな、散って!」

エイラ「ダッシュ、ダッシュ! Bボタン!」

913: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:22:18.86 ID:YfLkdqiTo
ワルプルギスの夜「キャハハハハハハ!」


ロボ「! まずいデス、あっちの方角ハ!」

杏子「ジャキ! まどか! 逃げろーッ!」


魔王「なに!?」

まどか「あ……!!」



ドオオオーンッ!!!

ほむら「まどかぁーっ!!」

914: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:24:43.57 ID:YfLkdqiTo
まどか「……。……」

まどか「……? ……あ、あれ……なんともない……?」


魔王「……ぐ……!!」

まどか「ジャキくん!? まさか……わたしをかばって……!」

魔王「チッ……俺としたことが……ぐ、がふ……っ!」



クロノ「ほむら! 魔王がやられた!」

ほむら「分かってる! マールは魔王の回復を!」

マール「う、うん!」

ほむら「それ以外はワルプルギスの夜を彼女たちから遠ざけるように動くのよ!」

915: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:27:24.93 ID:YfLkdqiTo
まどか「ジャキくん! ジャキくん、しっかりして!!」

マール「動かさないで、まどかちゃん! 今、回復魔法をかけるから……」


まどか「こんな……わたしのせいで……! ごめんね……ジャキくん……」

魔王「……耳元で泣き喚くな……傷にさわる……」

まどか「だ、だって……」

魔王「……」

まどか「わたし……どうしたらいいか分かんないよ……」

まどか「強く決意したはずなのに……実際に目の当たりにしちゃったら……怖くて……」

マール「まどかちゃん……」

916: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:38:09.35 ID:YfLkdqiTo
魔王「鹿目まどか。ヤツらを見ろ」

まどか「え……」



クロノ&カエル「ふたりわざ『エックス斬り』!!」

杏子「続くぞ、さやか!」

さやか「おっしゃあー! ふたりわざ『エックス突き』!!」


エイラ「『尻尾竜巻』!!」

マミ「『魔弾の舞踏』!!」

ロボ「『回転レーザー』!! いつもより多めに回しておりマス!」

マミ「さんにんわざ『ビッグトルネード』よ!!」


まどか「みんな……!」

魔王「あきれたヤツらだ。ここに来て、さらにその連携力に磨きをかけている……」

917: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:41:25.65 ID:YfLkdqiTo
魔王「この絶望的な状況におかれて、なお、あきらめる気配を見せない……」

まどか「……」

魔王「実にうっとうしい……。そして、腹立たしい。特に暁美ほむら、ヤツはな……」

まどか「ほむらちゃんが……?」


ほむら「近接班を支援するわよ、ルッカ!」

ルッカ「『プリキュア・マーブル・スクリュー』ね!」

ほむら「いや、その技名は……ああ、もう! この際どうでもいいわ!」

918: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:46:14.91 ID:YfLkdqiTo
魔王「魔王城で初めて会った時、ヤツは……俺と同じだと思った……」

魔王「すべてを犠牲にし、ただひとつのもののため……自らの命をも捨て去るつもりだと……」

まどか「……」


魔王「だが、どうだ。今のアイツは……。死ぬためではない。生きるために戦っている……」

魔王「アイツの周りの者たちが、そうさせたのだ……」

魔王「そして今は……受け取ったものに、報いようとしている……」


魔王「暁美ほむらと、その仲間……。あろうことか、魔王であるこの俺を受け入れやがった……」

魔王「まるでこの俺が……今、こうなることを信じていたかのごとく……」

魔王「俺はそれが許せん……。ヤツらの目論見どおりになってしまった自分自身にな……」

まどか「ジャキくん……」

919: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:52:39.35 ID:YfLkdqiTo
魔王「これが最初で、最後だ……。二度とは言わん……」

まどか「え……?」

魔王「頼む……。俺を、俺たちを……救ってくれ」


魔王「……まどか姉さま……」

まどか「! ……」


魔王「……お前なら……でき……る……」

920: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:54:55.52 ID:YfLkdqiTo
まどか「ジャキくん!?」


マール「大丈夫……。気を失っただけだよ……」

まどか「……」

マール「まどかちゃん。魔王の言ったこと……」

まどか「……わたし、は……」

921: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:57:03.29 ID:YfLkdqiTo
ワルプルギスの夜「アハハハハハハ!」

まどか「!」


ルッカ「な、なによ……この迫力……!」

ロボ「とてつもないゆがみを感じマス! 星全体が揺れているヨウナ……!」

杏子「とんでもねえ何かが来るぞ!」

ほむら「みんな、散開……い、いえ! 杏子、マミ! 防御結界を……!」

カエル「ダメだ、間に合わん!」

マミ「あ……ああ……」



『ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド(天からふりそそぐものが世界を滅ぼす)』

922: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 00:59:31.62 ID:YfLkdqiTo
さやか「うああああああッ!!」

マール「きゃああああーっ!」

エイラ「おおおおおっ!?」

クロノ「く、くそおーっ!!」


ほむら「こんな……! ああああああああーっ!!」

ワルプルギスの夜「アハハハ……キャハハハハ……」


ワルプルギスの夜「アハハハハハハハアハハハハハハハ!!!」

923: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:03:14.99 ID:YfLkdqiTo
ワルプルギスの夜「アハハハハハハ!」

さやか「くぅっ……」

杏子「ちくしょう……」

マミ「……なんて強さなの……」

ほむら「どうしてなの……? 何度やっても、アイツに勝てない……」

ほむら「ラヴォスを倒した全員の力で持ってしても、届かないなんて……!」


ほむら「……」

ほむら(繰り返すしか、ないの……? 今なら時間遡行は可能……)

ほむら(もう一度戻るべきなの!? あの、病院の一室に……!)

924: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:07:59.42 ID:YfLkdqiTo
ほむら「……。……」


ほむら「……イヤ……イヤよ……」

ほむら「もう、同じ時間を繰り返すのはたくさんだわ! 私は何も捨てたくない!」

ほむら「ルッカ……ロボ……クロノにマール……みんなとすごした時間……」

ほむら「それらをすべてなかったことにするなんて、私にはできない!」


ほむら「立って……立つのよ、暁美ほむら! 顔を上げるの!」

ほむら「あきらめてはいけない……! 私は未来を、希望をこの手につかむんだ!」



ほむら「私の戦場は、ここなのよ!!!」

926: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:12:10.28 ID:YfLkdqiTo
ほむら「……!?」

まどか「もういい。もういいんだよ、ほむらちゃん」

ほむら「まどか……?」


まどか「あなたのその言葉が聞けて、うれしかった。その気持ちが、わたしに力を与えてくれたの」

ほむら「まどか……まさか……!?」

まどか「ほむらちゃん、ごめんね。わたし、魔法少女になる」

927: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:15:08.67 ID:YfLkdqiTo
ほむら「そんな! それじゃ……それじゃ私は、なんのために……」

まどか「ほむらちゃん、良かったね……。たくさん、友達ができて……」

まどか「だからもう……大丈夫だよね」

ほむら「それでも……それでも私は、あなたを……!」


まどか「わたし、やっと分かったの。かなえたい願いごと見つけたの」

まどか「ずっと迷って……みんなに守られて、望まれて……そんな今のわたしが、やっと見つけ出した答え」

まどか「絶対に、今日までのみんなを無駄にしたりしないから。信じて」

ほむら「まどか……!」

928: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:18:54.79 ID:YfLkdqiTo
QB「待っていたよ、まどか。君が決心してくれることを。君との契約、それは僕の悲願だ」

QB「君が、次のラヴォスになってくれるんだね?」

QB「たかだか10年ぽっちといえども、宇宙の寿命が延びるのはいいことだ」

まどか「……」

QB「特別な存在である君なら、どんな途方もない望みだろうと叶えられるだろう」

まどか「本当だね?」



QB「さあ、鹿目まどか――その魂を代価にして、君は何を願う?」

まどか「わたし……」


まどか「はぁ……ふぅ……」

まどか(……サラちゃん……)

929: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:24:24.85 ID:YfLkdqiTo
まどか「私の願いは……『すべての魔女を、生まれる前に消し去りたい』」

まどか「『すべての宇宙、過去と未来のすべての魔女を、この手で』」

QB「……っ!!」


QB「その祈りは……そんな祈りが叶うとすれば、それは因果律そのものに対する反逆だ!」

QB「君は……本当に神になるつもりかい!?」


まどか「神様でもなんでもいい」

まどか「今日まで戦ってきたみんなを、希望を信じた魔法少女を、わたしは泣かせたくない」

まどか「最後まで笑顔でいてほしい。それを邪魔するルールなんて、壊してみせる。変えてみせる」

まどか「これがわたしの祈り。わたしの願い」



まどか「さあ! かなえてよ……インキュベーター!!」

QB「――――ッ!!」

930: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:28:05.73 ID:YfLkdqiTo
まどか「……」

ほむら「……」

QB「……」


まどか「……?」

ほむら「……」

QB「……」


まどか「……え……? あ、れ……?」

ほむら「何も……起きない……?」

QB「……」

931: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:30:09.01 ID:YfLkdqiTo
ブワアアアアーッ!!!


ルッカ「な、なに!?」

ロボ「雲ガ……!? 空ガ、晴れていきマス!」

マール「何が起こったの!?」

クロノ「! あれを見ろ、みんな!」



ワルプルギスの夜「アハハハ……ハハ……キャハ……アハ……ハ……!!」


マミ「ワルプルギスの夜が……」

エイラ「崩れてく! ボロボロ!」

さやか「た、倒したの? あたしら……」

カエル「そんなバカな!? 俺たちは何もしていないぞ!?」

杏子「嵐が去った……。黒き風が……やんでやがる……!」

932: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:33:43.14 ID:YfLkdqiTo
まどか「ど……どうなってるの……? わたしが願ったために……?」

ほむら「でも、まどかは魔法少女になっていないわ!」

まどか「じゃあ……どうして……」


QB「……まどか。君の願いは確かに、エントロピーを凌駕したよ」

まどか「え、でも……」

QB「……こんなこと……僕に予想しろってほうが無理な話じゃあないか……」

ほむら「インキュベーター……?」



QB「『祈りは続いていた』んだ……!!」

933: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:36:07.15 ID:YfLkdqiTo
キイィン! キュイン! キイイイイン...!!


さやか「ワルプルギスの夜から光が!?」

マール「ば、爆発するの!?」

ルッカ「いえ、違うわ! でも……」

ロボ「飲み込まれマス!」



カアアアアアアアアアアアアッ!!!

まどか「あっ!?」

ほむら「まどかーッ!!」

934: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:37:05.25 ID:YfLkdqiTo


…………

………

……



935: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:38:36.34 ID:YfLkdqiTo
まどか「……ハッ!?」


まどか「……ここは……」

まどか「宇宙……? でも、息ができる……」

まどか「……?」


まどか「……な、なにあれ……!? あの青い星……地球……!?」

まどか「でも、だとしたら……地球を取り囲む、あの……黒くて、怖いくらいまがまがしいモヤは……!?」

936: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:41:06.99 ID:YfLkdqiTo
「君の願いによってもたらされた新しい法則に基づいて、宇宙が再編されているんだ」

まどか「!? この声……キュゥべえ!?」


「その壮大すぎる祈りをかなえた対価に、背負うことになる呪いの量が分かるかい?」

「ひとつの宇宙を作り出すに等しい希望が遂げられた」

「それはすなわち、ひとつの宇宙を終わらせるほどの絶望をもたらすことを意味する」

「当然だよね? これが……君の祈りの代償だ」


まどか「……」

937: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:43:45.03 ID:YfLkdqiTo
「大丈夫よ、まどか」

まどか「え!? 別の声……? でも……これって……!」


「あなたの願いは、すべての魔女を消し去ること」

「本当にそれがかなったんだとしたら、誰も……」

「そう……。この私でさえ……」



サラ「もう絶望する必要なんて、ない!!!」

938: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:53:20.28 ID:YfLkdqiTo
「サラ・キッド・ジールの願いは『鹿目まどかを助けること』」

「『すべての宇宙、過去と未来のすべての時空において』……ね」


「すべての時間で永遠に戦い続ける。未来永劫終わりなく、魔女を滅ぼす『概念』と成り果てる」

「それがまどか、君が背負うはずだった『業』だ」

「サラはそれを君の代わりに引き受けたんだよ。『助ける』ため、祈りを上書きしたんだ」


「これで彼女の人生は……始まりも、終わりもなくなった」

「この世界に生きた証も、その記憶も、もうどこにも残されていない」

「もう誰もサラを認識できないし、サラもまた、誰にも干渉できない」

「彼女はこの宇宙の一員では、なくなった」

939: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 01:56:17.49 ID:YfLkdqiTo
まどか「そんなのダメだよ……! そんなの、わたし望んでない!」

まどか「ひどすぎるよ……! こんな……死ぬよりも、もっとひどい……わたしのせいで……!」

サラ「それは違うわ、まどか」

まどか「! ……サラちゃん……」

サラ「今の私にはすべてが見えるの。かつてあった宇宙も、いつかあり得るかもしれない宇宙も、みんな」


サラ「私は……本当の時間軸では、ラヴォス復活の余波で時空の彼方に吹き飛ばされた……」

サラ「何もないその場所をさまよい……ラヴォスのかけらにとりこまれ……『時喰い』となる……」

サラ「生命の負の感情を取り込んで成長し、時空そのものを喰らい、すべてを無に帰すはずだった……」


サラ「でもね。そうなる前に、あなたを見つけたの。あなたの嘆きを聞いたの」

サラ「助けてあげたい、って思った……。無意識に手を伸ばしていた……」

サラ「だからこうして、あなたと出会えたのよ……」

サラ「あなたの祈りが、私の憎しみを癒し……『時喰い』となる絶望の運命を変えてくれた……」

940: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:01:53.24 ID:YfLkdqiTo
まどか「だけどサラちゃん! サラちゃんはそれでいいの!?」

まどか「ひとりぼっちなんだよ……。大好きな人たちとも離れ離れで、こんな場所に……!」


サラ「ふふ、まどか。私が言ったこと、忘れたの?」

サラ「私はずっとあなたのそばにいる。ずっと、守ってあげるから……って」

サラ「ラヴォスに取り込まれていた時も……今も……そしてこれからも、ずっと……」

サラ「私はあなたのそばにいるから」

サラ「あなたは私を、私たちを救ってくれたんだもの。それぐらいはしなきゃ、ね?」


まどか「でも……私はサラちゃんのこと……忘れちゃうのに……」

サラ「魔法少女は夢と希望をかなえる存在。希望を抱くのが間違いだなんてことは、絶対にない」

サラ「あなたが教えてくれたことよ。だからきっと、あなたが信じ続けてくれるなら……」

941: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:04:14.88 ID:YfLkdqiTo
まどか「サラちゃん……。わたし、忘れない! 絶対にあなたのこと、忘れないよ!」

サラ「私もよ、まどか……。じゃあこれは、その証ね」

まどか「これ……サラちゃんのリボン……」

サラ「代わりにあなたのリボンをちょうだい? ほら……結ってあげる」

まどか「……あ……これ……」

サラ「まどかのポニテと私のツインポンポン。ジャキなら、どっちを気に入ってくれるかしらね?」

まどか「……」

942: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:08:08.69 ID:YfLkdqiTo
サラ「ごめんね、まどか。私、みんなを迎えに行かないと」

まどか「サラちゃん! 行かないで……!」

サラ「大丈夫。きっとまた会えるわ」

サラ「私も信じ続けるから。希望を……。本当の奇跡は、きっとあるんだってこと」


サラ「今は、とても安らかな気分……。あなたのくれたあたたかさが、とても心地よい……」

サラ「……ありがとう……」

まどか「サラちゃん!! わたし、わたしたち……!!」



サラ「まどか……。あなたは私の、最高の友達よ」

943: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:09:09.20 ID:YfLkdqiTo


…………

………

……



944: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:17:09.75 ID:YfLkdqiTo
A.D.2011 見滝原


♪エピローグ ~親しき仲間へ~


ほむら「……お別れね、みんな……」


マール「そうだね……さみしいけど……」

ルッカ「A.D.2011に現れたラヴォスの残滓――『夢喰い』も倒した。私たちがここに残る理由もないわ」

ロボ「ゲートの力が弱まってイマス。オソラク、閉じる寸前なのデショウ」

カエル「みな、それぞれの時代へ……か」

エイラ「家、帰る! みんなバラバラ。悲しい。でも、行く!」

魔王「フン。仲間ごっごは終わりだ。これで清々する……」


クロノ「力になれなくて申し訳ないけど……魔獣退治、がんばってな」

ほむら「ええ。それが私たちの役目だから」

まどか「……」

945: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:19:41.74 ID:YfLkdqiTo
エイラ「マミ強かった! エイラ楽しかった!」

マミ「エイラ……」

エイラ「巣立つ時、来たら、信頼して送り出す!」

マミ「そうね……それが仲間だって……。分かってるのよ? でも……」

エイラ「泣くな、マミ!」


マミ「ううん、いいのよ……エイラ……。こういうときは、泣いたっていいの……」

エイラ「……そうなのか。マミ、たくさん教えてくれた。色々。エイラ、かしこくなった」

エイラ「だから……泣く。泣いてすっきりする! 見ろ、マミ! エイラ、泣いてるぞ!」

マミ「ふふ……。ほんとね……。エイラのそんな顔……初めて見たわ」

エイラ「ワハハ! 不思議! 涙、笑顔、いっしょに出る! なんだこれ!」

マミ「エイラ……ほんとに……あなたと会えて良かったわ……」

946: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:22:28.43 ID:YfLkdqiTo
マール「エイラ。遠い遠いおばあちゃま。元気な子供を生んでね。でないと私が困っちゃうから」

エイラ「おー、任せろ! 子供生む! ねねする! ●●●●やる!」

マミ「マールさんも、ですよ。ひとごとじゃありませんから」

マール「うーん、まだ早いと思うんだけどなあ」

マミ「ふふ……。じゃあいずれ、ね?」

エイラ「マミ、お前もだ! その●●●●、腐らすな!」

マミ「そうね……。いつか私にも、そんな日が来ればいいわね……」


エイラ「エイラ、行く。サヨナラだ!」

マミ「さようなら、エイラ! 元気でね……」

エイラ「マミ! 離れていても、ずっとトモダチ!」

マミ「……ええ、もちろん!」

947: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:25:18.63 ID:YfLkdqiTo
カエル「やれやれ。泣いたり笑ったり、にぎやかな連中だな。こういうものはもっと厳かにやるもんだ」

さやか「師匠……」

カエル「……別れに多くの言葉はいらないさ」

クロノ「そうだな、言葉とは限らない。さやかにキスでもしてもらったらどうだ?」

さやか「え、ええ!?」

カエル「何を言い出すかと思えば……。お前がそういう冗談をいうヤツだとは思わなかったぞ」

クロノ「冗談じゃないよ。キスで姿が戻るっていうのは、ハッピーエンドの定番だろ?」

カエル「フ……。ハッピーエンド、か……」


さやか「あ、あのさ、師匠。ほっぺなら別にいいよ? まー、これまでのお礼ってことでさ」

カエル「残念ながらお前では女としての魅力が足りんな。磨いてから出直して来い」

さやか「なんだよそれ! もー、結局最後までこんなんかよ!」

948: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:27:28.68 ID:YfLkdqiTo
カエル「さやか。これはお前にやる。受け取れ」

さやか「ちょ!? 投げないでよ!」

クロノ「これ……勇者バッジか」

カエル「俺は勇者は引退だ。お前が継げ」

さやか「あたしが……」

カエル「……まあ、お前の時代に勇者など必要ないか。それは卒業証とでも思っておけ」

さやか「……」

カエル「じゃあな」


さやか「……師匠、待って!」

949: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:29:22.92 ID:YfLkdqiTo
カエル「なんだ?」

さやか「グランドリオン出してよ。それでさ、空に掲げて……」

カエル「こうか?」

さやか「そのまま動かないでよ。で、あたしの剣を師匠の剣に合わせて……」

カエル「おい、何をする気だ?」

さやか「よし。……すぅ……ふー……。……」



さやか「我が名は美樹さやか!」

カエル「!」

950: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:33:30.17 ID:YfLkdqiTo
さやか「師匠の願いと、こころざし……そしてこの勇者バッジ……」

さやか「今ここに受けつぎ……」


さやか「『正義』を―――演ずるッ!!!」

カエル「……」



さやか「バイバイ、師匠」

カエル「……さらばだ。我が弟子、美樹さやかよ」

951: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:35:42.83 ID:YfLkdqiTo
魔王「……」


杏子「オイ、待てよ。最後くらい、なんか言うことないのか?」

まどか「ジャキくん……。サラちゃんを、探すの……?」

魔王「……」

杏子「サラ? 誰だよ、それ?」

まどか「……」

952: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:37:39.87 ID:YfLkdqiTo
まどか「これ、あげる。サラちゃんのペンダント……お守りだよ」

魔王「……」

杏子「オイ! だから別れの挨拶ぐらいしてけって! これだからお前は……」


魔王「達者で暮らせ、杏子。鹿目まどか」

杏子「! ……ヘッ。お前こそ、ちゃんとメシ食えよ!」

魔王「……」



まどか「さようなら、ジャキくん……。がんばって……。きっと、見つかるよ……」

953: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:40:50.42 ID:YfLkdqiTo
ロボ「ルッカ、ほむら。ワタシも未来で元気にやっていきマス。心配いりマセン」

ほむら「ルッカ? ロボにお別れしときなさいよ」

ルッカ「……」


ロボ「やはり気づいていたのデスネ」

ルッカ「当たり前でしょ……。ほむら、あんただって……分かってるくせに、何よその態度は」

ほむら「……」

ルッカ「ロボは廃墟となった未来で生まれたわ。でも私たちがラヴォスを倒したことで未来は変わった」

ルッカ「今は、たぶん……ゲートが開いているせいで、まだ世界はつながっていてロボはここにいられる」

ルッカ「でも、新しい未来ではロボの存在は……」

954: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:43:50.81 ID:YfLkdqiTo
ロボ「ハハ、そんなことはないデス。きっと新しい未来でもワタシは……」

ルッカ「バカ! ロボのバカ! 悲しいときは素直に悲しみなさい!」

ルッカ「こっちが余計に……悲しくなってくるじゃない……」

ロボ「……思いやりの気持チ。アナタたちが教えてくれたワタシの宝物デス。感謝してイマス」

ロボ「ダカラ……泣かないでクダサイ」


ほむら「あなたに涙は似合わないわよ。気持ち悪いからやめてちょうだい」

ルッカ「ちょ、何よそれ! ひとが感傷に浸ってる最中に……!」

ほむら「心配しなくても、新しい未来でもロボはきっと生まれてくるわよ」

ルッカ「……ずいぶんはっきり断言するのね。それこそ、あんたらしくないわ」

ほむら「そうね、自分でも驚きだわ。……きっと、ロボが言うことだからでしょうね」

ロボ「ワタシがデスカ?」

ほむら「あなたが私に教えてくれたこと。あきらめなければ、信じ続ければ……」

ほむら「道は必ず開かれる。希望は、必ずある」

ロボ「……」

955: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:46:53.09 ID:YfLkdqiTo
ほむら「ロボ。あなたは人間よりも人間らしかったわ」

ほむら「あなたのおかげよ。私に人間の心を与えてくれて……ありがとう」


ルッカ「そうね! それこそほむらなんかより、ずっと人間っぽかったわ!」

ほむら「ちょっと、どういう意味? 怒るわよ」

ルッカ「ハン。気持ち悪いとか言われた仕返しだっつーの」


ロボ「ハハ。本当にアナタ方がうらやましいデス」

ロボ「不思議デスネ。ふたりを見ているト、内蔵機器の温度が高まるのを感知してしまいマス」

ルッカ「それが心よ、ロボ」

ロボ「……心……ワタシガ……」

956: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:48:41.84 ID:YfLkdqiTo
ほむら「その心……大切にね。さようなら、ロボ」

ロボ「……サヨウナラ、ルッカ。ほむら……」

ルッカ「……さよなら……」


ロボ「!」ドンガラガッシャーン!!

ルッカ「ちょっと、ロボ!?」

ロボ「ハハハ。いけマセンネ、盛大に転んでしまいマシタ」

ほむら「珍しいこともあるものね。大丈夫なの?」

ロボ「ハイ、何も問題ありマセン。本当ニ……」



ロボ「……おっト……オイルでアイセンサーがかすんデ……」

957: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:52:11.85 ID:YfLkdqiTo
ルッカ「いつかした話、覚えてる?」

マール「うん。死ぬ時に見る思い出の話……」

ルッカ「その人が見たかったのは、見せたかったのは、こういうことなのかもしれないわね」

マール「どういうこと?」

ルッカ「いろんな可能性。こんなお話もあるのかも知れないってこと」

クロノ「そうかもな。変な感じだよ。ほむらと最初に出会ったあの時が、もしなかったらと思うと……」

ほむら「懐かしいわね。あっちの時代、こっちの時代と飛び回ったものだから、時間の感覚が麻痺してるわ」

マール「その人は……救われたのかな?」

ほむら「……」


マール「時間を旅するって……結構大変だね。私には荷が重過ぎるかも……」

ルッカ「シルバードも壊したほうが良さそうね。もう、みんなとは会えなくなるけど……」

ほむら「それがいいと思うわ」

958: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:54:18.54 ID:YfLkdqiTo
ほむら「クロノ。あなたには謝らなければならないことがたくさんあるわね」

クロノ「うん?」


ほむら「最初、私はあなたたちを利用してたんだと思う……」

ほむら「にもかかわらず、あなたは何も聞かずに私をずっと守ってくれた……」

ほむら「それに気づけなかった私は、一度あなたを死なせてしまって……本当にごめんなさい」

クロノ「いいよ、別に。女の子を守るのは男子の務めだからね」


ほむら「ああ、それと。リーダーの座を奪ってしまったことも謝らなきゃね」

クロノ「その話はもう勘弁してくれないか」

959: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:56:17.66 ID:YfLkdqiTo
ほむら「マール。あなたには感謝してもしきれないわ」

マール「ほむらちゃん……」


ほむら「あなたはどんなときでも私のそばにいてくれた。自暴自棄になった時も、落ち込んだ時も……」

ほむら「何度あなたに元気付けられたことか、数え切れないぐらいよ」

マール「えへへ。私、それぐらいしか自慢できるものないから」


ほむら「あなたはいいお母さんになると思うわ」

マール「またそれー? どうしてみんな、私を人妻にしたがるのかなあ」

ほむら「早く、くっつきなさいってことよ。でないと、このメガネに取られるわよ」

ルッカ「メガネ馬鹿にすんなよ!」

960: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 02:59:00.21 ID:YfLkdqiTo
ほむら「メガネを馬鹿にするなんて、とんでないわ。その利便性は十二分に承知してるわよ」

ルッカ「メガネより私に謝りなさいよ! さっきから私の扱い、ひどくない!?」

ほむら「そういうわけで、あなたのメガネは私がもらうわね」

ルッカ「なんでよ!?」

ほむら「記念よ。代わりに、あなたに貸した『PKP ペチェネグ』を持っていっていいわ」

ルッカ「いらないっつーの! てか別にあんた、目悪くないでしょ!」

ほむら「言ってなかったっけ? 私、昔は視力悪かったのよ」


ほむら「というわけで、はい。メガネいただき」

ルッカ「ちょ!? 返せ!」

ほむら「なかなかいい付け心地ね。どう、似合うかしら?」

クロノ「ハハ。あんまりイメージなかったから、よく分からないな」

マール「そうかな? 私は似合ってると思うよ。メガネ美人さんだ!」

961: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 03:02:07.13 ID:YfLkdqiTo
ルッカ「だーかーらー! 冗談じゃなく私、それがないと全然見えないのよ!」

ほむら「あー、うるさい。まったく……。このうるささがなくなると思うと、少しさびしいわね」

ルッカ「裸眼じゃ、今目の前にいるほむらの表情すらほとんど見えないの! お願いだから返してってば!」


ほむら「……本当に……さびしくなるわね……」

マール「ほむらちゃん……」

クロノ「……ルッカが近眼で良かったな、ほむら……」

ほむら「そうね……。今のこの顔見られたら……何を言われるか分かったものじゃないわ……」

ルッカ「なに? なんのことよ? ちくしょー、全然見えない!」

962: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 03:06:50.72 ID:YfLkdqiTo
マール「あ……! まずいよ、ゲートが閉じかけてる!」

クロノ「時間切れか。名残惜しいけど……」

ほむら「ええ、行って。大丈夫、すべてあるべき場所に戻るだけよ」

クロノ「ルッカ、行くぞ!」

ルッカ「ちょ、ちょっと! 強引に引っ張らないで。頼むからゆっくり……視界がボヤけてるんだから……」

マール「それじゃ、さよなら……ほむらちゃん!」

クロノ「さようなら、ほむら!」


ほむら「……ええ……さようなら……。クロノ……マール……」

963: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 03:10:32.01 ID:YfLkdqiTo
ルッカ「ほむら!」

ほむら「! ……なに? はやく行きなさいよ。ゲートが閉じるわよ」


ルッカ「気が変わったわ。やっぱり私、またあんたに会いに来るから」

ほむら「……シルバードは壊すんでしょ?」

ルッカ「シルバードには頼らない。私が、新しいたーいむマシーーンを造ってやるわ!」

ルッカ「自分で造ったものをどう使おうが、誰にも文句は言わせないわよ。オーッホッホッホ!」

ほむら「ハア……。相変わらずね、あなたは。……できるの、そんなこと?」

ルッカ「できるに決まってるじゃない! なんたって私は……」


ほむら&ルッカ「天才ルッカちゃん、だものね」


ルッカ「アハハ!」

ほむら「ふふっ……」

964: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 03:13:21.74 ID:YfLkdqiTo
ルッカ「何年、いえ、何十年かかろうが完成させてみせる。私の人生すべてをかけてでも……」

ルッカ「だから待ってなさい。必ず、会いに来るから」

ほむら「待つほうの時間は関係ないでしょ。この時代に来るんだから」

ルッカ「そういうこと言ってんじゃないわよ! 心構えの問題だっつーの!」

ほむら「分かってるってば、冗談よ。……信じてるから」

ルッカ「……へー? 意外なセリフが飛び出したわね」

ほむら「いけなかった?」

ルッカ「驚いただけよ。まあ……うれしいかな、少しだけ」

ほむら「それはそれは。慇懃無礼も使いようね」

ルッカ「ハン。照れ隠しぐらい見抜けないルッカちゃんだと思って?」

965: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 03:16:51.32 ID:YfLkdqiTo
ほむら「……いつまで居残る気よ。帰れなくなってもいいの?」

ルッカ「おっと、そりゃまずいわ」


ルッカ「それじゃ……今言ったこと、忘れないでよ」

ほむら「忘れたくても忘れられないわよ。だいたいあなたは、いつだってそうしつこくて……」



ルッカ「『約束』だからね!!」

ほむら「!! ……」

966: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 03:22:24.68 ID:YfLkdqiTo
♪コネクト (魔法少女まどか☆マギカ OPテーマ)


ほむら「……ええ……『約束』よ……!」



967: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 03:24:38.79 ID:YfLkdqiTo


…………

………

……



968: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 03:32:25.77 ID:YfLkdqiTo
この物語は、人間賛歌のお話。

魔法少女たちが、救われるお話。

まどかとそのお友達が、失ってしまったもの、ずっと望んでいたものを、手に入れるお話。


それは、永遠とは続かないけれど……。

でも、大丈夫。だって奇跡は、起きたのですもの。


誰にも認識されないはずの私の話を、こうしてみなさんが読んでくれたという、とても大きな奇跡が……。



あまたの時代を渡り歩いた彼女たちの旅は、ようやく現在に帰ってきました。

最後に、まどかとほむらさんの『今』を一緒に見ながら、この物語の幕としたいと思います。


ここまでお付き合いくださって、本当にありがとう。

語り部は私、サラが務めさせていただきました。



それではみなさん、また、いつの日か……。

969: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 03:39:14.67 ID:YfLkdqiTo


エピローグ「奇跡も、魔法も――――あるのだから」



970: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 03:42:25.95 ID:YfLkdqiTo
A.D.2013 ガルディア市国


ほむら「まどか、まどか……起きて」

まどか「……ふぇ?」


ほむら「目的地に着いたわ、バスを降りなきゃ」

まどか「え、あ! ね、寝ちゃってたの、わたし!? あ、降りまーす!」

ほむら「日本語で言っても通じないと思うけど……。あと、バッグ忘れてるわよ」

まどか「はわわわわ」

ほむら「……」ホムホム


…………



971: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 03:46:47.47 ID:YfLkdqiTo
ほむら「時差ボケかしら? ずいぶんとぐっすり寝ていたわね、ヨダレも垂らして……」

まどか「もう~! 見てないで起こしてくれれば良かったのに!」

ほむら「ごめんなさい。あんまりにも気持ち良さそうだったから」


まどか「それにしても、卒業記念にほむらちゃんと海外旅行だなんて夢みたいだよ!」

ほむら「私もうれしいわ。まどかのご両親には感謝しなきゃ……無茶なお願いを聞いてもらったんだし」

まどか「あ、見て。喫茶店があるよ」

ほむら「ジェラテリア・バールね」

まどか「じぇら……なに?」

ほむら「アイスクリーム中心の軽食喫茶店のことよ。寄っていきましょうか?」

まどか「うん、そうだね。ちょっとおなかも空いてきたし!」

972: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 03:50:35.19 ID:YfLkdqiTo
A.D.2013 ガルディア市国 ジェラテリア・バール


まどか「……」

ほむら「まどか? 注文しなくていいの?」

まどか「メニューが読めないよ……」

ほむら「ああ、まあ……英語じゃないからね。私が訳してあげるわ」

まどか「はああ~。高校ではもう少しちゃんと勉強しないとなあ」

ほむら「別に、まどかは普通よ。私が変なだけ」


…………


まどか「ん~、おいしい!」

ほむら「なかなかいけるわね、これ」

まどか「こうしてると、なんか……マミさんの紅茶を思い出すよ」

ほむら「今飲んでいるのはカプチーノだけれどね」

まどか「時の最果てでも、みんなでお茶会したよね……」

ほむら「……そうね、懐かしいわ。つい最近のことのように思える……」

まどか「……」

973: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 03:56:44.38 ID:YfLkdqiTo
A.D.2013 ガルディア市国 ガルディア美術館


ほむら「これで一通り見て回ったわね。どうだった?」

まどか「うーん……変な感じだったよ」

ほむら「変な感じって?」

まどか「だって、ほら。A.D.600とA.D.1000のふたつの時代だけとはいえ、実際に見たことがあるのに……」

まどか「それが、ガラスの中で劣化した姿で……時の流れって、こういうものなのかなあ……って」

ほむら「……」


まどか「あ、でも! 絵画とか彫刻の展示は面白かったよ!」

ほむら「そういえば色々飾られていたわよね。何か気に入ったものはあったの?」

まどか「うーん……。『魔王と勇者』とか『王妃像』とか……『森の聖女』も……」

まどか「『私が大臣です』『千年祭』『空飛ぶ船』『鍛冶屋メルキオール』『探検家レバイン』……」

ほむら(多すぎない?)


まどか「あと、あれ! 『歴代王の肖像画』!」

ほむら「ああ……あったわね。そういうのも」

974: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 04:07:21.82 ID:YfLkdqiTo
まどか「特に、あの……ウェヒヒヒ! 今思い出してもおかしいよ」

ほむら「なにが?」

まどか「ガルディア34世の肖像画。ぜんっぜん似てなかったよね!」

ほむら「分からないわよ。描かれた時には、ああいう容姿だったのかもしれないし」

まどか「え~……。あんな、ぶくぶくに太っちゃった姿は想像したくないなあ……」


ほむら「アンティークの展示もやたらあったわね……ティーセットとか……」

まどか「私、レプリカ買っちゃった。お土産にしようっと」

ほむら「今、買ったの? かさばるんじゃない」

まどか「……うん。ちょっと失敗しちゃったかも」


まどか「それで、これからどうする? もうホテルに戻る?」

ほむら「待って、最後に……どうしても行きたいところがあるのよ」

まどか「え?」

975: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 04:15:54.23 ID:YfLkdqiTo
A.D.2013 ガルディア市国 リーネ広場跡


まどか「……ここって……」

ほむら「まあ、期待はしていなかったけれど。ほとんど見る影もないわね」

ほむら「リーネの鐘もない……。残っているのは台座だけ、か……」

まどか「……」


ほむら「パンフレットによると……『広場の象徴ともなっていた"リーネの鐘"は老朽化に伴い……」

ほむら「千年祭の年、当時の王女の名を冠した新しい鐘に付け替えられた』……。へえ……」

ほむら「『マールディアの鐘』か……。現物を拝めないのは残念ね」

まどか「ほむらちゃん……」


ほむら「まどか、少しだけここで座って休んでいってもいい?」

まどか「うん、もちろん……」

976: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 04:23:12.08 ID:YfLkdqiTo
ほむら「……」

まどか「……」


ほむら「急に冷えてきたわね……。もうすぐ日も暮れるし……」

まどか「うん……。ちょっと、風も出てきたかも……」

ほむら「寒くない、まどか?」

まどか「ん……大丈夫だよ」

ほむら「ごめんね、もう少しだけ……」

まどか「分かってる。ほむらちゃんの気の済むまで、ここにいていいよ」

ほむら「ありがとう……」


まどか「……」

ほむら「……」


まどか「……ねえ、ほむらちゃんは……」



カラーン...コローン...

977: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 04:28:35.40 ID:YfLkdqiTo
まどか「えっ!?」


ほむら「なに、まどか?」

まどか「あ、え? な、なにが?」

ほむら「今、何か私に聞こうとしたでしょ?」

まどか「あ、や……別に……。それより、今……鐘の音が……」

ほむら「鐘?」

まどか「……ううん。やっぱりなんでもない……」

ほむら「? おかしなまどか……」

まどか「……」


まどか(気のせい、だよね……。ほむらちゃんも何も聞こえてなかったみたいだし……)

まどか(……そもそも、鐘はもうないんだし……)

まどか「……」


まどか「……? あれ……」

まどか「風……いつの間に、やんだんだろ……」

978: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 04:36:40.52 ID:YfLkdqiTo
ほむら「……ねえ、まどか」

まどか「ん?」

ほむら「『奇跡』って、あると思う?」

まどか「……? どうしたの、急に」

ほむら「魔法は、確かに存在する。なら……」

まどか「ほむらちゃん? どこ見てるの……?」

ほむら「……」

まどか(空……? なんで空見てるの? 何かあるのかな……)


まどか「……」

まどか「飛行機雲……? それも、すごく長くて、キレイにまっすぐ伸びた……」


ほむら「私は、あると思う」

まどか「え……?」

979: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 04:40:34.50 ID:YfLkdqiTo


ほむら「この世界には、奇跡も、魔法も……希望だって、あるのだから」



980: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/05/13(月) 04:47:23.67 ID:YfLkdqiTo
EDテーマ

♪遥かなる時の彼方へ



魔法少女まどか☆マギカ × クロノトリガー


      ほむら「時の卵?」


                         The End