女「ちょっとぉ、どこ触ってんの///」男「眼球」
女「や、やめてよ」
男「それにこの弾力……視力もいいはずだ。いくつ?」
女「えーと、右1.5、左1.2だったかな」
男「やっぱりな。いい網膜してるもん」
女「そんなところまで触らないでよ……」
男「これは視神経だな。首じゃなく、眼球の後ろにあるんだな」
女「首にあるわけないでしょ!」
男「耳たぶ」
女「なんで耳たぶなんか……」
男「この柔らかな手触り……餃子の皮、というより生八つ橋の皮を彷彿とさせる」
女「や、八つ橋って京都の!?」
男「触れば触るほど、京都の情緒を感じ取ることができる」
女「京都の人に怒られるよ」
男「ああ、こんな耳たぶにぶつかって拾ってもらえる音はなんて幸せ者なんだろう」
女「どういう褒め方よ」
男「つむじ」
女「あんまりグリグリしないで」
男「なんて形のいいつむじだ……美しい」
女「自分じゃ見えないからよく分からないんだけど」
男「つむじ風という言葉があるが、このつむじはそんなものではない。もはや台風だ」
女「た、台風……?」
男「君は頭の上に台風を宿らせている……風の申し子!」
女「なんだか東南の風でも吹かせられそうな気がしてきたよ」
男「鼻の穴」
女「やめて……ばっちいよ!」
男「ばっちくなどあるものか。この風情は、岩山にある古い洞窟に通じるものがある」
女「洞窟って……」
男「君の鼻の穴を見てると、フリードリヒ・ニーチェの格言を思い出す」
女「ニーチェ?」
男「“深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ”」
女「あんまりのぞかないで欲しい!」
男「ノド」
女「ノドって……おえっ!」
男「なんて綺麗な口蓋垂だ。一流ボクシングジムのパンチングボールのようだ。指でいじってみよう」
女「おえっ、おえっ、おえっ!」
男「ここから君のボクサーのストレートのような力強い声が出てるんだね」
女「おおえっ!」
男「ああ……四角いリングの中で戦ってるような錯覚すら抱くよ」
男「足の小指」
女「なんでよりによってそんなところを……」
男「指の赤ちゃんみたいで実に可愛いね。父性をくすぐられるよ」
女「そんなこといいながら小指をくすぐらないでよ」
男「若干内反小趾(足の小指の変形)気味なのも、かえっていい味を出している」
女「一時期無理して小さな靴履いてたからかも……」
男「舌」
女「ひゃ、ひゃべりにくい(喋りにくい)」
男「うーん、この手触り、たとえるならそうだな……なまこ」
女「はまこ(なまこ)?」
男「それも上流のなまこだ。キングなまこ。君の舌はなまこの王様だ! なまこ王朝万歳!」
女「へめてひょおうにひてよ(せめて女王にしてよ)……」
男「うなじ」
女「うなじは……好きな人多いよね」
男「君のうなじはパーフェクトだ。この首筋に、光に誘われる蛾のように吸い寄せられそうになる」
女「ど、どうも」
男「なんかこう、叩き込みたくなるよね。手刀を」
女「手刀!?」
男「ちょっと叩き込んでいい?」
女「いいわけないでしょ!」
男「手首の脈」
女「ええ……?」
男「ピクピクしてて気持ちいいな」
女「やめてよ、気持ち悪い」
男「まるで手首の中に小さなエイリアンがいるみたいだ。手首を突き破って出てきそう」
女「エ、エイリアン!?」
男「あれ? 脈拍が上がったぞ。どうかした?」
女「あんたのせいだ!」
男「肘」
女「女の肘なんか触ってどうすんの」
男「うーん、いい肘だ。この肘関節ならスムーズに腕を曲げることが可能だろう」
女「どういたしまして」
男「硬度もいい。この肘なら素晴らしいエルボーを放てることだろう」
女「んなもん放ちたくない!」
男「女子プロレスラーになってみては? 絶対チャンピオンになれるよ」
女「なれないしならない!」
男「魚の目」
女「え、魚の目なんかあった!?」
男「あるよ。とてもいい魚の目だ。生き生きしてて今にも泳ぎ出しそうだ」
女「泳がれたら困る!」
男「この魚の目をスプーンでくり抜いて、醤油とバターで味付けして、七輪で焼いて食べてしまいたいよ」
女「食べないで!」
男「土ふまず」
女「魚の目もそうだけど、単に足の裏じゃないのがあんたらしいよね」
男「この土ふまず、非常によくへこんでて実にいい。月面のクレーターにしても違和感がない」
女「月の方が断るんじゃない」
男「『絶対に土なんか踏んでたまるものか!』という強い意志が表現された土ふまずといえるだろう」
女「私、別に土嫌いじゃないのに……ガーデニング趣味だし」
男「額」
女「熱でも測ってんの?」
男「硬く、程良く広く、こんなにも完成された額は世界でも稀だろう」
女「ワールドクラスなんだ……私のおでこ」
男「“猫の額”という言葉があるが、君の額はそんなものじゃない」
女「どんなものなの?」
男「百獣の王“獅子の額”……“ライオンズ・フォアヘッド”!」
女「あんたは百バカの王だよ」
男「くるぶし」
女「頭触ったり足触ったり、忙しいなぁ」
男「土ふまずとは対照的に、綺麗にドーム状に盛り上がっている……」
女「どうもありがとう」
男「中でプロ野球の試合が行われたとしても誰も驚くことはないだろう」
女「いや驚くっての」
男「きっと試合も盛り上がってるに違いない」
女「うまいこと言おうとしなくていいから」
男「へそ」
女「あんたにしては比較的まともなところを……いやまともじゃないか」
男「へそとは体の中心、いわば人体の首都だ。君の首都は東京やワシントン、北京ロンドンにも負けないほど賑わってる!」
女「そ、そうですか」
男「ちょっとへそを掘ると……ほら、お宝が収穫できた」
女「お宝?」
男「へそのごま」
女「ほじくり出さないでよ!」
男「肩甲骨」
女「で、どうですか?」
男「うん、健康的で形のいい、理想的な肩甲骨だ。おっと、ダジャレじゃないぞ」
女「分かってるって」
男「肩甲骨は人類に羽根があった名残りだなんていわれたりもするが……今にも羽根が生えてきそうだ」
女「え、どんな羽根……?」
男「巨大なコウモリのような……」
女「悪魔じゃねえか!」
男「えくぼ」
女「レビューお願い」
男「うっすらとして、それでいて存在感はある……完成度の高いえくぼといえるだろう」
女「えくぼに完成度とかあるんだ」
男「このえくぼはまさに勝利の女神の微笑み……もしも君が微笑んでいたら」
男「きっと平氏は源氏に勝てただろうし、西軍は東軍に勝てただろう。その時歴史は動いた」
女「どんだけすごいのよ、私のえくぼ」
男「鼻の下のスジ」
女「穴を触る時についでに触っておいてよ……」
男「まっすぐな直線を描いていて、見てるだけで心を奪われるよ」
女「どうぞどうぞ奪われて下さい」
男「たとえるなら、そうアメリカのルール66。多くの旅人たちが君の鼻の下を通るんだろう」
女「旅人ってなに? 鼻水とか?」
男「ニキビ」
女「え、できてた?」
男「美肌を邪魔するように、ぷくっと膨れ上がったニキビ……」
女「そんなに膨らんでる?」
男「だが、それがかえって肌の美しさを際立てている。このニキビはMVPニキビだ」
女「肌褒められてるから悪い気はしないけどさ」
男「もっと増やしてここにニキビの楽園を作ろう。わざと酷いケアをして君の顔面をニキビまみれにするんだ」
女「やめて」
男「胸」
女(やっと……触ってくれたね)
男「……大したことねえな」
女「おい!!!」
完
コメント一覧 (4)
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- 2021年04月14日 23:44
- 72点
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- 2021年04月15日 05:35
- ほとんど。むしろ、かなり脳の病気ですな・・・(匙投げー)
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- 2021年04月15日 21:51
- 72の壁だったか
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- 2021年04月22日 13:19
- 眼球がマシュマロみたいとかヤバくね?