母には、数年前に亡くなった腹違いの姉がいる。
母たち姉妹や、兄と私の人生はこの人がいなければどうなっていただろう。

母が中学生の時、帰宅途中に自転車で転び大怪我をしてしまったらしい。
その時、1人の綺麗な着物の女性が駆け寄って来てくれた。
ブランド物のハンカチで躊躇せずに血を拭い、救急車を呼んで病院に付き添い、親御さんが来るまで私が居るわと5時間近く手を握り続けてくれたそう。
そこに血相変えて駆け込んできた祖母と顔を合わせたことで、母と女性は自分達が腹違いの姉妹だと知った。
女性、もとい伯母は5時間も待たせた祖母を母親失格だと罵り、母のことも
「あなた不倫の末に産まれた子供なのよ。人様の幸せを壊して、この女は私の母が身体を壊すまで離婚を迫ったのよ。」

と諸々暴露して去って行ったらしい。


思春期だったこともあり、以降母は祖父母と疎遠になっていった。
その頃、祖父母はというと、そこまでして貫いた道ならぬ恋にも関わらずほぼ家庭内別居状態だったとか。

母は後になって知ったそうだが、伯母は祖父の父母が長子として大変可愛がっており、先妻が出来た人だった事もあって祖父の方が祖父実家での居場所が無かったようだ。
その大事な伯母が籍に残った上で男の子を産んだため、曾祖父だけでなく祖父も大喜び。
それが原因で祖父母の夫婦仲に亀裂が入った。

数年後、高校生の母は進学のことで祖父母と揉め、家を飛び出そうとした。
自分の人生は好きに生きるとカバンひとつで東京駅のホームに立っていると、女性に声を掛けられた。
伯母だった。
話を聞いた上で、

「あなたただでさえ不倫の子なのだから、大学くらい出ておかないとどうにもならないわよ」

と言われたらしい。
だが、母は妹に比べ成績が悪く、祖父母には専門で資格を取ることを勧められていた。
好きな進路など、お金を出して貰えるはずがない。
そう言うと伯母は、

「なら私が出してあげるわよ。そうね〜、あそこの女子大がいいわ」

とポンと学費を払ってくれたらしい。

その後、母はしにものぐるいで勉強し、その女子大に見事合格。
第1希望とはいかないまでも、なんとか進みたい方へと就職した。

その後、母の妹である叔母が変な男に引っかかった時も、
父がリストラされ酒に溺れてDV男になり、父から逃れる時も、
いつだって嫌味を言いながらも真っ先に手を差し伸べてくれるのは伯母だった。
祖母は何かと母の事をコントロールしたがるというか、中々難しいタイプの人で最後まで娘とも孫とも微妙な距離があるままだった。

生前の伯母は、祖母が不倫の末に後妻になったこともあってか、伯母の家族や親族、住まいや暮らしについて私たちには一切を見せてはくれなかった。
たまにやって来ては、銀座のデパートのケーキとお小遣いを母と私たちにくれた。
いつも着物を着て、年齢不詳の美しい人だった。

伯母が亡くなった際、伯母の息子さんの奥様から電話を貰って初めて、伯母の息子さんが母と同い年であったことを知った。
実の両親である祖父母が亡くなった時さえ気丈に振舞っていた母が、電話口で泣き崩れていたことを鮮明に覚えている。

母と叔母と私たち兄妹で通夜に行くと、大きな会場は弔問客で溢れていた。
私たちは呆気に取られながら焼香し、会場を後にした。
49日を過ぎた頃、伯母の息子さんの奥様が、伯母がいつも買ってきてくれたケーキを手に尋ねてきてくれた。
生前伯母はただ一人奥様にだけ、私たちの事を話した上で後のことを頼んだそうだ。
伯母は、母の母である祖母が父を略奪したため、母子家庭となり苦労したんだそう。
伯母の妹が賢い人だったそうで、医者になりたいというため、学費のために伯母は15で花街で舞妓になったらしい。
そこで若旦那に見初められ、嫁いでいったそうだ。
伯母は芸事が良く出来たそうで、芸妓を辞めてからは芸事の先生として教える側へと回った。
旦那さんの稼ぎもあり、伯母自身の稼ぎもあったため、自由に出来るお金はあったらしい。
そんな時に、たまたま母が産まれていたことを知り、長らく気にかけていたそうだ。
怪我をした所に居合わせたのは偶然だったらしい。
それでも、居合わせたことに縁を感じて学費を援助したりその後も何かあれば世話をやき続けてくれたらしい。
金持ちの道楽で何もそこまで、と思ったが、
奥様によると自分が舞妓時代に毎日のように傍の神社で祖母の不幸を願ったために母や叔母にとばっちりが回ったのではと罪悪感を感じていたらしい。
強い人だったが、優しい人でもあったと奥様は回想していた。
先日、ついに兄もやっと結婚が決まった。
お相手は、なんの縁か伯母の元教え子という方。

きっと今もお姉さんは私達の事を見守ってくれているのねと、母が形見分けしてもらった簪と写真に手を会わせていたので、一緒に手を合わせた。
ここからは私の推測だが、伯母は下の姉妹のために人生が傾きかけた母に自分自身を重ね、両親との不破に四苦八苦する母姉妹に自分たち姉妹を重ねたからこそ、手を差し伸べてくれたのでは無いかと思っている。
兎にも角にも、母にとって心の支えとして伯母が居てくれて良かったなと、伯母に手を合わせずには居られない。 

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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:fILzwQAK0編集削除
(´;Д;`) イイハナシダナー
2 . 嘘松  ID:tZkwLN1q0編集削除
参上
3 . 名無しさん  ID:iBdEl9Ze0編集削除
長〜
途中で読むの辞めた
すんまへん
4 . @  ID:MJAUOp4I0編集削除
ジョーカー
5 . 名無しさん  ID:SVks7ZEC0編集削除
いい話だなー。
でもとにかく読み辛い。
素人なので指摘も何もできないが。
6 . 名無しさん  ID:lAcGd3Dt0編集削除
明確に場面に伯母を叔母、そして場面に応じて姉とかき分けてくれてるけれど

わかりずらい!

なぜだろう???
7 . 名無しさん  ID:tmgA1O.90編集削除
※6
伯母叔母はええけどそれ以外の登場人物がもうごっちゃごちゃなんやね
祖父母の父母とか言っちゃってるし妹も何人も出てきてるし
8 . 名無しさん  ID:v.bt9CUx0編集削除
各名称はその通りなんだけど頭に入って来ないw
俺ってバカなんだなぁと実感しました。
9 . 名無しさん  ID:kAkoU6me0編集削除
いい話だけど読みにくいな
祖父母もどっちの事なのかとか分からなくなるし、A子とかB子とかつけた方がいい

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