※Aは女

友達の武勇伝
俺は小学生の頃、風邪をこじらせて入院、なんやかんやで脊髄注射をして死んだほうがましだという痛みに耐えて過ごしていた
中学の入学目前まで入院生活は続き、お陰で勉強がからきし出来なかった
しかも寝たきりだったから身体もブヨブヨ、頭も悪けりゃ顔も悪い、格好のイジメの対象だった
とにかく勉強ができなくて、テストがある度に解答用紙を奪い取られて点数を見せびらかされ、馬鹿にされた
せっかく学校に行けるようになったのに、また登校できなくなる一歩手前でクラスメイトのAが動いた
三回目の中間の結果を返された時、俺はまた返されたテストを奪われからかわれていた
その時Aは静かに動いてクラスメイトの解答用紙を片っ端から集めていった
休み時間、先生が消えたタイミングを見計らい、Aは皆の解答用紙をばらまいた

「お前ら、コイツのこと馬鹿にしてんのにこんだけしか点数とれねーの?wザッコwww」

Aは同時に自分の解答用紙を黒板に貼り付けた


100点のオンパレード、たまにミスがあっても98点とか

「こいつのこと馬鹿にしてるけど、笑ってるヤツでこいつより点数低いやつ、いるよなぁ?」
「名前言って欲しい?言おうか?えーでは最下位から」

そこまで言ったところでAはまわりから取り押さえられ、髪を引っ張られたり引っ叩かれたりしていた
凄かったのはAはそれでも騒いだり喚いたりせず、淡々と俺より点数の悪い人たちを羅列していたこと
その後Aは担任に呼び出されたが、

「クラスメイトの人らが俺くんに対してやったことを再現しただけですけど?
 先生何も言わないってことは問題行動じゃないんですよね?」

と言ってのけた
俺はAに

「そんなこと言ったら先生に嫌われるよ」

といったが、Aは俺に

「人の顔色ばっか伺ってるからイジメられんだよカス、話しかけんな屑」

と言った
Aこそいじめっ子体質だった

Aは性格こそ悪いが頭はいいので、俺は思い切って数学を教えてもらった

「こんなのもわかんねーのかカス」
「奨学生以下だタコ」
「園児か雑魚、雑魚は食われて氏ね」

さんざんボロクソに言われ俺は泣きながら勉強を教えてもらった
俺の泣き顔を

「エイリアンみたいでキモい」

と言われたのが今でも地味にショックである
ある日Aは俺に

「お前国語できるだろ」

と言ってきた
理由は

「会話が通じるから。馬鹿は会話通じない」

だった、意味がわからなかった
それからはAの塾で使う教材で国語のスパルタも始まった

「日本人が日本語つかえねーのかよ雑魚」
「指示語もわかんねーの?オコチャマ言葉で言おうか?wこ・そ・あ・ど、言葉でちゅねーww」
「日本語になってねーだろタコ、記述やりなおせ雑魚」

とにかく雑魚とカスとタコを言われまくった記憶がある
Aとの特訓は一年が終わるまで、放課後ずっと続いた
二年生になったらAとはクラスが別れた
ものすごく安堵したけど、テストを奪ってたいじめっ子がまた同じクラスで担任を呪った
俺は家に帰って親にAとクラス別れたと伝えた
母親は何を血迷ったのか

「それならAと同じ塾に行きなさい」

と言った
アホかと、Aの行ってる塾は入塾試験があってパスしないと入れないんだぞ
兎にも角にも入塾試験をむりやり受けさせられた
試験日に塾にいくとAが居たので挨拶したが、ゴミを見るような目で見られた・・・
そして結果、

「数学と国語の偏差値が58です、残りが壊滅的ですが・・・保留という形で受け入れます」

と言われた
保留、つまり伸びなければやめさせられるということ、なんと塾に入ることができた
クラスは勿論一番下だったが、Aは当然のように一番上
塾内の掲示物で知ったが、Aは塾内で一位どころか全国模試でも二桁の順位だった
それから俺は頑張った
塾内では模試の点数と順位が張り出されるのでAから馬鹿にされないよう必死だった
Aから見放されるのが怖かったのかもしれない、Aに見られているという意識だけで頑張った
家でも泣きながら勉強した、泣きすぎて親が心配して病院に連れて行かれるところだった
俺はAの「エイリアンみたいでキモい」という言葉をバネに涙を引っ込めることを覚えた
俺のメンタルは鋼へと進化した
いじめも鋼のメンタルで乗り切った

一年後、三年生になった頃には俺は劇的な進化を遂げていた、なんと塾でAと同じ一番上のクラスになったのだ
涙と汗と鼻水の結晶とはこのことだと思った
しかしいいことばかりではなかった、学校でまたいじめっ子と同じクラスになったのだ
三年間一緒、本格的に担任を恨んだ
しかもAまで同じクラスだった
教室でAと顔を合わせたら

「うわぁ」

と言われた、鋼のメンタルは砕けた
三年生ともなると、みんな体格もデカくなり力もつく
しかも俺が勉強できるようになったことで、いじめの内容が変化した
美術で作った作品を壊される、鞄をトイレに捨てられる、スレ違いざまに殴られる、ぶつかり稽古と称して壁に叩き付けられる
そんな俺を見てAは

「やり返せよ雑魚」

と言った
俺は180の巨体にまで進化したが、心はもやしでできていた、反抗なんてできるはずもなかった
ある日俺のチャリが無くなっていた
たまにやられるんだが、俺のチャリをいじめっ子が近くの田んぼの溝に捨てるのだ
Aはそれを知るなり、駐輪場に戻り俺にいじめっ子のチャリを運ぶように指示した
拒否したらまたカスだのタコだの雑魚だの言われたので、俺は仕方なく言われるがままチャリを運んだ
Aはチャリを俺のチャリがある場所まで運ぶと

「そーい!」

と溝に投げ捨てた
そして俺のチャリを引き上げると

「お前最低だなー人様のチャリをなー」

と言い残して帰っていった
おいいいい待てよコレ俺がボコられるじゃねーか!
俺は泣きながら帰った

翌日案の定俺は教室にいくなりマジギレしたいじめっ子にぶん殴られた、ボッコボコだった
なんせ初めての反抗だったからそりゃもう凄かった
誰かが慌てて先生を呼んできてその場で事情聴取された
いじめっ子は俺がチャリを溝に捨てたとキレまくって言っていた
俺が釈明できずにモゴモゴしてると、Aが割り込んできた

「俺くんやってませんが?なんで俺くんだと思ったんですかー?」

Aは語尾を伸ばしながら俺を睨んだ
俺はすかさず、俺のチャリがいつも溝に捨てられていること、昨日も捨てられていたことを説明した
そしてAが一言

「いじめっ子くんのチャリ捨てたの私でーす、なのになんで俺くんだと思ったんですかー?」

何てこと言い出すのかと思った
その後夫々が職員室に呼び出され、個別に話を聞かれ、結果見てみぬふりをされていた俺へのいじめが表面化することとなった
Aはいじめっ子に謝ることになり、いじめっ子は俺に謝ることになった
いじめっ子に謝るAがニヤニヤしていて、コイツ本物のドSだと核心した
いじめっ子はプライドがズタズタになりながら俺に謝罪、後日親同伴で家にまで謝りに来た
いじめっ子はスポーツ推薦で高校をねらっていたようで、いじめが露呈すると不味かったらしい
俺のことはよかったが、俺はAの内申が心配で仕方なかった
聞くと

「内申使って行くような高校は私のレベルに合わない」

とバッサリと言われた
実際Aは県外のトップの私立高に行くことになった
自転車事件からはいじめもかなり減り勉強に集中できるようになった
塾の追い込みのせいでいじめにかまけてる暇もなくなった
Aは余裕で暇を持て余したのか、俺の鞄が捨てられたりすると捨てたやつに指パッチン仕掛けたり、静電気が走る謎の玩具を仕掛けたりして影で笑ってた
その時本気で恐ろしいやつだと思った
そんなこんなで俺は三年間を無事不登校になることもなく乗り越え、親でさえ疑うくらいレベルの高い高校に受かった
あまりにレベルが高すぎてその後の三年間は中1の時の苦痛を再度味わうことになったが、Aのせいで培われた挫けない精神で無事卒業、第一志望の大学に合格して今に至る
Aはどうしてるかなと思ってA母とメル友になっていた母さんに聞いたところ、

「趣味爆発させてるらしい」

何だろう、聞いたところでロクでもないような気がして深く聞けない

母さん情報によると
「子供好きが転じて家庭教師のバイト三昧」らしい
あれ、おかしいな、Aは言葉が通じない対象が大嫌いなはずなんだが
子供とか天敵だと思うんだが
と勘ぐってたら

「あんたの時給の倍らしいわよ」

案の定金の為だったもよう
大嫌いな社会以外全部教えてるらしい

Aが嫁とか、よつんばいになって踏み台になってる俺の姿しかイメージできないからやめてくれ
そもそも俺まだ結婚するほど年取ってない

母さんがA母と繋がってるだけで、俺は卒業後成人式の時にAに会ったきりだからな
俺の存在も忘れてるんじゃないと思う

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この記事のコメント一覧
1 . 名無しさん  ID:QcaRVzzp0編集削除
こいつ、自らフラグを折りに行きおった…バカじゃねーの!
2 . 名無しさん  ID:tcf9glVK0編集削除
まあそのうち、こいつが拒否ろうがなにしようが、Aのほうから
こいつを召喚しにくるだろうから、冷や汗かいて待ってろ
そしてもげろ
3 . 通りすがりさん  ID:MTScKRvn0編集削除
結婚てのは年を取ったらするもんじゃないんだぜ。

…覚悟が決まったら、だな。
4 . 名無しさん  ID:IHbzEfEY0編集削除
鋼のメンタルは打ち砕かれ、もやしが原材料の心は、日を当てて豆になれると芽が出るね
5 . 名無しさん  ID:a8uTC.r30編集削除
Aにょぼ

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