ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!」 キョン「憤慨してみたり」

1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/24(土) 14:42:36.58 ID:YpJ9xjQ20


朝比奈「……」ドキドキ

ハルヒ「……みくるちゃん、これは……」

朝比奈「は、はい! どうですか……?」

ハルヒ「没よ没! 全っ然全然ダメね。なんていうか、もっとこう……そう! 刺激が欲しいのよ読者は!」

朝比奈「し、刺激ですか……刺激……」ウーン

キョン「ん? なんだ刺激が欲しいのか? どれ、かつて神々の戦いを終わらせた一撃を……」ガタッ

古泉「物理的な刺激はおやめください。というかそれはもはや刺激のレベルではありません」

キョン「口動かしてねぇで手ぇ動かせ手ぇ! 俺みたいに!!」ブンブン!

古泉「僕はあなたほど口も手も回りませんので。あなたも振り回している手をタイピングに使えばどうです?」

ハルヒ「古泉くんの言う通りよキョン! あんたさっきから何一つ作業が進んでないじゃない! さっさと書き始めなさい!」

朝比奈「刺激、刺激……」

長門「…………」カタ カタ

キョン「っつってもよぉ……」

ハルヒ「言い訳無用!! いーい? これはSOS団創立以来、幾度となく対面してきた負けられない戦いよ!!」

キョン「そんなにあったっけ? 例えば?」

ハルヒ「野球大会とかあったじゃない!」

キョン「それ負けたじゃねえか」

ハルヒ「…………とにかく!!」

キョン「流すなよ」























ハルヒ「中途半端な作品は『編集長』のあたしが許さないんだからねっ!!!」























ハルヒ「キョンTUEEEE!!!!」
ハルヒ「キョンTUEEEEE!!!!!」 キョン「退屈しないだろ?」
ハルヒ「キョンTUEEEEEE!!!!!!」 キョン「暴走するなよ?」
ハルヒ「キョン「TUEEEEEEE!!!!!!!」 キョン「消失してるぞ?」
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEE!!!!!!!!」キョン「動揺してるな?」
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEE!!!!!!!!!」 キョン「憂鬱入ってるよなぁ」
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!」 キョン「陰謀だろうな」
3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/24(土) 14:48:50.03 ID:YpJ9xjQ20


キョン「やれやれ……随分張り切ってやがりますなぁ。編集長殿は」

古泉「曰く、負けられない戦いですからね。僕たちSOS団にとっても」

古泉「文芸部にとっても、ね」チラッ

長門「…………」

キョン「また厄介なことになっちまったもんだな」

古泉「しかし、涼宮さんにとっては願ってもないイベントですよ?」

キョン「あいつは自分が楽しけりゃなんでもいいのさ。その苦労が誰にかかってるかも知らねえで」ハァ

古泉「辛苦を分かち合う我々だからこそ、困難を共に乗り越えることができるのですよ」

キョン「やかましい。面倒事を持ってきておいて自分は悠々と書き進めやがって」

古泉「んふっ、僕の場合はほとんど体験談みたいなものですから」

古泉「そういうあなたも、ただの体験談をノベライズするだけでいいではありませんか」

キョン「誰が興味あるんだそんなもん」

朝比奈・長門・ハルヒ「「「…………」」」ジーッ

キョン「……」チラッ

朝比奈「あ、えっ、し、刺激刺激……」アセアセ

長門「…………」スッ

ハルヒ「は、早く書きなさいよね! ふん!」プイッ!

キョン「…………」

古泉「……割と皆様興味があるみたいでなによりじゃありませんか。あなたの―――」

古泉「恋愛体験、というものにね」ニヤニヤ

キョン「……どーしてこうなったんだっけなぁ」ハァ







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4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/24(土) 14:53:47.06 ID:YpJ9xjQ20


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キョン「ほう、ゴミ出し……今日は可燃ごみの日だな。あとで谷口を捨てておくよ」

古泉「違います。呼び出しです。谷口さんにはご容赦の程を」

キョン「呼び出しだぁ? 誰に? 生徒会長だぁ? いつだ? 放課後だぁ? 分かった」

古泉「何を一人で解決しているんですか。話す手間が省けて結構ですが、もう少し僕に話させてくださいよ」

キョン「分かった分かったみなまで言うな。俺に台本はいらんから、うまくやってやるから」

古泉「こういう時に、うまくいったためしがないのでわざわざあなたに釘を刺しに来たのですが……」

キョン「杞憂だ」

古泉「それを判断するのは僕です」

キョン「大丈夫だって、何を心配する必要がある。俺も長門もいるんだぞ?」

キョン「いざとなったらもう……アレだよ、アレ。な? 長門」

長門「…………」コクリ

古泉「その意味深なやりとりを怖れて釘を刺しに来たんですよ!! くれぐれも! 危険な真似はしないでいただきたいものです」

キョン「なんだよ。SOS団や文芸部が不利になりそうになったら生徒会長の自宅を……」

古泉「聞きたくありません」

キョン「スラム街にワープさせようと……」

古泉「なんてこと考えているんですか! いいですか? くれぐれも! くれぐれも!」

古泉「突飛な行動、発言は控えていただきたいですね」

キョン「分かったって。夏も冬もお前の予定通りにいかなかったからって拗ねてんのか?」

古泉「拗ねているわけではありません。ただ単に、拗れた状況を作りたくないだけです」

キョン「じゃあなんで俺まで呼び出す必要があるんだ?」

古泉「…………涼宮さんがっ、そう、望んだからです……っ!」ギリッ

キョン「そ、そんなとてつもなく悔しそうな顔で言われると流石に俺も傷つくぞ!」

古泉「……面倒事は、回避したいでしょう? 互いにね」



5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/24(土) 14:58:34.70 ID:YpJ9xjQ20


放課後


キョン「ふぅーーー。何とか睡魔との戦いも49時間を無事経過したぞ」フィー

ハルヒ「なんでそんな無駄な戦いしてんのよ。そんなことしてる時点でもう頭は無事じゃないわよ」

ハルヒ「さっ、団活に行きましょうか」

キョン「あー先に行っててくれ、俺はちっとやることがある」

ハルヒ「何よやることって、団活より優先すること?」

キョン「まぁ団活に関わることだな」

ハルヒ「何よそれ、だったら団長であるあたしにも関わることじゃない!」

キョン「あぁ、まぁだからあとで来い。ていうかそうなるだろうから心配すんな」

ハルヒ「??? どういうこと?」

キョン「だから俺は先に団活には行かないが、お前より先に行って待っとくから。な?」

ハルヒ「……???」

キョン「じゃあ俺は先に行ってるから、あとでな」

ハルヒ「ちょ、ちょっと! なに? 結局先に団活行くの? 行かないの?」

キョン「行かないから俺は先に行ってるぞー。あとでなー」

ハルヒ「??? な、なぞなぞ? あたしは団活に行けばいいの? 行かない方がいいの!?」

キョン「未来で待ってるぞー」ガラッ

ハルヒ「どういう意味ッ!!?!? ちょ、あたしの未来にあんたがいるの!? どこにっ!!?」ガーン

ハルヒ「待ちなさいよ!! キョーーーーーン!!!」



6:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/24(土) 15:05:15.45 ID:YpJ9xjQ20


キョン「ここが生徒会室か。初めて来たな」

鶴屋「おやキョンくんじゃないかっ!」

キョン「ん? 鶴屋さんではありませんか。なんとなく随分久しぶりな感じですね」

鶴屋「だねだねっ! ウチの学校進学校でもないのに2年生は特別補講や模擬試験で忙しいんだよねー」

キョン「その割には朝比奈さんは毎日団活に来ていますけど」

鶴屋「あははっ! みくるはああ見えて優秀だからねぇ。勉学に置いて困ることはないんじゃないかなっ!」

キョン「それは鶴屋さんにも言えることでしょうに」

鶴屋「うわお! よっ、キョンくんおだて上手!! 憎いねぇこのこのっー!」

キョン「おだてついでに1000万ぐらい恵んでください!」

鶴屋「うーむ。それはあたしが次期当主になったら考えてあげるっ!! そん時キョンくんがいい男だったらねっ!」

キョン「よっ! いい女っ!!」

鶴屋「あーっはっはっは! 苦しゅうないぞー!! ところで、キョンくんは生徒会室になんの用事だい?」

キョン「どうやら長門のやつが生徒会長に呼びだしをくらっちまったもんで……」

鶴屋「おおっ! それでキョンくんは有希っこの付き添いって訳だ!」

キョン「長門はキレたら手が付けられねー女ですから。お目付け役で……」

鶴屋「有希っこが!? それは意外や意外っ!! 一度でいいから見てみたい、有希っこブチギレするところ!!」

キョン「やめておきましょう。真剣に死者が出そうだ」

鶴屋「だねだねっ。にしても今噂の生徒会とSOS団の対決かー。燃えるねっ!」

キョン「今噂の生徒会というと?」

鶴屋「ふふん。実は今の生徒会長は裏で色々あくどいことをやって今のポストまで上り詰めたんじゃないかって話っさ」

キョン「ほう、そんな噂が……。そんなことをする暗躍好きな奴を俺は1人知っていますよ」

鶴屋「あたしもあたしもっ!! はてさて、この対決は一体誰の掌で踊らされているのやら~なんちゃって!」

キョン「……やっぱり、その勘の良さは『あいつ』の直系親族らしいですね」

鶴屋「ん? なになにっ? なんの話?」

キョン「大したことない話ですよ。さて、俺は生徒会長と腹割って話してくるので、これで失礼します」

鶴屋「おおっ! 頑張るんだよっキョンくん! また面白い話聞かせてよっ! そんじゃっ!!」

キョン「……面白い『話』か。とんだダブルミーニングだぜ、鶴屋さんよ」



7:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/24(土) 15:08:39.17 ID:YpJ9xjQ20


「入りたまえ」

キョン「こいつッ……直接脳内にッ……!」

「……」

古泉「それをやるのはあなたでしょう。早く入ってください」ガチャ

キョン「(おぉ古泉先に来てたのか)」

古泉「(直接脳内に話しかけないでください!!!)」

キョン「長門もいるってことは、これで呼び出された奴は全員揃ったわけだ」

長門「そう」

古泉「では、そろそろ本題に入り……」

キョン「あれ、あれあれあれ? あなたは、喜緑さんではありませんか?」

喜緑「……どうも、お久しぶりです」

キョン「古泉、こりゃどういうこった? なんでコンピ研の部長の彼女である喜緑江美里さんが生徒会室なんぞに?」

古泉「彼女が生徒会書記だからですよ」

キョン「ん? おっかしーな、俺の記憶じゃ確か生徒会書記『だった』人の名前は―――」

喜緑「オッホン!! 本題に入りましょう」ニコッ

キョン「はい、すいませんでした」ペコリ

古泉「彼女は、からかうと痛い目をみそうですね」コソッ

キョン「ああ、笑顔が怖いタイプの人だ。俺苦手なんだよなぁそういうタイプ」

喜緑「会長。人員は全て揃いました。始めましょう」

会長「……よかろう」クルッ

キョン「よかろうて。長老かお前は」ビシッ

古泉「余計なツッコミは控えるように」



8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/24(土) 15:13:24.85 ID:YpJ9xjQ20


会長「古泉くんから用件は聞いているな」

キョン「聞いていません」

古泉「言っていませんが、知っています」

会長「よかろう」

キョン「好きだなそのフレーズ」

会長「君たちに来てもらったのは他でもない。文芸部の活動に関しての最後通告を行うためだ」

長門「……」

会長「現在、文芸部は有名無実化しているのは認めるな?」

キョン「長門が本を読んでるから文芸部だぞ」

会長「読んでいるだけでは文芸部にはならん。文字通り文で芸をする部活だからな」

キョン「そこはよかろうじゃないのか……」シュン

古泉「よくはありませんからね」

会長「もはや文芸部は部として機能していないと言えるだろう」

会長「明確に言おう。我々生徒会は現在の文芸部に存在意義を見出すことはできない」

キョン「なぁこれハルヒが突入してくるまでやるのか?」ヒソヒソ

古泉「そういうことを言わないでください。茶番を事実にするのが僕たちの役目です」ヒソヒソ

会長「……」

喜緑「会長、わたしは聞いていますので続けてください」

会長「……」

キョン・会長「「よかろう」」

会長「……」イラッ

キョン「えへ」キラッ



9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/24(土) 15:17:12.39 ID:YpJ9xjQ20


会長「生徒会は文芸部に無期限休部を通告する。すみやかに部室を引き払いたまえ」

長門「…………」

キョン「……よか―――」

古泉「よくありません。言いたいだけでしょうあなた」

会長「長門くん、だったな?」

長門「…………?」

会長「……長門くんでいいのだろう?」

キョン・長門「「よかろう」」

会長「……ッ!」イライラァ

古泉「ちょっとぉお!!! 二人して何をやっているんですか!! 涼宮さんがまだいない内から!!」ヒソヒソ

キョン「なんか……言いたくなるよな」ヘヘッ

長門「なる」コクリ

古泉「そんなお約束みたいな展開は必要ありません!」

会長「……長門くん。君は部員でない者を部室に置き、放任していたのは君の責任だ」

会長「おまけに、今年度文化祭実行委員の許可なく、文芸部とは関係のない映画を視聴覚室で上映したそうじゃないか」

会長「目に余る暴動だ。無期限休部にする理由は十分にある」

長門「……」



10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/24(土) 15:21:11.33 ID:YpJ9xjQ20


キョン「なるほどな。会長の言いたいことは分かる。だがな、一つ忘れていることがあるぜ会長」

会長「忘れていること……?」

キョン「SOS団、もとい文芸部が保有している莫大な資金さ。今年の四月にコンピ研と共同開発したゲームの売り上げで受け取った利益」

キョン「寄付って形でいくらかを学校に譲渡し管理を任せているってのは忘れちゃいねえだろうな?」

会長「……」

キョン「あんたがSOS団を非公認のものとして排除すべく文芸部を目につけたのは分かる。だがな」

キョン「ちゃんと俺たちが生み出した功績って面でも評価してもらわなきゃ不公平ってもんだぜ」

会長「…………」

キョン「あれはSOS団発足して初の団活だからな。ここにいる長門だってよく頑張ってくれたんだぜ? なぁ長門」

長門「…………」コクリ

キョン「その辺はどうお考えだ? 会長さんよ」

会長「…………」

キョン「…………普通に反論しちまった」

古泉「……まぁ、これはこれであなたの思いが伝わったので良しとしましょうか」

キョン「お前のさじ加減次第じゃねえか。ったく」

会長「……なるほど。言いたいことは分かった」

キョン「んじゃ休部の話はなかったことに……」

会長「だがあれは君も言った通りコンピ研との共同開発だ。ましては開発していたのはパソコンゲーム」

会長「さっきから言っている通りそれは文芸部としての活動ではない。もしも、君たちがコンピ研に入ると言うならば話は別だがな」

キョン「…………確かに! 文芸部関係なかった!」ガーン!

古泉「意志弱っっ!! せっかくいい話風に反論してSOS団の思い出もいい感じにでてきたのに押し負けるんですか!?!?」

キョン「だって……ここで引いとかなきゃハルヒ来る前に解決しちゃうし……」

古泉「あなたのSOS団に対する想いはその程度だったのですか!!!?」

キョン「うるせえし面倒くさいなお前、熱くなりすぎだろ。引くわちょっと」



11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/24(土) 15:27:49.29 ID:YpJ9xjQ20


古泉「失礼、少し取り乱しました」

キョン「壊れたのかと思った。今日は可燃ごみの日だと思い出していたところだ」

古泉「恐ろしいことを……会長。仰ることはよく分かりましたが、少し急すぎるのでは?」

キョン「そうだ。いきなり部室を開けろと言われても困る。最後通告っつったって俺は通告があったのを初めて知ったぞ」

喜緑「長門さんには伝えていたはずですよ」

キョン「長門、知ってたのか?」

長門「……」コクリ

キョン「どうして言わなかった?」

長門「…………」









長門「古泉一樹に涼宮ハルヒに提供するネタ作りを協力してくれと―――」









キョン「あーあー!! メタい! メタいぞ長門!!」

古泉「す、涼宮さんがいたらどうするつもりだったんですか長門さん!!」コソコソッ!

長門「迂闊。油断した」

古泉「何に!!?」ガーン!

会長「……伝えていたことは確かだと言うことは分かったな」

キョン「分かった分かった。もう存分に伝わったから……」

キョン「……お互い大変だな、会長」

会長「……まったくだ」ボソッ



12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/24(土) 15:31:38.39 ID:YpJ9xjQ20


会長「オホン、そういう訳だ。文芸部である長門くんと部外者である古泉くんたちには早急に立ち退きを命じる」

キョン「別にいいじゃねえか部室の一つや二つ。さっきも言った通り部室棟を2,3棟建てるだけの額を寄付してやったわけだし」

会長「……正確には2,30は建つ額にまで上る」

キョン「そんなにっ!!? てめぇ!! 返せ!!!」クワッ!

古泉「浅ましいっ!! ご自分で寄付したんですから諦めてください」

会長「私は生徒会長として学内改革を実行する必要がある。そのためにはまず、不必要なものを排除しなければならない」

キョン「今までありがとうよ古泉。谷口と仲良くしてやってくれ」ポンッ

古泉「不必要扱いはやめて下さい」

会長「とにかく…………」ピタッ

長門「…………」ピクッ

喜緑「……」

古泉「……んふっ」

キョン「ようやく、か。やれやれ……」

















ハルヒ「キョーーーーーーーーン!!!! ややこしいなぞなぞだしてんじゃないわよっっ!!!!」バンッ!!!















キョン「よっ、ハルヒ。遅かったじゃないか」

ハルヒ「あんたが初めっから生徒会室に行くって言ってればよかったのよ!」

ハルヒ「鶴ちゃんから聞いたみくるちゃんに聞いてここに来たのよ!? 回りくどいったらありゃしない!」

会長「……随分、騒がしいな」

ハルヒ「ん? はっはーん! あんたが生徒会長ね! 言わば敵軍の大将首。上等ッ!!」

ハルヒ「これはSOS団対生徒会の全面戦争よっ!!! 総員正面から叩き潰してやりなさいっっ!!」

キョン・長門「「よかろう」」ドンッ!

ハルヒ「!!?!?」

会長「……」プルプル

古泉「会長、諌めてください」



29:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/25(日) 16:33:29.53 ID:QGOK7hZB0


ハルヒ「くぉらぁ! このアホ会長! よくもあたしの忠実なしもべをこんなところに閉じこめてくれたわねっ!」

会長「言い方に語弊があるな。私は生徒会権限で彼らを呼び出しただけだ」

ハルヒ「回りくどいのよ! SOS団に用があるんならまずは団長であるあたしを通しなさい!」

会長「SOS団なる団体はこの学校には存在しない」

ハルヒ「するわよ!! あたしがその団長なんだから!!」

会長「そんな団体は認可していない」

ハルヒ「それじゃあ……もしかして……存在が疑われているあたしたちってまさか……」ゴクッ

ハルヒ「あたしたちがUMAだった!!?!?!?」ガーン!

キョン「なっ、なんだってー!!?」

会長「…………古泉くん、なんだこれは」

古泉「ええ、まぁ。こちら側の軽いノリみたいなものですよ」

会長「……ともかく私が用があるのは文芸部部長の長門くんであり、SOS団なる団長の君ではない」

ハルヒ「ハンっ! 関係ないとか言って、どうせ有希を呼び出したのもSOS団を潰すためなんでしょ?」

ハルヒ「文芸部が活動してないから部室を引き渡せだとか言ってあたしたちを追い出そうだとかそうはいかないわよっ! キョン!」

ハルヒ「今すぐこのアホ会長を地獄の業火で焼いてあげなさいっ!!」

キョン「おうよっ!」

古泉「ま、待ってください。こ、ここは穏便に。まだ話し合いの余地はありそうですし」

ハルヒ「何よ、まだ言いたいことあんの? 辞世の句でも読む?」

会長「…………言いたいことは山ほどある、が」

会長「君たちに暴れられ迷惑を被るのは御免だ。よって、文芸部には救済措置をとることにする」



30:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/25(日) 16:38:13.23 ID:QGOK7hZB0


ハルヒ「救済措置? どういうことよ」

会長「私が問題視しているのは部である文芸部の活動がされていないことだ」

ハルヒ「有希が本読んでるわよ」

キョン「文で芸しなきゃダメなんだと」

会長「文芸部が文芸部としてまともに活動しているならばそもそも呼び出しなどはする必要はない」

会長「条件を出す。文芸部として、何でもいい。何か活動をしたまえ」

ハルヒ「文芸部らしい活動ってわけね。有希、それってどういうことすればいいの?」

長門「知らない」

古泉「一応文芸部部長として知っておいて欲しかったですね。文芸部と言うと機関誌や会誌の発行などでしょうか」

会長「そうだ。歴代の文芸部は部員不足に悩まされようと毎年一冊は機関誌を発行していたと記録に残っている」

キョン「なるほど。つまりその記録を方を改竄しちまえば楽に済……」

喜緑「……」ニコニコ

キョン「望むところだっ!!! ダーウィン賞待ったなしの作品を手掛けてやるぜっ!!」

古泉「それは違う賞です」

会長「これは最低限の譲歩だ。これを拒むと言うなら即刻、君たちには部室からの立ち退きを命じる」

ハルヒ「いいわっ! あんたの条件にのったげる!! ホントはアリアリの総合格闘技ルールで決着をつけたかったけど」

会長「君がどんな格闘技の趣味を持っているかは知らないが、野蛮は悪だ。美しくない」

会長「期限は一週間、それまでに機関誌200部を用意したまえ。印刷室は自由に使ってもらって構わん」

キョン「ハルヒ。こうしよう、ありあまる部費使って適当な物書き雇ってなんか適当なもん書かせれば……」

古泉「全部適当じゃないですか」

会長「不正はなしだ。発覚した場合、即休部になると肝に銘じておきたまえ」

キョン「バーロー。俺がそんなバレるようなミスをするわけ……」

喜緑「……」ニコニコ

キョン「さー! やるぞー! 機関誌つくるぞー!! 絶対自分でつくるぞー!!!」

古泉「どれだけ彼女に苦手意識を持ってるんですか」



31:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/25(日) 16:45:41.61 ID:QGOK7hZB0


会長「そして第二の条件だ」

ハルヒ「まだあんの? 条件で縛るのが好きなようね」

キョン「エ口同人みたいに」ボソッ

ハルヒ「…………」

古泉「……」

キョン「……ごめん」

会長「できあがった200部の会誌を渡り廊下にテーブルを設置し、その上に置き、3日の内に全て捌けさせたまえ」

会長「客寄せや手渡しは禁止だ。それが達成できなければ新たにペナルティを科す」

キョン「ペナルティ? そんな薄い本みたいな」ボソッ

古泉「……」

キョン「……すまん」

ハルヒ「どんなペナルティ!? 中世ヨーロッパの拷問までなら甘んじて受け入れるわよ!」

キョン「まじかよ、すげぇなお前」

ハルヒ「キョンが!」

キョン「こいつぅ~!」キャッキャ!

古泉「何を喜んでいるんですか……」

会長「ペナルティは追って通達する。まぁ、その機会はない方が互いに好ましいが」

ハルヒ「まっ、200部の機関誌を作って全部撒ければいいんでしょ? 余裕じゃない! SOS団の力みせたげるわ!」

ハルヒ「機関誌でも会誌でも同人誌でも! 作んなきゃダメなら作ってやるわよ! 部室がなくなるのは困るしね!」

ハルヒ「さっ! そうと決まれば早速打ち合わせに入るわよ! 有希っ! 機関誌の作り方を調べに行きましょ! あとペンネームも決めなきゃ!」バビューン!

キョン「そうだな、俺のペンネームは……アナグラムで『ンョキ』でいいか」

古泉「どう読むんですかそれ。ともあれ、涼宮さんには用件は伝わったようですし……会長」

会長「……喜緑くん。君も退室してくれて構わない」

喜緑「はい、会長」バタン

キョン「…………ふーっ! 緊張で口から子供産まれそうだったぜ。こえー喜緑さん」

古泉「僕としましてはそちらの光景の方が恐怖そのものに思えますね」

会長「…………フー」



32:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/25(日) 16:50:44.16 ID:QGOK7hZB0


会長「これでいいんだな? 古泉」ドカッ!

古泉「ええ、中々の役者っぷりでしたよ」

キョン「おんやまあ、こりゃビックリ。さっきとはうって変わって乱暴な言葉づかいであらせられますこと」

会長「白々しい。古泉の話によればお前は全部お見通しってわけなんだろ? そうは見えねえほどマヌケみたいだが?」

キョン「ククク、能ある鷹は爪を隠す。無駄に力をひけらかしたりしないのさ」フワフワ

会長「ッ………………??」

古泉「言ってる傍からひけらかしてるじゃありませんか」

キョン「ぬわーっ!!? こここれは違うんだ!! そ、その上からワイヤーでつっててだな? な?」

古泉「誤魔化す必要はありませんよ。ご存知の通り、彼も僕の息がかかった方ですから」

会長「……驚愕だな。本当にただ者じゃないとは……ふん」スッ

キョン「お? タバコを吸うのか? マセた野郎だな」

会長「俺はお前より年上だっつーの」カチッ

キョン「ほう、面白いことを言う奴だ」

会長「あぁ? チッ、とにかくだ、古泉。俺はお前の言う通りの会長を演じてやった。これで文句はないだろう」フー

キョン「よかろう」ドンッ!

会長「貴様……ッ! そういえばちょくちょく煽ってきてやがったな……!」ガタッ

キョン「お、なんだなんだ? 野蛮は悪じゃなかったのか? やるってか?」クイクイ

会長「俺は生徒会長として、言葉遣いや目上の人間に対する礼儀がなっていない生徒を……正すだけだ!!」ゴオォッ!

キョン「いいだろう。ならば俺はお前に法治国家という概念を教えてやる」パシッッ!

会長「なっ!!? くっ、は、離せ、離……お、おい、何を……待て! 待てッ!!」フワッ

キョン「未成年者の喫煙はぁ~~~~~~!」グググッッ

古泉「ちょっ、やりすぎては――――――!」

キョン「法律で禁止されていますぅうぅううぅぅぅぅうううううう!!!!!!!」ドゴンッッ!! 

会長「がっっ!!?!?!?!?」ズドムッッ!

古泉「ツームストン・パイルドライバー……し、死んでませんよね会長?」

キョン「ふんッ! 前哨戦は終わりだ! 戻るぞ古泉! いよいよSOS団対生徒会の戦いの幕があけるぜっ!」

古泉「あの、会長の人生の幕が閉じようとしているんですが…………埋まってる」

会長「」ガクガク



33:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/25(日) 16:55:52.87 ID:QGOK7hZB0


キョン「戻ったぞー」ガチャ

ハルヒ「遅いわよ! キョン! 古泉くん! 戦いはもう始まっているのよ!!!」

古泉「つい先ほど終わったようにも見えましたが……」

ハルヒ「とりあえず、さっそく機関誌づくりに着手したいから、まずは各々テーマを決めましょ」

ハルヒ「クジで! キョン! あんた、変なトリック使ったら許さないかんね!」

キョン「またトラウマになっちまうもんな」

ハルヒ「うっさい! それじゃキョン、引きなさい」

キョン「へーへー…………ん? 待て、ハルヒ。一旦クジの内容だけ確認させてくれないか?」

ハルヒ「ダメよ! 各自なにがあたるかは当たってからのお楽しみなんだから! 早く! 引きなさい!」

キョン「じゃあ一つだけ聞いていいか? そのクジの中に恋愛小説は入ってるのか?」

ハルヒ「……よく分かったわね。入ってるけど、他にも色々なジャンルが入ってるわよ?」

キョン「そうか。古泉、ちょっと」クイクイ

古泉「はぁ、なんでしょう?」

ハルヒ「何よ? キョンが引かないなら先みくるちゃんと有希に引いてもらうからね! はい、みくるちゃん!」

朝比奈「はぁい。どれにしようかなー」

キョン「陰謀論だ。確率性の操作だ。涼宮ハルヒの力だ」ボソッ

古泉「急にどうしたのです? 何か問題でも発生したのですか?」ボソッ

キョン「あのクジはな、俺にとっては既に結果が確定してる。引く意味がない、というか引きたくない」

古泉「……なるほど、把握しました。それで涼宮さんの力、というわけですか」

古泉「どうやら、此度のあなたの試練は恋愛小説を書きあげることになりそうですね」

キョン「なーんでこーなる……せっかく時代考証に使える資料でもまとめてやろうと思ったのによ」

古泉「それは個人的にものすごく興味ありますね。どうです? 報酬は弾みますのでそちらの方も手掛けてみては?」

キョン「そんな暇あるかよ。かつてない難題が今降りかかろうとしてるってのに」ハァ



34:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/25(日) 16:58:31.80 ID:QGOK7hZB0


ハルヒ「みくるちゃんは童話、有希は幻想ホラーに決まりね!」

朝比奈「童話……童話?」

長門「…………」

ハルヒ「はい、古泉くん! 引いて!」

古泉「はい。僕は……ふむ、ミステリーですか」

ハルヒ「いいじゃない! 古泉くんにピッタリだわ! はい最後はキョン! 引きなさい!」

キョン「……いいだろう、俺は運命の輪から外れてみせるぞッッ!」

古泉「なっ!?」

ハルヒ「? 何言ってんの? 早く引きなさいよ」

キョン「ふっ! ぬぅうぅうぅぅぅううぅうぅううぅうぅうう!!!」ゴゴゴゴゴ!

キョン「4コマこい4コマこい4コマこい4コマこい4コマこい」ブツブツ

ハルヒ「そんなもんあるか。でも外注するのはありね……」

キョン「…………これだッッ!!!」バッ!

ハルヒ「どれどれー……!!」

キョン「…………メビウスの輪……だったか」ガクッ

ハルヒ「はいキョンは恋愛小説に決定ー!! 見ものだわ! あんたの恋愛小説なんて!」ケラケラ

朝比奈「!」キュピーン!

長門「朝比奈みくる。カットイン演出はいらない」

朝比奈「ふえっ!? あっ、す、すいません。えへへ……」

古泉「期待していますよ」

キョン「……じゃあちょっと妹とデートしてくるからそれ書くわ」

ハルヒ「犯罪者ッ!!」ビシッ!

キョン「なんでだよ!!」



35:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/25(日) 17:02:18.18 ID:QGOK7hZB0


ハルヒ「みんな書くものは決まったわね! あ、それと文芸部の活動だから団長じゃおかしいわね。それじゃ……」カキカキ

ハルヒ「今日から一週間、あたしは『編集長』になるわ! うん! いいわね! 編集長!!」バンッ!

キョン「なるのは勝手にすりゃいいが、お前は何も書かないのかよ?」

ハルヒ「そりゃ何かは書くわよ。あたしはそれ以外にも大切な仕事が色々あんの!」

ハルヒ「あんたたちはあたしが面白いと思うものを必死で書き上げなさい! それと! 締め切りにはちゃんと間に合わせるようにしなさい!」

キョン「すまん。一旦休載しようと思うんだが……」

ハルヒ「期限は一週間!! 休んでる間に過ぎちゃうでしょーが!! ほら、さっさとやる!」

キョン「へーへー……やれやれ」

ハルヒ「とはいえさすがにSOS団だけじゃページが足りないわね……とりあえずあたしは人手を集めてくるからっ!」

ハルヒ「えーっと朝倉さんに鶴ちゃんでしょ? コンピ研、あとは……国木田くんと谷……田ね!」

ハルヒ「挿絵に表紙に写真も入れようかしら!! 忙しくなってきたぁあーー!!!!」ダダダッ!

キョン「行っちまった……人の気も知らずに楽しそうだなあいつ」

古泉「でしたら、一芝居打った意味がありますね」

キョン「どうだか」

長門「…………」

キョン「長門、お前のその幻想ホラーってのはどういうジャンルか分かってるのか?」

長門「……おおよそ」

キョン「と言うと?」

長門「情報を活字や言葉として表わすことにわたしは慣れていない」

キョン「ふむ、表現の問題か。長門らしいっちゃ長門らしいな」

朝比奈「あの、古泉くん」

古泉「おや朝比奈さん、どうかしましたか?」

朝比奈「童話って…………R指定が入ってる、んですよね?」

古泉「え」

キョン「……難航しそうだぞ、編集長様よ」







――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



――――――――――――――――――――――――――――



―――――――――――――



――――――





49:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/26(月) 16:39:18.77 ID:t1+Uih140










その時、そう、その時だったのだ。俺が恋に落ちたと確信したのは――――――







――――――こいつ、なんてスリの技術もってやがる、ってな









ハルヒ「…………」

キョン「3日かけた。どうだ? 中々うまく書け―――」

ハルヒ「3日かけてなんちゅう駄作を書いてんのよあんたぁあぁああぁああ!!!」ビリビリッ!

キョン「ああっ!! 俺の22分が!!」アァ!

ハルヒ「しかも嘘なのねっ!!? どうしたらこんな共感性が得られない、モラルが欠如したものが書けるのよ! 文学的要素がなにもないじゃない!」

キョン「俺に官能小説を書けと言うのか!!?」

ハルヒ「一言も言ってないでしょうがぁああぁああ!!!」ドゴッ!!

キョン「ぴにゃぁああ!!!」グッシャァア!

ハルヒ「まったく……ほら! 他のみんなも書けたらじゃんじゃんあたしのところ持ってくるのよ!」

ハルヒ「もう3日経っちゃってるのにまだ誰も完成してないのよ! 急ぎ足で頼むわよっ!」

キョン「そういうことならまかせろ! おぉおおぉおおお!! はい! できたぞっ!」カキカキッ!

ハルヒ「なになに……『埃フェチ、危険な密室での恋』……フン!」ビリビリッ!

キョン「ああっ! 傑作が!」

ハルヒ「題名からしてアウトなのよ!! 埃フェチと密室というワードの組み合わせは命の危険性しか感じられないし!!!」

キョン「そそるだろ?」フフン

ハルヒ「どこがよっ!」

長門「書けた」スッ

ハルヒ「ん、有希は初めて提出ね。おっけー! 見せてもらうわ。有希の幻想ホラー」



50:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/26(月) 16:45:40.27 ID:t1+Uih140










今日も数多の音が鳴り響く。音の発信源は不確かで耳を塞いでも体中に響き渡る


不快だった。鳴りやまぬ騒音はいつから続いているのだろう


数えるのをやめてからどれほどの時間がたったのか


耳障りな音の中で誰に言うでなく私は呟く


響く喧騒に対しての不満を一言で


「こらー」と









ハルヒ「…………?」

朝比奈「……???」

古泉「……これ、が幻想ホラー……ですか?」

長門「…………」

ハルヒ「……え、っと有希……? これは……」

長門「……」チラッ

キョン「おいおいおーい!! 長門長門! これは、幻想ホラーじゃなくて!!」

キョン「『喧騒コラー』やないかーーい!!」オォーイ!!

ハルヒ・古泉「「…………」」

朝比奈「あっ! なるほど……」

キョン「しっかりしろよー!」

長門「迂闊」

ハルヒ「…………なんだそれっ!!?!!?!?」ガーン!

ハルヒ「あんたら二人して3日間マジで何してたの!!?!?」

ハルヒ「有希! 無理矢理にもほどがあるわよっ!!? めちゃくちゃすぎるわっ!!! 喧騒コラーって何!!?」

長門「すまない」

ハルヒ「……でも有希が書いたってなると意外性があっていいかもしれないわね……」

ハルヒ「よし! これはこれでおまけページにでも使うとするわ!! 有希は引き続き幻想ホラーを書いてちょうだい」

長門「了解した」

古泉「長門さんのギャグセンスって……」

キョン「人間にはまだ早すぎるのさ」



51:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/26(月) 16:50:43.62 ID:t1+Uih140


ハルヒ「もう! SOS団の正団員がこの体たらくじゃ準団員に示しがつかないじゃないの!」

キョン「ん? てことはもう誰か完成した奴がいるのか?」

ハルヒ「いるいる! いまくるわよ! 朝倉さんも鶴ちゃんもコンピ研も国木田くんも全員昨日、今日で仕上げてきわよ?」

朝比奈「た、たった2、3日で……? 凄いです……うぅ」

古泉「谷口さんは……」

ハルヒ「今日は不燃ごみの日だったから」ニコッ

古泉「えっ?」

キョン「参考程度にどんなもん書いてきたのか見せてくれよ」

ハルヒ「いいわよ。これが朝倉さんの『一週間献立レシピ』、こっちが鶴ちゃんの『口伝・鶴屋流古武術の極意!』」

朝比奈「ご、極意を書いちゃっていいんですか……?」ペラッ

キョン「コンピ研が『異世界開拓~俺が魔王になって文明形成!?~』、国木田は『雑学、豆知識、データベース』か」

ハルヒ「コンピ研のそれ少し読んだけどクソつまらない矛盾した設定だけがてんこ盛りの寒いラノベだったわ」

キョン「『くッ! マナが尽きかけているッ! 今すぐアートイダーをクローチしてマナをヴェイドするんだ!!』……」ペラッ

キョン「は?」

古泉「朝倉さんと国木田さんはさすがは優等生ですね。日常で使えそうな題材をうまく活かしてますよ」ペラペラ

ハルヒ「コンピ研はともかく! ちゃんとみんな仕上げてきてるんだからSOS団が不甲斐ないとこ見せちゃダメよ!」

朝比奈「が、がんばらないと……」

古泉「僕ももう一度誤字脱字のチェックをしましょうかね」

長門「…………」カタ

ハルヒ「そうそう! その意気よみんな! キョン! あんたもみんなに習って早く―――」

キョン「うっそだろおい! たった二人でデビルラインを突破してきたぞ!? これ魔王軍かなりやべぇんじゃ……」ゴクリ

ハルヒ「コンピ研のラノベにハマってんじゃないわよっ!!」バシッ!

キョン「ヴェイドッッッ!!?!?」バキィイ!!



52:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/26(月) 16:55:03.27 ID:t1+Uih140


ハルヒ「じゃ! あたしは外注の挿絵とか表紙の進捗具合を見てくるから! ちゃんと進めておくのよ! いいわね!?」バタン!

キョン「古泉! 古泉! 見てみろ! まさかの魔王軍本部の地下にかつての勇者だった者の―――」

古泉「編集長に怒られますよ。そんなに面白いんですか? コンピ研の作品は」

キョン「暇つぶしにはなるぞ!」

古泉「暇ではないんですが……」

キョン「なんだよ。とはいってもだな……俺が何書いてもおそらくあいつは却下する未来しか見えないんだが」

古泉「リアリティに欠けているのでは?」

キョン「なんでリアリティなんぞを出す必要がある。創作物だぞ」

古泉「涼宮さんがそう願ったからですよ。あなたの実体験から紡ぎださせるほぼノンフィクションの物語であれば涼宮さんも納得するでしょう」

キョン「だから実体験書いたじゃねえか。スリのやつも埃フェチのやつもそうだぞ」

古泉「えっ」

キョン「他、他……他かぁ……うーん」

朝比奈「あ、あの! キョンくん! もしどんなテーマにするかお困りだったらわたしにいい案が!」

キョン「なんですと!!? 朝比奈さんと恋愛体験をしてそれをそのまま書けばいいと!!!? いいですね!!!」ガタッ!

朝比奈「ひゃっ! えっ、う、ち、違います!! 『佐々木』さんですよ! 『佐々木』さん!」

朝比奈「ぶっちゃけあたしも長門さんも古泉くんも、『佐々木』さんを知らない涼宮さんだってそれを期待しているはずです!」

長門「……一理ある」

古泉「白状してしまえば朝比奈さんの言う通りですね。興味があるんですよ、あなたの過去に」

朝比奈「わ、わたしは単純にキョンくんと『佐々木』さんのことが……うふふ」ボー

キョン「……朝比奈さん。長門も古泉も、まだ勘違いをしているようだから再三言っておくが」

キョン「俺と、『佐々木』は、そんな、関係では、あーりーまーせーん。以上」

朝比奈・古泉「「またまたぁー」」

キョン「朝比奈さんは許す!! だが古泉! 貴様ダメだ!!! 桜が咲く時期まで埋めてやるッ!!」ゴオッ!

古泉「すいません!!! ご勘弁を!!!」



53:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/26(月) 17:00:14.61 ID:t1+Uih140


キョン「ずっと『親友』だって言ってるじゃないか。それ以上でもそれ以下でもない」

古泉「そうですが……。いえ、それでもいいではありませんか。親友との日常を恋愛小説として書くのですよ」

キョン「それじゃただの社会風刺小説になるだろ」

朝比奈「ええっ!?」

古泉「そ、そうなんですか? 『佐々木』さんとの話はそういう話に帰結してしまうんですか?」

キョン「……いやまぁ、SOS団みたいに部室で駄弁ってる時間がなかったわけじゃないが」

朝比奈「それです! それですよキョンくん!! 読者が求めているものはァ!!!」ズイッ

キョン「そ、そうなんですか? 朝比奈さん、近いです。もっと」

古泉「もっとは駄目でしょう」

朝比奈「ふわっ!!? す、すいません……! でも、そういうのでいいと思います」

キョン「それも本当に恋愛とは無縁のただくだらない話をする日常でしかないですよ?」

長門「それでいい」

朝比奈「いえ、それがいい!」

古泉「恋愛小説とは男性と女性が登場するだけでいいのですよ。あとは読み手が小説にどのような雰囲気を感じ取るか」

古泉「読み手の感性や解釈に任せればいいのですよ。どの道、評価するのは自分ではなく読み手なのですから」

キョン「そんなもんか?」

古泉「そんなもんです」



54:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/26(月) 17:04:59.79 ID:t1+Uih140


キョン「ふむ。俺が恋愛小説として書いたものがハルヒにはそうでなく見えてたし、逆もまた然り、か」

朝比奈「(あれ本気で恋愛小説だったんだ……)」ゴクッ

キョン「日常、日常ね……」

古泉「あとはあなたがその日常にどれだけ肉付けできるかの技量が問われますが……心配はいらないでしょう」

キョン「ま、1からフィクション考えるよりかはいいか」

キョン「頭の中の記憶を引っ張り出して書いてみるとする」

古泉「期待していますよ」

朝比奈「が、頑張ってくださいキョンくん! わたしも童話書かなきゃ……」

古泉「僕も仕上げに取り掛かるとしましょうかね」

キョン「出だしから考えるか。えーっと……『僕はただ……この世に特別な人間なんかいない、ってことを」

長門「…………」ペラッ

キョン「お! 長門コンピ研のラノベ読んでるのか!? どうだ!? それやっぱ―――!」ガタッ

古泉・朝比奈「「集中力!!!」」ガーン!

長門「……割とユニーク」



67:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/27(火) 13:32:46.39 ID:KF6eDiC80


「僕はただ……この世に特別な人間なんかいない、ってことを知ってもらいたいだけだよ」

「……お前、一体何者なんだ?」

「……僕は―――」

















「お前、あの時俺になんて言ったか覚えてるか?」


冬空の下、俺は向かいの女に問いただす


「あの時? あの時と言うと君に出会った時で間違いないかな?」


柔和な笑みで女は答える


「そうだ。俺がお前に何者なんだと聞いた時の答えを覚えているか?」

「さあ、なんだったかな。僕は飽きっぽくて忘れっぽいからね。何と答えたんだったかな」

「……忘れるほど大した意味を持たないならもういい」

「おや、僕に答えた理由を聞こうとしたんじゃなかったのかい? 尤も、何と答えたのかは覚えていないんだけどね」


くつくつ、と喉の奥を鳴らす独特な笑い方で揶揄うような笑顔を向けてくる


「ところで、今日は僕になんのようかな? 君と会ってからここのところ、ほとんど毎日顔を出しに来ているじゃないか」

「…………用がなくちゃ来ちゃいけないのかよ」


ドカッ、っと俺は乱暴に女の隣に腰を下ろす




68:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/27(火) 13:37:51.17 ID:KF6eDiC80


「いいや。ただ、君が何かに執着するような人間だとは思っていなかったら、意外に感じているだけだよ」

「執着? 俺がお前に執着しているってのか?」

「僕とは言っていないよ。この土地に執着しているのか、はたまた時間や環境に執着しているのか……」

「何にせよ。君が幾度となく、ここに来ているのは何らかの理由がなければおかしいのさ。用がないなんてことはない」


何もかもを知っている、と言わんばかりの声色が俺の全てを見透しているかのようだった


「……お前みたいな奴にあったのは初めてだったからかもな」

「僕みたいな奴、というのは?」

「……俺みたいな特別な者のことだ」

「特別? くつくつ、だから前にも言ったじゃないか。この世に特別な人間なんかいない、と」

「お前やっぱり出会った時の会話覚えてんじゃねえか!!」

「あ」


白い息とともに、意外にもあっさりとボロを出した


「くつくつ、まんまと嵌められたわけだ。君も人が悪い」

「嵌めるつもりなんてなかった。お前がかってに口を滑らしただけだろ」

「痛いところを突かれたよ。割と抜けている人間だと言われるからね。僕は」

「…………知らん」




変な女だ。何度も会いに来るうちに、増々そう思うようになってきた





69:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/27(火) 13:42:28.20 ID:KF6eDiC80


朝比奈「ふ、ふおぉ……」キラキラ

古泉「なるほど、これがあなたたちの馴れ初めですか」

キョン「恋愛小説風に言うと間違っちゃいねえが、実際はただ行く当てもねぇから通ってただけだ」

長門「通い婿」

キョン「違わい」

朝比奈「つ、続きは? キョンくん」

キョン「まだありません。というよりオチに向かってどう進めばいいか分かりかねるもんで。どう締めるべきか……」

長門「……死別」ボソッ

朝比奈「ええっ!?」

キョン「ふむ……」

古泉「……確かに実体験、ではあると思いますが、長門さん。実体験であるが故に、彼にそれを書けと言うのは些か酷なものかと」

長門「……失言だった。すまない」

キョン「死別か……いや、長門別に気にしなくていい。本来の意味通りの死を迎えてるわけじゃないしな」

キョン「だから、別にそんな……大きな悲しみなんてもんは一々感じてなかったさ」

古泉「では、そのように進めていくと?」

キョン「んー、まぁそうするか。ってお前ら俺のもんばっか見てねえで自分のやれよ」

古泉「僕は今しがた終わりましたので」

朝比奈「わ、わたしももう少し……」

長門「……」ペラッ

キョン「こらーー!! 長門!! 困ったらコンピ研のラノベ読もうとするんじゃねぇ!!」

長門「……油断した」



70:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/27(火) 13:48:36.95 ID:KF6eDiC80


扉に鍵がかかっている。部屋の鍵は館の主であるKさんが保有している

館の主の部屋の合鍵は無く、扉を開けるには内側から開けてもらう必要があるが、返答がない


「せーのっ!!」


緊急事態と判断した僕たちは扉を体当たりで強引に開ける方法をとった

一回、二回、三回……実際にやってみると強固な扉は中々開かない

このまま扉は開かないんじゃないか? そう思い始めた時

バンッッ!! と蝶番が破壊される音と共に扉が開かれ、僕たちは部屋に倒れこんだ






そして―――――――――




            ―――――――――血に塗れたKさんの無惨な姿を発見した










キョン「ほーん。これがお前がやりたかった夏のシナリオってわけか」

古泉「えぇ。生憎、死体は1つではなく2つになり、シナリオも大きく変更されてしまいましたがね」

キョン「変更してよかったじゃねえか。このシナリオじゃあまりにもテンプレすぎてハルヒにゃ受けねぇよ」
            
古泉「おや? そうでしょうか? 自信はあったんですが……涼宮さん評論家のあなたが言うならそうなんでしょうね」

キョン「それを言うなら批判家だな、俺の場合」

古泉「んっふ。ともあれ、僕の執筆作業はここで筆をおかせてもらいます。あとは高みの見物、完成を楽しみにしていますよ」

キョン「暇ならコンピ研のラノベ読んでろ。中々に中々だ」

古泉「えらく勧めますね……長門さんもはまっていたようですし。少しだけ、ほんの暇つぶし程度に読んでおきましょうかね」ペラッ

キョン「あーあ、もう逃げられんぞ。お前はもうその本の虜となる。なぁ長門」

長門「一度読みはじめたらあなたも立派な『開拓者』入り」

古泉「読む前に脅さないでくださいよ。なんですか『開拓者』って」

長門「『異世界開拓~俺が魔王になって文明形成!?~』をバイブルとする者の総称」

古泉「すでにそんな総称が!!?!? 依存性もの凄いですねこのライトノベル……読むのは遠慮しておきましょう」パタン



71:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/27(火) 13:53:15.30 ID:KF6eDiC80


キョン「! 長門ッ!」キュピーン

長門「……」コクリ

朝比奈「なっ、なんですか!? どうしましたか?」ビクッ!


コンコン


会長「失礼す―――」ガチャ

キョン・長門「「よかろう」」ドンッ!

会長「……」ピキピキ!

キョン「いやーこれが言いたかった! 今日はもう満足だ、帰って寝たい」

長門「…………」ストン

古泉「そのためにわざわざポーズまで……やあ会長。本日はどういったご用件で?」

会長「……なに、様子見といったところだ。一応、条件提示した義務があ―――」

キョン「そういや会長、頭大丈夫か?」

会長「」

喜緑「会長、落ち着いてください。彼は健康面での心配をしているだけです」

キョン「そうそう。あの時はつい熱が入っちまって悪いことしたなーと思って、で」

キョン「あ・た・ま。大丈夫か? かーいちょ?」ニヘラ

会長「貴さ―――ッ!!」グッ!

ハルヒ「わっ!! 生徒会!! ちょっと! あたしの城で何してんのよ!! 諜報活動!!?」

会長「…………」

古泉「様子見、でしたよね? 会長」

会長「……あ、ああ。君たちがちゃんと仕事をしているか視察にきたのだよ。ただ、それだけだ」プルプル

古泉「無駄に会長を刺激するのはやめてください!」ボソボソ

キョン「あのシャバ増すぐ切れるから耐性をつけといてやろうと」

古泉「喜緑さん見てるんですよ」

キョン「ハルヒ!! 会長がいらしてるんだぞ!! さっさとお茶と菓子をだしてもてなさんか!!!!」クワッ

ハルヒ「だったらあんたがやりなさい!! 平団員でしょうが!!!」

朝比奈「あ、わ、わたしがやります!」アワワ



72:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/27(火) 13:58:06.81 ID:KF6eDiC80


会長「……私はきみたちの宿敵などになったつもりはない」

ハルヒ「分かってるわよ。あんたじゃ宿敵は務まらないもんね」

会長「……喜緑くん。例のモノを」

喜緑「はい。会長」スッ

ハルヒ「なに、これ」

会長「昨年までの文芸部が発行していた会誌だ。精々……参考にしたまえ」キッ!

キョン「よか……ふん、やるじゃねえか。言わせねぇよってか!」ヘッ

古泉「それだけやっていればさすがに分かりますよ」

会長「感謝するなら彼女に向けたまえ。資料室の書架から探し出したのは彼女だからな」

ハルヒ「はいはいありが……ってあなた。へぇ……あの時の」

キョン「今気づいたのかよ」

喜緑「その節はどうもお世話になりました」

ハルヒ「いいわよいいわよ。それで? 奴隷、オホン、コンピ研の部長とはうまくやってるの?」

キョン「今なんて言った? おい」

喜緑「それが……どうやら彼とはお別れしました。思い返せば本当に付き合っていたのかも遠い記憶です」

キョン「そりゃ部長が彼女持ちは似合わないもんな」ウンウン

ハルヒ「へー、まぁ若いし色々あるわよね。それで次はその会長ってわけね」

喜緑「……えーっと、それは」

会長「……君は何か勘違いをして―――」

ハルヒ「こういうのも失礼だけど、あなた男の趣味変わってるわね」ズバッ

会長「……」イラッ

喜緑「ええっと……」

キョン「い、今の俺関係ないですから!! 関係ないっすからね! 喜緑さん!!!」



73:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/27(火) 14:05:33.15 ID:KF6eDiC80


喜緑「会長とはそのような関係ではありません。従属以外のなにものでもないのです」

ハルヒ「あら、そうだったの? 早とちりしてごめんなさいね」

喜緑「いえ……」

会長「……小説誌にするらしいが」

キョン「すげぇぞ古泉。会長の心の声の罵詈雑言が某国の大気よりも荒んでやがる」ボソボソ

古泉「それでいてあのポーカーフェイスは、彼もまた契約に忠実なプロというわけですね。苦労を汲み取ってあげてください」ボソボソ

会長「君たちにまともなものが書けるのかね?」

ハルヒ「あったりまえよ!! 世界一面白いもの作ってあげるんだから震えて眠りなさい!!!」

会長「大した自信だな。その自信通り、ペナルティを被ることにならなければいいがな」

ハルヒ「別に! 仮に余裕でノルマ達成したってペナルティを振ってくれてもいいわよ? 余裕でクリアしちゃうし!」

キョン「ドMかお前」

会長「無為にそのようなことはしない。条件通り200部全て捌けさせれば問題はない」

ハルヒ「優しいノルマだこと!! 3日と言わず1日でぜーんぶ捌けさせてやるんだから!」

会長「威勢だけは本当に素晴らしい。その活気を良い方向で学園に振りまいてほしいものだ。それでは私はこれで失礼するとしよう」

ハルヒ「あら、本当に敵に塩を送りに来ただけなのね」

会長「言っただろう。別に私は君たちの敵になった覚えはない。ただ生徒会長としての責務を全うしただけだ」ガチャ

喜緑「失礼します」バタン

ハルヒ「……うがー!! あんたたち!! 何がなんでも超面白いもの作ってあのアホ会長の鼻っ面へし折ってやるわよ!!!」

キョン「鼻っ面をへし折る……よかろう」ガタッ

古泉「よくありません。物理的な意味ではないので、御着席ください」



86:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/28(水) 22:29:06.77 ID:Inhtv6qX0


「おや、いらっしゃい。今日は来ないのかと思っていたよ」

「大方の予想を反すのは得意なんでな。来てやった」

「くつくつ、意地悪な男だ。さすがにもう慣れたけどね。覚えているかい? 今日という日を」

「1年……お前と出会ってからもうそれだけの時間がたったのか」


コイツと出会った日からの1年は、はっきりいって短かった。光陰が矢の如く過ぎていったのがよく分かる


「どうだい? 君にとってこの1年はどんな意味を持つ1年になったんだい?」

「意味……? 別に。ただ変な女と会話をしているだけの1年だった」

「くつくつ、君にとってそれは無意味なことであったのかな?」

「……そういうわけじゃない。が、何かが激変したのかというとそうでもない」


すると女は、こちらにいつも通りの柔和な笑みを向け、待っていたかのように言葉を発す


「変わったじゃないか。1年前の君と、今の君とでは大きく異なるところがあるだろう」

「…………」

「分からないかい? さっき君も言ってただろう?」

「…………お前のこと??」

「大正解。よく分かっているじゃないか」


よくもまぁ、自信満々でそういう自己評価の高そうなことが言えるなこいつ





87:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/28(水) 22:33:07.40 ID:Inhtv6qX0


「……自分で言ってて恥ずかしくないのか、それ」

「恥ずかしい? なぜだい? 事実を事実として述べるのは当然のことだろう?」

「事実? じゃあ聞くが、この1年間でお前は俺にとっての何になったつもりだ? お前が俺の何を変えたというんだ?」


女は、用意してた文字を読むようかのようになんの迷いもなく応える


「親友」

「……親友?」

「僕は君の親友になることで、君を勘違いから解放した。孤独から解放した」

「待て待て。何を言い出す。勘違い? 孤独?」

「覚えていないかい? 君と初めて会った日に僕が言った言葉」

「お前こそ忘れたとか言ってただろうが」

「……そうだったかな? まぁそれは置いておいて」

「君はなんら特別でもなければ、君はただの人間で」

「1人になろうとする必要なんてない。という勘違いから解放したのが僕、というわけだ」


動揺しているわけでも、驚愕しているわけでもないのに、言葉が出てこない


「……興味でも観察でも実験でも。理由はどうあれ、君は僕と共にこの1年を過ごしたと言ってもいい」

「君が、君にとって何かの意味を持つ者に出会えた。それが僕で、それが君の変化だ」

「…………」

「確かに激変なんてものじゃないかもしれない。ただの手掛かり程度のものかもしれない」

「それでも僕自身は、君にとって大きな変化を与えた存在である、と自負しているよ。過大評価も過小評価もなしにね」

「…………ほんと、自分で何言ってやがる」


親友。俺がこの1年で得たものをこいつはそう言い放った

親友? 親しい友。こいつが? 俺の?










親友だと???



88:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/28(水) 22:38:24.31 ID:Inhtv6qX0


古泉「……ふむ」

キョン「ふむとはなんだ、ふむとは」

古泉「いえ……大変読み応えのあるものだと感服していたのですよ」

古泉「ですが、ここに書かれているあなたであろうお方は、随分と今のあなたとの性格の乖離が見られますね」

キョン「そうか? まぁ、その頃は絶賛反抗期真っただ中だったからなぁ……」

古泉「誰に対しての反抗期だったのですか?」

キョン「全てさ。この世に生けるもの蔓延るもの全てを俺は拒絶し、その大いなる力を持って世界を―――!」フハハ!

古泉「その設定でもう1本小説が書けそうですね」

ハルヒ「やっほーー!!? どう!? 進んでるっ!!?」ガチャ!!

キョン「よぉ研修中」

ハルヒ「編集長!!!! 真逆じゃないの真逆!!! あ、ちゃんと書いてるじゃない! ちょっと見せてみなさい!」

ハルヒ「なになに……『ぐはぁッ!!! 貴様……ッ! アークステロイドを裏切』これコンピ研のやつじゃないの!!!」ビシッ!!

キョン「関係者以外閲覧禁止ですー」

ハルヒ「関係者も関係者だけど!!?!? 関係者のトップなんだけど!!?!?」ガーーン!

キョン「まぁ完成したらいやでも見れるんだから待ってろよ。期限には間に合わす」

ハルヒ「むぅー……折角キョンのちゃちな文を添削してあげようと思ったのに」

キョン「へーへ、お気遣いどうも」

ハルヒ「……まぁいいわ! 有希! みくるちゃん!! あなたたちのも見せて!!」

朝比奈「はぁい」

長門「……」

古泉「良いのですか? 僕には見せていただいたのに涼宮さんには見せなくて」ボソッ

キョン「こんなこっぱずかしいもん、何度も見せられるかよ」

古泉「……んっふ。製本したらいくらでも見られますけどね」フフ



89:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/28(水) 22:43:27.01 ID:Inhtv6qX0


ハルヒ「ふんふん……まっ、まぁ。こんなもんよね! みくるちゃん! おめでとう! あなた合格よ!」

朝比奈「ほ、本当ですかぁ!!? やったぁ!!」ピョンピョン!

ハルヒ「よく童話について調べてくれてるわね!! みくるちゃんの持つ……その、ファンシーさが良く出てるわ!」

朝比奈「えへへ……頑張りました!!」

ハルヒ「(けど、結局この童話登場人物の7割が死んで、残りの3割もものすごい後遺症が残ってるのよね……)」

古泉「(未来の文献に童話がどのような形で残っているかは分かりませんが、ホラーでも通じる童話ですね、朝比奈さんのは)」

キョン「(ていうかホラー要素多くない? 朝比奈さんも古泉も長門も、全部ホラー要素含んでない?? そういう本作ってんの俺ら?)」

ハルヒ「んで有希のも合格! 『喧騒コラー』がちゃんと『幻想ホラー』になったじゃない!」

長門「努力した」

ハルヒ「でも、1つ分からないところがあるんだけど、いいかしら?」

長門「どこ?」

ハルヒ「『消失した世界で、彼らは今も『彼』の幻影を追い続けている』この一文が前後の文と繋がってないのよね。これって何か意味あんの?」

長門「…………意味はない」

ハルヒ「ふーん……まぁ有希が言うならそうなのね。いいわっ! 有希もこれで完成!!」

古泉「長門さんのあの一文って……もしや」

キョン「長門も言ってるだろ。別に特別な意味なんてないってよ」

ハルヒ「あと有希、このペンネーム『明日の夕食はカレーがいい』のことなんだけど……」

長門「……………………………………」

長門「意味はない」キッパリ

ハルヒ「いや嘘よね!!! すごい間あったもんね!! 特定の誰かさんに対するリクエストメッセージよね!! これ!!!」

キョン「いったい誰倉さんなんだ……?」ゴクリ



90:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/28(水) 22:48:31.99 ID:Inhtv6qX0


ハルヒ「これで有希とみくるちゃんはおっけー。古泉くんも昨日出してくれたから、あとは……」

ハルヒ「キョン!! あんただけが終わってないのよ!!! あ、ん、た、だ、け、が!!」

キョン「オンリーワンか」ジーン

ハルヒ「明日には製本したいんだから!! 今日! もしくは明日の放課後までに完成させなさい!! 今完成させなさい!!」

キョン「どっちだよ。待て待て、落ち着けハルヒ。谷口だって終わってないはずだろ?」

ハルヒ「誰よそいつ!!!!」バーン!

キョン「忘れてやるなよ!!!」ガーン!

古泉「あなたもしょっちゅう谷口さんのお名前を間違えているではありませんか……」

ハルヒ「谷口……あぁ、谷口ね。はいはい」

キョン「あいつが終わってないならまだ俺にも猶予が―――」

ハルヒ「ちゃんと出して来たわよ。ほら、これ」バサッ

キョン「……まじ? あの山口さんが?? うそぉ……」

古泉「さっそくお名前を間違っているじゃありませんか……」

ハルヒ「ページの足しぐらいにしかならないけど、一応谷口も完成させてるのよ」

キョン「なになに……『個人的! 北高美少女ランキング! 最新版!』……ハルヒ」

ハルヒ「なによ」

キョン「これをメインで押そう」キリッ!!

ハルヒ「なにバカなこと抜かしてんのよぉおおぉおぉおおおおおお!!!!!」バギッ!!

キョン「男はバカだからぁああぁあぁあぁあああああああ!!!!」

古泉「おや、朝比奈さんが1位にランクイン。それに長門さん、朝倉さん、鶴屋さんもトップ10入りしていますよ」ペラッ

朝比奈「へっ? いや、えー……あ、ありがとうございます……?」

長門「……」

古泉「(涼宮さんは…………ランキング入りの最下位ですか。んふっ、谷口さんの微妙な意地が見て取れますね)」



91:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/28(水) 22:53:41.61 ID:Inhtv6qX0


ハルヒ「それ個人情報が異常に詳しく書かれていて気持ち悪いのよね。どこで調べたのか、事実なのか知らないけど」

キョン「ふーん……」

ハルヒ「…………………………あんたじゃないわよね? 色々あいつに教えたの」ジッ

キョン「まさか」

ハルヒ「……まぁどうでもいいけど。あんたはさっさと自分のやつ完成させなさい!!」

キョン「分かってますよ、収監囚殿」

ハルヒ「編集長!!!」

キョン「へーへー」

ハルヒ「と、あたしもそろそろ自分のやつに手を付けてかないとね」

キョン「お前も終わってないのかよ」

ハルヒ「あたしはすぐにできるもの。今からやって今日中には終わらせることができるわよ」

キョン「負けねえぞっ!」

ハルヒ「すでに5日のハンデがあるんだけど……まぁやる気を出してくれたならいいわ」

朝比奈「涼宮さんは何を書くんですか?」

ハルヒ「ふっふっふ! よくぞ聞いてくれたわみくるちゃん! それはね!」

キョン「なんでもSOS団を恒久的に存続させるために考えた論文もどきみたいですよー」カキカキ

朝比奈「ふえぇ……難しそう」

ハルヒ「あたしに言わせなさいよ!!! そんな片手間でネタバレすんなっ!!」バン!

キョン「定期的にお前のセリフを奪っとかんと俺のアイディンティティが崩壊する」

ハルヒ「アイディンティティが!!?!?」ガーン!



92:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/12/28(水) 22:58:21.23 ID:Inhtv6qX0


ハルヒ「つまりこーして、あーして……ああやって、こうやって……」ブツブツ

キョン「やっと静かになりやがったか」

古泉「ものすごい集中力ですね。涼宮さん」

キョン「今なら口からUMA出しても気づかれないかな……う˝っ、う˝ぅっ!」

古泉「やめてください。僕も見たくはない光景ですよ。最近なにかと口から出そうとするのは何故です?」

キョン「春が近いからな。花粉症みたいなもんだよ」

古泉「そんな軽い感じでUMAを出されても困ります。しかし、もうすぐ春ですか……」

キョン「早いな」

古泉「んふっ。あなたにとってこの1年はどんな意味を持つ1年になりましたか?」

キョン「あぁ? なんのおふざけだよ」

古泉「いえ、ただ『佐々木』さんがこの場に居たら、きっとまたこの問いをすると思いましてね」

キョン「なぜお前に『佐々木』のことが分かる」

古泉「分かりませんよ。ただの勘です」ニコッ

キョン「……変なやつだな。お前も」

古泉「光栄ですよ。あなたの『親友』と同じ評価をもらえるなんてね」ンッフ

キョン「それ以上気持ちの悪いことぬかすと朝比奈さんの書いた童話の中に閉じ込めてやるからな」

古泉「おっと、怖い怖い」

朝比奈「??」



103:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/02(月) 20:37:37.09 ID:7r7HtH3f0


「死とは何か」

「なんだ藪から棒に」

「そうでもないだろう。今際の際さ」


仰向けに寝ている女の顔は白く、生気がほとんど失われていた


「君はどう思う? 死とは、生とは何故存在する?」

「よせよ。死だとか生だとか、死にかけのやつが言うもんじゃねぇ」

「だからこそ、じゃないか。死の際ほど、それについて強く考える機会はないよ」


もっともらしいことだが、できれば俺はこの話題を続けたくはなかった


「……さあな。夢を見るような感覚じゃないのか? 永眠って言うからには永い夢をみることが死、なんじゃないのか」

「夢……夢か、それはいいね。死を享受することに楽観的になれる」

「なっていいものなのか……?」

「少なくとも、悲観的に捉えるよりかは、心情的に安らかな気持ちで永い夢を見れる気がするよ」



女は一呼吸一呼吸が、最期の呼吸だと言わんばかりに弱弱しくそれを繰り返す



「ところで、xxx」

「あーその前に一ついいか? 俺がxxxと呼ばれるのは確定なのか?」


xxx。それは最近になって女が俺につけたあだ名だ。由来についてはまたの機会にでも語るとしよう




104:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/02(月) 20:40:59.59 ID:7r7HtH3f0


「確定だね。僕の本能がそう伝えてる」

「本能レベルでかよ……んで昨晩見た夢について話せ、だっけ?」

「くつくつ、まだ言ってないんだけどね」

「言われれば、確かに今日の夢はなんか不思議な夢だったな」


まだおぼろげだが、記憶に新しい昨晩の夢


「くつくつ、xxxをもってして不思議と言うのだから、それはもう気宇壮大なものだろう」

「ハードルを無理にあげるなよ。どうだったかな……」

「確か、一人の女の子に俺が振り回される夢……」

「……」

「その女の子が起こす問題に他の、三人と……ってこれじゃあまるで予知みたくくっきり覚えちまってるな」


そしてその女の子は、どことなく目の前で寝ている女に似ていたような……そんな感覚


「それにしても珍しいな、俺が気に留めるほどの夢なんて」

「……xxx、それは本当にいつか出くわすであろうことなのかもしれないね」

「まさか……そんなことは――――――」


起きないだろう。そう口にする前に女が発言を遮る


「xxx……そろそろ、休ませてもらうよ」

「………………そうか」




105:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/02(月) 20:45:17.55 ID:7r7HtH3f0


「……楽しかったよ、親友。君といると」

「……そうか」

「…………そうだ、xxx。最期に……聞きたいことが、あるんだ」


女は最期の力を振り絞った、虫の鳴くようなか細い声で問いかける










「恋慕の情とは、なんだろうね?」






その質問にどんな意図が含まれているのかは汲み取らなかったが






「……はっ、俺らにゃ関係のない感情さ。そうだろ?…………親友」






女はそれを聞くと満足そうに






「…………そうだね。くつくつ、変なことを聞いてしまった」

「いつものお前らしいじゃねえか。変なことを言うのはよ」

「…………それも、そうだね。xxx…………それじゃあ―――」













106:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/02(月) 20:50:32.97 ID:7r7HtH3f0





「―――また会おう。親友」

「ああ―――またな、親友」











こうして、俺は親友との『最初』の別れを終えた












古泉・朝比奈・長門「「「……」」」

キョン「どうよ? ありのーままのー、だぞ?」

朝比奈「ええっと……」

古泉「小説としては悪くありません。恋愛小説としてみても……まぁ及第点ではあると言えましょう」

長門「しかし」

キョン「しかし?」

古泉「『含まれる』部分が多すぎます」

キョン「『含まれる』部分?」

古泉「タネ明かしを終えていないのですよ。あなたの小説は」

キョン「……ああ、なるほど。言いたいことは良く分かった。えぇ、お三方」

キョン「俺から小説って形で具体的な『佐々木』や俺の情報を知ろうたって無駄だからな!!」

朝比奈「!」ビクッ

古泉「……そんなつもりは、ない。とは言い切れませんが……まぁ、あればいいな程度には……」

長門「すまない」

キョン「ほら! 長門は正直だぞ!! えらいえらい、どこぞの超能力者は誤魔化そうとしてるのに」ナデナデ

長門「……」

古泉「本心ですよ。特に最後の一文、これは僕たちなら意味は通じるでしょう。『佐々木』さんが何度も生まれ変わりをしている、と」

古泉「ただ、なんの事情も知らない人がこれを見ると最期の文章を疑問に感じる人が多いと思われます」

キョン「お前も言ってたじゃねえか。それは、読者の解釈に委ねてもいいってよ」

古泉「適度があります」

キョン「俺その言葉嫌い」



107:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/02(月) 20:56:21.64 ID:7r7HtH3f0


古泉「もっと分かりやすく書け、とは言いません。あなたなりの叙述も味が出てまた良いものです」

古泉「ただ、このままではフィクションとしてもノンフィクションとしても中途半端なのです」

キョン「ノンフィクションだ!!」クワッ

古泉「読者はどちらでも構いません、が。ジャンルとしてのフィクション、ノンフィクションの差異があやふやなのです」

朝比奈「……?」

キョン「長門、古泉が難しいこと言ってるから訳してくれ」

長門「つまり、古泉一樹はあなたの書いた文章からの推測では、読者によって解釈に作為的な矛盾が生じることを示唆している
   物語のカタストロフィに置いて、それが正しいものであるのかどうかの判断基準がこの小説には記されていない
   読者の解釈に依存するならば、その根拠となる―――」

朝比奈「???」

キョン「長門、ありがとうストップだ。古泉、長門が難しいこと言ってるから訳してくれ」

古泉「無限ループは遠慮しておきますよ。僕も長門さんも朝比奈さんも、思っていることは同じでしょう」

古泉「リアリティを感じながら読んでいた小説のラストで、それを全く否定する一文が出てきたら、読者は萎えてしまいます」

古泉「あなたのジャンルは恋愛小説です。ワクワクさせるよりはドキドキさせることの方が重要でしょう」

キョン「つまり……最後の一文を書き直せと?」

古泉「可能であるならば、ね? もしくはさらに一文を付け足すか」

古泉「無理はいいませんよ。あなたにとってそれが最良と判断したなら文句はいいません」

キョン「朝比奈さんもこの最後の文が引っかかったんですか?」

朝比奈「う、うん。でも、あたしはこのサッドエンド? よりかはハッピーエンドの方が好きだなぁ、っていう好みの問題だから……その」

キョン「(朝比奈さんの童話は…………いや、触れないでおこう)」

古泉「大衆受けするのは確かにハッピーエンドですね」

キョン「大衆受けを狙ってるわけでもないが……そうか、うーん」



108:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/02(月) 20:59:39.08 ID:7r7HtH3f0


キョン「んー、気分転換がてら外歩いてくる」

古泉「そうですか。より良い作品になることを期待しておきますよ」

キョン「どうだろうな」ガチャ

キョン「んー……どうしたものか」スタスタ

キョン「……いっそのことそれっぽい小説からラスト丸パクリを……」ブツブツ

朝倉「あら? キョンくんじゃない」

キョン「いやそれだと……ハルヒが……」ブツブツ

朝倉「おーい。キョンくーん、聞いてますかー?」

キョン「……眉毛と……おでんで……ナイフ……」

朝倉「バッチリあたしのこと認識してるわよねそれ!!?!? って誰が眉毛とおでんでナイフだ!!!」ガガーン!!

キョン「ん、おお! そのツッコミは朝倉か!」

朝倉「ツッコミで人を判断しないでよ……珍しいわね、団活中に。何してるの?」

キョン「別に。気分転換の散歩さ。朝倉こそ放課後に残ってるなんて珍しい」

朝倉「学級委員の仕事があってね。少し時間かかっちゃったの。それにしても……」

朝倉「同じクラスなのにこうやって話すのはちょっと久しぶりね」

キョン「ん、そうか? 言われてみれば……そう、かもな」

朝倉「最後にこうやって話したのは、あの時よ」

朝倉「バレンタイン明けの……キョンくん涼宮さんの『力』を消失させちゃう発言の時ね」

キョン「あー…………、あれは俺が思春期だった頃か」

朝倉「いまは!!?!? 今がそうじゃないの!? ってそんな前でもなければ、キョンくん思春期あるの!!? あったの!!?」ギャーギャー!!

キョン「騒がしいなぁ……」



134:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/24(火) 16:47:23.49 ID:pnmNcLSK0


数週間前
















キョン「俺の力とハルヒの『力』を消失させる。『力』の継承者は―――涼宮ハルヒで終わらせる」


















朝倉「……えっ? そ、それってどういう意味……?」

キョン「…………」

朝倉「…………」ゴクリ

キョン「……なーんちゃって!! たまにはこういうシリアスキョンくんも見せておか―――」

朝倉「ごめん今そういうテンションじゃなくてガチの方」

キョン「そうか……」シュン

朝倉「……キョンくん。今の言葉の意味……教えてくれないかしら」

朝倉「あなたの……あなたと、涼宮さんをこの先どうするつもりなのか」

朝倉「言葉の通りの意味なら、あたしたちインターフェースはもちろん、涼宮さんの周りの組織全ての動きが変わる」

キョン「…………朝倉」

朝倉「な、なに?」

キョン「…………」

キョン「今度お前の好きなもの聞いてやるから、この話はなかったことにしてくれないか!!?」ボソボソッ!

朝倉「だからそういうテンションじゃないって言ってるじゃない!!! しかも聞いてくれるだけで買ってくれたりしないのね!!!!」ガーン!



135:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/24(火) 16:53:43.95 ID:pnmNcLSK0


キョン「ったく……そんなに知りたいかね。お、れ、の、こ、と」バチコーン!

朝倉「うっ……」クラッ

キョン「ああっ、お腹の子が……」

朝倉「違うわよ!!」バシッ!

キョン「痛ぇ……。まぁ、こんなこと言うつもりじゃなかったってのは本当だ」

キョン「直接じゃないが『佐々木』と話して……わりとそういう意志も出てきたって程度さ」

朝倉「『佐々木』さんの影響なの? キョンくんや涼宮さんの『力』を消そうとする理由は」

キョン「そうだな……。そう言っても間違いじゃない」

朝倉「歯切れが悪いわね」

キョン「言ったろ。そういう意志も出てきた程度ってだけで、別に絶対そうしようなんて思っちゃいない」

キョン「うっかり口から出てきたのがその時考えてたことってのはよくあることだろ」

朝倉「そうかもしれないけど……」

キョン「はい、ではこの話題はやめやめ!! それよか『スーパー平安時代!!』の極秘セール情報に興味はないか?」グフフ

朝倉「くっ! な、なんか流されてるような……ダメよ涼子、ここはキョンくんの真意を確かめるまで―――」

キョン「なんと野菜が全品半額の―――」

朝倉「いつ!!? そんな情報は入ってないわよ!!!」

キョン「ククク……同期を持たぬお前に未来の情報を知る術はない」

朝倉「ひ、卑怯な!!!」

キョン「情報戦は既に始まっている……この情報を持つ主婦の方々も少なくない」

朝倉「どうやって仕入れたの!!? 未来が見える主婦でもいるの!!?!?」ガーン!

キョン「クク、教えてやろうか朝倉、この特大セールの情報を……!」

朝倉「くっ……惑わされては、いけない。そう、本来あたしの使命は涼宮さんをとりまく情報を―――!」

キョン「なんと、その日は魚介類のセールも行って―――」

朝倉「教えて教えて教えてー!!!」ピョンピョン!

キョン「……クク、容易い」



136:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/24(火) 16:59:56.68 ID:pnmNcLSK0


中庭


朝倉「……あの時は高度な話術で目的を逸らされたわね」フッ

キョン「そこまで高度な話術を使用した覚えはないが」

朝倉「それで……今日は聞いてもいいのかしら?」

キョン「何をだ」

朝倉「決まってるじゃない、あの日の続きよ」

キョン「そんなやましいことをした覚えはない!!!」ドン!!

朝倉「そんなやましいことを言ってるつもりはないわよ!! 何言ってんのよ!!!」ガーン!

キョン「言っておくが、俺は今こう見えて忙しいんだ」

朝倉「どう見ても暇そうに歩いてたけど」

キョン「お前も知っての通り、SOS団は今、文芸部存続のために機関誌を作成している。俺はまだその原稿をあげていないんだ」

朝倉「あら、まだ終わってなかったの? あたしはもう数日前に涼宮さんに提出したけど……」

キョン「ハルヒが俺の作品を認めないのが悪い!!!」

朝倉「キョンくんは……確か恋愛小説だっけ? 例えばどんなの書いたの?」

キョン「スリの技術に惚れる話とか、埃フェチ同士の密室の恋とか……」

朝倉「読まずして没よそんなの!!! どんだけコアな層狙ってんのよ!!!」

キョン「だから俺は悩みに悩んでるんだ。朝倉の知りたいことについて答える暇はない」

朝倉「ふーん……まぁ、ほんとは別にいいんだけど」

朝倉「……キョンくん」

キョン「なんだ」

朝倉「……行き詰ったら相談してくれていいのよ?」

キョン「小説のことか?」

朝倉「それだけじゃないわよ。個人的な悩み事だとか、それこそ、これからのこと……だとか」

朝倉「あたしはそうせず失敗しちゃったから、ただの反面教師なんだけど」

朝倉「ていうかそもそもキョンくんに対しておせっかいな心配だとは思うけど、まぁ一応ね」

キョン「…………」

朝倉「……聞いてる?」

キョン「………………お母さん」ジーン

朝倉「ちょっ、誰がお母さんよ!!! 朝倉さんだから!!」

キョン「かつてない母性を感じた……朝倉、お前の可能性はこれからだ!!!」

朝倉「褒められたの!!?!? 励まされたの!!?!?」



137:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/24(火) 17:07:01.57 ID:pnmNcLSK0


朝倉「あらいけない、もうこんな時間だわ」

キョン「タイムセールの時間ですわ奥様、急いで帰らないと」

朝倉「誰が奥様よ。あたしは帰るけど、キョンくんは部室に戻って続き書かなきゃいけないんでしょ」

キョン「ぐっ……俺の人の良さが憎い!」

朝倉「今別に人の良さを憎む必要なかったでしょ。それじゃあ帰るわね、キョンくん」

キョン「おう、長門によろしくな」

朝倉「逆逆、長門さんまだ部室にいるから。今日は……唐揚げにでもするって伝えといて」

キョン「唐揚げか……ちょっともたれるんだよなぁ……」

朝倉「なんでキョンくんが食べる気でいるのよ……」

キョン「うっし、気分転換もそこそこに、ぼちぼち戻るとするか」スクッ

朝倉「ん。頑張ってね、先生? 長門さんへの伝言も忘れずにね」

キョン「今日の夕食はコラーゲンって伝えりゃいいんだよな?」

朝倉「アバウト!!! 情報がアバウトすぎるっっ! コラーゲンじゃなくて唐揚げだからね!!」

キョン「分かった分かった。早く行かなきゃセールに間に合わんぞ」

朝倉「そうだったわ。それじゃキョンくん、またね」タッタッタ

キョン「………………朝倉!!」

朝倉「? なーに?」クルッ

キョン「……………………」

キョン「呼んでみただけだーーっっ!!!!」ドーン!

朝倉「……何よそれ―っ!!!!?!!?!?!? なんで今やるのよ!!?!?!?」ガーン!



138:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/24(火) 17:13:51.99 ID:pnmNcLSK0


キョン「ただいまー、っと。おっ?」ガチャ

朝比奈「あっ、おかえりなさい」

古泉「お待ちしていましたよ、僕たちと」

ハルヒ「………………」ジーー

古泉「団長が、ね」

キョン「外注回りから帰ってきてたのか。んで勝手に俺の原稿読んでんじゃねぇよ。完成してからって言ったろ、ったく」

古泉「気分転換の甲斐はありましたか?」

キョン「それを文字にすべく足早に帰ってきたんだよ」

古泉「それはそれは、楽しみですね」

ハルヒ「…………キョン!」

キョン「なんだ」

ハルヒ「これ、ホントにあんたの体験談なの?」

キョン「別にそんなこと一言も言ってないだろ」

ハルヒ「書いてあるじゃない」

キョン「書いてないだろう」

ハルヒ「書いてるの!!! そんな感じで書いてあるの!!!!」ウガー!

キョン「なんだそのフワフワした解答……仮に、体験談だとしたならなんだと言うんだ?」

ハルヒ「それは……! それは……別に、どうってわけじゃ……ないけど」

朝比奈「な、長門さん。しゅ、修羅場? これが修羅場というものなんですかね!?」

長門「違うと思われる」

古泉「ジェラシーですよ。ジェラシー」

ハルヒ「ち、違うからね! 分かってんの!? キョン!」

キョン「俺はなにも言ってないだろうに」



139:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/24(火) 17:20:23.46 ID:pnmNcLSK0


ハルヒ「まぁ、これがフィクションだろうがノンフィクションだろうがどうでもいいわ」

キョン「いいのかよ」

ハルヒ「問題点はそこじゃないって話! まず、あんたが書いたこれ、恋愛小説かって言われると正直微妙なラインだわ」

キョン「それは古泉にも言われたし、ギリギリのラインを攻めたつもりだ」

古泉「攻めていたのですか……わざわざ?」

ハルヒ「ギリ恋愛小説と認めるとしても、この最後の一文! これで小説を締めるのはあたし的には気に入らないわ!」

キョン「それも古泉に言われて今書き直すべく戻ってきたんだよ」

ハルヒ「むっ……」

ハルヒ「…………古泉くん!! あたしの仕事とっちゃダメじゃない!!」プンプン!

古泉「これはこれは、余計なお節介でしたね」

ハルヒ「……まぁいいわ。それで? あんたはどう書き直すか決まったの?」

キョン「ぼちぼちな。それよか、お前はどうなんだよ?」

ハルヒ「あたし? もうとっくに終わらせてるわよ。ほら」パサッ

キョン「バ、バカな……書き始めたのは昨日のはず……ッ!」

ハルヒ「だから昨日中に終わらせることができるって言ったじゃない。余裕よ余裕」フフン

キョン「全部ひらがなで書いて文字数稼ぎとか……」

ハルヒ「小学生か!!! しないわよそんなこと!!」

古泉「『世界を大いに盛り上げるためのその一・明日に向かう方程式覚え書き』ですか……」

ハルヒ「SOS団がSOS団であり続けるための言わば、理念や信条をまとめてみたのよっ!! これであたしたちが卒業してもSOS団は残り続けられるわっ!」

キョン「残す気満々なんだな。ん? どうかしましたか? 朝比奈さん」

朝比奈「こ、こぇ……これ……す、涼宮さんが書いたこ、これが……」

キョン「ん……あー、そう言えばそうでしたね。これ確か時間平面理論の―――」

朝比奈「わーっ! わーっ! 禁則事項ですぅ!!」バタバタ!

キョン「すいません。ただ、ハルヒのほぼ走り書きのこれをそのまま後世に伝えるわけにもいかないので」

キョン「簡略化して再編集したものを会誌に載せておきます。多分、未来にはその状態で伝わってるはずですから」

朝比奈「えっ? あれ? は、はぁ……。え、じゃあ時間平面理論を初めて解釈した人ってもしかして……」ブツブツ

ハルヒ「ほら! あたしだってちゃんと書いたんだから、あんたもさっさと書き直すなり書き足しなさい!」

キョン「へいへい。俺だってもう書くことは決めてんだよ」ガタッ



140:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/24(火) 17:24:30.22 ID:pnmNcLSK0


「―――また会おう。親友」

「ああ―――またな、親友」











こうして、俺は親友との『最初』の別れを終えた




























そして、俺は今――――――












「xxx!! ほら、早く行くわよっ! ついてきなさいっ!」

「……へいへい」












―――いつか親友に話した夢の中にいる



162:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 23:02:42.38 ID:8QcsHDZW0


ハルヒ「…………はぁーん?」

ハルヒ「結局これは実体験なの? フィクションなの!? はっきりしなさい!!」

キョン「どっちでもいいって言ったのはどいつだよ。ていうかなんというか……」

ハルヒ「? なによ?」

キョン「…………」フゥ

キョン「鈍い奴だな、お前も」ハハン

ハルヒ「ッ!? な、なによそのコケにしたような笑い方は!? ムカつく! 得体のしれないムカつきが今ここに!!!」

キョン「そんな新商品の売り出し文句みたいな感情が?」

古泉「ふむ、僕は修正前と比べ、よくなったと思いますよ」

朝比奈「あ、わたしもっ! そう思います」

長門「同意する」

ハルヒ「……そうかしら? そりゃ単純に死別で終わるよかいいとは思うけど……」

古泉「より読者に好まれるグッドエンディングに近づいた印象があります」

長門「単に憶測や推測で結末を丸投げするのは一部完結の会誌には相応しくない」

朝比奈「でも、ある程度想像の余地も残されてるから、読み手の幅も広げられそうかなぁ、って……思います」

キョン「……ハルヒ。すげぇ、絶賛の嵐だぞ!!!!」クワッ!

ハルヒ「そこまででしょうが。でも、うーん……」

古泉「涼宮さん的には、まだ納得のいかない点が?」

ハルヒ「うーん……そう言われると、そうじゃない、とは言い難い、っていうか……」

キョン「はっきりしないやつだな」

ハルヒ「はっきりしないものを書いた奴が言うな! でも、なーんか引っかかるのよねぇ……」ウーン

古泉「…………ふむ」



163:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 23:08:56.59 ID:8QcsHDZW0


キョン「ともかく多数派の意見により、俺の原稿はこれで終了だ。これ以上はもう修正したりはしないぞ」

ハルヒ「こら! だからそれを決めるのは編集長のあたしなの! 大体多数って言ったってたかが3人の……」

キョン・キョン・キョン・キョン・キョン・キョン・キョン「「「「「「「ん? 数がなんだって??」」」」」」」

ハルヒ「分かった!! 分かったわよ!! 分かったから!!! 邪魔!!! もう邪魔すぎる!!!!」ウワァ!

朝比奈「か、数の暴力を見ちゃった……」

キョン子「分かればよろしい」ポンッ

古泉・ハルヒ「「誰ッッ!!?!?!?!?」」ガーン!

キョン「おっと失敬」ポンッ

ハルヒ「いや失敬とかじゃなくて……えー……えー??」

キョン「ともかく、これで全員分が出そろった。今日中には製本して明日にゃ会長に見せに行かなきゃいけねぇんだろ?」

ハルヒ「あんたのは少し妥協が入ってるみたいだけど」

キョン「苦手なんだよ。頑張った方だろ?」

ハルヒ「…………ま、時間もないしそういうことにしといたげる。感謝しなさい」

キョン「ああ、サンキュー」

ハルヒ「…………ふんっ!」

ハルヒ「さっ! そうと決まれば早速印刷室に行くわよっ!!」

ハルヒ「あの憎っくき会長の鼻っ柱をへし折る出来の会誌が今、完成するわっ!!!!」

ハルヒ「キョン!! ほら、早く行くわよっ! ついてきなさいっ!」

キョン「……へいへい」

古泉「おやおや……偶然ですかね?」

長門「偶然ではない。必然」

朝比奈「やっぱり涼宮さんもいいなぁ……」ホワワ



164:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 23:14:37.28 ID:8QcsHDZW0


翌日


ハルヒ「ふんっ!」ドンッ!

会長「ほう」ドドンッ!

ハルヒ「三度交えたわね陰険会長!! 条件通り、1週間で見事に会誌をつくってあげたわよっ!」

会長「陰険とは……とんだご挨拶だな。ふむ、一応条件通りの体裁は整えてきたわけか」

会長「無論、重要なのは中身だ。私が拝見し、文芸部にそぐわない内容であると判断した場合は……」

ハルヒ「ターイム!!!」

会長「なに?」

ハルヒ「ちょっと作戦会議!! だから少しだけ待ってなさい! いいわね!?」

キョン・長門「「よかろう」」ドドンッッ!!!

会長「……きさ―――ッ!」グッ!

喜緑「待ちましょう。会長?」ニコッ

会長「…………分かった」

古泉「(さすがは喜緑さん)」

ハルヒ「ちょっと! 今からでもいいから谷山のやつ抜いた方がよくない?」ボソボソ!

キョン「谷倉のでヌく……?『個人的! 北高美少女ランキング! 最新版!』でか!?」ボソボソ!

ハルヒ「なんか違う!! あんたが想像してることなんとなくだけど違う気がするから!!!」ボソボソ!

朝比奈「で、でもせっかく書いてくれたのを無断ではけちゃうのはかわいそう……だと」コソコソ

長門「ランキング調査は高校生、主に女生徒に人気のジャンル」ボソボソ

ハルヒ「いやでもその内容が女生徒の反感を買いそうなんだけど……」ボソボソ

古泉「まあまあ、この際SOS団は関係者含め一蓮托生。この会誌こそが我々の集大成ではありませんか」コソコソ

ハルヒ「むぅ、それは……まぁ、そうよね。谷口だって一生懸命自分なりに考えて書いてくれたみたいだし」ボソボソ

キョン「谷口なりに書いたんだ。谷口なりにな」ボソボソ

ハルヒ「よし……そんじゃあ……!!」

ハルヒ「作戦会議終了!!!! ほら! どうぞ!! 気の済むまで! 穴が開くまで見てくれちゃって構わないわ!!」バンッ!

会長「……では、拝見しよう」



165:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 23:18:29.16 ID:8QcsHDZW0


会長「…………」ペラ

ハルヒ「…………」

朝比奈「……」ドキドキ

長門「……」ペラ

古泉「長門さん、またコンピ研のラノベ読んでるんですか? 何週目ですか、それ」

長門「15498」ペラ

古泉「えぇ……」

会長「…………」ジィ

ハルヒ「……随分じっくり見てるわね」

キョン「北高美少女ランキングのページだったりして」ボソッ

ハルヒ「じっくりじゃなくてむっつりだったのね!!?!?!?」ガーン!

会長「静かにしたまえ」

ハルヒ・キョン「「はーい」」

会長「…………」ピクッ

ハルヒ「? なにかしら?」

会長「…………」

会長「『あらそいは終わり 王国にはへいわがもどったのでした そして』」

ハルヒ・朝比奈「「!!?!?」」

会長「『王子さまとそのけらい68人は とわのねむりにつきました おしまい』……これは」

朝比奈「…………ッ」ドキドキ!

会長「童話? にしては少しホ、ラァあッッ!?!?!?」グググッ!

ハルヒ・古泉「「!!?!?!?!?」」ビックゥ!!

キョン「ここを……チョイチョイっとして……ふんっ!」グッグッ!

会長「あ、アー……トテモ、オモシロイ、モノガタリ……ダッタヨ!!」

朝比奈「や、やったぁ……!」パアァ!

ハルヒ「…………なにしたかは分からないけど、ナイスよキョン」グッ

キョン「朝比奈さんの笑顔のためさ。造作もない」フッ

古泉「もう少し! もう少しでいいので会長にも慈悲を!!」



166:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 23:22:35.01 ID:8QcsHDZW0


会長「……ぐっ!? わ、私は今何を……?」クラッ

ハルヒ「いいから、続き! 早く読みなさいよ」

会長「あ、ああ……」ペラ

朝比奈「……わーい、わーい!」コソコソ

ハルヒ・キョン「「(かわいい)」」キュン

会長「…………」ペラ

ハルヒ「……淡々と読み進めてるわね。リアクションとか無いのかしら?」

古泉「それだけ集中して読めることのできる出来というわけではないでしょうか」

キョン「お前たち、静かにしないか。今、会長は北高の美少女ランキングの詳細を暗記中だ」

ハルヒ「今それしてるの!!?!? いや今じゃなくてもおかしいけどね!!?!?」ガーン!

会長「静かに」

ハルヒ・キョン「「はーい」」

会長「……やけに文芸部、またはSOS団なるものに所属していない生徒の作品が多い気がするが?」

ハルヒ「協力してもらったのよ!! それもみんな喜んでしてくれたわ!! これもSOS団の人望があってこそよね!!!」

会長「喜緑くん」

喜緑「はい会長。実は先日、生徒会に匿名のTさんという方から『タスケテ ゲンコウ モウダメダ』という文書が震えた字で送られて」

ハルヒ「過ぎたことよ!!! 現に完成した会誌は既にここにある!!!! 問題は手段ではないわっっ!!!」バァーーン!

キョン「ひ、開き直り方が大物すぎるぞーーっ!!!! ハルヒーーっ!!!」キャーー!

ハルヒ「これがあたしのカリスマ!!! THE・カリスマなのよっっ!!!!」ババーン!

会長「慎め」

ハルヒ・キョン「「はーい」」



167:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 23:28:01.47 ID:8QcsHDZW0


会長「…………ふん」パタン

会長「なるほど、ジャンルを限定せず幅広い層の需要に―――」

ハルヒ「あ、読み終わった? ちょっと待って! こっちももうすぐ終わるから!」ワイワイ

朝比奈「(どっちが勝ってるんだろう……?)」ウーン

キョン「何を……抜かしやがるッ……! 勝負は……ここから……ッ!!!」

キョン「俺の奴隷は……二度ッ!! 二度ッ……刺すッッ!!! くたばりやがれ……ッッ!!!」ペラッ

ハルヒ「はい、あたしの勝ち。またせたわね! 会長!!」ペラッ

キョン「ッッッ!!?!? なんで……? どうして……俺が……あぁああぁああああぁあ!!!!」グニャァアア

古泉「イカサマ無しだとやはり天運は涼宮さんにあるということですね」

長門「……」

キョン「う˝うっ!!?」

長門「地下行き15498年」

キョン「うわぁあぁあああああああぁあああああああああ!! いやだぁぁあぁああぁああぁあ!!」ジタバタ

古泉「やけに拘りますねその数字に……なんの数字でしょう?」

会長「…………何をやっている」

ハルヒ「いや、あんたがあまりにもノーリアクションで読み続けるものだからつい暇で」エヘヘ

会長「……生徒会権限で文芸部を無期限の活動停止―――」

ハルヒ「わー!! 悪かった! 悪かったから!! 無視して遊んでたのは謝るから!! 感想! 感想からちょうだい!」

キョン「なんで……ッ!! なんで俺ばっかり……ッッ!!」ポロポロ

ハルヒ「ちょ、ちょっとキョン!! あんたもいつまでも遊んでないでこっちきなさい!」

会長「……緊張感の欠片も感じないな」

喜緑「彼らには無縁のもののようですから」



168:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 23:33:41.70 ID:8QcsHDZW0


ハルヒ「それで! どうだった? あたしたちSOS団、及び関係者一同の集大成であるその会誌は!!」

会長「……はっきり言おう」

キョン「カスであると!?」ガーン!

朝比奈「ええっ!!??」ガガーン!

古泉「被害妄想が過ぎます」

会長「……特別、何かを言うような内容ではない。少なくとも内容が公序良俗には反していないことは分かった」

ハルヒ「うえっ!? そ、そう……ま、まぁ当然よね!! うん当然!!」

キョン「谷本のやつ言ってくると構えてたが故に拍子抜けだな。いいのか? あれ」ボソボソ

古泉「計画的には、ここで止めるわけにもいきませんし……あと、谷『口』さんです」ボソボソ

会長「これならば、問題なく製本が完了したと言っていいだろう」

ハルヒ「つまんない感想ね!! あれだけ読んでそんな感想しかないわけ? キョン! 感想の手本を見してあげなさい!」

キョン「その会誌のどこかに隠しコマンドが記載してある。それを入力すると古泉が爆発するようになっているぞ」

ハルヒ・古泉「「どういうこと!!?!?!?」」ガーン!

ハルヒ「コマンドって何!? ってかあんた勝手になにしちゃってんの!!?!?」

キョン「サープラーイズ」イェー

古泉「誰に対するサプライズで、どういう原理で僕の体が爆発するんですか!!? 情報量が多すぎる!!」

長門「……」ペラッ ペラッ

古泉「長門さん!! 探さないでください!!! 理由は分かりませんが、あなたなら隠しコマンドを入力できそうな気がするので!!」

会長「騒々しい」 



169:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 23:40:36.78 ID:8QcsHDZW0


ハルヒ「じゃ、検閲が終わったってことだから渡り廊下に置いとけばいいのよね?」

会長「ああ。200部全て捌けさせれば文芸部の活動として認めよう」

ハルヒ「ついでにSOS団の公認も―――!」

会長「ならん。そんなものは初めから学園に存在しない」

ハルヒ「ケチ!」

会長「これでもかなり譲歩しているつもりだが」

ハルヒ「ふんっ! まぁいいわ。これで文芸部の廃部はなくなったわけだから有希は安心して本を読めるわけだし」

ハルヒ「次はSOS団の存在を賭けてまた生徒会と対決してやるから覚悟しなさいっ!!」

会長「まだ文芸部が存続できるかは決まっていない。3日以内に全て捌け―――」

ハルヒ「そんな心配はしてないわ!! 絶対に全部なくなるもの!! 自信しかないわ!」

会長「大した自信は結構だが……もし、ノルマを達成できなかった場合は……」

ハルヒ「分かってるわよ!! みくるちゃんのグラビア好きなだけ撮りなさい!!!」

キョン「なにぃ!!?」キラーン!

朝比奈「えっ? えぇえええぇええぇえええええぇえええ!!?!?」ビックゥ!

ハルヒ「それがお望みなんでしょ? まぁ、交渉次第じゃ朝倉さんや有希、どうしてもって言うならあたしが……」

キョン「ハルヒ」ポン

ハルヒ「なによ?」

キョン「結構です」ニッ

ハルヒ「フンッッ!!」ドゴッッ!!

キョン「ぐはっっぁあぁああああ!!!」

ハルヒ「ならキョンが脱ぐ!!! こっちのペナルティはこれでいいんでしょ!!?」ゴォオッ!

古泉・朝比奈「「えっ」」

会長「誰にとってのメリットがある。それはどちらかといえば生徒会側のペナルティになりかねん」



170:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 23:45:15.43 ID:8QcsHDZW0


ハルヒ「3日後見てなさい!! 苦悶の表情を浮かべながら跪いてあたしを崇める準備をしておくことね」

会長「仮にノルマが達成できたとしてもそんなことはしない」

ハルヒ「ふんっ! さっ、とっととこんなトコおさらばして打ち上げやりましょ、打ち上げ!!」ガチャ!

ハルヒ「みくるちゃんと有希は鶴ちゃん朝倉さんに声かけてきて! あたしは他の連中に声かけてくるから!!」ダダダッ!

朝比奈「はぁい」

長門「……」コクリ

喜緑「……では、わたしもこれで」バタン

古泉「……無事、生徒会対SOS団の第1回戦はこれで終了ですね」

キョン「ふぃー。終わった終わったー!」

会長「………………あ˝ぁ!!」ゴンッ!

会長「ストレスだ……お前たちにこれ以上関わると胃どころか体中に穴が開きそうだ」

古泉「まあまあ、これからもよろしくお願いしますよ。会長さん」

会長「チッ……面倒くさい契約をしちまった」ゴソゴソ

キョン「煙草か?」ヌッ

会長「うおっ!!? き、急に背後に立つんじゃねぇ!! っ、一服ぐらいさせろッ!!」

キョン「別に構わんが、一服した後はブレンバスターの形だぞ?」

会長「~~~っあぁ!! クソッ! 分かったよ、吸わなきゃいいんだろ!!」バシッ!

キョン「そうか? 練習台を探していたからちょうどいい、と……思ったん……だが」ジィー

古泉「……………………ん?」

キョン「そうか、練習台……そうかそうか」スタスタ

古泉「な、なにに納得したかは存じませんが、危機を感じましたので、先に退室させていただきます! そ、それでは!」バンッ

キョン「チッ、逃げやがった……俺も戻るとするか。じゃあな会長」

会長「……とっとと行け。二度と来るな」

キョン「よかろう」バタン

会長「ッ!……チッ……」スッ

会長「こんな面倒な事になるはずじゃ……クソ……!」

会長「(火……火……)」ゴソゴソ

「どうぞ」ボッ

会長「ん? おぉ、フー、悪い……な」ポロッ

キョン「…………」ニッ



172:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/01/31(火) 23:57:31.54 ID:o+Njezqso

あっ・・・



192:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/09(木) 16:58:47.77 ID:N+f9R2+c0


数日後


キョン「ちぃ―っす」ガチャ

古泉「やあ、こんにちは」

朝比奈「こんにちはぁ、今お茶入れますね」

キョン「ありがとうございます。朝比奈さん」

古泉「涼宮さんは? ご一緒ではなかったのですか?」

キョン「なにやら文芸部存続にあたり、長門と一緒に職員室で手続きがあるんだと」

古泉「あぁ、それで長門さんもいなかったのですね」

キョン「あの会長も手が早い。休部の手続きがほぼ完了しかけてたってんだから、台本に力を入れすぎてたんじゃないか?」

古泉「いえいえ。ここまで手の込んだことをしなければSOS団対生徒会は盛り上がりませんから」

キョン「そうかよ。まぁ、その甲斐あってかなくてか、今日もSOS団はこうして文芸部室でだらだらと怠惰な時を過ごしてるってことか」

古泉「まさか涼宮さんの宣言通り、1日で200部全てを捌けさせてしまうとは……これはさしものあなたでも予測し得なかった事態では?」

キョン「そんなわけないだろ。予定調和、当然の帰結だ。あれだけ騒々しくハルヒが外注回りしてりゃ、何かがあることぐらい皆分かる」

古泉「仰る通りですね。半数以上は野次馬の類みたいでしたし」

キョン「ちゃんと読んでるやつがいるのかいないのか……男子人気は固まりそうではあるが」

古泉「谷口さんが思わぬMVPになりかねませんね」

キョン「ともかく、今回の茶番は骨が折れた。これなら妹に付き合ってやる方がマ―――」

キョン妹「ホント!? じゃあ今日はエンドレス鬼ごっ―――」パッ

キョン「フンっ!!! おかえれッッッ!!!!」ゴォオ!!

キョン妹「アハハー―――!!」ジュッ!

キョン「ったく、迂闊なこと言うもんじゃないな」

古泉「………………」

古泉「確かに。恋愛小説に悪戦苦闘するあなたの姿は貴重でしたね」ハハ

キョン「ノーリアクションかよ。今のがどれだけ異常な光景だと思ってんだ、おい」

朝比奈「あれ? 今キョンくんの妹さんの声がしたような……?」



193:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/09(木) 17:03:04.45 ID:N+f9R2+c0


古泉「SOS団対生徒会の第2回戦はどのような内容がよろしいでしょうかね」

キョン「プロレスとか」ズズ

古泉「完全にあなたがやりたいだけじゃありませんか……結局あの後生徒会室から謎の断末魔が聞こえてましたし」

キョン「当分はいらねーよ。今回の一件で生徒会がこれ以上いちゃもん付け加えるのも不自然だろ」

古泉「そうですか。となると、次の対戦相手となる組織は……そろそろ学外のライバルの存在でも作りましょうか?」

キョン「いらんいらん。正体不明の団のライバルになりえる存在ってなんなんだ。それこそ人外でなけりゃ釣り合わんぞ」

古泉「となれば、やはり我らがSOS団のライバルに足りえる存在は『彼ら』ぐらいしか心当たりはつきませんね」

キョン「ライバルなんてもんじゃねえよ。巨乳フェチに、口リツインテに、電波宇宙人だろ? 変人しかいねぇじゃねえか」

キョン「………………………………あれ? 釣り合う…………?」ハッ!

古泉「自信喪失しないでください。確かに僕たちは周囲から奇妙な団だと思われているかもしれませんが……」

キョン「ハルヒ7割、古泉5割の割合でな」

古泉「どんな割合ですか。10割超えてますよね、それ」

キョン「朝比奈さん、長門でマイナス3割でギリギリセーフだ」

古泉「何がセーフの基準なんですか……」

キョン「もう春休みになろうってシーズンにごたごたは勘弁だ。穏やかに、晴れやかに新学期を迎えるための準備期間を過ごそうじゃないか」パアァ

古泉「SOS団的には、そんな静かな休暇があるとは思いませんが」

キョン「ある!!! あるの!!!」クワッ!

古泉「そんな、根拠もなしに……」

キョン「いいじゃないか! 春休みぐらい! こちとらこの1年間相当頑張ったぞ!! そうは思わんか!? えぇ!?」

古泉「思います。思いますとも。しかしですね、何もこの1年頑張ったからといってそれで終わりでは……」

キョン「はぁ……五月病を患ってるかもしれん」

古泉「まだ春と呼ぶには少し早いですよ」



194:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/09(木) 17:07:23.46 ID:N+f9R2+c0


ハルヒ「お待たせっ!!」バンッ!

長門「……」スッ

古泉「お二人とも、こんにちは。手続きは無事済みましたか?」

ハルヒ「おっけーおっけー! 万事オッケー!! これで何の文句もつけられずこの部室を使うことができるわよっ!」

キョン「文芸部の活動の範疇でな」ズズ

朝比奈「涼宮さんと長門さんもすぐお茶入れますねー」

ハルヒ「ありがとみくるちゃん! 熱々で頼むわ」

朝比奈「はぁい」

ハルヒ「あ、そうそう読者間投票の現時点の集計結果だけど……」

キョン「読者間投票? 待て、なんだそりゃ? 初耳だぞ、なぁ古泉」

古泉「いえ、僕は知っていましたが」

キョン「……朝比奈さんと長門は?」

朝比奈「あ、一応涼宮さんから……」

長門「聞いていた」

キョン「……なんで俺知らない?」

ハルヒ「なんであんた知らないのよ」

キョン「聞いてないぞ」

ハルヒ「言ってないもの」

キョン「そりゃ言われなけりゃ知らんだろう、なぁ古泉。朝比奈さん?」

古泉・朝比奈「「…………」」

キョン「……あれ?」

ハルヒ「あんたは別に言わなくても知ってるのが普通でしょ。逆に何で知らないのよ、気が抜けてるわよ」

キョン「えぇ……この場合俺が悪いの? 理不尽じゃないか?」

古泉「僕からすれば、その程度のことは理不尽でもなんでもありませんよ」



195:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/09(木) 17:12:13.73 ID:N+f9R2+c0


キョン「それで、会誌に付いてる投票用紙に印象深かった作品を書いて投函してるものの集計結果がなんだって?」

ハルヒ「知ってるじゃないの!!」

キョン「俺の中の情報が更新されたんだよ」

ハルヒ「初めからやっときなさいよ、まったく……で、それの現時点での集計結果なんだけど」

ハルヒ「なんと、一番人気が高かったのは……ドラムロール!」パチンッ!

キョン「ドゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル、ダンッッ!!!」

古泉「多才ですねぇ」

ハルヒ「……意外や意外、キョンの作品でした」ムス

古泉「おぉ」

朝比奈「おめでとうございます!」ワァ

長門「……」パチパチ

キョン「ほう、これは真剣に物書きの道を目指すべきか……?」

ハルヒ「調子乗んな。これは単に脳内ピンク色のお花畑系女子が恋愛小説ってジャンルだけみて投票したに決まってるわ!」

キョン「バカ! 読者様に向かってそんなこと言うんじゃない!」

ハルヒ「さっそく物書き気取ってんじゃないわよ!!!」

古泉「まぁ、意外というよりかは順当だと思いますよ。もちろん、恋愛小説と言う彼の取り扱ったジャンルそのものが人気なのはありますが」

ハルヒ「でも、他には朝倉さんや鶴ちゃん、国木田くんとかの秀才組が書いた役に立つコラムとかもあるのよ?」

ハルヒ「それに、一番許せないのがキョンの次に人気を得た谷……谷……」

キョン「谷崎?」

ハルヒ「それっ!」

古泉「違います。谷口さんです」

ハルヒ「なんで……ッ! あんな犯罪まがいのランキングなんかが、あたしの論文を差し置いて……2位なんかに」

キョン「ちなみにハルヒの論文の人気は0票で単独最下位だ」

古泉・朝比奈「「あっ……」」

ハルヒ「わざわざ言うなっっ!!!」



196:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/09(木) 17:16:29.27 ID:N+f9R2+c0


朝比奈「す、涼宮さん」アワアワ

ハルヒ「コンピ研のラノベや古泉くんのミステリーにも負けるなんて……」ズーン

古泉「(えっ? 僕の評価ってコンピ研のラノベ並の評価……?)」ガーン!

キョン「(なんかショック受けてるし古泉のはドベ2だってことは黙っておくか……)」

長門「(コンピ研よりも下)」

古泉「(そうですね……僕の作品はドベ2……コンピ研よりも下……)」

古泉「直接脳内に語りかけてる!!!?!!?!??」ガーン!

キョン「おっと、心の声がテレパシーになってしまった」ハッハッハ

長門「すまない」

ハルヒ「…………まぁいいわ! まだ中間集計だし、最終的に1位になれれば!」

キョン「現在の集計数的に1位はさすがに厳しいと思うぞ」

ハルヒ「…………」

ハルヒ「打倒コンピ研!!」メラメラ!

キョン「意識低っ」

ハルヒ「まぁそれにあたしのは大衆向けじゃないしね。分かる人に分かればいいのよ。SOS団の良さはね!」

キョン「俺らが読んでも分からんがな」

ハルヒ「さてと! これで生徒会とのごたごたも一区切りついたわけだし、新しい面白いこと探さなくっちゃ!!」

古泉「また頑張らなければなりませんね」ボソッ

キョン「別にいいっての、そんなに定期的に供給しなくても……」

キョン「この面子がいて、退屈するなんてこたぁそうそうねぇ、だろ」

古泉「……その通りですね」ニコッ

ハルヒ「手始めにキョン!! なんか面白いことやりなさい!!」

キョン「じゃあ……コント。人間パトリオット」

古泉「」ダッ!!

キョン「あっ! ハルヒ! 捕まえろ!! 逃がすなっ!!!」



198:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/09(木) 17:21:12.54 ID:N+f9R2+c0


屋上


キョン「む……今日は風が強いな」ビュウウゥウ

キョン「…………ふー」

キョン「(にしても……言うに事欠いて『夢』だとさ)」

キョン「……この今が、か」

キョン「(……『夢』にしちゃ出来過ぎだとは思わんか?)」

キョン「……なぁ『佐々木』」

キョン「………………ふ」

キョン「届くはずも……ないか」

キョン「…………」クルッ







――――――――――――







キョン「……」ピクッ












――――――夢は

いつか醒めるものだよ――――親友













キョン「……ああ、その通りさ」

キョン「そろそろ目を覚ますべきなんだろうよ。俺も―――」

キョン「お前もな―――」シュン!







―――――――――――――――――――





199:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/02/09(木) 17:23:25.27 ID:N+f9R2+c0


キョン「集計の結果、ハルヒには結局1票も入らなかったとさ」

ハルヒ「………………」

朝比奈「え、えっと……」オロオロ

長門「致し方ない」

古泉「優れた作品は時間をかけて評価されますから……」

キョン「どんまいどんまい、編集長(笑)」ポン

ハルヒ「うっさいバカキョン!!!!」


                                                        編集長★一直線! 完



242:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/11(土) 15:02:47.98 ID:kdDrbbS+0


谷口「さっ、やって参りました!! みなさんお待ちかね!!」

谷口「春の北高女子バレー!! いやー、ついに始まりました!!」

谷口「おっと、挨拶が遅れました。今大会のもようは実況わたくし谷口、解説はキョンさん、国木田さんでお送りしていきます!」

キョン「どーも」

国木田「面倒くさいノリだね」

谷口「さて、春の北高女子バレーと題しました今大会」

国木田「別に大会じゃないよ。ただの行事でしょ」

谷口「新学年を来月に控えた1年生女子にとっては最後の晴れ舞台! 活溌溌地の身で頑張っていただきたいですね」

キョン「そうですね。解説のわたしとしましては、普段より知的な谷草さんの方が気になりますね」

国木田「驚天動地だよね」

谷口「谷口です。おっと、そうこうしている間に我らが五組の試合展開が随分一方的なものになってきましたね」

キョン「そうですね。なんといっても、五組には3人のエースがいますからね」

谷口「ほほう、ではその3人のエースとはいったいどの選手を指すのでしょうか?」

キョン「まず一人目。これは素人目から見ても分かりやすいですね。殺人スパイクを放つ―――」

















ハルヒ「いよっしゃぁあああぁあああああ!!! ブレイクよブレイク!! ブレイクし続ければ負けることなんてないんだから!」
















キョン「涼宮ハルヒ選手ですね」

谷口「やはりと言いますか、間違いなく名前が挙がってきますねこの選手は、ええ」

谷口「個人的には容姿と体には問題ありませんが、いささか言動の方が……」

国木田「あぁ、分かってたけどやっぱりそういう実況なんだね」



243:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/11(土) 15:07:19.34 ID:kdDrbbS+0


キョン「涼宮選手のスパイクで本日どれだけの得点と負傷者が生まれたのでしょうね」

谷口「どちらも、両手では数えきれないほどとの報告です!!」

国木田「前者はともかく、後者はえげつないね。行事の中止を考えるレベルじゃないかな」

キョン「涼宮選手も加減を覚えた方がよさそうですね。今のままでは、ゴリラが混ざっているのと変わりませんしね」

谷口「負傷者に大事がないことを願いつつも、続きまして2人目のエースについて伺ってみましょう!」

キョン「そうですね。派手さはないが、堅実な守備と正確なトスで涼宮選手を上手くアシストしてる―――」











朝倉「…………」チラッ チラッ











キョン「朝倉涼子選手ですね」

谷口「なるほど! 所謂、影から支えるプレーヤーというわけですね! 女房役と言う言葉が良く似合いそうです」

キョン・国木田「「たしかに」」

谷口「この朝倉選手、才色兼備を体現したような人でございまして、わたくしの個人的ランクではAAランクプラスを獲得しております!」

国木田「あの男子から絶大な支持を得たという、ストーカー調べのランキングのことだね」

谷口「謂れのない揶揄は気に致しません! しかし、その朝倉選手ですが、何やら落ち着きがない様子ですね」

国木田「ほんとだ。なんかチラチラ見てるね」

キョン「あぁ、その人こそ3人目のエースですよ。名を―――」



244:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/11(土) 15:12:41.50 ID:kdDrbbS+0













キョン子「いええぇぇぇぇぇぇぇええええい!! ナイッサー!!!」















キョン「…………」

谷口・国木田「「…………」」

キョン「……いやーいい選手ですね」

国木田「名は?」

谷口「キョ、キョンさんが3人目として名を挙げた、失礼。挙げなかった選手ですが! ……あの方は!?」

キョン「助っ人外国人とかじゃないですか?」

国木田「学校行事で?」

谷口「こ、ここからではあまりよく見えませんが、五組の女子に在籍はしていないような……」

国木田「朝倉さんが気にしてたのはあの人のことだったみたいだね……」
















ハルヒ「ナイッサー!」パチーン

キョン子「いぇーい!」パチーン

朝倉「いや、いぇーいじゃないぃいいい!! ちょっとターイム!! そこの二人集合っ!!」ビシッ!

ハルヒ「どうしたのよ朝倉さん。ナイッサーだったじゃない、いぇーい」

朝倉「そうだけど! そっちじゃなくてこっち!! あなたキョンくんでしょ!!?」

ハルヒ・キョン子・キョン「「「キョン子だけど?」」」

朝倉「ってなんでキョンくんが!!?」ガーン!

朝倉「だから違うってば!!! キョン子!? それだから結局キョンくんじゃないの!! なにしてるのよ!!!」

ハルヒ「朝倉さん。この子はキョンじゃなくて、キョン子。それと、一つ言っておくわ」

ハルヒ「勝つためには……いかなるイリュージョンも厭わない!」キリッ!

朝倉「これイリュージョンじゃなくてただの不正ぇぇえええぇええええええ!!!!」



245:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/11(土) 15:16:57.58 ID:kdDrbbS+0


キョン子「案ずるな朝倉、すでに情報操作はしてある」

ハルヒ「そう、既に催眠術によってキョン子はウチのクラスの一員であるとみんな思い込まされている」

朝倉「た、たかがクラス行事のために……」

ハルヒ「あたしがいる限りいかなる勝負ごとにおいても負けは許されないのよッ!」

朝倉「キョンくんに色々とよく負けてるくせに」ボソッ

ハルヒ「ノーカン! ノーカン!」

朝倉「(それ団長じゃなくて班長でしょ……)」

キョン子「まあまあ、楽しくやれてるんだし俺も混ざてくれたっていいじゃないか。一応、今は女子だし」

朝倉「いや……でも……だってねぇ……」ジィ

キョン子「………………別に胸だけが女である証明にはならないだろッッ!!!」クゥ!

ハルヒ「朝倉さん!! 酷い!! 酷いわよ!!! キョン子だって悩んでるのよッ!!」

朝倉「ち、ちがっ! 別に胸見てただけじゃ……ってなんであたしが気を使わなきゃならないのよ!!」

キョン子「まーまー。細かいことは置いといて、ここいらでウチらの一致団結見しとかね?」

朝倉「キャラも定まってないし……はぁ、もういいわ。これ以上試合を止めるのも悪いし」

ハルヒ「朝倉さんも納得してくれたみたいだし、さくっとこの試合勝つわよっ!!」
















国木田「あっ、なんか揉めてたみたいだけど試合再開するみたいだよ」

谷口「結局彼女が何者であるのかは分かりかねますが……なんとなく、わたくしの好みのタイプではありそうです!」

キョン「おぇ」

谷口「さぁ! キョンさん曰く3人のエースを擁する5組の快進撃はどこまで続くのでしょうかッ!!」

キョン「国木田ー。このノリも飽きたし、飲みもの買いにいこ―ぜ」

国木田「いいよ。ちょうどのど渇いてたところだしね」



246:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/11(土) 15:21:11.98 ID:kdDrbbS+0


部室
  

ハルヒ「完っ全勝利!! まっ、当然の結果よねっ!!」

キョン子「よねー!」キャッキャ

朝比奈「(またキョンくん女の子になってる……)」ゴクリ

朝倉「あなたはいつまでいるのよ……できればキョンくんとは同じ空間にいてほしくないんだけど。違和感がすごいから」

キョン・キョン子「「そうか?」」

古泉「ええと……まぁ」

ハルヒ「まあまあ、キョン子だって活躍してたしいいじゃないの! 朝倉さんだって後半はノリノリでトス出してたじゃない」

朝倉「あ、あれは、その……クラス委員だからそりゃクラスを勝利に導かないといけないわけで……」

ハルヒ「そう! だからつまり勝てばなんでもいいのよ!!」

ハルヒ・キョン子「「ねー?」」

朝倉「キョンくん、それやめて。腹立つから」イラッ

キョン「俺じゃないって。キョン子だからそいつ」

キョン子「そうだぞ朝倉。間違えるなよ」

朝倉「あぁぁああっぁあぁああぁあああぁああ!! ありえない状況に対する拒否反応がすごいぃいいぃいい!!!」

古泉・朝比奈「「(それはまた随分今更のような……)」」

キョン子「まぁ、確かに。これ以上の長居は無用だな。それじゃ、ここらでおいとまするか」

ハルヒ「そんなッ! キョン子!! あたしたち……やっと分かり合えたじゃないっ!!」グッ!

キョン子「悪いなハルヒ、でも仕方がな―――」フッ

朝倉「情報結合の解除を申請」ボソッ

長門「」ピクッ

キョン子「―――いがぁぁあぁああぁあぁぁぁあぁあああ!!!」キラキラッ

ハルヒ・キョン「「キョン子ーーーーーーー!!!!!」」

朝倉「いつまでやるのよこの小芝居は!!!!」



247:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/11(土) 15:25:39.70 ID:kdDrbbS+0


キョン「なんてことするんだ朝倉!! 殺人! 殺人だぞこれは!」プンスカ

朝倉「虚を無に還しただけよ」

キョン「な、なんだその言い回し……」

ハルヒ「まぁ、キョン子にはまた会えるでしょ! それより、五組の男子の情けなさったらないわよね。期待はしてなかったけど」

朝倉「一回戦負けだっけ? それこそキョンくんがいてなんで負けるのよ」

キョン「ファールとろうとしてずっと痛いフリしてたら試合が終わってた」テヘ

ハルヒ「うわぁ……愚の骨頂ね」

朝倉「スポーツマンシップの欠片もないわね」

キョン「勝つための行為が負けに繋がるとは……くっ」

朝倉「課題だらけね」

古泉「しかし、この球技大会が終わり、春が訪れるといよいよ新学年ですか」

朝比奈「あー……わたしはもう3年生になるんだぁ……早いなぁ」

朝倉「早いですね……でも色々と濃い1年だったなぁ……」

長門「味付けなら今のままで問題ない」

朝倉「いやそんな話じゃなくて」

ハルヒ「1年が経つということは、SOS団が1周年を迎えるということよ!! 盛大に祝わなきゃいけないわねっ!」

朝比奈「お祝いですかぁ? 紅茶かなにか仕入れてた方がいいのかなぁ……」

古泉「今の内から会場を押さえておきましょうか?」

ハルヒ「大丈夫よ古泉くん! ここでやるから!!」

キョン「またかよ」

ハルヒ「またよ!! SOS団の祭事はSOS団の部室でやる決まりなんだから!!!」

朝倉「……ほんと、忙しないことね。この団は」



248:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/11(土) 15:30:41.25 ID:kdDrbbS+0


コンコン


ハルヒ「ん? 誰かしら? どーぞー!!」

古泉「うちに訪問者とは珍しいですね」

朝倉「あたしや鶴屋先輩以外で来る人いたんだ……って」


阪中「ど、どうもなの」


ハルヒ「あれ? 阪中さんじゃない。さっきぶりだけど……どうしたの?」

朝倉「意外な来客だわ」

古泉「お知合いですか?」

朝倉「あたしたちと同じ五組の生徒よ。SOS団には縁のない大人しい子のはずだけど……」

阪中「ここって……その、え、SOS団? の部室でいいのね? 朝倉さんもいるみたいだけど……」

キョン・長門「「よかろう」」ドンッ

阪中「えっ、あ、はい」

古泉「(引っ張りますね。よほど気に入ったのでしょうか)」

ハルヒ「てことは、ここがSOS団の部室と知ってあなたは来たわけね。阪中さん」

阪中「うん。実は、相談したいことがあってここに来たの」

キョン・ハルヒ・朝倉「「「相談っ!!?!?」」」ガタッ

阪中「うえっ!? そ、そうなの」

朝倉「こんなトコに!!?」

ハルヒ「ちょっと! 朝倉さん!! 聞き捨てならないわよ!! こんなトコってどういう意味よ!!」

朝倉「そのままの意味よ! 阪中さん。もしその相談事があなたの人生に関わるようなものなら、むしろこの団には関わらない方が……」

ハルヒ「スト―ップ!! これ以上は名誉棄損で出るトコ出るわよ!! それでっ! 阪中さん! 相談事っていうのは!?」

阪中「そ、それは……その。あの……」

キョン「相談しにくい状況をつくってどうする」



249:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/11(土) 15:34:19.20 ID:kdDrbbS+0


ハルヒ「幽霊が出るっ!!?」

阪中「なの」

長門「……」

キョン「そりゃまた突飛な。んでどうして幽霊が出たらウチに相談に来るシステムになってるんだ?」

阪中「えっと、SOS団ってある意味有名だし」

古泉・朝比奈「「(ある意味……)」」

阪中「オカルトとかホラー系の……なんでしょ?」

ハルヒ「うんうん! あたらずとも遠からずよ阪中さん!! ここにきたあなたの判断は間違ってないわ!!」

朝倉「いつからオカルト同好会になったのよ……」

阪中「朝倉さんがSOS団だとは知らなかったけど……」

朝倉「あぁ、あたしは違うわよ? たまに部室に来たりするだけで……」

キョン「そう、これがホントの『幽霊』部員ってな!!」ナハハ

ハルヒ・古泉・朝比奈・長門「「「「……」」」」

阪中「……え、っと」

キョン「……幽霊よりも冷ややかな視線だぜ」

朝倉「そもそも部員じゃないし……」

ハルヒ「バカは放っておいて、阪中さん! 詳しく聞かせてもらえる!?」

阪中「うん。あのね―――」



262:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 15:37:13.59 ID:1g75IOsJ0


キョン「ふむふむなるほど。近所の犬が一斉に近寄らなくなった場所がある、と……」

阪中「えっ? そ、そうだけど……あたしまだなにも言ってないの……」

朝倉「阪中さん。気にしたらダメ」

ハルヒ「読心術みたいなもんよ! ただのトリックよトリック!」

阪中「そ、そうなんだ……」

キョン「しかしなぜそれが幽霊につながる?」

阪中「うん。あたしの家の近所の人達は犬を飼ってる人が多いんだけど、その飼い犬たちもみんな近寄らなくなって」

阪中「それどころかノラ犬やノラ猫までいなくなってるの」

阪中「いままでは何ともない普通の散歩コースだったのに……」

ハルヒ「ふんふん!」カキカキ

阪中「でね、よく聞かない? 犬や猫には人間には見えないものが見える、って」

朝比奈「ひ、ひえぇ……」ビクビク

古泉「なるほど……ね」

阪中「それに、多頭飼いしてる樋口さんて人がいるのよ。その飼い犬の一匹が昨日から具合を悪くしてるんだって」

ハルヒ「つまり、それが……」

阪中「幽霊の仕業じゃないか……って」

朝倉「……ふぅん」

長門「……」

阪中「どう思う? これって幽霊の仕業かな? 涼宮さん」

ハルヒ「うーん……正直現時点ではなんとも。百聞は一見に如かずと言うし、現場に急行する方が正しいわね!」

朝比奈「い、今からですかぁ?」

ハルヒ「そうよ! 早くしないと幽霊が逃げちゃうかもしれないでしょ! とっ捕まえて色々尋問したいのに!!」

朝倉「趣旨が違うでしょーに」



263:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 15:41:42.58 ID:1g75IOsJ0


ハルヒ「ではっ! しゅっぱーつ!」

朝比奈「あ、あの! 涼宮さん! やっぱりこの格好で行く意味は……」

ハルヒ「みくるちゃん! 霊にはお祓いって相場が決まってるのよ! ちょうどいいじゃない! 衣装のリユースができて!」

朝比奈「うぅ……」

阪中「す、すごいの……なんていうか本格的……」

朝倉「形から入るタイプというか、形に拘るタイプなのよ。で、なんで長門さんまでコスプレしてるわけ?」

長門「……」ギュルリーーーン!!

ハルヒ「いやー! 懐かしいでしょ!? 有希の魔女っ子コス!! あまりに似合ってたから有希のクラスの人にもらっておいたのよ!」

朝倉「今長門さんが着る理由になってないんだけど」

ハルヒ「たまには日の光を浴びなきゃ! 服は着るために作られたんだから! よかったら朝倉さんと阪中さんの分の衣装もあるけど?」

朝倉・阪中「「遠慮します」」

ハルヒ「そ? まぁ、いいけど! さあ出発出発ー!!」

古泉「いやぁ、思いの外賑やかなパーティになりましたね」

キョン「主に巫女と魔女のおかげでな。ハロウィンと勘違いしてんじゃねぇか?」

古泉「どうです? 我々も袈裟や法衣で身を固めてみますか?」

キョン「ハルヒー! バリカンー!! 古泉が出家したいって―――」

古泉「ほんの冗談ですよ!! 涼宮さん! ジョークです! 少し早めのエイプリルフールですよ!!」

ハルヒ「なんだぁ……冗談か」シュン

キョン「冗談の通じんやつだな」

古泉「あなたが言いますか……」



264:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 15:45:46.90 ID:1g75IOsJ0


古泉「時に、あなたは幽霊の存在を信じてはいらっしゃいますか?」

キョン「俺自身が幽霊みたいなもんだろ」

古泉「……ええっと、そうなんですか?」

キョン「そうじゃないのかなぁ。何を持ってして幽霊というのかは知らんけど」

古泉「そんなあやふやな……一応、あなたは人間だとカテゴリしておきますよ」

キョン「そうかい。で、お前はどうなんだ? 幽霊を信じてるのか?」

古泉「申し上げますと、霊魂の存在は信じてはいません。が、信じざるを得ないこともまた事実です」

キョン「……ファンタジー慣れしてる奴はこれだから」

古泉「そう仰らずに。しかし、あなたの仰る通り宇宙人や未来人、超能力者等はヘタをすれば幽霊やUMAと一括りにされてもおかしくないですからね」

古泉「僕たちの存在が、幽霊の有無を立証してると言っても過言ではありません、と僕は考えていますが……」

古泉「実際、その辺の事実はどうなのです? 全知と言っても過言ではないあなたにだからこそお聞きしますが……」

キョン「それでいいんじゃねぇの」ポケー

古泉「おやおや……相手にしていただけませんか」

キョン「朝倉も言ってたろ。SOS団はオカルト同好会じゃねぇ」

古泉「ですが、幽霊騒動の原因を突き止めるためには、オカルトについて少しばかり知っておいてもいいのでは?」

キョン「……じゃあこれだけは言っておいてやるよ」

キョン「今回の件に関して言えば、オカルト要素はまったくねぇよ」

キョン「あるのはいつも通り。常識という偏見から生まれた『SF』って要素ぐらいさ」

古泉「……そうですか」

ハルヒ「キョーン! 古泉くーん! もっとせかせか歩きなさーい!!」

キョン「へーへー」スタスタ

古泉「……今回の件に関して言えば、ですか」



265:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 15:51:11.13 ID:1g75IOsJ0


阪中「ここなの」

ハルヒ「はーっ!」

朝倉「へぇー」

朝比奈「おっきぃ……」

古泉「豪奢ですね」

長門「立派」

キョン「……お、俺の番か? えーっと……う、うわぁ! デカすぎるっ!」ガーン!

朝倉「誰もそんなリアクション大会なんて開催してないから。にしてもホントに大きなお家だこと」

ハルヒ「さてさて、では問題のワンコはどこにいるのかしら?」キョロキョロ

阪中「も、問題になってるのはどっちかと言うと散歩コースのほうなの。あと、ルソーは室内飼いしてるの」

朝倉「ルソー?」

阪中「あ、ウチの犬の名前なの」

ハルヒ「ジャン・ジャック……J・Jね!」

朝比奈「ジャン……ジャック?」

ハルヒ「ジャン・ジャック・ルソー……一般意志、自己愛、自尊心、人間本性、児童中心主義教育、市民宗教など。
    一般意志の概念を提出したことによって国民主権概念の発展に強い影響を与えた他
    自由主義思想史においては積極的自由を掲げた思想家と位置づけられる」

キョン「うおっ! Wiki宮がでたぞ!! 捕縛しろ!!」

朝倉「なんでよ」

阪中「あはは。涼宮さん、それ、あたしのお父さんと同じ呼び方」ガチャ

ルソー「わわんっ」ピョン

朝比奈・朝倉「「わぁ……!」」

阪中「この子がルソー。可愛いでしょ」

朝比奈「か、可愛いですっ!! ふかふかー!!」キャッキャ!

キョン「可愛いものを愛でる朝比奈さんを愛でる俺は……果たして可愛いのか……試してみる価値は―――」グッ

古泉「ないです」



266:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 15:55:54.22 ID:1g75IOsJ0


ハルヒ「じゃ、その問題の場所にしゅっぱーつ!! 行くわよっJ・J!!」ダッ!

ルソー「わんっ!」

阪中「すっ、涼宮さーん!! そっちじゃないの!! こっち! こっちが散歩コース」

朝倉「それに走っちゃったら散歩じゃなくてジョギングになっちゃうじゃない」

長門「ペース的には徒競争のレベル」

朝比奈「は、はえぇ……」

キョン「ところで朝倉よ、お前はのん気に俺たちに付き合っていてもいいのか? 夕飯の買い出しとか大丈夫なのか?」

朝倉「あら、心配してくれてるの? それとも単にお邪魔だったかしら?」

キョン「いや、朝倉がこのまま付き合ってくれるならボケの調子をペースアップしようと……」スッ

朝倉「誰がツッコミ要因よ!!! 言ったそばからポケットに手を突っ込まない!! 何を出す気よ」

長門「これはツッコミと手を突っ込まないとをかけた朝倉涼子の高度な―――」

朝倉「長門さんも解説しない!!! そんなんじゃないから!! まったくもう……」

朝倉「あたしだって気になるもの。幽霊騒ぎの正体ってやつがね。もっとも……」

朝倉「ある程度、目星はついてるみたいね。お互いに」

キョン「そうなのか?」クルッ

古泉「僕ではなくあなたのことだと思いますが……」

朝倉「……まっ、あたしはあたしでただついてきてるだけだから。お構いなく」シラー

キョン「うわっ、スルーしだした。ダメな時の朝倉だ。古泉なんとかしろ!」

古泉「えぇ……」

朝倉「おーよしよし。かわいいわねぇ」クシャクシャ

ルソー「わんっ!」

キョン「ならば……っ! あのワン公と俺との位置をチェンジして―――!」

古泉「最悪心臓に鋭いツッコミが入りますが、よろしいのですか?」



267:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 16:00:38.18 ID:1g75IOsJ0


ルソー「くぅん……」ピタッ

阪中「あっ、やっぱりここで止まっちゃうのね」

ハルヒ「きた? きた!? ここね!? ここなのね阪中さん!?」

阪中「そうなの。先週まではここをまっすぐ行くコースだったんだけど、今はルソーが川に近寄らなくなって……」

ハルヒ「キョン!! 川よ!! 川が怪しいわ!! 飛び込みなさい!!!」
キョン「ハルヒ!! 川だ!! 川が怪しいぞ!! 飛び込むんだ!!!!」

朝倉「そんな安直な……」

阪中「それがね、川の上流とかもっと下流なら問題なく散歩できるみたいなのね。近所の人も言ってた」

古泉「ふむ、特別なにか違和感を覚えるようなこともありませんね。川が汚染されてるわけでもありませんし」

ハルヒ「うーん、なんで嫌がるのかJ・Jに直接話を聞けたらいいんだけど……」

キョン「ははっ! 超能力者じゃあるまいしそんなことできるやつがいるはず……」

ハルヒ「いた!!!!」ガーン!

キョン「ほんとだ!!!」ガガーン!

古泉「す、涼宮さんが仰っているのはあなたのことです。僕を見るのはやめてください」

朝倉「(とんでもないネタバレしようとしてきたわねキョンくん)」ゴクリ

ハルヒ「キョン! キョン! あんたならJ・Jと会話するぐらいできるでしょ!? なんて言ってるか聞いてみなさい!」

阪中「そ、そんなことができるの?」

ハルヒ「ふっふっふ、意外とウチのキョンを見くびってはいけないわ!! 雑用にかけてキョンの右に出る者はいないわ!!」ドーン!

朝比奈「ど、動物とお話しすることは雑用じゃない気が……」

キョン「ふん……ふん! なにぃ! うん、うん……なんだってぇ!」

ハルヒ「ほら!! 見て阪中さん!! 会話してる!! 意思疎通ができるのよ!!!」

阪中「そ、それでルソーはなんて言ってるの?」

キョン「『oh,I think so……』」

朝倉・朝比奈・ハルヒ・阪中「「「「英語っ!!?!?!?」」」」ガガガーン!!

古泉「……あぁ、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアはスコットランド原産の犬でしたね」



268:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/19(日) 16:05:05.66 ID:1g75IOsJ0


ハルヒ「J・J……あんた英語喋れたのね」ゴクリ

朝倉「落ち着いて涼宮さん。一応喋ってはいないから」

朝比奈「も、もしかして『わんっ!』って『one!!』って言ってたんじゃ……」アワワ

朝倉「落ち着いてください朝比奈先輩。意味が分からないことを言っています」

長門「……わたあめ」

朝倉「……長門さん。犬を見て食を思い出すのはやめて、って……」

朝倉「だからあたしにツッコミをさせないでってばぁあぁあぁあああああ!!!!」アァ!!

阪中「あ、朝倉さん……大丈夫?」オロオロ

ハルヒ「キョン! まどろっこしい英語はいいわ! つまりJ・Jはなんて言ってるのか教えなさい!!」

ルソー「わんっ!」

キョン「『だまれ小娘!!』」

ハルヒ・阪中「「嘘だっ!!」」ガーン!

阪中「う、ウチのルソーはそんなに口が悪い子じゃないの!!」

朝倉「いや阪中さん、口が悪いも何もルソー喋ったことないわよね?」

キョン「なんとなく嫌な感じがするから近づきたくないんだとよ、なぁジャンバルジャン?」

阪中「ジャンバルジャン違うの」

ルソー「…………」

キョン「このワン公俺をシカトしやがった……っ!」グルル

ハルヒ「あんたが名前間違ってること分かってるのよ!! 賢いわねJ・J!」

朝倉「J・Jも間違ってるからね? ルソーだからね本名」

古泉「しかし、あなたの言うことが事実なら、ルソー氏も近づきたくない本質的な原因が分かっていないことになりますね」

ハルヒ「本能が伝えてるのよ! この場所に近づいてはならぬ……っ! って! ねーJ・J?」

ルソー「くぅん……」

キョン「『ジャンバルジャンに改名したいワン!』」

ハルヒ・阪中・朝倉「「「嘘だっっ!!!!!!」」」



276:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/27(月) 21:14:37.08 ID:FOTIGi/j0


古泉「とりあえず、別の散歩コースを回ってみましょう。何か違いが分かるかもしれません」

ハルヒ「よしっ! J・J!! ついてきなさいっ!!」ダッ!

ルソー「わんっ!」タッ!

キョン「『くははっ!! ものの2秒で肉片に変えてくれるわっ!! 小娘ぇ!!』」

朝倉「だからなんで意味のない嘘つくのよ。ルソーのキャラが定まってないじゃない」

古泉「談笑中のところ申し訳ありません」

キョン「違うぞ古泉。漫才中」

朝倉「……」

キョン「ほら、否定しないだろ?」

朝倉「ツッコミって思われたくないだけだから」

古泉「そのように、会話に夢中になられる程度には、この場所に異変は感じませんか?」

朝倉「まあね。ほんの少し、足がかり程度の情報ぐらいしかここにはないわ」

古泉「なるほど。となると、気になるのは……飼い犬の一匹が体調を崩している、樋口さんでしょうか」

朝倉「……さすが副団長ね。できればその聡明な頭脳を怪しい団内だけで活かすことはやめてほしいわ」

古泉「ここが僕のホームグラウンドですから。しかし、そうなると現場の散策はあまり意味を成しませんが……」チラッ

ハルヒ「ふんふふんふふーん♪」

朝比奈「ぴょこぴょこしててかわいいなぁー」ポワポワ

古泉「……水を差すのも野暮でしょう。しばしルソー氏の散歩に付き合うとしましょう」

朝倉「ま、そういうことよね」

キョン「大変だぞ古泉、朝倉。ルソーのマーキング開始まであと―――」

朝倉「言わなくていいから!!!」



277:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/27(月) 21:18:42.14 ID:FOTIGi/j0


ルソー「くぅん」ピタッ

ハルヒ「おっと。ここもなのね、J・J」

長門「3ヶ所目」

ハルヒ「1、2ヶ所目からそんなに離れてないわよね? だとしたらそこまで広くない範囲で何かが起きてる、ってことね!」

古泉「涼宮さん、これを見ていただけますか?」スッ

ハルヒ「なになに?」ズイッ

キョン「古泉の秘蔵コスプレ特集」ボソッ

ハルヒ「!!?」ズザザッ!

古泉「違いますから!! そんなに後ずさられますと堪えるものがありますよ……」

ハルヒ「ごめんごめん! それで、見てほしいものっていうのは?」

古泉「ルソー氏が立ち止まったポイントを地図上に記してみました」

ハルヒ「1、2、3……! これって……!」

古泉「お気づきになりましたか?」

阪中「これがどういう……?」

ハルヒ「阪中さん! これみて! J・Jが止まった位置を曲線で結ぶと弧になるでしょ? これはつまり―――!」

キョン「この角度をそのままに1周させると円になる。その円の中心に何かがあるんじゃないかってことだ」

ハルヒ「―――ってことなのよ!! それに、中心はやっぱり川沿いだしね!!!」バシバシ!!

キョン「分かった分かった。セリフとったのは悪かったから。ノールックで叩くな。せめて視界に入れてくれ」

阪中「わー……すごい。探偵みたいなの。感心しちゃう」

ハルヒ「よし! 場所がわかったならそこに急行よ!! 阪中さんはJ・J連れて家まで戻ってて!! あたしたちで原因解決してくるから!」

ハルヒ「行くわよっ! SOS団!!」ダッ!

ルソー「わんっ!」フリフリ

朝倉「……ルソーは何て?」

キョン「『がんばってくださいワン!』」

朝倉「……嘘ばっかし」クスッ



278:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/27(月) 21:24:07.19 ID:FOTIGi/j0


ハルヒ「とーちゃく!」ドンッ

キョン「全速だったな」

朝比奈「は、はひぃ……」

朝倉「大丈夫ですか? 朝比奈先輩」

朝比奈「だ、だいじょ、ふぅ、はぁ……」

ハルヒ「みくるちゃん! 有希! 出番よ!!」

長門「……」ジュララララァアアアアン

朝比奈「ふぅ……ふへぁっ!?」

ハルヒ「お化け退治よお化け退治!! なんのために巫女と魔女のコスプレしてきたと思ってんのよ!」

朝倉・キョン「「(涼宮さん)ハルヒの趣味(でしょ)だろ」」

ハルヒ「ちっがーう! お祓いよお祓い!! 言ったでしょ! 霊にはお祓いって決まってるのよ!!」

朝比奈「で、でもわたし、何をしたら……」

ハルヒ「大丈夫!! 般若心経のカンペもってきたから!! 古泉くん! これもってて!」

古泉「かしこまりました」

朝倉「長門さんは何するの?」

ハルヒ「魔法陣!!」ドンッ!

朝倉「え?」

ハルヒ「魔女といったら魔法!! 魔法といったら魔法陣じゃない! 常識よ? 朝倉さん」

朝倉「えぇ……」

ハルヒ「有希はこのチョークでそれっぽい魔法陣を書いてちょうだい! はい!」スッ

長門「了解した」

ハルヒ「それじゃ! SOS団式除霊術を開始するわよー!!」オーッ!

朝倉「神道に仏教にオカルトって……幽霊より問題じゃない?」

キョン「それがSOS団だ」



279:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/27(月) 21:28:30.73 ID:FOTIGi/j0


朝比奈「かんじ? ざいぼ……ざつぎょ……?」

ハルヒ「うんうん! それっぽいわよみくるちゃん!」

朝倉「どれっぽいんだか……それでこっちは」チラッ

キョン「ククク……顕現せよ。煉獄門より出し我が僕……その清火をもって奴を消し去れ!!」ゴゴゴ!

長門「……神の泉よ。我に力を授け給え。その激流で混濁と晦冥を浄化せよ―――」ゴゴゴ!

朝倉「除霊関係なくなってるし……なにごっこよそれ」

ハルヒ「聴け! 天からの使者!! わたしは―――!!」バッ!

朝倉「あなたまで一緒になって遊んでどうするの!! 注意するところでしょここは!!」

ハルヒ「っとと、そうだったわ。こら有希! キョン! ダメじゃない遊んでちゃ」

キョン「すまん。あまりに魔法陣の出来が良くてつい男心をくすぐってな。なー長門」

長門「くすぐった」

朝倉「長門さんは女の子でしょ」

ハルヒ「……確かに。あたしが子供の頃書いたのより上手いわね」ボソッ

キョン「書いたのは俺だろ」

ハルヒ「え?」

キョン「んっ?」

朝倉「あ、あー! 見て涼宮さん!! ゆ、幽霊っぽい何かが!!」

ハルヒ「どこっ!!? 現れた!!? 幽霊!!?」バッ!

朝倉「あ。と思ったらただのニホニウムだったわ。うっかり」

ハルヒ「なぁんだ。ただのニホニウム…………見えるのっ!!?!?」ガーン!



280:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/27(月) 21:32:35.45 ID:FOTIGi/j0


朝比奈「り、りん。ぴょう、とう、しゃ……かい、じん……れつ?」

朝倉「道教まで……」

ハルヒ「くっくっく、ありとあらゆる邪気払いを試すことでこの地に凄う悪霊を確実に葬りさるのよ!!」クワッ

キョン「ぐあぁぁああああぁああ!!!や、やめてください朝比奈さん!! そ、その術は俺に効く……っ!」シュウゥ!!

朝比奈「ひ、ひえぇぇえぇえ!!?!? ごごご、ごめんなさいぃいぃいいぃいい!!!」

ハルヒ「! チャンスよみくるちゃん!! その調子!!!」グッ!

朝倉「団長としてどうなのその発言」

古泉「今更、邪気払い程度であなたが……おや?」

朝倉「あら」


「…………」タッタッタ


キョン「いやだわ古泉さん。走りゆく殿方に熱視線を送るだなんて」アラアラ

朝比奈「えっ!?」

古泉「ち、違います。僕が見ていたのはあの方が連れている―――」

ハルヒ「犬っっ!!! 犬がいるわっ!!!! この辺に犬は入れないはずなのに!!! ねぇどういうこと!!?」

朝倉「さあ。なんで入れたか直接聞いてみれば、って」

ハルヒ「ねぇ!! あなたのトコのワンちゃんなんでここ走れてるの!? 特殊な能力を持った犬なの!!?」

朝倉「行動に移すのが早いわね」

「能力? 君たちは一体なにを言ってるんだ?」

ハルヒ「キョン! 説明するのがめんどくさいからいっきに伝えなさい!! テレパシー的なあれで!」

キョン「よし分かった。お兄さん実はですね……かくかくしかじか!」ドーン!

朝倉・古泉「「そんな漫画的表現で!!?!?!??」」ガガーン!



281:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/27(月) 21:36:13.41 ID:FOTIGi/j0


「ああ、そのことか」

朝倉「しっかり伝わってるし……」

「確かに先週ぐらいはコイツも嫌がってたんだけど……」チラッ

ハルヒ「それがどうして今こんな元気にここを走っているの!!? 気になる! 気になるわ!!」

キョン「わたし気になります!!」

「でも、ここのコースは走るのに最適だから引っ張り上げて走らすように促したんだ」

古泉「ほう」

朝倉「(まぁ、阪中さんにはできそうにないわね。あの調子じゃ)」

「そしたら一昨日か、三日前ぐらいかな? この通り、またこのコースを走れるようになったんだ」

「バウッ!!」

長門「……そう」

朝倉「え? 長門さんもなんて言ったか分かったの?」

長門「……ばうっ」

朝倉「……………………うん」キュン

「きみたちの友達の犬も多少強引に連れてきたら戻ると思うね。きっと熊か何かの匂いでも残ってたんだろう」

ハルヒ「うーん……そうかしら?」

「ま、時間の問題だと思うよ。それじゃ、これでいいかな?」

古泉「どうも、大変貴重なご意見をありがとうございました」

「よし、行くぞっ」

キョン「バウッ!!」

朝倉「絵面がえぐいことになるからやめてくれるかしら」



282:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/27(月) 21:42:32.94 ID:FOTIGi/j0


ハルヒ「……あの場所に、少なくとも今現在は幽霊はいないってことね」ムス

朝倉「そうそう幽霊になんて出会えないわよ」

ハルヒ「だとしたらあの人が言ってた通り熊かなんかの匂いでも残ってたのかしら? でも、うーん……」

古泉「現在、この場に何らかの異変が無いにしろ、過去この場で何かあったことは事実のようです」

古泉「ルソー氏や他の犬たちがこの場に近づきたがらないのは過去の記憶がそうさせていのでしょう」

ハルヒ「異変……異変ねぇ。もう何日か早くここに来てれば幽霊に会えたのかしら。そう思うともったいないわ!!」キィー!

朝倉「だからまだ幽霊と決まったわけじゃ……まぁでもこの場所にもう問題はないことは分かったじゃない」

古泉「まずはそれを阪中さんに伝えるために、戻りましょうか」

ハルヒ「……幽霊ぃ~」

キョン「ったく……しょうがねぇなぁ」

ハルヒ「幽霊!? 出すの? 呼ぶの!? 出てくるの!!?」

キョン「幽霊を見たいんだろ? だとしたら確実な方法は一つだ」

キョン「お前自身が―――幽霊になることだ―――」ゴッ!

朝倉「なん……ですって……!」

ハルヒ「おぉっ!!…………つまり死ねと!!!?!!?」ガーン!

キョン「お覚悟を!」

ハルヒ「いやよ!! さすがにそこまでの気概は見せられないわ!!! 分かった分かったから! 一旦戻りましょ!!」

ハルヒ「……はぁ~」

朝比奈「げ、元気出してください涼宮さん。これでワンちゃんが気持ちよく散歩できるようになりますよ!」

ハルヒ「うん……そうよね。そうだけど……いなかったかぁ、幽霊」ハァ

キョン「……古泉」

古泉「……なんでしょう?」

キョン「ハルヒのために男を見せる時が―――」

古泉「まだ早い。まだ早いと思いますよ僕は」

朝倉「食い気味に言ったわね。命掛かってるからね」



319:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 15:15:33.34 ID:eXoHmN0K0


ハルヒ「ただいまぁー……」

阪中「おかえりなさいなの。今、お母さんがシュークリーム焼いてくれてるから中で―――」

長門「―――お邪魔します」スッ

朝倉「っざ、残像っ!!? 残像が出るほどの速度で!!?!?」ガーン!

ルソー「わんっ!」

キョン「『ふおっ、ふおっ、ふおっ。あの娘、中々やりおるわい』」

朝倉「だからキャラが……ってこの短時間でえらい老け込んだわねルソー」













阪中「……なるほどなの。つまり原因はまだ分からないけど、もう元の散歩コースは安全なのね」

長門「……」モグモグ

古泉「ええ。といってもルソー氏の過去の記憶が元のルートを本能的に忌避している状態ではありますが」

阪中「うーん。ならやっぱりもう少し時間をおいてこのコや他の犬さんたちが平気で散歩できるようになってからにする」

古泉「その方がよろしいかと」ニコッ

朝倉「てことはこれで解決?」

ハルヒ「まだよ! まだ原因が分かってない!! 幽霊の痕跡探しをしなきゃ!!」

朝倉「闇雲に探しても見つからないわよ。実際今回だって何も分からなかったんだし」

ハルヒ「それは……なんとなくキョンが突き止めてくれるわよ!!」

キョン「えっ、オイラが!?」

朝倉「自分のキャラまで見失ってるじゃないの」

ハルヒ「とにかく! あたしは消化不良なのよ!! 一度幽霊の名を出されたら確かめるまでは気になってしょうがないのよ!」

キョン「まぁまぁハルヒ落ち着け。今回ばかりは仕方ないだろ。もうあの場所に異常がないのは分かったし、時間が解決する問題だ」

阪中「す、涼宮さん、ごめんね。安易に幽霊の名前なんて出して……」

ハルヒ「あっ、いや。阪中さんが謝ることじゃ……ぐうぅ、キョン!!」バシバシ!

キョン「そんな理不尽な。痛い、痛いよハルヒ……」



320:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 15:18:43.91 ID:eXoHmN0K0


ハルヒ「かゆ。うま……じゃなくて、すご! うま! お店開けるわよこの味!」

キョン「機嫌戻すの早えぇ」

阪中「お母さんのシュークリームは絶品だよ」

長門「朝倉涼子」ボソッ

朝倉「なに、長門さん? シュークリームのこと? 今度家でも作って―――」

長門「養子縁組の情報操作を行ってもいい?」

朝倉「阪中さん家に!!? シュークリームのためだけに!!?!?」ガーン!

ルソー「すぅ……すぅ……」

朝比奈「ふわぁ……いいなぁ、いいなぁ」

古泉「よろしければ、僕の知り合いの愛犬家の方から一匹いただいてきましょうか?」

朝比奈「えっ!? ほ、本当ですか!? あっ、でも……うぅ! 大丈夫ですぅ……」

古泉「何か飼えない理由でも?」

朝比奈「き、禁則事項ですぅ……」

古泉「それはそれは、残念ですね」

朝倉「紅茶もおいしいこと。絵にかいたようなお金持ちの家ね。それで……」カチャ

朝倉「この後はどうするの、キョンくん」

キョン「どうするとは?」

朝倉「分かってるくせに。まだ終わったわけじゃないでしょ、この幽霊騒ぎ」

朝倉「このままだとルソーも……」

キョン「そうだな……そうなんだが……うん」

キョン「…………分かった」

朝倉「何が分かったのよ?」

キョン「ああ、ルソーには悪いが騒ぎの鎮静化に少し時間がかかるんだ」

朝倉「そうなの? ちゃちゃっと終わらせられるのかと」

キョン「……あぁ。もちろん、俺だけでどうにかするならなんとでもなるが、今回は同じ動物のよしみで奴に協力してもらう」

朝倉「奴って……?」

キョン「……みんな覚えてるか―――」



321:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 15:21:19.86 ID:eXoHmN0K0















シャミセン「なんのようだ人間」

キョン「ウチにもペットがいたことをよ」




















シャミセン「我輩はお主らに飼育されているわけではない」キリッ

キョン「ほれ、飯だぞー」

シャミセン「シャアァーッッ! シャァアーッッ!!」ガジガジ!

キョン「たまに野生解放するよな、お前」

シャミセン「ハッ! くっ、本能を利用するなど……卑怯な!」

キョン「所詮は獣なのさ」フッ

シャミセン「ぐぬぬ……人間風情が……!」

キョン「いがみ合いは程々に。さてと、じゃあ本題に入ろうか」

シャミセン「……本題?」

キョン「お前に協力してほしいことがある」

シャミセン「…………話してみるがいい」



322:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 15:25:18.75 ID:eXoHmN0K0


シャミセン「……なるほど。それで我輩を使うということか」ペロペロ

キョン「使うだなんて人聞き、いや猫聞きの悪い。協力してもらうだけさ」

シャミセン「では我輩が協力する道理はあるのかね?」

キョン「飼ってやってるじゃん」

シャミセン「飼われてるのではない!!! 断じて!!!」

キョン「でもお前ずっとここにいるじゃん」

シャミセン「何度も!!! 何度もこの家から脱走しようと試みた!! だが!!」

シャミセン「あの娘……お主の妹とやらがどこにいても我輩を連れ戻すのじゃ!!!」

キョン「あー……海千山千のシャミセン様でも敵わないんだなぁ……」

シャミセン「上手くない!!! 上手くないぞ!!!! それに我輩には『タマ』という立派な名が―――」シャー!!

キョン「分かった分かった。ともかく、確かに頼んだぞ。了承してくれるな」

シャミセン「…………」

キョン・シャミセン「「よかろう」」ドンッ!

シャミセン「……愚弄しておるのかね?」

キョン「すまん……こればっかりは体質で……」

シャミセン「だがしかし、こちらとしても条件がある。先ほども申した通り我輩は―――」

キョン「あー、出て行かせたいのは山々なんだが、お前も知っての通りウチの妹がだな……」

シャミセン「それをどうにかするのがお主の役目。少なくともお主が協力的な姿勢を見せるならばそれでいい」

キョン「おっ、寛容だねぇ。さすがは『化け猫』様だ。長い間生きてるだけある。よし、それで契約完了だ」

シャミセン「どの口が言うのかね。少なくとも我輩より―――」

キョン妹「シャミーーーー!!!!! キョンくんとお話し終わったぁあ!!?!?」バンッ!

シャミセン「シャァッァアァアアァアアアァアアアアアアアッッッ!!!!!!」ブルルッ!!

キョン「臨戦態勢……っ! お前らいつもこんな感じなの!!?」



323:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 15:27:46.51 ID:eXoHmN0K0


翌日


ハルヒ「ねえ」

キョン「んあ? なんだ?」

ハルヒ「今日阪中さんが来てないの気づいてた?」

キョン「おっ、ついにお前にもクラスメイトを気にかけるということができるようになったのか。いやぁ、感慨深いなぁ」

ハルヒ「そっ、そんなんじゃないから! 昨日は元気そうで、真面目な阪中さんが休むのは何かおかしいって思っただけだから!」

キョン「まぁ昨日の今日で休んでるとなると気にはなる、か」

朝倉「そのことなんだけど」スッ

ハルヒ「朝倉さん! あなた委員長なんだから何か聞いてるんじゃないの!? どうして阪中さん休んでるの!?」

朝倉「ええ。多分予想はついてると思うんだけど……ルソーのことで、ちょっと……みたいよ」

ハルヒ「早退しますっ!!」ガタッ!

朝倉「早い早い!! まだ昼休みにもなってないから!! 心配なのは分かるけども」

ハルヒ「あたしのJ・Jになにかあったってことでしょ!? いてもたってもいられないじゃない!!」

キョン「お前のではないだろ」

朝倉「阪中さんのよね。だからって急に押しかけても迷惑だわ。ちゃんとアポとって放課後にでも伺いましょ」

ハルヒ「メール……っ!」ポチポチポチ!

朝倉「あら涼宮さん。阪中さんの連絡先知ってたの?」

ハルヒ「昨日聞いといたのよ。念のため。また幽霊見かけたら連絡ちょうだいってね!」

朝倉「へー……ちょっと意外」

キョン「じゃ俺もジャンバルジャンにメールを……」

ハルヒ・朝倉「「できないでしょ!!?」」ガーン!



324:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 15:29:29.26 ID:eXoHmN0K0


ハルヒ「あ、返信きた。なになに……やっぱり」

ハルヒ「J・Jが体調崩してて心配で心配で学校に来れなかったらしいわ」

朝倉「あの溺愛っぷりじゃそうなるわよね」

ハルヒ「お見舞いの約束を取り付けたから、放課後全員でまた阪中さん家行くわよ!」

ハルヒ「キョン!! それまでにJ・Jの病気を治してあげる方法調べといて!!」

キョン「実はもうある」ドンッ!

ハルヒ「やるじゃない! じゃ今から行ってすぐ治してあげ―――!」

朝倉「まだ授業があるんだってば」

ハルヒ「J・Jが死んじゃうかもしれないのよ!!?!?」

朝倉「そこまで急患なわけじゃないから大丈夫よ」

ハルヒ「でも……うぅー……分かったわよ。放課後までは待つわ」

ハルヒ「キョン、絶対、ぜーったいに完璧にJ・Jを治したげるのよ。いーい?」

キョン「へいへい。分かってるよ。あ、それとハルヒ。ついでに阪中に伝えといてくれないか?」

ハルヒ「何をよ」

キョン「樋口さんだっけか? その人んとこの犬も体調崩してるって言ってたろ? その犬も治してあげるから連れてきといてくれ」

ハルヒ「樋口さん家の犬も……ねぇ、キョン。J・Jもそうだけど、まだ症状も見てないのに安易に治せるとか言って大丈夫なの?」

キョン「安心しろ、俺だぞ?」

ハルヒ「…………」ジィー

ハルヒ「……分かったわよ。メールして樋口さんもよんどいてもらうわ」

キョン「さんきゅ」

朝倉「信頼されてるのね」フフッ



325:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/09(日) 15:32:30.56 ID:eXoHmN0K0


放課後


ハルヒ「……というわけなの。だからみんなでJ・Jのトコにお見舞いと治療をしに行くわよ!」

朝比奈「そんな……昨日はあんなに元気だったのに……」シュン

長門「……」

古泉「幽霊騒動はまだ終了していなかったということですか」

キョン「そんなもんは初めから始まっちゃいねぇよ。オカルト的なもんつったろ」

朝倉「とはいえ……もちろんキョンくんを疑ってるわけじゃないけど、解決法は本当に見つかってるの?」

キョン「任せとけ。今回はコイツを使う」

ハルヒ「コイツ?」

キョン「我が家に巣食う魔獣よ、猛る御身を―――!」グググッ!

シャミセン「ニャー」ヌッ

ハルヒ「猫っ!? てか今どっから出てきた!? あんたと融合してなかった今!!?」ガーン!

古泉「おや、シャミセン氏ではございませんか」

朝比奈「あ……冬合宿の時の……?」

ハルヒ「ああ、猫探しの時の子ね。なんだ、キョンが飼ってたんだ」

シャミセン「飼われてるわけで―――!」

ハルヒ「喋っ―――!」クルッ

長門「腹話術」ニャー

シャミセン「……ニャー」

ハルヒ「……そういえば前も有希の腹話術だったわね。もー、わくわくしちゃったじゃないの」

朝倉「……雑すぎる子供だましじゃない?」

キョン「コイツニャーこれぐらいでいい」



338:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 18:01:02.07 ID:toBd8Njk0


ハルヒ「……っ」セカセカ

朝比奈「はひっ、ひぃ! ふぅ!」テクテク

朝倉「いつにも増してハイペースね涼宮さん。競歩の代表選手になれるわよ」

古泉「それほどに、ルソー氏の身を案じているということでしょう。心お優しいことに」

シャミセン「何を生き急いでいる。人の短き人生に焦りは不要だ」

キョン「『化け猫』が何言ってやがる。それと今は喋るなつったろ」

シャミセン「あの娘の腹話術じゃ」

キョン「そーなの長門!!?!?」ガーン!

長門「そうではない」

朝倉「なんで騙されるのよ……ねぇ、キョンくん『化け猫』ってどういう意味?」

キョン「そりゃ喋る猫がいたら『化け猫』というしかなかろう」

朝倉「それはそうだけど、むしろなんでこの猫がそうなったか聞きたいというか……」

古泉「あなたにシャミセン氏を預けた後、僕の方でも色々調べてはみたのですが……これといって何も」

キョン「あー……じゃあこの件が済んだら少し教えてやるよ。こいつのことをな」

シャミセン「……ふん」

古泉「……ところで、シャミセン氏はどうなさるおつもりで? 今のところ僕には解決法が見えてこないのですが……」

朝倉「そうね。まだ古泉くんはルソーや樋口さんとこの犬がなんで体調崩してるのかの原因を説明してなかったわね」

キョン「それはな、古泉。実は人間にも罹る最悪の病だったんだ」

古泉「さ、最悪の病……そ、それは?」ゴクリ

キョン「…………」

キョン「五月病だ!!!」クワッ!

朝倉・古泉「「絶対違う!!!」」ガーン!



339:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 18:06:29.40 ID:toBd8Njk0


古泉「情報生命素子……ですか」

キョン「なぁにそれ?」

朝倉「絶対知ってるでしょあなた……まぁいいわ」

長門「所謂、珪素構造生命体共生型情報生命素子」

キョン「むっ! バスガス爆発バスが酢爆発バシュガシュバシュカシュ」

朝倉「早口言葉対決じゃないから! 最後全部噛んでるじゃない、いや噛んだとしてもそうはならないでしょ」

古泉「……要するに、ルソー氏は姿の見えない地球外生命体に憑依されているわけですね」

長門「そう」

朝倉「さすが古泉くん、理解力が高い」

古泉「その情報生命素子とは姿そのものがなく、単なる情報や概念であると理解していいでしょうか?」

長門「かまわない」

古泉「とすると、かのコンピュータ研の部長氏を乗っ取ったカマドウマのような感染型の情報生命体でしょうか?」

長門「存在レベルが異なる。こちらはあまりに原始的」

シャミセン「……主よ」

キョン「なんだ」

シャミセン「お主もそうであるが……この者たちもただものではないな」

キョン「今更だな。説明してなかったことではあるが」

シャミセン「……ふむ」

古泉「であれば、もし情報統合思念体を人に置き換えたとしたら珪素構造生命体共生型情報生命素子は―――」

古泉「ウイルスだと、比定されるでしょう」

キョン「ほら!! やっぱり! 五月病ウイルスだったんだ!」

朝倉「そんなウイルス存在してないから!!」



340:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 18:11:24.06 ID:toBd8Njk0


古泉「情報生命素子なる異性体が増殖。ルソー氏に感染し、発症した……」

古泉「ですが、なぜこの情報生命素子地球にいて、なおかつ犬に寄生したのでしょう?」

朝倉「大方、元々の宿主だった珪素構造体が地球の引力に導かれ落ちてきたってトコね」

長門「元々の宿主は大気圏突入時の摩擦熱で消滅したが、情報そのものである情報生命素子は物質にはとらわれない」

古泉「初めから姿が無いわけですしね。その落ちてきた場所があの散歩コース周辺だった、と」

朝倉「犬に寄生したのは珪素生命体の持つネットワーク構造と犬類の脳内神経回路がたまたま類似していたから」

古泉「しかし、元の宿主と同じようにはいかず、犬たちは衰弱してしまった……」

長門「情報生命素子の目的は思索メモリの増大」

古泉「なるほど。一匹の犬では珪素で構成される生命体のネットワーク構造を再現できないということですか。しかし……」

朝倉「ええ。もちろんそれはあと一匹、二匹増やしたところで変わらない。なんなら地球上の犬全部でも足りないわ」

古泉「ならば……やはりオカルトではないですか。とんでもないことですよ、これは」

朝倉「オカルト? どうして?」

古泉「彼は僕にこの件に関してはオカルト要素は全くない、と断定したのですが……」

古泉「朝倉さん。この情報生命素子こそ、我々人間が幽霊であるものの正体なのではありませんか?」

朝倉「これは……違うんじゃない? だってこれは元々存在しない、見えないものなわけだし」

古泉「であるならば、我々有機生命体。知性や意識のあるものの肉体が滅んだあと」

古泉「この珪素構造生命体共生型情報生命素子に該当するであろう、僕たちの魂の存在」

古泉「あなたたちならば、知りえるのではありませんか? この魂の行方を」

朝倉「えっ!? ええーっと……そうねぇ……うーん」

古泉「肉体が滅んでも精神は存在する……これが事実であるならば今まで築き上げた人類の倫理観や宗教観が一変―――」

キョン「チェスト」ビシッ

古泉「あうっ……」クタァ

朝倉「キョ、キョンくん!? 何やって……」

キョン「いいか、朝倉。答えにくい質問が来た時の対処法はこうやって質問者の意識を奪うか」

長門「禁則事項……と答えるか」

キョン「どっちかにしとけ。真面目に答えてたら人類史にとんでもない影響を与えることになるぞ」

朝倉「あ、あはは……以後そうするわ……」



341:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 18:16:34.30 ID:toBd8Njk0


古泉「……っ、あれ?」パチ

キョン「おう、目が覚めたか。なら自分で歩けるな」

古泉「僕は……一体何を……」

キョン「“急に俺に意識を奪われる”から驚いたぞ」

古泉「……………………なるほど。急にあなたに意識を奪われたのですね」

朝倉「(……理解力高ぇ)」

古泉「確か……何か重要なことを聞いていたような……少し記憶が」ズキズキ

朝倉「し、シャミセンでどうやってルソーたちの病気を治すのか聞きたかったんじゃない?」アハハ

古泉「え? ああ、そうでしたか。そんな気がします……」

キョン「くっくっく、それは着いてからのお楽し―――」

ハルヒ「阪中さん! 来たわよー!! J・Jの調子はどう!? 大丈夫!!?」ピンポーン!

キョン「み……」

朝倉「……着いたけど?」

キョン「……まぁ、フィーリングで察してくれ!」ドン!

古泉「……無理ですね。まぁ説明は解決してからでも結構ですよ」

古泉「信頼していますからね。あまたが無事ルソー氏を救い出すことをね」

阪中「あ、みんな……わざわざどうもなの」ガチャ

朝比奈「こ、こんにちは」

ハルヒ「J・Jは!? 大丈夫!?」ガシッ

阪中「わっ! と、とりあえず中へ……あ、ちゃんと樋口さんとマイクも呼んであるから」

朝倉「マイク?」

キョン「ッポゥ!!!」

長門「それはマイケル」

阪中「マイクは樋口さんちの飼い犬なの。ルソーと同じく体調崩してる……さあ、入って」



342:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 18:22:09.30 ID:toBd8Njk0


ルソー・マイク「「……」」グデー

ハルヒ「J・J!!!」

朝比奈「あ、あんなに元気だったのに……」グス

朝倉「見るからに二匹とも弱り果ててるわね……可哀想だわ」

阪中「みんなが帰った後、ルソーが晩御飯を食べてないからおかしいと思ったの」

阪中「それで、今日起きたら……ルソーが……」

ハルヒ「J・J…………いや! 大丈夫よ!! J・J! それにマイクも!!」

ハルヒ「ウチの団員のキョンが!! あんたたちを治す方法を知ってるから!! すぐに治したげるからね!」

阪中「涼宮さん……」

ハルヒ「さあキョン!! 取り掛かりなさい!! それと、あたしたちにできることがあるなら言いなさい!」

キョン「ああ、心遣いは受け取っておく。だが、任せておけ。俺と」

シャミセン「我輩にな」ニャー

阪中「しゃ、喋っ、た……!?」

ルソー「今のは腹話術」グデェ

ハルヒ・阪中・朝比奈「「「!!?!?!?!?!?!!?!!?」」」ビックゥ!!!

長門「という腹話術」

ハルヒ「凝り過ぎよ!!!! めちゃくちゃビックリしたじゃない!!!!!!」

阪中「ルソー……あなたやっぱり喋れたのね……」グス

朝比奈「い、今のは長門さんの腹話術で……」アセアセ

キョン「(お前が喋ると場が混乱しちまうから黙ってろって言ってるだろが)」

シャミセン「ニャー」フイ

キョン「……マジモンの三味線にしてやろうかコイツ」ゴゴゴ



343:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 18:27:54.30 ID:toBd8Njk0


キョン「ほいほいほいっと」セッセッセ

ハルヒ「……ねぇキョン。これ、何の準備?」

キョン「何って……治療に決まってんだろ」

ハルヒ「あ、そう。あんたがちゃんと分かってるならいいけどこれ……」

朝比奈「ひ、ひえぇ……真っ暗……」

朝倉「完全に黒魔術の準備に見えるんだけど? ルソーとマイク生贄に見えるんだけど」 

キョン「…………………………そんなわけないだろー」ハハハ

ハルヒ・朝倉「「その間は何よ!!!!!!」」ビシッ!

古泉「……日光を遮断しているのでしょうか?」

キョン「そうだ。部屋は暗くする方が好ましいからな。この儀式は」

朝倉「儀式って言っちゃってるわよ。治療でしょ治療」

キョン「……っし、準備完了。カモン、ルソー、マイク」パチン

長門「……」スッ

朝比奈「はい」スッ

キョン「よっと」ボッ!

ハルヒ「ん……なんかいい匂いするわね」

朝倉「アロマキャンドルだわ、あのロウソク……あとで貰おうかしら」

キョン「それでは……ただ今よりルソー、マイク両名のオペをとりおこなう」

阪中「お、オペなの!? 手術なの!!? 切るの!? 開くの!!? 大丈夫なのー!!?!?」アワワ!!

朝倉「お、落ち着いて阪中さん! 言葉のあやだから! 大丈夫だから!!」

キョン「執刀医はシャミセン先生だ!」

シャミセン「シャァッァアァアアァアアアァアアアアアアアッッッ!!!!!!」ギラッ!

阪中「執刀医!!?? やっぱり切るの!!? あの鋭いメスで切り開かれちゃうの!!?!?」ガタガタ!

ハルヒ「お、落ち着きなさい阪中さん! あれメスじゃないくてツメだから! 執刀医も雰囲気に合わせただけだから!!



344:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 18:32:29.58 ID:toBd8Njk0


キョン「では……」

阪中「ううぅ……ルソーぉ……」

シャミセン「…………」ジィ

ルソー「……」

マイク「……」

長門「……三者面談」ボソッ

朝倉「ふぐぅ……! な、長門さん……笑わせないで……っ!」

長門「そんなつもりはない。どこが面白かった?」

朝倉「る、ルソーとマイク……に、似てない親子だなぁって……!」プルプル

ハルヒ「朝倉さん……ツボおかしいわよあなた……」

シャミセン「……汗」

キョン「あん?」ピクッ

ハルヒ「汗!? どういう……あ、オペ中だから汗拭けってことね有希!」

長門「……そう」

朝倉「猫は汗かかないでしょうに……」

キョン「(皮はがれたいのかお前、おい)」

シャミセン「……メス」

阪中「!!!! やめてえぇっぇえええ!!! せめて麻酔を打ってあげてぇええええ!!!!」

朝倉「なり切り!!! なり切ってるだけだからぁ!!!! な、長門さんそうよねえぇぇええ!!?」

長門「…………そう?」

キョン「(なるほど、そのメスで皮を剥げと……よかろう)」ゴゴゴ

シャミセン「(ふん。協力してやってるのだからこれぐらいよいだろう)」

シャミセン「(ただでさえ、普段はストレスが溜まることが多いというのに……たまの悪ふざけくらい……)」

シャミセン「……」シュン

朝比奈「ね、猫さんもなんかシュンとして……」

ハルヒ「び、病気がうつっちゃったのかも!!! く、空気感染!!? 換気してー!!!」

古泉「……騒がしい手術室ですね」クスッ



345:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/27(木) 18:36:11.55 ID:toBd8Njk0


シャミセン「……ニャー」フイッ

ルソー「……」ピクッ

マイク「……」ググッ

キョン「む……これは……」

阪中「ど、どうなったの!? ル、ルソーとマイクは―――!」

ルソー・マイク「「わんっ!!」」ピョン!

阪中「!!! ルソー!!!」ダキッ!

樋口「マイク!」ギュッ

朝比奈「ううぅ……よかったですぅ!!」グスッ!

ハルヒ「よくやったわルソーにマイク! ちゃんと病に打ち勝って偉いわよ! それにシャミセンもありがとね!」

ハルヒ「……キョン!! 褒めて遣わすわ!!」

キョン「そりゃどうも。シャミセン大先生の活躍ってことだな」

シャミセン「(これは貸しだ。お主の妹から逃れるための手助けをすることを忘れぬようにな)」

キョン「(善処してやるよ。先に言っておくが無理だとしても文句はなしだぞ)」

シャミセン「分かっておる」

キョン「だから喋るなって……ったく、まぁルソーとマイクに夢中で聞いてないからいいか」

ルソー「わんっ! わんっ!」ピョンピョン!

阪中「よかったぁ……ほんとうに……」

マイク「わんわん!」

長門「…………」ナデ

朝倉「これで、一件落着ってトコかしら?」

キョン「まぁな」

古泉「であるならば……次は解決法の説明と、シャミセン氏の説明。その二つを行っていただきましょうかね」

キョン「……やれやれだ」フッ



356:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 20:22:26.92 ID:JhO/PFy20


ハルヒ・阪中「「アニマルセラピー?」」

キョン「聞いたことはあるだろう? 動物を使った治療法のことだ」

古泉「今回行ったのは、動物が動物に治療を行う最先端の治療法だったようですね」

朝比奈「はぇー……」

キョン「犬の嗅覚が鋭いことは知ってるだろ? だからアロマを使用してよりリラックスできる―――」

ハルヒ「まっ! ルソーとマイクが元気になれば例え黒魔術だったとしても問題ないわ!」バッサリ!

朝倉「それはなにか代償がありそうで怖いわよ」

阪中「ルソーとマイクの快気祝いにお母さ―――」

長門「シュークリームを焼いているので食べた方が良い。リョウカイシタ」

朝倉「1人で何言ってんの長門さん!!? 悪い魔法使いユキが出てきてるわよ!!?」

朝比奈「あ、いい匂い……」

ハルヒ「安心したら甘いもの食べたくなっちゃったわ!! せっかく焼いてくれたことだし、じゃんじゃん食べましょ!!」

朝倉「ちょ、ちょっとは遠慮するのよ……ってもう」

古泉「細かいことは気にしない。実に涼宮さんらしいですね。理由付けに困らなくて済みそうです」

キョン「じゃ俺もシュークリームでもいただくとす―――」ガシッ

朝倉・古泉「「待って(ください)」」

朝倉「あたしたちへの説明は」

古泉「きちんとおこなっていただきますよ」

キョン「はぁ……猫又野郎、こっちゃ来い」

シャミセン「……ニャー」



357:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 20:26:58.53 ID:JhO/PFy20


ハルヒ「いやーアニマルセラピーとかホントに効果あるのね!! あたし迷信だと思ってたわ!」

阪中「こんなに即効性のあるものとは思わなかったの。SOS団って……すごいかも!」

長門「おかわり」

朝比奈「しゅ、シュークリームが速攻で……」

ルソー「わんっ!」

ハルヒ「ふふん! まっ! 元気になってよかったわ! 犬は元気でいることが仕事だしね!」

ルソー「ご迷惑をお掛けしたね。おかげ様でこの通り、万全だよ」

ハルヒ・朝比奈・阪中「「「!!!」」」バッ!

長門「……わん」















キョン「……長門が気を引いてくれてるみたいだし、今なら喋ってもいいぞ」

シャミセン「……ふむ」

キョン「というわけでコイツになにか聞きたいなら直接聞けばいい」ヘラッ

シャミセン「我輩がなんの利にもならぬことを話すと?」ツーン

古泉「というわけで、シャミセン氏のことはあなたに聞くべきでしょうね」

キョン「喋っていい時には喋らねえのかよ……ホント猫ってやつは……」

朝倉「じゃあ、まずは情報生命素子をどう処理したか古泉くんに話しましょうか」

シャミセン「よかろう」ドンッ!

キョン「お前が話すんかい!!! ってか話すのかよ!!」ビシッ!!



358:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 20:31:13.84 ID:JhO/PFy20


古泉「おこなったのは情報生命素子の凍結だけ……ですか」

朝倉「ええ、一番簡単な方法だけど、凍結するだけなら後々問題になるのよ」

キョン「ルソーとマイクがその生命活動を停止した際、なにかの拍子に凍結した情報生命素子が動き出すかもしれん」

シャミセン「その際に、素早く対処できると考えたため、情報生命素子とやらの依代になるよう我輩に頼み込んできたのだ」

古泉「仮に情報生命素子が活動を再開したとしても、猫であるシャミセン氏がルソー氏のように罹患したようになることはない、と」

朝倉「犬と猫の脳内神経回路はまた違うからね。そのままルソーやマイクに置いておくよりか遥かに安全という訳よ」

古泉「理にかなっていますね。ただそれも、シャミセン氏が彼に『化け猫』だと呼ばれる理由に関係がありそうですね」

シャミセン「『化け猫』か……まったく、どの口が言うことか」

朝倉「まぁ確かに、宇宙人に超能力者に…………キョンくんだしね」

シャミセン「……カテゴリそのものなのか、お主は」

キョン「まぁな」

古泉「では、我々機関の暗躍ですら辿り着けなかったシャミセン氏の秘密について、お話願えますか?」

シャミセン「……あれは、我輩がまだ子猫の頃だった……もしくはそうでない頃」

朝倉「(結局自分で話すのね!!?!? それで情報大分あやふやだし!!!)」ガーン!

シャミセン「野良猫として生きていた我輩だが、何日も食料にありつけず限界が近づいていた」

シャミセン「当てもなくフラフラと彷徨っている時、ふと一軒の家屋があった」

シャミセン「普段なら人と関わりたくもないが、生死がかかっていたその時ばかりは、藁をもすがる気持ちで家屋に立ち入った」

キョン「…………」

シャミセン「その時……その時だ。縁側に佇む一人のおなごがいた」

古泉「…………それは」

朝倉「……それって」

シャミセン「いかにも……君たちが『佐々木』と呼んでいる、お主のような力を持った人間に出会ったのだ」

キョン「…………」



359:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 20:36:36.88 ID:JhO/PFy20


シャミセン「そして我輩は施しによって窮地を脱した、という訳だ」

キョン「つまり、こいつは俺より前に『佐々木』に会ったことがあるらしい」

朝倉「お、俺より前って……それ何時代になるの……?」

キョン「平安以前だな。下手したら文明以前とか……その頃に猫っていたんだっけ? まぁともかくだ」

キョン「こいつはそれぐらい前からずーーーっと生きてる『化け猫』なんだと」

シャミセン「いかにも」

古泉「じ、実在していたのですね。所謂、妖怪の類……ですよね」

シャミセン「君たちが言うのもおかしかろう。君たちとて一般にその存在は認知されていない」

朝倉「確かにね。そりゃ宇宙人、未来人、超能力者がいて化け猫がいないってのも納得できないし」

古泉「……………………」

朝倉「あ、じゃあキョンくんよりも前に『佐々木』さんに会ったことがあるってことは……」

朝比奈「キョンくんより『佐々木』さんのことを知ってるってことですか!!?」シュバババ!

朝倉「あ、朝比奈先輩!!? しゅ、シュークリーム食べてたんじゃ……」ビクッ!

朝比奈「ラヴの香りがしたので!」

朝倉「えぇ……猫なのに……」

シャミセン「我輩が『彼女』といたのはそれほど長い時ではない。よってそこまで『彼女』のことを知るわけではない」

朝比奈「あ……そうなんですね」

シャミセン「遥か昔の記憶故、鮮明に覚えているわけでもない。だが……」

シャミセン「初めて出会った時に感じた、その宇宙のような存在感は今でも忘れはしない」



360:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 20:40:31.72 ID:JhO/PFy20


朝比奈「な、なんで『佐々木』さんの元を離れてしまったんですか?」

シャミセン「我輩は根無し草。例え尊大であると感じた相手でさえ固執することはない」

朝倉「野良気質が染みついてるのね。その割には随分長い事キョンくんのトコにいるけど」

シャミセン「監禁されておるだけだ!!!!」シャー!

キョン「はいはい、だから妹に相談してやるから。それで、お前らも」

キョン「これ以上シャミセンについて知りたいことはないだろ?『化け猫』は確かに珍しいがそれ以上でもそれ以下でもない」

古泉「………………」

朝倉「うーん、そうねぇ……」

シャミセン「終わったのか? ならばこのまま我輩をどこへなりとも離し―――!」ゾクッ!

キョン妹「――アハハ」シュン!

キョン「……離す前に話し合いが必要だろ? やれやれ」

古泉「……」

古泉「(『化け猫』……僕たちが存在するならば、その存在はあってもおかしくはない)」

古泉「(ですが、僕たちは涼宮さんによって望まれ、その姿を現した存在)」

古泉「(……既存の常識外の存在である宇宙人や超能力者、未来人。そして『化け猫』であるシャミセン氏)」

古泉「(自然発生する可能性がない、とは言い切れませんが……それが限りなく低い確率である場合)」

古泉「(シャミセン氏が『化け猫』になった原因は……)」チラッ

キョン「おいハルヒ! 俺の分のシュークリームはあるんだろうな!」

ハルヒ「むっ! きたわねキョン!! あんたに食わせるシュークリームはないわよ!」モグモグ!

古泉「(……僕程度に推測が可能なことに、あなたが気づいていないはずはありませんね)」



361:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 20:46:24.43 ID:JhO/PFy20


ハルヒ「んぐっ! ぬぐぅ!」ドンドン!

朝比奈「す、涼宮さん! 落ち着いて!! み、水を!」

阪中「ろ、ロイヤルミルクティーならあるの!」ワタワタ

朝比奈「そ、そんなところも豪奢!!」ガーン!

キョン「モガモガ……俺にシュークリームバトルを選んだ末路だ」ゴクン

朝倉「聞いたことないわよ、そんな競技……ねぇ、どうして今回はキョンくん自分で解決しなかったの?」

古泉「確かに。詮索はしませんでしたが、シャミセン氏の協力がなくとも、あなたならどうとでもできたでしょう」

長門「……」

キョン「言ったろ。あくまで情報生命素子は凍結中。何かの拍子に解凍されりゃ後々やっかいだ」

キョン「その点、ウチの『半分ジ○ニャン』は安心だ。死ぬこたねぇだろうからほぼ限りなく永久的に情報生命素子を監視下に置ける」

シャミセン「いつまでも監視される気はないぞ!!」シャー!

朝倉「『半分ジ○ニャン』て……いえ、そうじゃなくって。結局それがキョンくんじゃなくてシャミセンでなければならない理由にはなってないわよ?」

キョン「……そうか?」

朝倉「そうよ。情報生命素子を破壊せず凍結するのは、宇宙にとっては有益な存在であるからにしても……」

朝倉「どっちかというならシャミセンよりキョンくんの方が遥かに長生きしてるだろうし」

キョン「……それもそうだな」

古泉「…………」

朝倉「……?」

長門「……あなたは」

キョン「…………」

長門「…………あなたには、既に何かが見えているの?」

朝倉「……長門さん? 何言って……」

キョン「……遠くない未来、俺は――――――」



362:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 20:47:49.43 ID:JhO/PFy20





















キョン「俺は、この世界から姿を消す」





















363:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 20:51:56.60 ID:JhO/PFy20


帰り道


ハルヒ「ふんふーん! おみやげのシュークリームいっっっぱいもらっちゃったわね!」

朝比奈「はい、すごくおいしいからうれしいです」

キョン「お前あんだけ食っててまだ食うのかよ。喉までつまらしてたくせによ」

ハルヒ「喉は別腹だからセーフ!」ドンッ!

キョン「説明も理由も意味わからん」

ハルヒ「あ! あのシュークリームによく合ってた紅茶ももらえばよかったわ!」

キョン「強欲が過ぎるだろ」

ハルヒ「……なんであんたがツッコんでんのよ」ジッ

キョン「……えっ? いやらしい話?」

朝比奈「えっ!?」ビクッ

ハルヒ「そっ、んなわけあるか!!! ツッコミは朝倉さんの仕事でしょうが!」バシッ!

キョン「フボアッッッ!!!」ズザザー!

朝倉「……」

ハルヒ「……あれ、これだけやっても無関心? おーい朝倉さん?」フリフリ

古泉「…………」

ハルヒ「古泉くんまで……有希みたく黙っちゃって……モノマネ対決中?」

朝倉「……えっ? あっ、涼宮さん何か言った? ごめん、ちょっと考え事してて……」

ハルヒ「そう」

朝倉「長門さんのモノマネ? なら声は1オクターブ高いし、目線はもっと下、背筋はちょうど地面と垂直よ」

ハルヒ「えっ」

長門「…………」



364:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 20:56:05.19 ID:JhO/PFy20


ハルヒ「そう……どう? 似てた!? みくるちゃん!」

朝比奈「そ、そうですねぇ……似てると言えば似て……」

長門(偽)「そう」

朝比奈「……こ、こっちの長門さんの方が似てます」

ハルヒ「擬態は卑怯よキョン!!!」

長門(偽)「そう?」

朝倉「……古泉くん、どう考えてる?」

古泉「…………もちろん、彼の発言について……ですよね?」

朝倉「キョンくんはあの後気にするな、ただの妄言だ……なんて言ってたけど」

古泉「機関は大慌てですよ。彼の発言一つで右へ左へ……大忙しです」

朝倉「近々……まず間違いなく、あたしたちの敵対組織との直接的ななにかが起きる」

古泉「それによる影響で彼が…………」

朝倉「……ええ、考えにくいわよね。『あの』キョンくんが、やられちゃうことなんて……」

古泉「……もしか―――」

長門(偽)・ハルヒ・朝比奈「「「そう」」」

古泉「うあっ!? なんですか、急に」

ハルヒ「急じゃないわよ、古泉くんに朝倉さん! 二人でボソボソ言ってて『誰が一番有希に似てるでしょう選手権』のこと聞いてなかったでしょ!」

朝倉「き、聞こえてないし!! 誰も似てないわよ!!!」

ハルヒ「じゃあ問題!! どっちが本物の有希でしょう!!」バッ!

長門・長門(偽)「「……」」

朝倉「はいこっち!! もう遺伝子から違うわよ!!」ビシッ!

キョン「えぇ……もはや怖いわ」ポンッ!

ハルヒ「キョンもまだまだってことね!!」


ギャーギャー!!








古泉「…………彼の視る未来がどうか平和なものであってほしいですね」フッ



                                                       ワンダリング・シャドウ 完



365:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/04/29(土) 20:59:19.26 ID:JhO/PFy20

以上! このスレは終わりです。4ヶ月かかって過去最少レスで終わりました! すんません
次はいよいよ分裂です! スレたてした際には誘導します
レスどうもでした。もう少しお付き合いの程をお願いいたします!



元スレ
ハルヒ「キョンTUEEEEEEEEEE!!!!!!!!!!」 キョン「憤慨してみたり」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1482558156/
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         コメント一覧 (11)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年04月29日 23:14
          • 久々ーと思ったら4カ月も空いてたのか
            分裂はどのくらいかかることやらわからんけど楽しみ
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年04月30日 08:21
          • 本スレで読んでまとめでスマートに読む
            続きが楽しみ
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年04月30日 16:59
          • いよ!待ってました!
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年04月30日 23:31
          • 忘れた頃に一気読みが一番ストレス無いわな
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年04月30日 23:40
          • この人のはやっぱり面白いな~
            もはや自分にはこっちが本編だわw
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月01日 03:40
          • ハルヒ書いてる(書いてた)作者のよりこっちの方が何百倍と面白いwwww
            これをアニメしろよ、そうすりゃ杉田が全力でこのキョン演じるぞwwww
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月02日 05:58
          • 毎回面白いわ 頑張って続けて欲しい
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月03日 09:44
          • そろそろオチを推察するに十分な情報が集まってきたな
            というか勘違いでなければかなり前の方から複線張ってやがる
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年05月04日 09:04
          • このシリーズ読むためだけに生きてる!
            言い過ぎかな?
          • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年06月01日 06:17
          • これ、気付けば最初のヤツからもう1年半は経ったのか…
            案外期間の長い作品になったな…とも思ったけど、憂鬱から憤慨までちゃんと追ってると考えると短い気もしてくる
          • 11. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2017年09月07日 00:57
          • いやもう本当に原作なんかよりずっと面白いよ 何より佐々木に台詞があり登場して活躍する、それだけで100点満点だ

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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