最原「僕らが往くは恩讐の彼方!」 巌窟王「これで終わりだ!」【前半】

1:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 19:05:00.84 ID:YTh/qlbW0

巌窟王「旅行先間違えた」 アンジー「神様ですか?」


巌窟王「亜種並行世界!」 アンジー「虚構殺人遊戯:才囚学園ー!」

に続く三作目。今度こそ! 終わる! はずだ!
ていうかもう伏線残ってないしね!

FGOとダンガンロンパ両作品のネタバレ注意だよ!



2:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 19:14:54.44 ID:YTh/qlbW0

カルデア

ナーサリー「ううーーー! 本の角が湿って力が出ないのだわー!」

ナーサリー「今は人間形態だから全然関係ない? そんなことなくって、パーマがくりんくりんになりすぎて不快なのだわー!」

アルテミス「はいはーい! 泣き言言わない! みんなあの子たちの姿を見るの楽しみにしてるのよー?」

ナーサリー「うえーん! 私のせいじゃないのにー!」

エレシュキガル「ほら。私も手伝ってあげるから、早く復旧できるよう頑張りなさい!」

エレシュキガル「キビキビ動くキビキビ!」






マシュ「……先輩。なにか帰ってきてから、ずっと女神系のサーヴァントのみなさんが騒がしいような……」

マシュ「……え? しばらくは放っておいていい、ですか?」

マシュ「まあ、邪気は感じないので確かに緊急性は薄そうですが……」

マシュ「念のため、それなりに探りは入れておきますね?」



3:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 19:22:33.72 ID:YTh/qlbW0

BB「さあ! 本腰入れて復旧させますよー!」

イシュタル「女神たちの加護が妙に働いているから、予定よりは早く復旧が終わりそうね……」

BB「ちっともありがたくありませんけどね! 凄まじい勢いでジメジメして不快ですから! 雰囲気的に!」

BB「ていうか女神ってなんでみんなあんなネチネチしてるんですか! もうちょっとサバサバ系後輩の私を見習って――」



「アイ・オブ・ザ・エウリュアレー!」ビュンッ



BB「お尻がーーーッ!」ブスゥッ

イシュタル「……男性でなくて本当よかったわね。アンタ」

BB「こ、この矢、どこから……!?」ガタガタ

イシュタル「考えない方が身のためよ。早く復旧なさい」

イシュタル「あの事実を知らないまま『何らかのトラブル』に巻き込まれたら、絶対に面倒なことになるわよ……!」



4:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 19:32:44.72 ID:YTh/qlbW0

才囚学園
学級裁判 開廷

モノクマ「まずは! 学級裁判の簡単な説明から、始めましょう!」

モノクマ「学級裁判では誰が犯人かを議論し、その結果はオマエラの投票により決定されます」

モノクマ「正しいクロを指摘できれば、クロだけがおしおき。ですが、もし間違った人物をクロとしてしまった場合は……」

モノクマ「クロ以外の全員がおしおきされ、生き残ったクロだけに晴れて卒業の権利が与えられます!」

モノクマ「……あ。そうだ。今までずっと言い忘れてたことあった。巌窟王さんのせいでさ」

巌窟王「……?」

モノクマ「学級裁判での投票の放棄は認められません! その場合、死が与えられます! 気を付けてね!」

モノクマ「これ、本来なら学級裁判の基本ルール説明の最後に付け加えておくルールだったんだけどさぁ……」

アンジー「ああ。そういえば神様の処理をどうしようかなって悩んでたねー。毎回さー」

百田「でも投票をわざわざ放棄するヤツなんていねーだろ。正しい人物に票が集まらなけりゃ、どっちにしろ全員死ぬんだからよ」

赤松「じゃあ最初に……何から話せばいいかな?」

茶柱「……第一発見者の最原さんが、夢野さんを見つけたときのことを話すべきでは?」

最原「うん。そういえば詳しく言ってなかったしね」



6:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 19:45:10.31 ID:YTh/qlbW0

最原「新世界プログラムから出た後、全員が現実世界に帰還したのは午前三時のことだった」

最原「巌窟王さんが破壊したドアを再度粉砕して、外に出ようとする直前に謎の爆音が響いたんだよね」

星「大きな音だったな。耳どころか体全体が震えるような」

最原「で。巌窟王さんが扉を粉砕。その後、熱も冷めないうちに入間さんが血相を変えて出て行った」

最原「心配になった百田くんは、僕を引っ張り出して一緒に扉から出て入間さんを捜索」

百田「だが、そこで終一は入間を見つける前に気付いたんだよ」

百田「焦げ臭い臭い……つまり、学園のどこかが燃えているってことに」

最原「ひとまず入間さんのことは放置して……いや、正確に言うと入間さんの捜索を続ける傍ら、僕たちは一階へと降りた」

最原「そこで僕たちが見たのは、白煙がもくもくと立ち込める校舎だった」

モノクマ「その時点で、火事はもう消し止めておいたけどね! 流石に本校舎が燃えるのは困るからさー」

最原「地下が火元だったということに気付いて、僕はイヤな予感がして、一気に駆け下りて行ったんだ」

春川「……あれ? 百田は?」

最原「別行動だったよ。百田くんは一階に残しちゃったんだ」

春川「ふーん」



7:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/14(日) 19:59:13.97 ID:YTh/qlbW0

最原「地下に降りた僕は火事の有毒ガスに注意しながら、火元を探した」

最原「……火事が起こっていたのは図書室だった。モノクマが火事を消し止めていたことは聞いていたから、中に入って状況を調べようと思って……」

最原「あのドアが開いていることに気付いたんだ……!」

天海「モノクマカラーの隠し扉……確かに、俺たちがそこにかけつけたときにも全開のままでした」

天海「最原くんはその先に、彼女を見つけたんすね」

最原「……遺体の損壊は激しくって、腐敗臭も酷かった。でも見間違えるはずがないよ。あの隠し部屋の中に転がっていたのは……」

茶柱「夢野さん、でしたね。最原さんに次いで転子も見ましたよ」

茶柱「……外に出たいっていう願望を持っていることを差し引いても、人が人をあそこまで壊せるなんて……!」

東条「……」

茶柱「……あ。東条さんのことを言っているわけでは……」

王馬「そういう配慮はいいよー。もう何回もされちゃって東条ちゃん本人も飽き飽きでしょー?」

東条「そうね。それに……犯人は本当に外に出たいと思っていたのかしら?」

茶柱「え?」

王馬「ま、それは置いといて! ご苦労様、最原ちゃん! これで状況が随分と整理されたんじゃない?」

最原「うん。それじゃあ、これからみんなで一緒に事件を解決していこう」

王馬「ん? 解決してるんじゃない? 流石に犯人が二人に絞られてるんじゃさ!」ニヤニヤ

入間「は? 二人……?」

王馬「断言するぜッ! 巌窟王ちゃんか、ゴン太のどちらかが犯人だ!」バァーンッ

巌窟王「何?」

獄原「ええっ!? ご、ゴン太が!?」

最原(またこの人は……突拍子もないことを)ハァ



9:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/15(月) 18:56:45.31 ID:TauUWzNA0

アンジー「……ねえ小吉ー。アンジーはね? 三つ嫌いなものがあるんだー」

アンジー「一つ、白い服を着たチビ。二つ、嘘吐き。三つ、神様にあらぬ疑いをかける人」

王馬「全部合わせてキー坊じゃんッ!」ガビーンッ

キーボ「キミですよキミ!」

アンジー「ねえ。第六親等までバチが当たるよ? なんでそんなことを言ったのか教えて?」

王馬「もちろん根拠はあるよ。だって、夢野ちゃんの死因って銃殺で間違いないんでしょ?」

王馬「だったら、凶器の観点から言って犯人はゴン太か巌窟王ちゃんくらいしかいないんだって」

茶柱「凶器の観点、ですか?」

春川「ああ……王馬はアレのこと言ってるんだね」

王馬「S&WモデルM500。俺の知っている限り最強のリボルバー」

王馬「特徴はなんといっても威力だよね! 人間に撃ったら人体に穴が開く程度じゃ済まないってくらい!」

王馬「ただ同時に、大きな欠点……いや『反作用』があるんだけど」

最原「……春川さん。あの……王馬くんのことを信用してないわけじゃないんだけどさ……」

春川「わかってる。補足するよ」



10:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/15(月) 19:06:54.75 ID:TauUWzNA0

春川「王馬の言った通り。夢野の近くに落ちていた銃は反動が大きすぎて使い物にならないんだよ」

春川「私でもあんなもの使いたくないよ。下手すれば肩が外れるしさ……」

キーボ「え? 超高校級の暗殺者なのに、ですか?」

春川「暗殺者だから。そもそも人を撃つ用の銃じゃないんだよ、アレ」

春川「まあ、天海が超高校級の狩猟者とかなら使ったことあるかもだけどさ」

天海「銃が一般的な場所を旅したことはあるんすけど、アレを間近でまじまじと見たのは初めてっすよ」

赤松「……で。結局王馬くんはなんで巌窟王さんとゴン太くんが怪しいって思ったの?」

王馬「わかんないかなー。非常識な筋力がないと、あの銃はまともに扱えないんだって」

王馬「で。この中で非常識な筋力を持ってるのは、この中ではゴン太と巌窟王ちゃんだけなんだってば」

最原「……王馬くん。キミ、もしかしてふざけてる?」

王馬「ん? なんのこと? 大真面目に議論している生徒を捕まえておいてさ」ニヤニヤ

最原(やっぱり完璧にふざけてるよなぁ……)



11:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/15(月) 19:25:00.72 ID:TauUWzNA0

巌窟王「……王馬。一つ勘違いをしているようなら指摘しておくが、アレは凶器ではないぞ」

王馬「銃殺なのに?」

巌窟王「銃殺故に、だ。仮に夢野の死因が撲殺だったのであれば、アレが凶器である可能性もあったやもしれんが」

巌窟王「……反動が大きいということは、そも威力が大きいと言うことだ。春川、そうだな?」

春川「うん。あの銃は間違っても凶器じゃないよ。それにしては夢野の死体の損傷が『少なすぎる』から」

最原「……あ。やっぱり巌窟王さんも、今回はキチンと議論に参加してくれるんだね?」

巌窟王「前回も参加していただろう」

最原「アレはアンジーさんの事件だったから……」

巌窟王「……」

アンジー「終一ー。神様が『心外だ』って言ってるよー」

巌窟王「言って『は』いない」

最原(思ってはいるんだな……)

王馬「へぇー。勘違いしちゃったや。アレって犯人の偽装工作だったのかな」

王馬「あれ? だとすると、おかしいな? 犯行に使われた銃は一体どこに行っちゃったんだろう?」

茶柱「……」ヒクッ

最原「王馬くん。茶柱さんがそろそろ本気でキレちゃいそうだからさ……」オロオロ

王馬「にししっ! ごめんごめん、ちょっとした冗談だってば!」

王馬「あったよね。本物の凶器」

白銀「え? 本物の凶器?」



12:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/15(月) 19:43:16.27 ID:TauUWzNA0

最原「薬品か何かで表面がドロドロに溶けてたけど、中から銃弾が出て来たから間違いないよ」

最原「白銀さんの研究教室周辺に捨ててあった」

春川「……本当に?」

王馬「ホントだよ! ほら、春川ちゃんの大好きな銃弾もここに!」ヒョイッ

春川「!」パシッ

百田「お。ナイスキャッチだ」

春川「うるさい……うん。確かに銃弾だけど……この血は?」

王馬「最原ちゃんの血だよ。発見時に思いっきり着弾したんだよね」

茶柱「……」

春川「……二十二口径かな。夢野の近くに落ちてた銃が使う弾の半分もない」

春川「なるほど。これだけ小さければ、夢野の遺体の損傷が思ったよりも小さかったことも納得かな」

最原「威力が小さいってことだよね。それなら反動は……」

春川「問題ないよ。この弾程度なら、この場にいる誰でも使える」

星「つまり、凶器の観点から犯人を絞ることは不可能ってことだな」

星「……いや。そうでもねーか。銃が発見された状況から絞りこめるかもしんねーな?」

白銀「表面がドロドロに溶けてたって……いや、そもそも何をどうしたら最原くんに弾が当たるの?」

最原「ええと、それは……」

茶柱「犯人の杜撰な証拠隠滅のせいですよ。そもそもその薬品は、別のものを溶かすためのものでしたから」

茶柱「……ですよね? 最原さん」

最原(別のもの……それって、どう考えてもアレのことだよな)



16:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/16(火) 20:18:01.42 ID:1cUHiAgr0

最原「……イリスアゲートエレクトボム」

春川「!?!?」ガビーンッ

入間「はぎゃあっ!?」ガビーンッ

獄原「……どうしたの入間さん。締め上げられたシャモみたいな声出して」

百田「ハルマキもだ。暗殺者として、なにか気が付くことがあるのか? 今までみたいによ!」

春川「それ以上口を開いたら皆殺しにしてやる」ゴゴゴゴゴゴゴ

百田「突然のジェノサイド宣言だと!?」

赤松「な、なに? そのイリスアゲートエレクトボムって。相当の厄ネタ臭しかしないんだけど」

入間「黙れ処女膜ぶっこ抜くぞピアノサイコ! 略してPP!」

赤松「PP!?」ガビーンッ

春川「命が惜しかったら部屋の隅で口を閉じてガタガタ震えてなよピアノパラノイア。略してPP」ゴゴゴゴゴゴゴ

赤松「どっちにしろPP!?」ガビーンッ

最原「春川さん。入間さんを売ってくれれば『春川さんの秘密』は守るよ」

春川「私が入間に頼んで作ってもらったEMP兵器だよ」ケロリ

入間「」

春川「……暗殺者だから。背中から刺すことに抵抗はないよ」

王馬「鬼?」



18:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/16(火) 20:42:52.36 ID:1cUHiAgr0

巌窟王「……で。春川。お前は入間に具体的に何を頼んだ?」

春川「多分最原ならわかってると思うけど」

最原「……巌窟王さんのデバイスと、ホームの通信を妨害する爆弾だよね」

最原「起爆したが最後、最低でも三日の間は通信が効かなくなるはずだよ」

春川「入間。私、そんな長い効力までは注文してなかったんだけど」

入間「こ、このアマァ……ヌケヌケとよくも……!」ガタガタ

巌窟王「……何故そのようなくだらないものを作ろうと思った?」

巌窟王「いや。いい。春川の方は、いいとしよう。最原の取引を無にする結果になるからな」

最原「あ、ありがとう……」

巌窟王「断じて貴様を立てたわけではない。勘違いをするな」

最原「あ、あははははは……」

赤松「最原くん。どんまい」

入間「じゃあ俺様もこの件に関しては無罪放免でいいよな?」

巌窟王「……詳細を聞く必要があるだろうな。最原、続けろ」

最原「うん。このEMP兵器は『物理的破壊力のない爆弾』でさ。その代わり、破片も纏まってほとんど飛ばないんだ」

最原「そして、この爆弾はおそらく起爆したときに薬品が飛び散って、破片を溶かし、元の判別が困難になるギミックが仕込まれていたはずだよ」

星「待て。巌窟王のデバイスが実際に動かなくなっている以上、それが本当に起爆したことは納得するとして、だ」

星「何故それを入間作のEMP兵器だと認識することができた?」

最原「一つだけ不発の爆弾があったから、そこから割れたんだよ」

星「二つ目に、なぜその爆弾の存在をお前さんが知っている?」

最原「……入間さんの素行が最近おかしかったから、変なこと企んでないかって捜索してたんだ」

最原「そのとき、たまたまイリスアゲートエレクトボムの設計図を見かけたんだよ」

星「……よし。悪かったな。話の腰を折っちまって。続けてくれ」

最原(嘘は吐いてない)



19:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/16(火) 21:02:59.05 ID:1cUHiAgr0

キーボ「破片を溶かす薬品のギミック……もしかして、表面の溶けた銃と何か関係が?」

最原「まず間違いなくあったはずだよ。そもそも、その銃だったものが見つかったのが、爆弾の捜査のときだったから」

茶柱「爆弾の破片にしては妙に大きいな、と転子が拾い上げたときに最原さんが気付いたんです」

茶柱「血相を変えた最原さんが暴発する前に遠くへぶん投げたのですが……」

百田「弾だけは終一に運悪く着弾しちまったってわけか」

最原「暴発の原因は、多分薬品と火薬が反応を起こして、それがたまたまあのタイミングで起爆したからだと思う」

最原「でも、結果だけ見ると全体的に運はよかったと思う。だって、あの暴発がなければ銃弾は見つからなかったわけだし」

最原「あそこまで解けた金属を見ても『大きい破片だな』程度にしか思えなかったよ」

茶柱「……運? 最悪に決まってるじゃないですか」

茶柱「そこで自分が怪我したことを勘定に入れないから最低なんですよ、あなたは」

最原「……」

百田「今日はなんだかみんなの当たりが強いな、終一」

最原「うん……泣いていいかな……」

アンジー「アンジーの胸を貸すよー?」

巌窟王「俺の目の前で借りたら即焼くぞ」ゴォゥッ

最原「泣くのは後回しにするよ!」



20:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/16(火) 21:11:13.97 ID:1cUHiAgr0

白銀「でも、そんなものを触って茶柱さんと最原くんは大丈夫だったの?」

白銀「金属を溶かす薬品だよね?」

茶柱「転子は一応、ハンカチで包んでから拾い上げましたけど……よく考えたら最原さんはあのとき素手でしたね?」

最原「……あっ。そうだった。全然気付かなかった」

茶柱「あなた……まさか、怪我を誤魔化したり……?」ゴゴゴゴゴゴゴ

最原「し、してないしてない! 大丈夫だよ、ほら! 手のひらは無事だって!」

キーボ「最原くんが拾い上げた時点で、表面の薬品はほぼ蒸発しきっていたということでしょうか」

キーボ「……相当の技術力ですよ。こんな薬品を作り出せるとするなら、それは……」

入間「……」ダラダラダラ

巌窟王「……ところで、春川。注文段階で『起爆後の証拠隠滅』に関する注文はどうなっていた?」

春川「特に指定はしてないけど……」

巌窟王「そうか」

入間「あわわ……」



27:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/17(水) 20:49:41.65 ID:S4xFYQjd0

巌窟王「……入間。どう思う?」

入間「えっ。ど、どう思うって?」

巌窟王「お前の爆弾の傍に落ちていた銃が、やはりお前の作ったと思われる薬品で焼けていたのだぞ」

入間「……」ガタガタ

巌窟王「ふ……やはりか。言葉も失おうというものだ」

王馬「だよねー! だって入間ちゃんが犯に――!」

巌窟王「自分の発明品をまたもや盗まれるとはな。自らのマヌケさに呆れ果てて物も言えないだろう」

王馬「えっ?」

入間「えっ?」

巌窟王「ん?」

裁判場全体「……」







百田「なあ終一。今更言うことでもねーけどよ。コイツ、俺たちのこと信じすぎだろ」

最原「悪ぶってるけど学級裁判向きじゃないよね。性格が」

巌窟王「?」



28:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/17(水) 20:59:31.68 ID:S4xFYQjd0

王馬「……マジで毒気抜かれちゃったよ。真宮寺ちゃん。後頼んだ」

真宮寺「なんで僕……いやまあいいけどネ」

真宮寺「ねえ入間さん? 夢野さんを殺したのって、キミじゃないの?」

入間「ひぎっ!? な、ななな何言ってんだよ! 何の根拠があってそんなこと……」アタフタ

真宮寺「だってさァ、証拠隠滅機能付きの爆弾の傍に、かつて銃だったと思われる金属が落ちていたということは、だヨ?」

真宮寺「少なくとも銃を置いた人に『そこに爆弾があったこと』と『爆弾の細かい機能』を知られていたということだよネ?」

入間「ちょ、ちょっと待て! そもそも、そこに爆弾を置いたのが俺様だという確証はどこにもねーはずだ!」

入間「そうだ! 俺様にこの爆弾の発注をしたのは春川だぞ! 春川が俺様の研究教室から爆弾を持ち出したんだよ!」

春川「あのさ。二つ目の条件『爆弾の細かい機能』についてを私は知らないんだけど。証拠隠滅機能なんて頼んでないし」

入間「……あっ! い、いや! テメェは俺様に証拠隠滅機能を頼んでた、ぜ?」アタフタ

春川「……は?」

入間「だ、だから、春川だって二つ目の条件を満たすんだよ! コイツだってイリスアゲートエレクトボムのこと知ってたんだ!」

春川「バカバカしい。そんな言葉を誰が信じるって?」

王馬「入間ちゃんごめん! 春川ちゃんも疑うべきだったよ!」ニヤニヤ

春川「……コイツがいたか」

最原(実際、一切信じてないだろうけど……)



29:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/17(水) 21:10:38.00 ID:S4xFYQjd0

最原「……あそこに爆弾を設置したのは入間さんだよ。間違いない」

入間「だ、ダサイ原ァ……!」ギリィッ

最原「そう思われる根拠はいくつかあるけど……一番わかりやすいのは新世界プログラムから出た直後の入間さんの行動かな」

最原「爆音が聞こえた直後に時間を気にしていたよね?」

百田「その後、巌窟王を急かしてドアを破壊させて、熱が冷めない内からスパコン室を抜け出したんだったな?」

最原「あのとき、おそらく入間さんにとって予想外の何かが起こったんだ」

最原「その予想外の何かっていうのは、爆弾に関係しているはずだよ」

入間「ざ、ざけんな……俺様は……俺様はそんな……」ガタガタ

最原「ごめん。やめないよ。最後まで言う」

最原「……赤松さん。どうして白銀さんの研究教室周辺にまで足を運んだの?」

赤松「え……なんでって……」

赤松「上の階から爆音が聞こえたんだから当たり前じゃない?」キョトン

裁判場全体「」ザワッ

赤松「……え? なに? どうかしたの?」

天海「また赤松さんは……その聴力は常軌を逸しているってことを、いつになったら学習してくれるんすかね?」

赤松「……え? わからなかったの!?」ガビーンッ



30:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/17(水) 21:20:46.35 ID:S4xFYQjd0

最原「爆音があったところに入間さんがいた。そして、その証言をもとに捜査したら爆弾が見つかった」

最原「入間さんが爆弾を設置した可能性は、この時点でかなり高いんじゃないかな?」

入間「い、いや! 思い出した! 俺様には絶対音感があったんだよ!」

入間「赤松と同じだ! 爆音があった場所にたまたま向かっただけなんだって!」アワアワ

赤松「凄い! 絶対音感なんか持ってたんだ!」キラキラキラ

天海「赤松さーん。百パー嘘っすよー」

最原「そう。まだ認めてくれないんだね」

最原「……今のうちに認めてくれれば面倒が省けるんだけどな」

巌窟王「……」

巌窟王「入間?」

アンジー「美兎?」

入間「や、やめろ……俺様をそんな目で見るんじゃねぇボンクラどもッ!」

最原「多分、すべての爆弾はタイマー制御だったんじゃない?」

入間「!」ビクッ

最原「……図書室に仕掛けられていた時限発火装置に使われていたタイマー。アレって出所はどこだったんだろう」

最原「アレって、入間さんの爆弾から転用したものだったはずだよ」

入間「う……うううううう……!」

真宮寺「あのタイマーがキミのものだったということは、キミ自身が白状したことだよネ」

王馬「観念する? ゲロる? ゲロっちゃう?」キラキラキラ



31:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/17(水) 21:34:18.29 ID:S4xFYQjd0

入間「……あの爆音が――」

最原「そもそも爆弾と関係あったかどうかわかるはずがない?」

最原「流石にわかるよ。だって、あの爆音が鳴る直前までは間違いなく、僕たちの目の前で巌窟王さんが通信をしていたはずだよ?」

巌窟王「……確かに通信が使えなくなったことに気付いたのは、あの爆音の後だったな」

春川「時間帯が相当限定されている。偶然の一致じゃ済ませないよ?」

最原「入間さん。アクシデントが同時にいくつ起こったのかはわからないけどさ……」

最原「爆弾が爆発したことが、最大の――」

入間「もうやめてくれえええええええええっ!」

最原「!」

入間「……そうだよ。確かに、俺様が爆弾を設置したよ。でも……」

入間「俺様は……夢野を殺してなんかいねぇ……あんな残酷な方法で……人なんか殺せねぇって」グスグス

入間「人が死ぬことが、あんなに臭くて、生々しくて、グロいことなんだって知ってたら、俺様は……!」エグエグ

最原「……あ。えーっと……」

最原(ちょっと……責め立てすぎたかな。別に入間さんが犯人だと主張してるわけじゃないんだけど……)アセアセ



35:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/18(木) 20:55:22.05 ID:uq5qA2sI0

王馬「さて。それじゃあ名残惜しいけど、そろそろ投票タイムと行こうか! さらばだ! 入間ちゃん!」

入間「ひっ……ま、待って! やめてやめてやめて……! 俺様じゃ……!」

真宮寺(ない、とは思うけど。まあボロ出してくれそうだし、乗っておこうかな)

真宮寺「ククク。往生際が悪いヨ。まあ、キミの作り上げた殺人トリックなんてこんなものだろうネ」

入間「……さ、最原。助け……助けて……! お前ならわかってくれるよな? な?」ガタガタ

最原(わかる。わかるけど……ここで助けていいものかな)

最原「……入間さん。一つ聞かせてくれる?」

最原「一体なにを企んでたの?」

入間「う……!」

最原「キミ自身の口から直接聞きたいんだ。お願いだから、隠してることがあったら全部話してよ」

最原「……僕もキミを助けたい。それには絶対に必要なんだ」

入間「……あ、ああああああああ……!」

入間「うわああああああああああああ……!」

アンジー「……」

アンジー「美兎。アンジーは怒らないよ」

入間「……あ?」

アンジー「神様のことも、きっと抑えるからさ」

アンジー「だから、ね? 本当のことを話して?」

入間「……お前、まさか気付いて……」

アンジー「なんとなくだけどねー……神様に向ける目で、ちょっとだけわかっちゃってたんだよー」

アンジー「……お願い。美兎」

巌窟王「……!」

巌窟王(お願い、か……祈りしか捧げないと言っていたあの小娘が……)

巌窟王「アンジー。後でとらやの羊羹をやろう」

アンジー「わーい!」

赤松「え? なんで?」



36:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/18(木) 21:05:34.37 ID:uq5qA2sI0

入間「……アンジーを……殺す気だったんだ」

巌窟王「……」

巌窟王「……クハハハハハハ! この期に及んで意味不明な冗談を言うとは、案外余裕だな入間!」

入間「……」

巌窟王「……?」

巌窟王「……」

巌窟王「!?!?!?!?!?」ガビーンッ

百田「驚きすぎだテメェ! どんだけ入間のこと信用してたんだよ!」

巌窟王「驚いてなどいない。なるほど。貴様らしい浅はかな考えだな」ガタガタガタ

赤松「巌窟王さん! タバコがさかさま!」アタフタ

巌窟王「さあ。最後に全力で申し開きをするがいい。聞くかどうかは俺の気分次第だがな」ボッボボボッボボボッ

獄原「た、大変だ! ライターを持つ手が震えて体中のあちこちに引火してるよ!」

白銀「モノクマー! 水! 水ーーーッ!」

モノクマ「はいはい」パチンッ



バシャアッ



37:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/18(木) 21:15:27.02 ID:uq5qA2sI0

巌窟王「……」ポタポタ

入間「その……巌窟王が新世界プログラムを勝手にいじくったせいで計画は完璧に頓挫したんだけどよ……」

入間「工作の一環で学園中に仕掛けたイリスアゲートエレクトボムのタイマー設定を、ショックのせいで切り忘れてて」

入間「……で。この通りだよ」

最原「それだよ。新世界プログラムで、どうやってアンジーさんを殺そうと思ったの?」

入間「ザックリ言えば、あのプログラムの中での死は現実での死に直結するんだよ」

王馬「……ふーん。なるほどね。新世界プログラムに人を殺傷する能力は一切ないって大嘘だったわけだ」

赤松「でも機械に関して、私たちは入間さん以上の技術力も知識もない……」

赤松「もしも計画が実行に移されてたら、入間さんの嘘を否定する材料もなかっただろうね」

茶柱「あなたって人は、どこまで愚かなんですか……! あの時点で夢野さんが行方知れずだったというのに!」

入間「わ、悪かったって……!」



38:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/18(木) 21:29:54.98 ID:uq5qA2sI0

巌窟王「今更ながら、何故アンジーが入間を警戒していたのか理解したぞ」

巌窟王「……アンジー。何故先に言わなかった?」

アンジー「だってこういうの一番不得意そうだしー」

アンジー「仮にどうこうする気になったとして、是清に対する態度を見てて『あ、コレ駄目だ。専門外だもん』って思ったんだよー」

東条「まあ、過激すぎて目も当てられない惨状になることは確実だったでしょうね」

巌窟王「……」ズーン

白銀「でも動機は? なんでアンジーさんを殺そうと思ったの?」

入間「……令呪、ひいては巌窟王が欲しくってな。わからねーか? そいつを解析すれば、俺様はきっともっと世の中を良くできるんだぞ?」

入間「そのためなら少数の犠牲なんぞ屁でもクソでもねぇ」

入間「なあ東条! 『元』総理大臣のテメェならわかるよなぁ?」

東条「ッ!」

星「……」ギロッ

入間「……な、なんだよ! 本当のことだろ?」

最原「議論を元に戻そう。入間さんがこういう困った人だってことは、とっくにみんなわかってたことだし」

百田「……で。結局のところ、入間は犯人なのか。そうじゃねーのか」

最原「少なくとも、入間さんの用意した爆弾の近くに銃が落ちていたからと言って」

最原「入間さんだけを疑うには、まだ全然足りないのは確かだよ」

王馬「ふーん? なんで?」

最原「現状、犯人に関してわかってることを、ここで一旦整理しよう」

最原「そうすれば理屈が逆だってことを証明できるはずだ」

最原「『入間さんの爆弾を知ってた人間が犯人』なのではなく『犯人には入間さんの爆弾を知る術があった』ってことに」

春川「……同じことじゃないの?」

最原(いや。違う。まったく違う)



46:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/19(金) 22:27:31.26 ID:OKTqz0QD0

CM

酒呑「へえ。旦那はんも頑張ったんやね? こんなにボックスを開けるなんて……」

頼光「大体三十箱ほど開けたそうですよ」ニコニコ

酒呑「へえ。そんなに……」

酒呑「……なあ。一つの箱に四つの凶骨が入った箱を三十開けたら凶骨はなんぼ溜まる?」

頼光「ええと……百二十個でしょうか」

酒呑「アンタのスキルマックスに必要な凶骨の数は?」

頼光「(15+29)*3ですから……百三十二個ですね」

酒呑「ほうかほうか。そんならもう一つ聞いてまうけど」








酒呑「ここにあった凶骨、どこ行ったん?」ギロリ

頼光「……あなたのような勘のいい虫(ガキ)は嫌いですよ」



ダ・ヴィンチと七人の贋作英霊
間もなく終了! 悔いのない周回ライフを!



51:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/20(土) 12:20:33.23 ID:Vrd5+ZN60

赤松「犯人についてわかっている情報……」

春川「ハエのせいで荒らされてはいたけど、犯行現場はあの部屋でほぼ間違いないと思う」

春川「傷口に関しては死後にほじくり返されたみたいで、ぐちゃぐちゃだった。銃弾も見つからなかったよ」

百田「裏を返せば、犯人はあの部屋で夢野を銃殺した後、ゆっくりと銃弾を摘出できるだけの時間があったってことか」

春川「まあ、だから『夢野の殺害現場』が偽装された可能性はほとんどないんだけど……」

春川「……最原。やっぱりそういうことでいいの?」

キーボ「そういうこと、と言うと?」

最原「……犯人は首謀者。その可能性が高い」

赤松「えっ!?」

最原「ほら。だとすると、納得できることも多いでしょ?」

最原「体育館でのモノクマの伝言。開かれた隠し扉。モノクマファイルを作るデバイス……」

真宮寺「……というより、犯人が首謀者でなければ納得できないことだらけだネ」

茶柱「もしかして、あの体育館での伝言の時点で、夢野さんは……」

白銀「それはどうだろう。だって、モノクマファイルの死亡推定時刻には日付は書かれてなかったよね?」

白銀「誰かがあそこに閉じ込めるだけ閉じ込めておいて、今日の内に殺した可能性だって……」

真宮寺「待って。話が脱線してるヨ。それも大事だけど、ひとまず置いておこう」

真宮寺「入間さんの爆弾を知る術があったって、どういうこと?」

最原「赤松さんの学級裁判のときでも話題になったけど、首謀者に学園を監視する手段があることは間違いないと思う」

最原「じゃないと巌窟王さんが死んだ事件のとき、あんなちょうどいいタイミングで隠し扉の本棚を動かせないよね?」

巌窟王「モノクマ。どうだ?」

モノクマ「あそこまで踏み入られちゃった以上、もう隠す必要性もないから言っちゃおうか」

モノクマ「うん。もしも首謀者なんてものが実在するとしたら、オマエラに気付かれない手段で学園中を監視していたと思うよ!」



52:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/20(土) 12:29:05.52 ID:Vrd5+ZN60

最原「あのとき首謀者は、赤松さんが砲丸を持ち去ったことや、図書室に仕掛けられたカメラのことまで網羅していた」

最原「……これだけ万能の監視技術を持っている首謀者が、今回に限って入間さんの爆弾のことを知らなかったと考える方が不自然じゃない?」

キーボ「だとすると、今回の事件はボクらが想像していたよりも遥かに大事です」

キーボ「この事件の犯人が、そのままコロシアイの首謀者だったとしたら……!」

赤松「この事件が解決すれば、コロシアイは終わり……!?」

最原「……」

最原(そんな簡単に行くかな……?)

巌窟王「最原。今回は止めるな。いや、お前が泣き叫ぼうと止まらないがな」

アンジー「アンジーも止めないよー……仲間だった人がまた消えちゃうのは悲しいけどさー」

百田「捕らぬ狸の皮算用だな。そういう話は後にしろってーの」

天海「そうっすね。それじゃあ……改めて、夢野さんの事件を解決させるとするっす」

天海「いや? 犯人が首謀者である以上、首謀者を割り出すことで犯人を割るってアプローチもあるかもしれないっすね」

最原「夢野さんの事件を解決させよう。首謀者に関しては、僕らもわかってないことが多すぎる」

天海「了解っす」



53:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/20(土) 12:32:01.29 ID:Vrd5+ZN60

ひとまず休憩!



55:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/20(土) 20:53:22.76 ID:Vrd5+ZN60

最原「他に夢野さんの事件でわかっていないことと言えば……」

星「待て。今回の場合、モノクマファイルは充実していたな?」

星「わかっていないことを埋めるよりは、わかっていることから犯人を辿る方が効率的じゃねーか?」

入間「現状の夢野のことでわかっていることって言うと……死因、凶器、死亡推定時刻、だよな?」

東条「この中で有用そうな情報と言えば、死亡推定時刻かしら」

東条「午前二時半と書いてあるけど、具体的にいつごろの午前二時半なのかしら」

入間「ボケたかババァ。午前二時半は午前二時半だろ」

東条「……」パチンッ

ボーンッ

入間「ああああああああああああッ!」ジタバタ

キーボ「入間さん!? どうしたんですか入間さん!?」

東条「親知らずを起爆させたわ」

最原「えっ!? なんて!?」ガビーンッ

入間「て、てめぇぇぇぇぇぇ……!」

東条「人の話は最後まで聞くものよ。次は上あごの右を起爆させましょうか」スッ

入間「ひいいいいいいいい!」

巌窟王「……ときどきお前の芸の細かさには驚くぞ。東条」



57:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/20(土) 21:03:12.16 ID:Vrd5+ZN60

東条「さきほど白銀さんもチラリと言っていたでしょう。モノクマファイルの死亡推定時刻は完璧ではないの」

東条「日付が書かれていないのよ」

赤松「でも夢野さんの死体は相当腐敗が進んでいたし、最後の目撃証言の直後あたりから死んでいたって考えるのが自然じゃない?」

東条「……春川さん。重ねてお願い。どう思うか聞かせてくれるかしら?」

春川「そうだね……ハッキリ言って、赤松の言っていることは正しい。ただ『常識の範囲で考えるなら』だけど」

春川「夢野の死体の場合は計算があまりにも合わなくってさ……」

獄原「計算? なんの?」

春川「白銀の目撃証言どころか、私が最後に夢野を見た時間に照らして見たとしても、あの腐敗具合は常軌を逸してるってこと」

春川「虫とか相互汚染とかそれ以前に、私たちには知覚できない何らかの方法で腐敗を促進させていた可能性も否定できない……」

春川「『常識で考えるだけ損』ってことが最初からわかっているなら、裏を返すと『今日死んでいたとしても不思議ではない』って私は思う」

入間「常識の範囲外、ねぇ」

入間「実は、俺様たちは気付いてないだけで、新世界プログラムの中で一週間過ごしていたー、的な?」

入間「ギャハハッ! んなわけねーか! 流石にそんなことありえるはずが……」

春川「……」







裁判場全体「……」

入間「……?」

入間「い、いや。冗談だぜ?」アタフタ

巌窟王「本当か?」

入間「……後で新世界プログラムを調べてみる」



58:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/20(土) 21:18:20.79 ID:Vrd5+ZN60

白銀「一瞬だけゾクッと来ちゃったけど、流石にそれはありえないと思う」

百田「まあ、一週間眠りっぱなしとかシャレになんねーしな……そんなに長い間、人間の体を放置してたら普通に死ぬだろ」

星「ただまあ、常軌を逸した何らかの方法で夢野の死体を急速に腐敗させることができるとしたら、だ」

星「確かに春川の言う通り、今日殺された可能性も否定はできねーか」

星「……証拠がない限りは、な」

白銀「あ。なんか隠してる悪い顔」

星「ふん。勘が鋭いな。出鼻を挫かれちまったぜ。最原、お前さんが答えてやるといい」

最原(星くんが言っている『夢野さんが今日殺されたわけじゃない根拠』って……)

最原「巌窟王さんが壊した、スパコン室の扉のことだよね」

赤松「あ……そっか! 確かに巌窟王さん、新世界プログラムに入る前に……!」

天海「……扉を破壊して誰も中に入ってこれないようにしてたっすね。確かに」

最原「逆に言うと、入間さんが出て行ったときみたいに、巌窟王さんが再度あの扉を破壊しないと外に誰も出られないんだよ」

キーボ「ついでに、巌窟王さんが別行動中に新世界プログラムから抜け出して、夢野さんを殺した可能性もナシです」

キーボ「ボクらが新世界プログラムに入る直前と、入間さんがスパコン室から出る直前の扉に差異はありませんでしたからね」

キーボ「流石に、出入りする度にまったく同じように破壊するのは不可能でしょう」

最原「だから、僕らが新世界プログラムに入る前に夢野さんは死んでいた。そう考えるのが妥当だろうね」

赤松「……結局、私たちの夢野さん捜索は無駄だったんだね」

茶柱「……悔しくてたまりませんよ……!」



59:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/20(土) 21:31:07.11 ID:Vrd5+ZN60

巌窟王「……」

巌窟王(夢野の死体について確かな情報があるとすれば、獄原の虫の知見だけだな)

巌窟王(少なくともクロバエがバラ撒かれたのは二十四時間以内……)

巌窟王(常軌を逸した腐敗の違和感……この事件そのものが、どこか……)

最原「……やっぱり気持ち悪いな……」

巌窟王「!」

百田「それ、ちょいちょい言ってるよな? モノクマファイルを見てからよ」

最原「うん……事件そのものは、多分このまま行けば解決できるとは思うけど……」

最原「夢野さんの死亡推定時刻の謎だけはどうしても解けない気がするんだ」

最原「……僕らは致命的な何かを見落としている」

巌窟王「……議論を先に進めろ。話はそれからだ」

最原「うん。そうだね」



63:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/21(日) 18:01:50.11 ID:+juwB/RE0

白銀「夢野さんが今日の午前二時半に死んだわけではないとすると、消去法で昨日の午前二時半に死んだってことになるよね?」

茶柱「白銀さんの最後の目撃証言がありますし、そうでなくとも春川さんが一昨日の時点で夢野さんを見ていたんですよね?」

春川「まあね。だから夢野は一昨日以前に死んだとは絶対に考えられない」

春川「そのことは巌窟王も証言するはずだよ。アイツにプレゼント渡してたよね?」

巌窟王「ああ。確かに渡したな。単なる在庫処分だが」

真宮寺「プレゼント……?」

王馬「……あっ」

アンジー「……神様ー。是清に何か渡したー?」

巌窟王「……」サッ

最原「凄い勢いで目を逸らさないでよ! 肯定したも同然じゃないか!」

真宮寺「あ、あの……聞くの怖いんだけど、最原くんは……最原くんすら何か貰ったの……!?」ガタガタ

最原「……」サッ

真宮寺「!?」ガビーンッ

百田「議論を先に進めようぜーーーッ! 夢野は一昨日以前には絶対に死んでないんだなーーー!?」ズガァァァンッ

アンジー「……是清。後で膝枕してあげるからー」

真宮寺「……遠慮しておくよ。姉さんが嫉妬するから、気持ちだけで……」サメザメ



64:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/21(日) 18:15:40.67 ID:+juwB/RE0

入間「……昨日の午前二時半ってことは、ほとんどのヤツが寝静まってるころだよな。例によってほぼ全員にアリバイがねーんじゃ……」

東条「何を言ってるの。あなたにはアリバイがあるでしょう」

入間「は?」

入間「……あっ! そうだ! 俺様と東条は、ずっと病院にいたんだった!」

天海「……ああ。治療してたんすっけ?」

東条「ええ。お互い病室から一歩も外に出ていないわ」

入間「まあ、俺様は治療中はずっと寝てたから、東条のアリバイに関しては証明できねーけどな?」

東条「……」

百田「んだよ。またこのパターンか?」

最原「待って。東条さん。病室から一歩も外に出なかったって?」

東条「……ええ。一歩も」

最原「そのとき、何か変なことは起こってなかった?」

東条「なんのことかしら?」

入間「俺様の睡眠はぶっ浅いからよ。何か変なことがあったら流石に起きると思うぜ」

入間「あの夜、ダサイ原と東条の話声も夢現ではあったけど聞こえてたしな?」

入間「……ところで何が『舌を噛み千切った方がマシ』って言ってたんだ?」

最原「聞かない方がいいと思う……」

最原「……でもそうか。うん。なるほど。入間さんの病室はなんともなかったのか。あのとき」

入間&東条「?」



66:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/21(日) 18:31:18.95 ID:+juwB/RE0

選択肢
東条さんにアリバイがある根拠は……

1.病院から出れなかった。
2.実は入間が起きてた。
3.東条も寝ていた。



67:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/21(日) 18:39:43.44 ID:hqW7XfgJO

1



68:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/21(日) 18:42:30.23 ID:+juwB/RE0

最原「……東条さんのアリバイは確実だと思う」

入間「あ? なんでだよ。俺様の治療の最中に抜け出すことも一応……」

最原「不可能だよ。だってあのとき病院が」

東条「病院が?」

最原「……あー」

最原「……してたから」ボソッ

アンジー「んー? 終一、今なんてー?」

最原「……迷宮化……してたから……」

東条「ふざけてるの?」ギロリ

最原「だから言いづらかったんだよ!」ガビーンッ!

百田「……あっ! そうだよ! あの状態の病院から抜け出せるわけがねぇ!」

百田「なんかの魔術のせいで、病院全体が迷宮化してたんだからよ!」

東条「え。本当だったの?」

巌窟王「待て。それ以前に魔術だと?」

最原「うん。多分、これもやっぱり巌窟王さんのホームからの干渉のせいだと思う……」

アンジー「あ。心当たりあるよー。あの日だけはアンジーも悪夢見なかったからねー」

最原「……代わりとして僕らが弄られてたってわけだよ……」ズーン

百田「あの夜のことは思い出したくもねぇ……」ガタガタ

巌窟王「……」



巌窟王の回想


ジークフリート『すまない……本当にすまない……』



回想終了



巌窟王「すま……いや、なんでもない」

アンジー「?」



69:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/21(日) 18:53:43.11 ID:+juwB/RE0

百田「これで東条のアリバイも完璧だな!」

百田「あ。今気づいたけどよ。同じ理由で、終一と俺のアリバイも証明できてるじゃねーか」

最原「うん。あの迷宮を一緒に駆けずり回ってたからね」

百田「怪我の功名か……? だからって感謝したくもねーけどな……」

巌窟王「……もしかしたらそのとき、何か『変な物』も貰っているかもしれんな」

巌窟王「純性のスキルであるなら聖杯でも取り除けないが、借り物なら廃棄する。後で調べさせてもらうぞ」

最原「う、うん。お願いするよ。よくわからないけど」

最原(……でも、このアリバイの立証はもしかしたら、議論が進めばまったく逆の結果をもたらすかもしれないな)

真宮寺「それで。他に午前二時半にアリバイがある人っている?」

巌窟王「……アンジー。そして赤松」

赤松「あ。私たち、か」

アンジー「うん! 楓とアンジーはねー! あのときお泊り会をしていたのだー!」

赤松「本当、結構深夜まで夜更かししてたし、あのときは好き勝手に遊んで喋って色々してたからさ」

赤松「お互いがお互いのアリバイの証人になっちゃうよね」

王馬「あれ? 巌窟王ちゃんは?」

巌窟王「……」

王馬「……追い出されてたんだね?」ニヤァ

巌窟王「……」ズーン

天海「無駄ないびりはやめた方がいいっすよ! 反動で面倒臭くなりそうっす!」



70:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/21(日) 19:17:45.34 ID:+juwB/RE0

キーボ「六人だけ……ですか。アリバイの方向から犯人を割り出すのは不可能ですね」

星「無駄ではなかっただろうがな。六人の容疑が晴れたとなれば、残るはあと約三分の二だろう」

王馬「は? いや、何言ってんの。犯人は女子に限定されてるんだからもっと少ないって」

最原(え?)

星「……今、なんて言った?」

王馬「だからさー! 犯人は女子に限定されてるんだから、もっと犯人候補は絞れるんだってばー!」

白銀「ま、待ってよ。なんで犯人が女子って決めつけて……」

巌窟王「……隠し扉だな?」

王馬「さっすが巌窟王ちゃん! 冴えてるー!」キラキラキラ

百田「隠し扉だと?」

王馬「おバカな百田ちゃんに解説してあげよう! あの隠し部屋へと至るルートは二つあってね?」

王馬「一つはカードキーで開閉する図書室の隠し扉」

王馬「もう一つは女子トイレと繋がっているカードキーなしで開閉する隠し扉なんだよ!」

王馬「赤松ちゃんの事件の議論では、犯人は未知のもう一つの通路を使った可能性が高いって話も出てたよね?」

王馬「さあて……その隠し扉が女子トイレにあるということは……?」

春川「犯人は女子の可能性が高い。女子が女子トイレに行っても何も不自然じゃないからね」

王馬「逆に、男子が女子トイレに入るところなんて見られた日には、仮に首謀者じゃなくってもギルティでしょ!」

王馬「だから犯人は被害者である夢野ちゃん、アリバイのある赤松ちゃんアンジーちゃん入間ちゃん東条ちゃんを抜いた……」

最原「白銀さんと春川さんと……」チラッ

茶柱「転子……だとでも!?」

茶柱「冗談じゃない! 転子が夢野さんを殺すわけがないでしょうッ!」

春川「……当然、私でもないよ」

白銀「じ、地味にピンチかな? 私でもないよ!?」アタフタ

最原(……本当に、この中に犯人が……?)



90:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/23(火) 12:33:58.24 ID:ivLpRsmI0

王馬「まあでも、この中に犯人がいるとするとさ。自然と犯人がたった一人に絞られるんだけどね」ニヤァ

獄原「え!? そ、それって、誰のこと!?」

王馬「死亡推定時刻を考えてくれれば自然とわかるんじゃないかな?」

最原「あっ」

茶柱「……なんのことです? 死亡推定時刻は深夜なのですから、ほとんどの人にアリバイが……」

最原「……王馬くん。お願いだから、そこから先は口にしないでくれるかな?」

最原「冗談じゃ済まないよ……」

赤松「……あ。そうか。そうなの!?」

白銀(あ。いい感じに赤松さんも引っかかってくれた)

白銀「え!? な、なに!? どうしたの? 何に気付いたの?」

赤松「殺せないよ! あの時間に、あの部屋で夢野さんを!」

赤松「だって、どうやって呼び出すの!?」

百田「どうやってって、普通に部屋にいる夢野を呼び出して……」

百田「……」

百田「呼びだせるわけねーよ! 怪しすぎんだろ!」

王馬「そう。例えば『学園中をさらっていたらたまたま隠し扉を見つけた。先があるみたいだからついてきて』と言ったとして……」

王馬「それに素直についていくのは余程生徒を信じていた赤松ちゃんか、好奇心旺盛な最原ちゃんだけ」

王馬「いや? 生徒を信用していた巌窟王ちゃんも、かな?」

巌窟王「……王馬……!」

王馬「仮に俺が夢野ちゃんに『ついてこい』とか言ったとして『怪しすぎるから』って警戒されて絶対に連れ出せないよ」

王馬「深夜だし?」

赤松「逆に言えば、余程信用していた人なら問答無用で外に連れ出せる……」

王馬「さて。夢野ちゃんに一番つき纏っていた……もとい仲良くしていた女生徒は……?」

茶柱「……」

茶柱「えっ」



91:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/23(火) 12:42:46.66 ID:ivLpRsmI0

アンジー「本当にそうかなー? そんな上手くいくー?」

アンジー「アンジーには転子と秘密子がそこまで仲良かったようには見えなかったなー」

茶柱「それはそれで傷つくんですけど! 超仲良しでしたよッ!?」

王馬「じゃあ逆パターンだったのかもね。もしかしたらそっちの方が可能性高いかも」

獄原「逆パターンって?」

王馬「そうだなー。例えば茶柱ちゃんがあの隠し扉をたまたま見つけて、夢野ちゃんに助けを求めた、とか」

百田「いや。それのどこが逆パターンなんだよ。一緒のことじゃねーか」

最原「……」

最原「いや! 違う! このパターンはさっきの仮説とは逆だ!」

百田「あ? 何がだよ。一緒だろ?」

最原「だって、さっきの話だと茶柱さんが夢野さんを殺したがっていた犯人ってことになってたよね」

最原「これまでの議論で犯人が首謀者って方向は固まってたから、首謀者が茶柱さん自身っていう前提を含んだ仮説だった」

最原「でもこのパターンだと、茶柱さんは純粋に、本当に単純に隠し扉を見つけただけの生徒ってことになってる」

春川「……夢野と茶柱。二人の登場人物しかいないのに、茶柱が首謀者じゃなかった場合は」

春川「残るところは夢野が首謀者自身だったっていう可能性、だけになるね」

入間「……いやいやいや。いくらなんでもあのロリロリファンタジックが首謀者なんてことがあるわけ……」

入間「え? マジで?」



92:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/23(火) 12:50:31.06 ID:ivLpRsmI0

天海「それはいくらなんでも荒唐無稽すぎる仮説っす! だってこの学級裁判は……!」

王馬「首謀者が死ねばコロシアイは続行不可能……っていうのは考えてみれば随分と希望的な観測だと思わない?」

天海「それは……その……」

王馬「……このコロシアイ自体の存在意義も、目的も、未だに見えてこない。もしかしたら首謀者を殺したところで終わらないのかも」

王馬「なんてね?」ニカッ

茶柱「違う……違いますよ! 転子も、夢野さんだって、首謀者じゃありません!」

茶柱「仲間に向かって、なんでそんな残酷なことが言えるんですか! あなたは!」

王馬「でもコレは学級裁判なんだッ!」

茶柱「……!」

王馬「俺だって……俺だって大好きだった夢野ちゃんや、茶柱ちゃんを疑いたくなんてない!」

王馬「でも俺たちは、いつだってこうして生き残ってきた」

王馬「こうしてでしか生き残れなかったんだ……ッ!」

王馬「だから……だから!」ポロポロ

最原「……」

百田「……」






最原&百田(白々しい)イラッ



93:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/23(火) 12:56:19.85 ID:ivLpRsmI0

天海「でも夢野さんが首謀者だったとして、どうして夢野さんが殺されるんすか」

王馬「茶柱ちゃんを口封じに殺そうと思ったら殺し返された、みたいな?」

天海「すげぇテキトーっすね」

百田「終一! どうなんだ?」

最原「……」

巌窟王「そんな仮説はなしだ。茶柱の犯人説に関しては保留するとしてな」

最原「!」

巌窟王「今回、夢野の死後に首謀者が動いていたという可能性がいくつも残されている」

巌窟王「これがある限りは、夢野が首謀者だという仮説は掻き消えるだろう」

茶柱「巌窟王さん……!」

巌窟王「……」

巌窟王「俺に救いを求めるな。お前を救うのは……」

茶柱「……!」

王馬「へえー。巌窟王ちゃんには何か心当たりが?」

巌窟王「当然、ある」



97:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/23(火) 20:10:20.83 ID:ivLpRsmI0

巌窟王「夢野が死んだ後で首謀者が動いていると考えられる根拠……」

巌窟王「空調。その他、様々な機能をロックしていた首謀者権限だ」

天海「あ……! そうか! 夢野さんが死んだ後で、アレを動かせるとするなら、首謀者はまだ生きている!」

天海「なら夢野さんは首謀者じゃないっすよ! 絶対!」

王馬「本当にそうかなぁ? そのロックが行われたのが夢野ちゃんが死ぬ前ってことはない?」

アンジー「ないんじゃないかなー? だって、あの部屋って居住性が最悪になってたしー」

天海「そうっすよ! 空調! ありえないほど加湿されてて蒸し暑かったっす!」

天海「事件以前からああなっていたとは、とてもじゃないけど考えられないっす!」

巌窟王「その空調すら首謀者権限のせいで操作が不可能になっていた」

巌窟王「……夢野の死体への腐敗工作をしていた人物は首謀者以外にありえないという根拠だ」

最原(へえ。空調。そういえば確かに蒸し暑かったっけ……)

最原(他にもう一つあるんだけど、これならもう充分、かな?)

王馬「あ。でも茶柱ちゃんが犯人って件に関しての反論は、一切ないんだね?」

最原「ッ!」



98:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/23(火) 20:20:29.98 ID:ivLpRsmI0

王馬「じゃ、一旦夢野ちゃんの立場になって考えてみようか」

王馬「まず春川ちゃんや白銀ちゃんが私室に深夜訊ねて来たと仮定して、夢野ちゃんは絶対に外に出ない。単純に怪しいから」

春川「怪しいって……」

白銀「あれ? 地味に春川さんと同列なんだね、私」

春川「……イヤなの?」

白銀「えっ!? あ、あはは……」

王馬「理由は簡単。『なんで自分に訪ねて来たのか理由が一切わからない』から」

王馬「だって。春川ちゃんならそんな扉を見つけたら夢野ちゃんじゃなくって百田ちゃんを連れだすだろうし」

王馬「白銀ちゃんなら……」

王馬「……」

王馬「あれっ」

白銀「は、ははっ……いいよ。どうせ独り身だから……リア充末永く爆発しろ……」ズーン

獄原「白銀さん! ゴン太も応援するから頑張って!」



101:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/23(火) 20:29:53.92 ID:ivLpRsmI0

王馬「半面、茶柱ちゃんなら夢野ちゃんも警戒しないよ」

王馬「だって! 丸わかりじゃん、なんで自分のところに来たのかなんて!」

天海「……信用されている、という自負が理由になる。だからまったく怪しく見えないってことっすね」

王馬「ちなみに『なんで最原ちゃんや巌窟王ちゃんを誘わなかったのか』と訊かれたら、赤松ちゃんの事件にこれまた倣うだろうね!」

王馬「『一番信用できそうな人に声をかけた。他の人が首謀者である可能性があるから』って!」

最原「……」

王馬「で。巌窟王ちゃん。茶柱さんを庇う証拠が何かある?」ニヤニヤ

巌窟王「そんなものは! ない!」ギンッ

アンジー「なっしんぐー! いえーい!」

巌窟王「クハハハハハハ! ないな!」

アンジー「にゃははははははー! ないなーい!」キラキラキラ

茶柱「そんなテンション高く言わないでくださいッ!」

白銀「本当に変なところでコンビネーション見せるよね……」



102:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/23(火) 20:41:47.46 ID:ivLpRsmI0

茶柱「違う……違います! あんな残酷に夢野さんを殺すわけないでしょう!」

茶柱「あなたたちは転子の何を見てたんですか!」

真宮寺「むしろ、キミこそ今までの学園生活で何を見てたんだい?」

茶柱「ッ!」

東条「……信用されていたからこそ、バレる可能性が少ないかも」

東条「かつての私も、そう思っていたことは否定できないわ」

茶柱「……待ってください。待って……違う。こんなの……」

茶柱「転子が夢野さんの信頼を裏切るようなマネをするわけが……!」

王馬「いい加減観念しろよッ! お前がやったんだろ! みんな疑ってるんだから観念しろって!」

王馬「全部白状して、俺たちをコロシアイから解放しろよォ!」

茶柱「……」

巌窟王(……妙だな。嘘臭すぎる。王馬は最初から茶柱のことを疑っていないのではないか?)

アンジー(これ、もしかしなくっても挑発だねー。でもこんなことしても転子の性格的に反論は……)

茶柱(……みんな……転子を疑ってる?)

茶柱(でも転子に反論できる材料は……!)

茶柱「違う……違うんですって……みなさん、信じてくださいよ……!」

茶柱「……誰か」

王馬「誰も助けるわけないじゃん? 薄汚れた首謀者なんかをさ!」

王馬「じゃあ、そろそろ投票と行こうか。異論はないでしょ?」ニコニコ







最原「……あるよ」

茶柱「!」

最原「あるに決まってるじゃないか……好き勝手に言いすぎだよ、王馬くん!」ズガァァァンッ



113:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/24(水) 19:42:01.28 ID:NSdWwk1E0

王馬「……へえ。あるんだ? じゃあ聞かせてくれない? どうせ真宮寺ちゃんのときみたいな壮大なハッタリだろうけどさ!」

最原「この……!」ギリィッ

アンジー「……終一?」

巌窟王(そうか。王馬が挑発していたのは茶柱ではなく……)

赤松「さ、最原くん? 落ち着いて。かつてないほど凄い顔になってるよ」

最原「……」

最原(落ち着け。王馬くんのペースに乗せられるな……)

最原(この証拠を出したら、後にはもう引けなくなる)

最原(ここで茶柱さんを庇わないといけないけど、果たしてこのまま行っていいのか?)

百田「迷うな! 終一!」

最原「!」

最原「……百田くん?」

百田「お前が何迷ってんのか知らねぇけどよ……茶柱を助けたいって思いは本物だろうが!」

百田「ならその思いを俺は信じる! お前はお前を信じりゃいい!」

百田「誰かを助けたいって願いが間違いなんてこと、絶対にありゃしねぇんだからよ!」

百田「それでお前の望み通りの結果にならなかったら……そんときゃ俺がどうにかしたらァ!」

春川「百田。安請け合いしすぎ」

最原「……ははっ」

最原「うん。わかった。ありがとう百田くん」

最原「……茶柱さん。安心してていいよ。キミが犯人じゃないってことは、僕が信じてる」

茶柱「最原さん……」

最原「まあ、余計なお世話って思ってるんだろうけどさ。善意の押し付け具合は巌窟王さんより百倍マシだよ!」

巌窟王「!?」ガビーンッ

白銀「特に理由のない流れ弾が巌窟王さんを襲う!」



114:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/24(水) 19:54:57.23 ID:NSdWwk1E0

最原「答えは、既存の証拠の中にある。僕にはそれが見えている」

最原「……ひとまず、もう一つの可能性がないのか考えてみようよ」

王馬「もう一つの可能性?」

最原「誰かに招かれて夢野さんがあの部屋へと赴いたわけではなく……」

最原「ましてや、無理やり連れ込まれたわけでもない」

最原「そう。『夢野さんが自分の意思であの部屋に入った可能性』だよ!」

王馬「……」

真宮寺「本気で言っているの? そんな可能性、僕には信じられないんだけど」

百田「ひとまず終一の話を聞いてみようぜ。話はそれからだ」

獄原「うん……夢野さんと仲良しだった茶柱さんが犯人だなんて、絶対に信じたくないしね」

最原「ありがとう。じゃあ、続けさせてもらうね」

最原「……なんで夢野さんが狙われたんだろうって、僕はずっと考えてたんだ」

最原「夢野さんの死体が発見される前からさ」

巌窟王「……そんなに前からか?」

最原「だって、おかしいよね? おしおきを破壊してきた巌窟王さんを狙うとかならともかく」

最原「夢野さんだよ? 今まで、このコロシアイに支障をきたすようなことをした?」

最原「……そこで考え付いたんだ。夢野さんは、無自覚にコロシアイに支障をきたすような行動を取ったんじゃないかって」

最原「そのトリガーを作ったのは……!」



人物指定

→巌窟王



最原(……これが僕の答えだ!)



115:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/24(水) 20:03:37.66 ID:NSdWwk1E0

最原「……巌窟王さんだよ」

巌窟王「……」

アンジー「……神様?」

最原「巌窟王さん。夢野さんに、あるプレゼントを渡したよね?」

最原「確か――」

巌窟王「聴診器だろう。そう、ちょうどこんな形の」ゴソゴソッ

最原(巌窟王さんがポケットから出したのは、本格的な造形の聴診器だった)

最原「……それ、どこで?」

巌窟王「夢野が持っていたらしい。春川が気を利かせて俺に持たせたものだ」

春川「……この聴診器がどうかしたの?」

最原「春川さん。言ってたよね。夢野さん、これを使って遊んでたって」

春川「うん。壁に当てて、内部の音を楽しんでた。最初はぶつくさ言ってたけど、割と気に入ってたみたい」

最原「女子トイレの隠し扉のことを、ここで思い出してほしいんだけどさ……」

最原「隠し扉って言うだけあって、見つけることは至難の業だよね。特に、丸腰で肉眼ならほとんど絶対に見つけられないんじゃないかな?」

東条「……図書室の隠し扉を見つけた最原くんや、6.0の驚異的な視力を持つ獄原くんならともかくとして」

東条「確かに私たちでは隠し扉を見つけることは不可能でしょうね」

東条「万が一、壁の向こうに空間があることに気付いたとしても、それを隠し扉だと認識できるかどうかは別――」

東条「……」

東条「……超高校級のマジシャンである夢野さんだけは、そうでなかったとでも?」





裁判場全体「」ザワッ



116:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/24(水) 20:17:50.61 ID:NSdWwk1E0

最原「事実、そうだったんだろうね。夢野さんは自力で女子トイレの隠し扉を見つけたんだ」

王馬「えー? でもそれっておかしいよ。夢野ちゃんが死んだのはド深夜なんだよ?」

王馬「夢野ちゃんがド深夜に隠し扉を見つけたとしても、多分彼女の性格なら……」

春川「怖がって見なかったフリをするか、さもなくば茶柱を引っ張り出してくるか……」

白銀「ていうか、夢野さんの性格からして、ド深夜に校舎で遊ぼうとか考えるかな?」

最原「……彼女が隠し扉を見つけたのが、周囲の明るい昼の間だったとしたら?」

茶柱「まあ、好奇心に負けて入ってしまおうと考えてもおかしくはないと思いますが……」

茶柱「……結局それもないと思います。昼から深夜までの間、何をしてたのかって話になりますし」

茶柱「即座に突っ込んで、即座に口封じをされたのならまだしも、昼に入って深夜に殺されましたじゃ話になりません」

茶柱「それとも、夢野さんには拘束の痕が残ってたんですか?」

春川「いや……腐敗は酷かったけど夢野は『無抵抗で射殺』されてた。多分、周囲の血飛沫の方向から見てもそのとき直立姿勢だったはずだよ」

春川「右手の指が何本かなくなってたからそこだけは検視できなかったけど、指三本でどうやって拘束するんだって話だし」

百田「夢野は不意打ちで殺されたってわけか……くそ。胸糞悪いぜ」



117:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/24(水) 20:30:32.20 ID:NSdWwk1E0

最原「即座に入って即座に口封じされていれば、この謎は解ける。そうだよね?」

白銀「……話を聞いてたの? それは――」

最原「本当にないの? なんで?」

白銀「なんでって、そんなの決まってるよ」

アンジー「モノクマファイルに書かれていたから、だよねー!」

百田「……おい」

百田「モノクマ。確認するぞ? モノクマファイルには真実しか書かれてないんだよな?」

モノクマ「うん? まあ大前提として、モノクマファイルは僕が作っているわけだけど」

モノクマ「当然、ボクは真実しか書かないよ! 情報を伏せることはあれどね!」

天海「……待って。再度確認させてください」

天海「もしも誰かが、モノクマがファイルを作った後、あのモノクマファイル作成デバイスを触ったとしたら……」

天海「モノクマ。その場合の処理は?」

モノクマ「お咎めなしだけど?」

天海「……!」

天海「やられたッ! くそっ! くそおっ!」

白銀「え? え? え? なに? どうしたの?」

最原「事件現場は首謀者しか入れないと思われる隠し部屋」

最原「その中にあるモノクマファイル作成デバイス」

最原「……こうは考えられないかな? 『犯人によってモノクマファイルは改竄されている』って!」

入間「なっ……何ィーーーッ!?」



124:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/25(木) 19:26:26.99 ID:AUZWgyhC0

赤松「ちょ、ちょっと待って! それって校則違反にはならないの!?」

春川「可能かどうかはひとまず放置するけど、可能なんじゃない? そんな校則ないし」

真宮寺「その時点ではなかったとして、モノクマは必要に応じて適宜校則を追加していたよネ?」

真宮寺「仮に、誰かがモノクマファイル作成デバイスに触ったとしたら、モノクマがそのときその場に応じた校則を追加するんじゃ……」

モノクマ「生徒にむやみやたらと触られたくない、とはボクも思ってるよ」

モノクマ「……思ってるだけだけど」

東条「……含みのある言い方ね」

最原「モノクマはデバイスに触る生徒に手出しができなかったんだよ。だって、モノクマルールがあったから」

赤松「モノクマルール?」

天海「校則とは別の、モノクマを縛るルールのことっすよ。ファイル作成デバイスの中に一部が書かれてたっす」

最原「『このパソコンへの干渉を禁止する校則を作ってはならない』……だよね?」

モノクマ「ボクにもボクの都合があってさー。むやみやたらと無秩序に、生徒を雁字搦めに縛るわけにもいかないんだよねー」

モノクマ「それもこれも、ボクが生徒の自主性を尊重するいい先生だからだよ……! 仰いでくれ! 尊んでくれ!」

白銀「わあ図々しい」



125:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/25(木) 19:34:03.51 ID:AUZWgyhC0

獄原「モノクマファイル作成デバイスに触れば、モノクマファイルの改竄が可能……」

獄原「首謀者って悪い人だね。ゴン太たちを騙すことを、何とも思ってないみたい」

王馬「本当だよ! 嘘を吐くなんて最低の人間がすることだッ!」ウガァ!

百田「……ツッコミ入れた方がいいか?」

王馬「とまあ、冗談はここまでにしておくとして。ゴン太。ダメだって。最原ちゃんに丸め込まれちゃさ……」

王馬「だって、モノクマファイルが改竄された証拠なんてどこにもないんだし」

最原「あるかもしれない……と言ったら?」

王馬「見せてみろ人類……と言うしかないね」

白銀「え? どこから目線なの?」

最原「わかった。じゃあファイル作成デバイスを見てみよう」

最原「……ところでアレって誰か持ってきてる?」

春川「一応、今は私が持ってるけど……」

モノクマ「コネクタと繋いでくれれば、画面を上部モニターに大写しにするよ!」

春川「じゃあ……」カチッ


ブゥンッ



126:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/25(木) 19:38:12.61 ID:AUZWgyhC0

春川「で。大事なのはどこ?」

最原「編集履歴のページだね」

百田「ん? おいおいハルマキ。なんかこのパソコン、時計が狂ってねーか?」

春川「今はどうでもいい」カタカタ


編集履歴

・第一の事件 巌窟王
死因
死亡推定時刻
☆その他死体の細かい状況


・第二の事件 巌窟王
☆死因
☆死亡推定時刻
☆その他死体の細かい状況


・第三の事件 夜長アンジー
なし


・第四の事件 都合により欠番

・第五の事件 夢野秘密子
死因
★死亡推定時刻
その他死体の細かい状況



127:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/25(木) 19:47:53.60 ID:AUZWgyhC0

東条「第四の事件が欠番……? 夢野さんの事件は第五の事件?」

獄原「あ、あれ? 事件のカウントがおかしくない? この学級裁判って、確か四回目だよね。ゴン太の数え間違い?」

最原「多分、第四の事件は入間さんの起こす予定の事件だったんだと思う」

入間「あ……? 俺様の?」

最原「ねえ入間さん。モノクマからの伝言の『ほとぼりが冷めたら』の本当の意味って、なんだったと思う?」

最原「キミは、本当はわかってたんじゃないかな?」

入間「……」

入間「『入間美兎の事件を無事乗り越えることができたなら』だろうな」

茶柱「えっ……!? あの伝言って、そういう意味だったんですか!?」

真宮寺「その割には、図書室に時限発火装置を仕込んだりと行動がチグハグだけど……」

最原「入間さんのトリックが巌窟王さんのせいで破綻したことに首謀者が気付いたんだろうね。そこで即座に方向転換したんだ」

百田「それで、本来起こるはずだった騒動が起こらなかったから、扉が開くのも前倒しになっちまった……」

百田「……そう考えると、なんか行き当たりばったりだな? 別に無理に俺たちに勝負しかけなくってもよかったんじゃねーか?」

最原(そこなんだよな……首謀者にしては、行動がどこかフェアすぎる。約束に律儀っていうか……)

最原(……今は置いておこう)



128:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/25(木) 20:00:49.18 ID:AUZWgyhC0

星「第四の事件が欠番になってるのは、入間が事件を起こさなかったからか……それなら理屈は通るが」

最原(それは違う、と言ったら横道に逸れちゃうから今は放置しておこう)

最原「……それぞれのモノクマファイルの項目の横に、星のマークが付いてたり、付いてなかったりしてるのが見える?」

最原「これは多分、誰かがモノクマファイルに手を加えた履歴を現してるんだと思う」

キーボ「……ああ。確かに、星マークが付いている項目は、これまでのモノクマファイルで伏せられていた情報ばかりです、けど……」

キーボ「あれっ?」

最原「うん。第五の事件、つまり夢野さんの事件に関しては、星マークがついている情報が公開されてるんだよ」

最原「……ついでに、星マークがこっちの場合は黒星マークになってるんだけど」

巌窟王「……最原。言いたいことがあるのなら迂遠にではなく単純に言うべきだぞ」

茶柱「あなたがそれを言いますか!?」

最原「今回のモノクマファイル、死亡推定時刻の欄に刻まれた黒星マークは何を意味しているのか」

最原「……手を加えられたにも関わらず、公開されているとするなら、コレは……!」

王馬「そう! モノクマファイルが改竄されているとしか考えられないってことさ!」

最原「!?」ガビーンッ

百田「終一の台詞を奪ってんじゃねーよ!」

王馬「あ、ごめん。あまりにも話の展開がトロ臭かったからつい」

最原「……」ガタガタ

赤松「最原くん! 元気出して! 王馬くんのいつもの意地悪だから!」アタフタ



130:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/25(木) 20:09:30.84 ID:AUZWgyhC0

キーボ「なるほど! 黒星マークは『改竄』を意味する記号だったんですね!」

春川「逆に、他の項目に関してはマークがないから、正真正銘モノクマが書いたモノクマファイルの内容そのままってことだろうね」

最原「……どう? これだけ根拠があれば、茶柱さんを死亡推定時刻から疑うことは危険だとわかってくれるよね?」

王馬「……最原ちゃん。キミ、運転とか得意なタイプじゃないでしょ」

最原「は?」

王馬「危険から避けようとして、更なる危険へと自ら突っ込んでしまうタイプっていうかさ……」

王馬「じゃあ最原ちゃんの言う通り、夢野ちゃんが警戒の薄まる昼の間に隠し扉を発見したとして……」

王馬「その直後、首謀者から口封じに殺されたんだとしたらさ」

王馬「……わかるよね? この仮説に基づくと、たった一人、大きな嘘を吐いてるヤツがいることに」ニヤァ

百田「なん……だと……!?」

最原(大きな嘘。夢野さんの死亡推定時刻が改竄されているとしたら、絶対にありえないものを目撃した人)

最原(……僕はみんなのことを仲間だと思っている。茶柱さんのことも大切だ)

最原(『あの人』と茶柱さんに、一体なんの違いがあるんだ……?)

最原(でも……指摘しないわけにもいかない。真実に辿り着くために)

最原(僕たちの未来のためにも!)


人物指定

→白銀つむぎ


決定


最原「キミしか……いない!」



138:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/26(金) 19:21:54.44 ID:VyPp1Nvc0

書いてたさ。ピクシブで。マジで何年前のだコレ……あ、タイトルでちょいちょいエゴサしてるのでそっちの感想も嬉しいっす。

高木さん見て来るので更新はその後



140:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/26(金) 19:31:08.12 ID:VyPp1Nvc0

違くて! このSSのタイトルと『虚構殺人遊戯』のワードで検索してるって意味っす!



143:前スレの658を参照のこと ◆SxyAboWqdc 2018/01/26(金) 19:51:17.50 ID:VyPp1Nvc0

最原「白銀さん……」

白銀「ん? 何? 最原くん」

最原「キミは確かさっきこう言ってたよね」



白銀『少なくとも、昨日の夜時間周辺の時間に私が夢野さんを見てるから……』

白銀『それよりも前ってことはないと思う』



白銀「……」

最原「夢野さんの死亡推定時刻に関しては、モノクマファイルを信用できない」

最原「なんで夢野さんが死んだのか、という謎に合理的に答えを導き出すなら、夢野さんが死んだのは昼の間って考えるのが一番自然だ」

最原「ねえ。白銀さん。キミは本当に夢野さんを見たの?」

最原「……夢野さんは本当に、その時間に生きてたの?」

白銀「……」

白銀(欲張りすぎたかなぁ? ま、いいか。追及を避ける手段はまだあるしね)



144:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/26(金) 20:08:30.45 ID:VyPp1Nvc0

百田「終一。まさか、白銀を疑ってんのか?」

東条「……最原くんの仮説が正しいとするなら、彼女以上に怪しい人物もいないわ」

東条「それなら、どうしてそんな嘘を吐いたのかの説明も付くもの」

真宮寺「……茶柱さんのアリバイを完全に潰すため、だよネ」

茶柱「えっ! 転子のアリバイを?」

真宮寺「そもそも、深夜に夢野さんを連れ出せる人間が相当限定されているっていうのが一つ目の理由だろうネ」

真宮寺「隠し扉が女子トイレにある以上、犯人は女性に限定される」

真宮寺「更に、その内の四人に完璧なアリバイがあり、夢野さん自身は被害者」

真宮寺「これで茶柱さんが、もしも捜索の手を広げるために誰かを引っ張り出したりしたら……」

春川「……茶柱に深夜のアリバイができてしまう。残る容疑者は私と白銀だけ。でもこの二人は夢野を深夜に呼び出せない」

春川「そうか。白銀が一番最初に、その目撃証言をしたのはモノクマの伝言より以前。茶柱が夢野を探しているときだったね」

真宮寺「モノクマファイルの改竄を活かすためにも、茶柱さんにはゆっくりと私室で寝てもらわなければならない」

真宮寺「だよネ? 白銀さん」

白銀「……」

百田「おい! なんか言えよ白銀! 反論があるんならどんどん言えって!」

アンジー「つむぎー。どうして黙ってるの? このままじゃ犯人にされちゃうよー?」

巌窟王「いや……今回の場合に限っては、ただの犯人ではない」

巌窟王「……真相に待ち構えているのは、このコロシアイの首謀者そのものだ」

白銀「……」

最原「……?」

最原(なんだ? 妙に落ち着いてるような……)

白銀「……バレちゃったか」

最原「!」

百田「テメェ、今、なんて……!?」






白銀「うん。ごめんね。夜時間周辺の時間に夢野さんを見たっていうのは嘘だよ」



146:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/26(金) 20:41:38.69 ID:VyPp1Nvc0

最原「……えっ?」

王馬「あれあれー? つまんないな。そんな簡単に認めちゃうの?」

白銀「……ごめん。本当に、ごめんね」ポロッ

最原「し、白銀……さん?」

赤松「う、嘘だよね!? 白銀さんが首謀者だなんて、そんな……!」

百田「聞かせて……くれるよな? 全部!」

白銀「……うっ……ううっ……!」グスングスン

白銀「……最初に言っておくけど、私は別に、悪意があって嘘を吐いたわけじゃ……なかったんだよ」

白銀「ただ茶柱さんのことが邪魔だっただけでさ」

茶柱「へっ?」

白銀「本当に。本当にくだらない理由なんだけど……私、自分の研究教室でその……」

白銀「口にするのも憚られるようなエ口エ口な衣装を作ってて!」ズバーーーンッ

最原「……」

最原「え? なんて?」



147:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/26(金) 20:51:27.21 ID:VyPp1Nvc0

白銀「だからぁ! 何度も言わせないでよ恥ずかしいから!」

白銀「私はっ! 自分の研究教室で、ストレスのあまり普段は絶対に作らないようなエ口エ口な衣装を作ってたんだって!」

獄原「……ごめん。ゴン太がバカだからかな。白銀さんがこの局面で何を言いたいのかまったくわからないよ……」

巌窟王「クハハハハハハ……クハハハハハハ……?」

巌窟王「……席を外しておいた方がいいか?」

アンジー「大変だー。神様が本気で気を使ってるよー」

春川「まさか……夢野を探すために学園中をさまよってた茶柱が邪魔だったから、あんな嘘を?」

春川「たったそれだけの理由で……!?」

白銀「ごめん。本当にごめんね……! 状況がどんどん悪化していくにつれて、こんなくだらない理由で嘘を吐いたって言えなくなってって……!」

星「確かにこんなくだらなさすぎる真相なら、隠したくもなるかもな……状況が悪化すればするほど」

茶柱「いやいやいや! だからって! あなたの嘘のせいで転子がどれだけピンチに陥ったか……!」

王馬「ん? いや。白銀ちゃんの嘘で? 茶柱ちゃんが不利益を? いつ被ったっけ?」

茶柱「!」

最原「確かに、こうやって素直に白銀さんが夢野さんの目撃証言を撤回した以上は……」

最原「茶柱さんを陥れていた嘘は、モノクマファイルの改竄だけだね」

茶柱「そ、それは確かに……そうですけど……」

最原(……それにしても肩透かしだな。白銀さんがもしも犯人だったとしたら)

巌窟王(何が何でも、夢野の目撃証言を撤回せずに、茶柱が犯人だという説で押し通すはずだ)

巌窟王(……それが充分に可能だった、はずなのだが……)

最原(白銀さんは犯人じゃない……のか?)

最原(それとも、他に何か手を隠してるのか)



148:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/26(金) 20:59:16.25 ID:VyPp1Nvc0

最原「……それを引き換えにしても、タイミングが良すぎるのは気になるけど」

百田「まあ、そこで白銀が嘘を吐かなければ、茶柱にアリバイができていたかもしれねーわけだしな?」

最原「白銀さん。今この場で誓える? 本当に、その嘘に悪意はなかったんだよね?」

白銀「ふふふふふ……黒歴史確定。今すぐに消えてしまいたい……」ガタガタ

キーボ「白銀さーん。最原クンが呼んでますよー」

白銀「……ハッ! あ、ああ! うん! 誓えるよ! 本当に悪意はなかったんだって!」

王馬「……ふーん」ニヤァ

巌窟王「王馬? 何を考えている?」

王馬「いや。ちょっとした余興を思いついてさ」

王馬「ねえ白銀ちゃん! その言葉、この場で巌窟王ちゃんに誓ってみせてよ!」

白銀「え」

王馬「もしも嘘だった場合は……徹底的に焼いてもらっちゃったり?」

巌窟王「……勝手に俺の炎の威を借るな、と言いたいところだが……」

巌窟王「ふむ。その余興に乗ってやろう」

巌窟王「白銀。もしも貴様が首謀者なのであれば、今この場で名乗り上げろ。そうすれば先ほどの発言は撤回しよう」

巌窟王「『命だけは』保証してやる」

白銀「……」

巌窟王「……さあ」

白銀「大丈夫だよ。世紀末級の黒歴史を刻んだ私に、怖いものなんてないもん!」

最原(変なテンションになってる……)

巌窟王「……ふん。いいだろう。議論を再開するぞ」

巌窟王「ひとまずな」

白銀「……」

白銀(トラップはまだあるしね。茶柱さんに執着する必要はないんだよ)

白銀(さあ。次に行こうか)



154:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/27(土) 15:06:25.38 ID:BBAy0CUT0

最原「……明確に夢野さんがいなくなったと僕たちが気付いたのは大体夕ご飯の時間のときだよね」

最原「巌窟王さん。食堂に夢野さんがいるのを見かけたりした?」

巌窟王「いや。見ていないな」

最原「他の人はどう?」

春川「……具体的な時間は覚えてないけど、私が大体昼前に夢野のことを校舎で見てるよ」

巌窟王「俺は……それ以前に夢野を見ている、というより話しているな」

春川「それって寄宿舎で早朝からプレゼントを配っていたときじゃなくって?」

巌窟王「……」



夢野『……のう巌窟王。もうすぐこの学園生活はきっと終わる』

夢野『ウチらはきっとお主のことを忘れん。だからお主も……』



巌窟王「……そうだな。中庭で見た。思えば、あのとき夢野は入間の研究教室で遊んでいたのかもしれん」

最原「本当にあっちこっち行ってたんだね……」

百田「マジで巌窟王のプレゼントを気に入ってたんじゃねーか」

王馬「ということは、夢野ちゃんが死んだのは巡り巡ると巌窟王ちゃんのせいかな……?」ニヤァ

アンジー「オブジェ風の家具にしてあげようか? 彫刻刀で丹念にさ」

王馬「悪かったよ……だからそんなガチトーンで言わないでよ……」



155:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/27(土) 15:17:01.73 ID:BBAy0CUT0

獄原「でも昼……昼か。それはそれで、各自にアリバイがないんじゃない?」

獄原「モノクマファイルの死亡推定時刻が当てにならないのなら、逆にアリバイを立てるのが全員難しくなるし……」

春川「思えば、あそこまで夢野の遺体の損傷が酷かったのも納得だよね」

春川「犯人はなんとしてでも、夢野が死んだ時間を誤魔化したかったんだよ」

最原「ちょっと待って! だとしたら、それを逆手に取れないかな?」

百田「ん? 逆手だと?」

最原「犯人は夢野さんの死亡推定時刻を午前二時半と限定させた」

最原「わざわざそんな時間に限定させたことには、何かの意味があったとしたら……」

最原「アリバイ工作とかさ!」

真宮寺「……あ」

白銀(……よしよし。エサに食いついたね。いい感じ)

白銀(こっちが大本命だったりして……)ニヤァ



156:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/27(土) 15:34:17.20 ID:BBAy0CUT0

真宮寺「確かに、夢野さんの死亡した時間が夜時間だと錯覚したから、茶柱さんの立場は微妙になった」

真宮寺「逆に、そのことで明確に有利になった人もいたはずだよネ」

入間「ん? 夜時間にアリバイがあったのは、えーと……」

王馬「入間ちゃん、東条ちゃん、赤松ちゃん、アンジーちゃん、最原ちゃん、百田ちゃんの六人だったよねー!」

入間「うげえ! 俺様も入ってやがる!」ガビーンッ

王馬「……というより、むしろ入間ちゃんが犯人なんじゃない? ここに来て容疑が全部彼女に向かうよ」

王馬「あの爆弾を作ったのも、入間ちゃんなんだしさ! 彼女を疑えない理由はアリバイしかなかったわけだし!」

入間「ひい!」

星「入間は確か、右腕を骨折していたんじゃなかったか? それじゃあ銃は使えないはずだぜ?」

東条「……あの夜の時点でかなり治癒はしていたけども、無理すれば使えないほどではないわ」

入間「と、東条!?」

東条「……ただ一つだけ懸念材料があるとするなら、その日の昼の間は私がほとんど付きっ切りだったことね」

東条「夢野さんがあの隠し部屋に入ったことに何らかの理由で気付けたとしても、その場に急行することは難しいと思うわ。不自然だもの」

巌窟王「東条の治療が一段落した後は、夕餉の時間まで入間は俺と一緒だった」

巌窟王「……やはりこれも、急に抜け出すのは難しいだろう」

最原「東条さんのアリバイに関しては、巌窟王さんのホームからの干渉が原因だ」

最原「不確定要素が強すぎる以上、これを担保にアリバイ工作とするのは危険すぎる。というより不可能だよ」

百田「俺と終一のアリバイに関しても同様だろうな。ついでに、女子トイレの隠し扉を活用できねーし」

最原(待てよ。じゃあ、残った容疑者は……!)



157:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/27(土) 15:44:49.48 ID:BBAy0CUT0

赤松「……アンジーさんと……私?」

アンジー「ありゃりゃー」

巌窟王「……なんだと?」

最原「……」

春川「本当にその二人しかいないの? もう一回考え直すべきじゃない?」

春川「首謀者がどっちにしても、ちょっとシャレにならないよ」

最原「……」

最原(犯人がモノクマファイルを改竄したとして、夜時間に死亡推定時刻を設定したのはブラフだったのかもしれない)

最原(その可能性もまだ消えないけど……)

最原(それならそれで、吟味しないわけにもいかない。仮に思考誘導だったとしても)

巌窟王「……本当にこの二人しかいないのか? 第一、この二人にアリバイができたのは」

アンジー「神様が気を利かせたから、だよねー」

最原「巌窟王さんが提案しなかったとしたら、犯人が自主的にアリバイを作ったのかも」

最原「……望外の幸運だったんじゃないかな」



161:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/27(土) 18:47:44.36 ID:BBAy0CUT0

百田「おいおい終一。いくらなんでもこの二人はねーだろ」

百田「アンジーは巌窟王と組んで二回も処刑をぶち壊しにしたし、赤松だってその悪趣味な処刑の被害者だぜ?」

百田「この二人が首謀者だなんて、そんなわけ……」

王馬「本当にそうかなー? 特に、赤松ちゃんに関しては『殺されかけたから』で容疑を片付けるのは簡単すぎない?」

百田「……どういう意味だよ」

王馬「だってさー。こうやって容疑をかけられている一番の理由を考えてみてよ」

赤松「死ななかったから、でしょ?」

最原「……!」

東条「結局のところ、そうやって巌窟王さんが何回も途中で割り込んだせいで、私たちはおしおきの全貌を誰一人として知らない」

東条「赤松さんが首謀者だった場合は、死んだフリをして学園生活から消えて、裏からコロシアイを操る気だったのかも」

東条「……そういう仮説も成り立つわね」

真宮寺「第一の事件の重要なファクターとなった、巌窟王さんを誘引する図書室の隠し扉に関しても説明はいくらでもつくかもネ」

真宮寺「要は、リモートで扉を操れる術と、監視技術があればいい」

真宮寺「最原くんは生徒たちが地下に向かうときに一回、ブザーが鳴ったときに急いで外に出たときに二回赤松さんから目を離している」

真宮寺「更に凶器の砲丸も彼女のものとなると……」

最原「……あまり愉快な話じゃないから、その話はここで打ち切ろう」

最原「大事なのは、今回の事件だ。どちらが犯人なのか。あるいは――」

巌窟王「どちらも犯人ではないことをどうやって証明できるか、だ」



162:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/27(土) 18:56:51.68 ID:BBAy0CUT0

最原(……待てよ。これが真犯人の思考誘導だとするのなら……どちらかの容疑者にアレがあるかもしれない)

最原(……いや! あってくれ! これで新しい証拠が出て来るかもしれない!)

最原「アンジーさん! 赤松さん! お願いがあるんだ!」

赤松「え? お願い?」

アンジー「なんでも言ってー! 未来のお婿様ー!」

最原「い、いや。結婚に関しては置いとくとして……」

最原「これで犯人のやろうとしたことを立証できるかもしれない!」

茶柱「そんな目の覚めるような一手が?」

最原「二人とも! 僕を信じて!」

最原「服を脱いでくれ!」ズバァァァァァンッ!

巌窟王&茶柱「……」ビュンッ!





ドカァァァァァァンッ!


最原だったもの「」チーン

百田「終一が死んだー!」ガビーンッ!

白銀「この人でなしー!」

アンジー「……アンジーの未来のお婿様は鬼畜だなー。そんなところも……」ヌギヌギ

巌窟王「やめろアンジー。やめ……おい。やめろ……やめるのだ……」アタフタ

赤松「凄い狼狽してる……」



164:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/27(土) 19:07:40.50 ID:BBAy0CUT0

最原「ぐ……ぐ……アンジーさんの方は……! 傷は!?」ガバリッ

ミシッ

最原「痛いよ茶柱さん。僕の顔面を踏みにじるのやめて」

茶柱「あなたはここで死ぬべきです」

最原「ああもう! いいよ! 別に確認するのが別の人でも! 巌窟王さん! アンジーさんに傷はついてない?」

巌窟王「……ヒルの噛み傷や、真宮寺に殴られた痕、その他前の事件の痕跡はモノクマと東条の治療によって消え去っているな」

巌窟王「それ以外に大した外傷はない」

アンジー「終一と神様に捧げるための綺麗なカラダだよー!」

最原「う、うん……」


ニジリニジリ


最原「痛い痛い痛い。足をにじるのやめて……顔の皮が剥けちゃう」

茶柱「……」

最原「じゃあ……次は赤松さん。流石に全部脱げとまでは言わないけどさ」

最原「袖くらいはまくってくれない?」

赤松「!」

赤松「……どうしても見せなきゃダメ?」

最原「お願い」

赤松「……」シュルッ

春川「……」

春川「赤松。なにその右手の包帯。ゆるゆるだけど」

赤松「やっぱりコレも取らないとダメ、だよね」シュルリ

春川「……!」

真宮寺「ッ!」

最原「……あるんだね。傷跡が」



165:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/27(土) 19:16:09.00 ID:BBAy0CUT0

最原「……とても痛かった」スクッ

百田「あ。やっと立ち上がりやがった」

最原「……」

最原(僕の予想通り。赤松さんの右腕には引っかかれたような爪痕が残されていた)

最原(これが僕の求めた新しい証拠――)

春川「……最原。最悪だよ。なんでこんなことしちゃったの?」

最原「……えっ」

春川「これ、夢野が引っかいた傷だよね?」

最原「い、いや。それはこれから調べてみないとわからないけど」

最原(……なんだ? 春川さん、今にも泣きそうな顔してるけど……)

アンジー「……?」

巌窟王「アンジー。後であの傷に関して確認したいことがあるが、今は黙っておけ」

アンジー「ん? でも神様、あれ……」

巌窟王「アンジー」

アンジー「……わかった。黙ってるよー」

真宮寺「図書室から見つかった夢野さんの指は、なにかに引っかかったように爪が割れていた」

真宮寺「それが果たして死後のものか生前のものだったのかは、火事によって損傷がひどくなってわからなかったけど」

真宮寺「……実際に彼女は、赤松さんを引っかいてたんだろうネ」

最原「え?」

最原(……いや。そんなはずはない。ないはず、なのに)

春川「赤松。どういうことか説明して。相当強い力で引っかかれていることは別として……」







春川「この傷、どう見ても付けられてから二十四時間以上が経過してるよね?」

最原「……は?」



167:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/27(土) 19:23:10.41 ID:BBAy0CUT0

最原「……待って! そんなはずは……!」

最原「あっ!」

最原(……確かに、明らかに最近ついたものじゃない……ちょっとだけ、だけど治癒してる!?)

最原「そんなバカな……!?」

百田「ハルマキ! お前、さっき言ってたよな! 無抵抗で射殺されたはずだってよ!」

春川「語弊があったのなら謝るよ! 正確には『銃弾が当たるまでは絶対に抵抗してない』ってこと!」

春川「銃弾が当たった後、断末魔に犯人になにかをしていたとしても不思議じゃない!」

百田「……!?」

最原「な、んで……!?」ガタガタ

百田「終一?」

巌窟王「……アンジー。昨日は一緒にいたはずだな? 赤松にあんな傷があった記憶はあるか?」

アンジー「……なかった。なかったはず、なんだけど……」

アンジー「なんなら、一緒にお風呂入ったんだけどー。そのときにあんな傷があったら沁みて仕方ないんだろうけどさー」

アンジー「でも実際にこうやって目の前にあるんだよねー。なんでだろ?」

巌窟王「……」

アンジー「アンジーの記憶違い?」

巌窟王「最原。お前はこう思っていたのではないか?」

巌窟王「誰かがこの二人に容疑を向けようとしている。それなら、他に何かあるはずだ」

巌窟王「それを偽証だと証明できれば、翻って犯人を追い詰めることができる、と」

最原「……!」

巌窟王「……他に手を考えろ。さもなくば……この裁判は最悪の結果に終わる」



173:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/27(土) 20:44:35.74 ID:BBAy0CUT0

最原「赤松さん! その傷に心当たりは?」

赤松「ないよ。気付いたのは新世界プログラムから出た直後、なんだけど……」

赤松「……ごめん。本当に何も覚えてないんだよ。いつついたのか、まるで心当たりがなくって」

王馬「へー。そんな嘘吐いちゃうんだ。赤松ちゃん」

赤松「ッ!」

最原「ま、待ってよ! これは多分、他の誰かが赤松さんに仕掛けた罠なんだって!」

王馬「ん? 他の誰かって?」

最原「それは……!」

最原(傷を見てみればわかるはずだった……のだけど!)

星「……最原。他にまともな反論はないのか? 少しは落ち着け」

最原「……そうだ! 誰かが新世界プログラムに入る前に、赤松さんの体に傷を付けたんだよ!」

春川「一番信じたい仮説だけど、見た限りの治癒加減ではそれもないよ……!」

最原「ま、待って。そもそも新世界プログラムと現実世界の時間の流れが同じとは限らないはずだ!」

最原「僕たちが気付いてないだけで、一日経っていたり……とか……!」

入間「……なあ。本気で言ってるわけじゃねーだろ?」

最原「……巌窟王さん……!」チラッ

巌窟王「最原。その可能性はない。ハエが散布されたのは『二十四時間以内』なのだ」

最原「え……」

巌窟王「獄原の知見だ。ハエの卵の状態からほぼ間違いないらしい」

獄原「ごめん。最原くん……巌窟王さんがスパコン室のドアを破壊した以上、夢野さんへの死体への工作も全部、その前に行われていたはずだ」

獄原「だから『ゴン太たちが知らない内に二十四時間、あの世界に閉じ込められていた』という仮説は絶対にないんだよ……!」

最原「そんな! そんなバカな……!?」



174:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/27(土) 20:51:06.81 ID:BBAy0CUT0

最原(あ、あれ……? おかしい。何かが狂ってる。赤松さんが犯人なんて、そんなわけが……!)

最原「……赤松さん」

赤松「最原くん……ごめん。反論したい。当然、私は犯人なんかじゃないんだからさ」

赤松「でも何一つとして身に覚えがないんだよ。どうやって反論すればいいのか、頭が真っ白で……!」

赤松「最原くん……助けて……!」

最原「赤松さん……」

最原(僕の……せいか? 僕が真実を探そうと足掻いたから?)

最原(だからこんな展開になってるのか……!?)

最原「あ、あう……ああ……!」ガタガタ

最原「うわあああああああああああああああッ!」







百田「まだだ。まだ終わってねぇ」

最原「……百田、くん?」

百田「言ったはずだぜ終一……お前の望み通りの結果にならなかったら……そんときゃ俺がどうにかするってよ!」ズガァァァンッ



183:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/28(日) 14:48:57.61 ID:NXe4qIS90

春川「百田。何か手があるの?」

百田「あるぜ! だから! ちょっと俺に時間をよこしてくれ!」

春川「……」

春川(絶対ないなコレ)

巌窟王「ほう……時間があるとどうなる?」

百田「知らねーのか? 赤松の無罪を証明できる」ニヤッ

巌窟王「ふむ……信じてみるのも一興か」

巌窟王「ただし。もしもその言葉が単なる戯れの類だったならば、今のうちに訂正しておけ」

巌窟王「……もう騙されるのには飽き飽きだ」

百田「おう! 期待しておけよ!」

春川「百田……」アタフタ

百田「……ハルマキ……」

百田(助けてくれ、というジェスチャー)シュッシュッ

春川(やっぱり何も考えてなかった!)ガビーンッ

春川(……でもこんな状況だけど、アイツが素直に私に頼ってくれるっていうのは、なんか……悪くないな)フッ

アンジー「魔姫ー。どしたのー。凄い上機嫌そうだけど」

春川「私が? 気のせいだよ」



184:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/28(日) 14:59:17.08 ID:NXe4qIS90

春川「……もしもコレが犯人の偽装工作だったとするなら、暴くことはできると思う」

百田「ああ。犯人に騙されている俺たちは、逆に犯人をあと一歩のところまで追い詰めている!」

百田「詰将棋だぜ。ここから先は、一手上回った方が勝利する!」

赤松「アンジーさん。一緒にお風呂入ったとき、こんな傷はなかったよね?」

アンジー「なかった、と思うけど……あのときのアンジーは結構精神的に参ってたから、あまり記憶に自信が持てなくってー……」

アンジー「……ごめんねー」

巌窟王「アンジーの証言にはあまり期待はできない、か?」

王馬「いや? 万が一、赤松ちゃんが犯人じゃない場合は、翻ってアンジーちゃんが一番怪しいからね?」

巌窟王「後で覚えていろ」

王馬「あれ!? 情状酌量の余地すらない感じだ!」ガビーンッ

星「だが状況はかなり最悪だぜ。時間の方はゴン太の虫の知見の方で間違いはない」

星「本来の死亡推定時刻の方も、赤松の傷の治癒具合と一致しているとなると……」

最原(赤松さんの容疑を晴らすために必要な、僕たちの気付いていない盲点。それは一体、なんだ?)

王馬「やっぱり必要ないんじゃないかなー。赤松ちゃんが犯人だってー!」

赤松「違うよ! 本当に覚えがないんだって! 信じてよ!」

百田「むむむむむ……!」



185:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/28(日) 15:09:13.80 ID:NXe4qIS90

白銀(……ふふっ。結構悩んでくれてるなぁ。でもまあ、仕方ないか。自信作だし)

白銀(謎解きが高度化してくると、ちょっとした小細工でも効果的なんだよね)

百田「むぎぎぎぎぎぎぎぎ……」

百田「ハッ! そういうことか!」ピコーンッ

白銀「どうしたの百田くん! 何か閃いた?」

百田「アンジーが昨日、寝ている赤松の腕に引っかき傷を付けたんじゃねーか!」

百田「そう! 実はアンジーは寝相が悪かったんだよ!」ズガァァァァンッ

最原「……ふっ……」

春川(凄いアンニュイな笑み浮かべて俯いちゃった……!)

アンジー「アンジーの寝相はそんな悪くないよー! 神様と終一に問い合わせてー!」

巌窟王「そうだな。確かにアンジーの寝相は……む? 待て。何故最原に?」

最原「!?」ビクッ

巌窟王「……」

巌窟王「……」ボォゥッ

最原「無言で炎灯すの本当やめてほしいなぁ!」ガビーンッ

春川(やっぱり百田には荷が重いかな……どうにか私も考えないと……)



187:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/28(日) 18:30:10.08 ID:NXe4qIS90

巌窟王「……!」ギャーギャー!

最原「……!」ギャーギャー

春川「赤松の容疑を固めているものは……」

百田「?」

春川「偽装されたアリバイ。本当の死亡推定時刻。新世界プログラムから出て来たときの時間」

百田(終一と巌窟王、そしてその他それを庇ったり煽ったりしている生徒の喧噪の中、ハルマキの声だけがすり抜けて聞こえてくる)

百田(本当によく通る声だった。大きな声ではないのに惚れ惚れする)

春川「ハエの散布されたタイミング。夢野の失われた指。そして――傷」

春川「この中のどれかが偽装されていることを証明できれば赤松の容疑を晴らせる上に、新しい証拠すら出て来るかも」

百田「……ハルマキ。もう一回並べ立ててくれ。何か……何か思いつきそうなんだ!」

春川「偽装されたアリバイ。本当の死亡推定時刻。新世界プログラムから出て来たときの時間」

春川「ハエの散布されたタイミング。夢野の失われた指。そして傷」

百田「……!」

百田「それに賭けるしかねぇ!」

春川「え?」

百田「偽装されているものは、赤松の傷そのものだ!」



188:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/28(日) 18:35:50.59 ID:NXe4qIS90

最原「アンテナの先端が焦げた……アンテナの先端が焦げた……!」ガタガタ

天海「大丈夫っすよ最原くん! もう消し止められてるんで!」アタフタ

王馬「あっはっはっはっは! 座興としては満点だったよ最原ちゃん!」

王馬「さて。それじゃあ投票タイムと行こうか」ニヤァ

最原「!」

最原(……間に合わなかった、か!?)

百田「いや。まだだ。まだ真犯人は決まってねぇ!」

巌窟王「来たか。百田。さあ、お前の理論を見せてみろ」

百田「いいや。俺が見せるのは理論じゃねぇ! 新しい証拠そのものだ!」

百田「それは『見えるけど見えないもの』。俺たちの目を真正面から欺くイミテーション!」

百田「ハルマキ! 立ち会え! テメェのお陰で浮上した証拠だ!」

春川「……本当にあると思う?」

百田「俺を信じろ!」



189:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/28(日) 18:42:17.94 ID:NXe4qIS90

百田「赤松。ちょっと乱暴するぜ」スタスタ

赤松「え?」

春川「ほら。ハンカチ貸してあげる」

赤松「え。ハンカチ?」

春川「噛んでて。どっちにしろ凄く痛いと思うから」

赤松「……え? 本当に何する気? ちょ、待っ――」

ガシッ

赤松(腕を掴まれた!)

百田「赤松が犯人なわけがねぇ。なら、真相はこれしかねぇだろ!」

百田「不可能なものを除外して、最後に残った可能はどんな場合でも真実だ!」

ガリィッ!

赤松「痛だーーーーッ!?」ガビーンッ

最原「も、百田くん? なんで傷を更に引っかいてるの?」

百田「……!」

春川「どう?」

百田「手ごたえありだぜ!」



バリィィィィッ!


最原「……」

最原「は?」

最原(裁判場に鮮血が舞う。それは百田くんが、回復しかけていた傷を再度抉ったから……?)

最原(違う。これは……百田くんが持っている皮のようなものは!)

最原「シール……?」

春川「違うね。この場合は『特殊メイク』……赤松の『本当の傷の上に張り付けられていたイミテーション』だよ」



191:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/28(日) 18:50:25.37 ID:NXe4qIS90

百田「傷は二種類あった。まず一つ目は赤松の肌に直接刻まれていた『強い力での引っかき傷』」

百田「そしてもう一つは『俺たちの目を騙すため、あるいは赤松自身を騙す特殊メイクシール』だ」

入間「おい! ちょっとそれを貸してみろ!」

百田「おう」ペイッ

入間「……な、なんだこりゃ……こんなもんに俺様たちは騙されてたのか? こんな安っぽい罠に!?」

春川「文字通りの薄っぺらな嘘だね。でも結構効果的だったと思うよ」

春川「まず見た目が滅茶苦茶リアルだったのが一つ目の理由」

春川「更に、見た目上は治りかけの傷なわけだから痛痒感はあって当たり前。強く掻きむしることもできない。ていうかしたくないよね」

春川「本来の出血の方はシール自身が絆創膏になり止血され、これもバレることはない」

天海「張られていたっていう違和感は……」

天海「いや。傷っすからね。違和感があっても、これまた当たり前っす……!」

最原「で、でも。なんで百田くんは特殊メイクに気付けたの?」

百田「気付いてねーよ」ケロリ

最原「……はあ?」

百田「でも赤松が犯人じゃねーって信じてた。なら傷が偽物で当たり前だろ」

最原「――」

巌窟王「……クハハ。バカめ」ニヤア

百田「バカって言うんじゃねーよ!」



194:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/28(日) 19:01:35.04 ID:NXe4qIS90

赤松「……あ……ありがとう、百田くん」

百田「礼なら終一に言えって。俺は約束を果たしただけだ」

最原「百田くん……ずっと疑問だったんだ。なんでキミは、そんなに僕の味方をしてくれるの?」

百田「んだよ。今更水臭いこと言いやがって」

百田「東条の学級裁判のときによ、俺が王馬に疑われたことあったろ。最後に巌窟王を見たのが俺だからってよ」

百田「そんときお前は俺のことを信じてくれた。それだけじゃねえ。お前はいつだって、この学園生活で頑張ってた」

百田「ならよ。俺もお前と同じくらい格好よくならなくっちゃあな! そうだろ?」

最原「……」

アンジー「終一ー。アンジーに神様がついてるみたいにさー、終一にも解斗がついてたんだねー」

最原「……ありがとう。百田くん。僕のことを信じてくれて」

最原「これでやれる。僕たちは真相に辿り着ける!」

百田「犯人がわかったんだな?」

最原「うん。ここまで背中を押されたんだ」

最原「……僕はもう、絶対にひるんだりしない!」ズガァァァァンッ!



202:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/29(月) 19:43:11.47 ID:S/LE61ip0

最原「白銀さん」

白銀「……」

最原「犯人は、キミだよね」

王馬「あれ。また容疑が彼女に向くんだね?」

王馬「今度こそ、間違いないのかなぁ?」

最原「夢野さんの目撃証言を撤回してからも、ずっと僕は彼女のことを疑ってたよ」

最原「だから『赤松さんに対して容疑を向ける思考誘導』の存在にはアタリがついていた」

最原「……まさか、こんなトリックが刻まれていたとは予想外だったけど。今度こそ終わりだよ」

獄原「なんで? どうして白銀さんが怪しいの?」

最原「まず技術的な問題。あのシールが『特殊メイク』だから」

最原「……ねえ。キミならあのシールを制作できたんじゃないかな? いや、どころか他の人に、あそこまで効果的に使用できるかどうかも怪しい」

春川「ただ張り付ければいいってものじゃないからね。肌とシールの間をシームレスに見せるためには、それなりのファンデーションが必要だよ」

春川「できない、とは言わせないよ。超高校級のコスプレイヤー」

白銀「へえ。なるほどなー。いい推理だと思うよ。聞けば聞くだけ感心しちゃう」

最原「……?」

最原(……さっきも思ったけど、なんだこの余裕。追い詰めているはず、だよな?)

最原(いや。というか……むしろ『普段よりも冷静』なようにも見える)

最原(普段はもうちょっと自信なさげで挙動不審な感じだったと思うんだけど……)

最原「白銀さ――」





白銀「いやよく聞くとクッッッソムカつく!」反論!



バリバリバリッ ガシャアアアアアンッ!



203:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/29(月) 19:46:09.85 ID:S/LE61ip0

白銀「最原くん。それはおかしいよ」

最原「……おかしい? 一体どこが?」

白銀「あははっ! 聞きたい? 聞きたい? なら教えてあげよっか!」ウズウズ

白銀「私に、赤松さんの傷をメイクできたわけがないってさ!」

最原(……なんだ、この態度。まさか、今の今まで猫を被ってたっていうのか?)

最原(まるで愉快犯だ。この危機的状況すら楽しんで……!)

最原(余計な分析は後にしよう。とにかく彼女の理屈を切り伏せる!)



204:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/29(月) 19:52:23.49 ID:S/LE61ip0

反論ショーダウン真打!

白銀「本当に私にしかそれが使えなかったのかなー?」

白銀「もしかしたら超高校級の美術部のアンジーさんだって作れたかもよ?」

白銀「技術的な問題云々ってだけで私を疑われるのは心外だし」

白銀「『私にはできる』ってだけでは証拠としては全然足りないよ」

白銀「だから早めに撤回した方がいいと思うな!」キラキラキラ



議論発展!


最原「いや。技術的な問題だけじゃない」

最原「言ったはずだよ。見当が付いてたってさ」

白銀「茶柱さんのことを貶めるような嘘を吐いたから?」

白銀「それはさっきも言ったように偶然なんだってば」

白銀「第一、張られている最中は傷本体の痛みで誤魔化せるからと言って」

白銀「『特殊メイクを組み立てている途中では絶対にバレる』よね?」



最原「その言葉、斬らせてもらう!」ズバァァァァンッ!


BREAK!



205:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/29(月) 20:03:42.92 ID:S/LE61ip0

最原「いや。気付かないよ。というより、気付かない期間があって、それを最大限活用できる人間がキミしかいないんだよ」

白銀「……!」

最原「巌窟王さん。なんでスパコン室のドアを焼いたんだっけ」

巌窟王「新世界プログラムの中に入っている間、無防備状態の体を晒す危険性を失くすためだろう」

最原「結果的に、その懸念は現実になったんだ。議論をここまで進めて、新世界プログラムの入退室のログを見た僕は確信したよ」

最原「白銀さん。キミは新世界プログラムに『一番最後に』入ってるよね?」

白銀「……だから何? それでも時間は足りないよね?」

最原「だからわざわざ『シール』っていう形にしたんでしょう?」

最原「あらかじめクラフトしておいた道具があれば、後は赤松さんの体に傷を付け、用意しておいたそれを張り付ければいい」

茶柱「事前準備で時間を短縮させたっていうんですか……?」

最原「……茶柱さんを夜時間にうろつかせない理由が、アリバイを作らせないためだけだったのかな」

最原「シールを作るとき、間違ってもその瞬間を見られないように。アリバイの件も含めて一石二鳥になると踏んだからわざわざ動いたんじゃない?」

入間「な、なんだよ! エ口エ口な衣装ってのは嘘かよ! ちょっと見てみたかったのに!」

王馬「入間ちゃーん。それ以上生き恥を晒すのはやめた方がいいよー」

入間「ふぎゃあ!」ガーン!

最原「……巌窟王さんが入間さんの計画を壊したのは翌日だった上に偶然だったから……」

最原「わざわざ『入間さんが失敗したパターン』も想定して作ってたってことになるけど」

最原(……なんでそこまでして勝負を仕掛けにきたんだ?)

白銀「……」



218:茹蛸と化した人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/30(火) 18:36:09.55 ID:8cukNWw40

白銀「……それで? 他に証拠は? ないのならやっぱり机上の空論だけど」

巌窟王「まったくだ。疑わしきは白。まだまったく足りないぞ」

巌窟王「……俺の業炎の灰と化した後で、やっぱり間違いでしたなど。小気味良いブラックジョークだと思うだろう?」

アンジー「ねえ。つむぎ。お願いだから反論してくれないかな」

アンジー「変に斜に構えないでよー……」

白銀「ん? んー……」

白銀「本当に赤松さんの傷が偽装工作だと思う?」

最原「どういう意味?」

白銀「今回、犯人はひたすら捜査をかく乱させてるじゃない?」

白銀「だったらブラフにブラフを重ねて赤松さんが自分で自分の腕に特殊メイクをしかけた可能性も……」

百田「いや。本当の傷の方は本当に、つい最近ついたものだ。丸一日も経ってねぇ」

春川「百田の乱暴のせいで、傷口が無駄に増えたりはしてるけど。うん。私も立ち会ってたから証言するよ。間違いない」

赤松「二人とも……!」

白銀「だからって私が、新世界プログラムに入る直前にやったとは言えないよね?」

白銀「スパコン室に入る以前にも機会は……」

最原「あったと思う? 茶柱さん」

白銀「!」

茶柱「そうですよ。赤松さんはずっと転子たちと夢野さんを捜索してたんです!」

白銀「じゃあそれよりも以前だったんじゃない?」

キーボ「……それより以前って、アンジーさんとのお泊り会ですけど……」

アンジー「いやいや。流石に特殊メイクなんか同じ部屋でされたらアンジーも気づくってー!」

白銀「寝ている最中にしたのかもよ!?」

真宮寺「あのさ。いかな特殊メイクと言えど。いや、特殊メイクだからこそ、そんな長時間は維持できないヨ」

真宮寺「夢野さん捜索時に特殊メイクをしたわけではないのなら、それ以前にやっても意味はない」

真宮寺「テープの粘着は水や熱、その他肌からの分泌物で簡単に剥げちゃうからネ」

星「詳しいな」

真宮寺「ククク」



219:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/30(火) 18:45:55.01 ID:8cukNWw40

最原「短時間で決着を付けなければならない学級裁判だからこそのトリックだよね」

最原「百田くんがいなかったら自然にバレる前に投票タイムだったかもしれない」

星「お手柄だな。まあ、やり方は間違いなく乱暴そのものだったが」

百田「ハッ……まさかテメェに褒められる日が来るなんてよ」

獄原「それじゃあ、やっぱり白銀さんが犯人……?」

白銀「……」

白銀「なんで赤松さんに容疑を向けようとしたんだろうね?」

最原「……なんだって?」

白銀「ねえ。なんで赤松さんに、犯人は容疑を向けようとしたんだろう?」

白銀「最原くん。どうしてだと思う?」ニコニコ

最原「さっきからどうしたの、白銀さん。話を逸らそうとしてるの?」

白銀「ふふふ……ふふふふふ……」

巌窟王「……最原。答えてやれ。なにやら様子がおかしい。先ほどから一切の裏が見えなくなった」

最原(……赤松さんが狙われた理由か。まったく心当たりがないわけじゃないけど)

最原(凄く不気味だ。一体何を考えているんだ?)

最原(胸騒ぎがする)



221:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/30(火) 19:43:53.46 ID:8cukNWw40

最原「ここまでたどり着くために、一つすっ飛ばした謎があった」

最原「その謎も、二人の容疑者を示しているんだよ」

アンジー「あれれー? またアンジーが疑われちゃう感じかなー」

最原「いや。こっちの場合の容疑者は二人。白銀さんと赤松さんだ」

赤松「また私?」

最原「犯人は最終的に、赤松さんになんとしてでも容疑を向けたかったんだろうね」

最原「だから、あえてこの証拠が残されてたんだ」

最原「ファイル作成デバイス……それに内蔵されている時計だよ」

百田「ああ。なんかわかんねーけど時間が狂いまくってたな?」

王馬「キー坊の体内時計よりはマシだけどね」

キーボ「ボクは毎日早寝早起きです!」

キーボ「おっと。王馬クンに気を取られている場合ではありませんでした」

キーボ「……確かに時計が狂っていますが……これが?」

最原「うん。これ単体ではあんまり意味のない証拠なんだけど……」

最原「修繕直後の時計の状況と、中身のファイル情報と照らし合わせてみれば意味がわかるはずだよ」

入間「修繕直後の時計の状況っつったら、あー……」



222:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/30(火) 19:54:52.92 ID:8cukNWw40

春川「修繕直後では午後八時前後の時間を指し示してたはずだよ。忘却補正のある巌窟王に聞いてみれば?」

巌窟王「春川の証言は真だ。間違いない」

最原「じゃあ、犯人がこのファイル作成デバイスで具体的に何をしたのかを考えてみよう」

最原「犯人は多分、このファイル作成デバイスを使うこと、その後破壊することをモノクマに宣言したんだ」

最原「当然、モノクマは渋っただろうけど……モノクマルールのせいで強く制限はできない」

最原「その翌日に行われるであろう入間さんの事件のモノクマファイルも作れなくなるし」

最原「もしかしたらその腹癒せだったのかもしれない。モノクマは夢野さんのファイルを作るついでに、ある重要な証拠をここに残したんだ」

キーボ「それは?」

最原「『欠番となった第四の事件』の記録だよ」

星「……それは入間が巌窟王の介入によって、計画を破綻させたから無くなった……」

星「というわけじゃねーのか。その口ぶりだと」

最原「『入間さんの計画のことがわかっていた』上で『その前にモノクマファイルが破壊されることが決定した』からだと思う」

白銀「……」チラッ

モノクマ「……うぷぷ」

白銀「……チッ……」

アンジー「え。なんで舌打ちしたのー?」



223:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/30(火) 20:06:22.32 ID:8cukNWw40

最原「入間さんの事件が決行される前に、このパソコンは壊されていたんだ」

最原「そして夢野さんのファイルに関しては、当然ながら『夢野さんが死んだ後』じゃないと書けない」

最原「じゃあ、具体的に、どのタイミングでこのパソコンは壊されたのか」

最原「……午後八時だったんじゃないかな?」

天海「……いやまあ、納得はできるんすけど……」

天海「パソコンを壊されたときに時計が止まって、入間さんが修繕したと同時に時計も動き出した、と考えれば、確かに」

天海「でもそれがなんだっていうんすか。特に事件に関係は……」

春川「関係はあったと思うよ」

天海「え?」

春川「……また巌窟王に頼ることになるかもね」

巌窟王「……」



234:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/31(水) 20:52:10.37 ID:moi+DazX0

最原「巌窟王さん。昨日の……じゃなくて、一昨日の午後八時に何してたか教えてくれるかな?」

巌窟王「……入間とアンジーの悪夢への対処について打ち合わせをしていた」

最原「そのとき、食堂にいなかった人のことを教えてほしいんだ。何人で、誰だった?」

巌窟王「白銀。赤松。夢野の三人……いや、正確に言うとアンジーもだが」

最原「ん? あ……あー、確かに。正確に言うなら、ね……」

巌窟王「……最原。お前も覚えていたな? わざわざ俺に確認する必要があったか?」

最原「いや。巌窟王さんのスキル以上に信用できる『記憶』もないし」

最原「裏を取るって用途においては便利だしさ」

巌窟王「英霊を証拠品扱いか。業突く張りめ」フッ

アンジー「あ、これ褒めてるよー。良かったね終一ー!」

最原(わ、わかりにくい……アンジーさんが言ってるのなら間違いないんだろうけど……!)



235:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/01/31(水) 21:08:11.44 ID:moi+DazX0

天海「そうか……赤松さんは一昨日の食堂にいなかった!」

天海「少なくとも午後八時前後には!」

最原「うん。だから選ばれたんだろうね。自分と同じ時間帯にアリバイのない赤松さんをターゲティングした理由がコレだよ」

最原「……パソコンの時計だけはどうしようもなかったってことかな」

春川「入間。どう?」

入間「んー……まあ俺様か巌窟王ならパソコンの時計を無理やり弄ることは可能だろうが」

入間「逆に言うと普通の手段では操作できねーな」

獄原「パソコンに内蔵されてる時計だよね? そんな難しい操作が必要だとは思えないんだけど」

入間「知らねーよ。なんか知らねーけど操作できねーんだ」

モノクマ「ああ。首謀者権限のロックのせいだね、それ」

モノクマ「あ、ちなみにロックをする前に時計を弄ったとしても……」

モノクマ「ロックをかけた瞬間にマザーモノクマとデバイスが同期して時計の時間のズレを直しちゃうんだ」

真宮寺「ロックされた状態でデバイスの時計を弄ろうとするなら技術、もしくはイリーガルな手段が必要ってことだネ」

白銀「ふふっ。いや、この文脈だと『犯人にとって時計の狂いは不本意なもの』だったんでしょ?」

最原「……不本意なら不本意なりに、赤松さんに罪を着せる偽装工作として転用したんだろうけど」

白銀「転用するしかなかった……とも言えるね!」ニコニコ

百田「白銀! お前本当にどうした! なんでそんなヘラヘラしてられんだよ!」

白銀「……」ニコニコ



240:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/01(木) 19:48:58.76 ID:TxtZc+670

最原「……巌窟王さんがアンジーさんとのお泊り会を提案したのは正真正銘、犯人にとっての幸運だったはずだよ」

最原「そうでなければ、他の手段で犯人が赤松さんにアリバイを用意しただろうね」

最原(いや。もしかしたらモノクマが何かした可能性もあるな……首謀者ならちょっとくらい強引な手段でも使えたはずだ)

赤松「その必要はなかったと思う」

最原「え」

赤松「入間さんのところに電子ピアノ持ち込んで、お詫びにオールで何か弾こうと思ってた矢先での提案だったからさ」

赤松「どっちにしても私にはアリバイができてたと思うんだよね」

入間「お願い。本当、必要とあらば土下座もするから、もう俺様に善意で何かしようとしないで。今度こそ死にそう」ガタガタ

赤松「!?」ガビーンッ!

最原「あ、ああ……なるほど。じゃあそれも監視で知ってたから計算に込み込みだったのか……」

キーボ「そういえばモノクマから貰ってましたね……電子ピアノ」



241:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/01(木) 20:04:03.70 ID:TxtZc+670

アンジー「そうは言ってもさー。『そのときは犯人がどうにかしたのかも』って推理したところで、実際にその手間は省けちゃったわけだからー」

アンジー「この仮説には何の意味もないよねー?」

王馬「巌窟王ちゃんが余計なことをしなければ、証拠が増えてたかもしれないね。犯人の手数が多ければ、それだけ残るのが証拠でしょ?」

王馬「いや本当、場を悪化させる天才だよねー! 前世は嫌気性生物かなにかだったの?」ケラケラ

アンジー「……何リットルまでなら抜いても大丈夫?」ギロリ

王馬「何が!? あ、血か! 血のこと言ってんの!?」ガビーンッ

獄原「王馬くん。そろそろ二人のことをイジるの危険だからやめようよ。残った一人に復讐されちゃいそうだしさ……」

王馬「だが断る」

百田「救いようがねェ」

白銀「まだ足りないな」

最原「……え?」

白銀「まだ全っ然足りないんだよ! 私が犯人だと断じる証拠がさ!」

白銀「伏線回収ご苦労様! じゃあ、話を本筋に戻そうか!」

白銀「私は犯人なんかじゃないんだよ! この主張、どうやって切り崩すの?」

白銀「ねえ! どうやって切り崩してくれるの?」ワクワク

巌窟王「……」

巌窟王「もう決まりだ。少なくとも俺の中ではな」

巌窟王「……白銀。何を企んでいようと無駄だぞ。その肥大化しきったエゴごと地獄の底へ叩き込んでやる」

白銀「……怖いなぁ」

最原「さっきからどうしたんだよ、白銀さん! 真面目に学級裁判をする気があるの!?」

最原「お願いだから、まともに反論してよ。僕はそれを待ってるのに……!」



242:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/01(木) 20:09:01.01 ID:TxtZc+670

白銀「……勝ちたいから?」

最原「えっ」

白銀「ねえ。最原くん。キミもしかしてさあ、この学園生活のこと嫌いじゃないでしょ」

白銀「いつ死ぬかわからない疑心暗鬼の学園。定期的に開催されるスリリングなデスゲーム!」

白銀「ねえ! 楽しかったんじゃないの? 赤松さんを、東条さんを、真宮寺くんを追い詰めたとき、ドキドキしなかった?」

白銀「……入間さんが事件を起こさなかったとき、内心すごーくガッカリしてたんじゃない?」

最原「な、何言ってるんだよ。僕がこの学園生活を楽しんでるわけ……!」

春川「……?」

春川(楽しむ?)

春川(なんだろう。凄く頭に引っかかる。これは、既視感……?)

春川(私は明確になにかを見落としている?)



243:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/01(木) 20:21:07.47 ID:TxtZc+670

最原「……楽しんでる、わけが……!」

アンジー「終一?」

最原「……」

最原(否定……できるのか? 白銀さんの言うことを)

最原(……できないかもしれない。興味がそのまま『人が全力を出せる範囲』を限定することは間違いない)

最原(僕は心のどこかでは、推理で人を貶めることを楽しんでたのか……?)

百田「そんなわけねーだろ」

最原「……百田くん?」

百田「テメェみたいな愉快犯と一緒にすんじゃねーよ、白銀」

百田「少なくとも、終一は仲間を殺したりなんかしねぇ! 裏切ったりもしねぇぞ!」

最原「!」

巌窟王「……綺麗ごともそこまで行くと、ただただ滑稽だな」

巌窟王「クハハハハ! 最原よ! 背徳を楽しむことに何の不思議がある?」

巌窟王「それは誰の心にも間違いなく存在する心の闇だ。ごくごくありふれたものでしかない」

巌窟王「白銀の弁の間違いはただ一つ。『それが存在すること』ではなく『それが恥ずべきこと』だと断じていることに他ならない!」

百田「ちげぇよ! 終一の教育に悪ィこと言ってんじゃねぇ!」

巌窟王「無菌室で育てることの方が余程不健全であろうさ!」

茶柱「この二人はもう……一周回って相性抜群ですね……」

春川「二人とも。そこまで。話が脱線してるから」

巌窟王&百田「……」バチバチバチッ

アンジー「あらら二次会はガン飛ばし合戦になっちゃったみたいだよー」

真宮寺「もう放っておこうヨ。静かになっただけマシだから」



256:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/02(金) 19:34:38.68 ID:e/MUi5lG0

最原「……ものは考えよう、かな」

最原「白銀さん。もうすべての謎は解けてるんだ。赤松さんの特殊メイクが発覚した直後にね」

最原「どうしてキミは夢野さんを殺したりしたの?」

白銀「えっ? 私が? 夢野さんを?」

白銀「……最原くん! 私が仲間を殺したりするわけないじゃん! 悲しいこと言わないでほしいなぁ?」ニコニコ

王馬「……」

王馬「なーんか嘘臭いなぁ……ねえ最原ちゃん。本当に全部の謎が解けてるの?」

王馬「前の真宮寺ちゃんの事件みたく『事件の真相以上に大切な謎』がある可能性は?」

最原(ある。この裁判中で決着を付けることができてない宙ぶらりんのファクターがいくつか)

最原(……確かに不気味すぎて手を出すのが憚られるってのはあるんだよな……)

最原「……それでも決着は付けよう。今までと同じだ。真相を暴かない限り、対処法なんて思いつかない!」

白銀「いいよ。じゃあ、そろそろ終わりにさせようか」

白銀「……最終的に生き残るのは誰になるか楽しみだよッ!」ギラリ



259:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/02(金) 19:44:39.40 ID:e/MUi5lG0

最原「ずっと疑問に思っていたんだ。図書室の時限発火装置のことについてさ」

最原「だって、アレって夢野さんの指を燃やすためだけに作ったにしては随分と大がかりすぎだよね」

最原「入間さんのタイマーを使って、彼女の動揺と疑惑の擦り付けを誘う目的もあったのかもしれないけど……」

最原「アレのせいで巌窟王さんが隠し扉を見つけることになったわけだし、やっぱりデメリットの方が大きすぎる」

最原「……そもそも、首謀者がコロシアイのゲームに則って勝負を仕掛ける理由が、どうしても見つからない」

天海「俺たちを皆殺しにするのなら、最初からエグイサルを使って全員をミンチに変えればいい話っすもんね」

最原「ただこの違和感を払拭する方法はなくもないんだ。つまり『犯行を隠すための行動』ではなく、犯人に『そのほかの行動原理』があったとしたら」

最原「……白銀さん。巌窟王さんが赤松さんの裁判のときに言った言葉を引用するよ」

最原「殺人の一番厄介な性質は、自慢したくなることだ」

最原「原因はまだ見当も付かないけど……これまでの議論で、今のキミの態度を見て、フェアすぎる謎を見て思ったよ」

最原「……モノクマと同じだ。僕たちに『謎解きのゲーム』をさせたいんだろう?」

春川「!」

春川「……それだ。既視感の正体がやっとわかった」

春川「入間!」

入間「えっ。ふえっ? な、なに?」ビクビク

春川「アンタの作ったゲームと同じだよ! 謎が解けるって点において、この事件はあまりにもフェアすぎる!」

王馬「……」ニヤァ



263:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/02(金) 19:53:40.15 ID:e/MUi5lG0

最原「……もっとハッキリ言おうか。今回の事件、キミは徹底的に凝ったものがあったよね」

最原「トリック本体ではなく、そう……こう言おう。演出に力を入れ過ぎてた」

最原「損壊の酷すぎる夢野さんの遺体。暴かれた隠し扉。時限発火装置は決戦の狼煙のつもりだったのかな」

最原「キミはこの事件を最後の殺人事件にするつもりだったんじゃない?」

最原「そうでないと説明が付かないよ。首謀者が起こしたことが間違いない事件なのに、使っている手段がフェアすぎる」

最原「モノクマルールで、暗に反則を容認されているにも関わらず、だよ? あまりにも話が出来過ぎてる」

白銀「……で?」

最原「……いや。で? って言われても……」

白銀「それが何? あのさあ。話が脱線してるんだよ」

白銀「私が犯人なら、さっさと証拠を出してよ……あんまり焦らさないでよお……」ニヤニヤ

巌窟王「……コイツ……」

最原「わかってる。話を逸らしているつもりはないよ。ただ『今回の犯人はこうだった』っていう前提がないと、話がスムーズに進まないんだ」



264:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/02(金) 20:01:10.37 ID:e/MUi5lG0

最原「思えば、最初から疑問に思うべきだったのかも。あのとき、なんでタイミング良く茶柱さんが僕のいたところに降りて来たのか」

最原「……茶柱さん」

茶柱「……ああ。そうか。そういうこと、ですか」

茶柱「最低です。あまりにも……それが本当なら、あまりにも、酷い……!」ポロッ

赤松「ちゃ、茶柱さん? どうしたの? なんで泣いてるの?」

白銀「そうだなぁ。『もしも』私が演出重視で事件を起こしたのだとしたら……」

白銀「何が何でも茶柱さんにだけは夢野さんの遺体を見て欲しいよね!」キラキラキラ

巌窟王「!」

白銀「あっはは! いや、まあ私は見てないから全然知らないんだけどさあ!」

白銀「だぁって、夢野さんの状態って本当に酷かったんでしょ? ハエがたかってたり腐ってたり胸が大きく開かれてたりさあ」ケラケラ

白銀「私が首謀者なら確かに! 茶柱さんにだけは絶対に見て欲しいなって思うよ! それは間違いないなあ!」

白銀「当然! 今回の場合は、茶柱さんを下に向かわせたのは偶然だけどね! ふふっ!」

百田「……!」

真宮寺「あまりにも酷いネ……吐き気がするよ」

赤松「もうやめて! 聞きたくない! それ以上口を開いたら……!」

白銀「あっはは! なに? 今度は間違いなく私を殺すの?」

白銀「……また間違えて巌窟王さんが死ぬんじゃない?」

赤松「ぐっ……!」



265:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/02(金) 20:07:35.04 ID:e/MUi5lG0

最原「……実際に聞いたわけじゃなかったけど、本当にそうだったんだね」

最原「ごめん茶柱さん。僕がちゃんとキミを止めることができていれば……!」

茶柱「違う。違います。この場合、悪いのは……転子が憎むべきなのは……ッ!」ギロリ

白銀「……」

白銀「……やめてよぉ! そんな顔で私を見ないで!」

白銀「だって……だって、仲間なんだよ! 私が夢野さんを殺すわけないじゃんッ!」

白銀「……東条さんみたく、もう存在しないもののために無駄な努力をして大迷惑をかけたりするわけないじゃん!」

東条「うっ……!」

白銀「もう……やめようよ……仲間同士で争うのはさ……ずっとみんなで一緒に、ここで暮らそうよ……」ポロポロ

白銀「……私たちに、帰る場所なんてもうないんだからさぁ!」

百田「もうやめろッ!」

百田「もう……やめてくれ……! これ以上、わけのわからないことを言われたら……!」

百田「怒りでどうにかなっちまいそうだ……!」



266:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/02(金) 20:12:17.78 ID:e/MUi5lG0

白銀「……終わりたいの?」

白銀「ならさ。もうわかってるよね。もう何回もしてるんだもんね」

白銀「終わらせるために必要なものが、なんなのかさ」

最原「証拠でしょ。もちろんあるよ」

最原「……お前なんかに言われなくたってわかってる」

白銀「……」ニコニコ

巌窟王「最原。まさか止めるとは言うまいな?」

巌窟王「……やっとだ。やっとだぞ。このときを俺はずっと待っていた!」

巌窟王「さあ。早く終わらせろ! 自分で自分の内臓を、喉を、舌を激怒で炭化させてしまいそうだ……!」

最原「……わかってる」

最原「今ので確認が取れた。キミは事件の撹乱よりも優先させているものが間違いなくあった」

最原「だからこそ、そこに決定的な隙が生まれたはずだ」

最原「……これで終わらせて見せる。すべてを!」



276:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/03(土) 17:33:55.55 ID:HyjLqUv40

最原「入間さんのエレクトボムが見つかったのは白銀さんの研究教室周辺なんだよ」

最原「僕たちがスパコン室から脱出した直後から入間さんはそこにいて、その後は赤松さんが行っただけ」

最原「なら、化粧道具の類はどこに行ったんだろう。どこに処分したんだと思う?」

白銀「……!」

星「化粧道具? 何のことを言っている?」

最原「さっき春川さんも言ったけど、特殊メイクはシール単体だと意味がないんだ」

最原「シールと肌の間の差を埋めるためには、それなりの道具が別途必要になるはずだよ」

最原「それはおそらく、赤松さんの傷とシール本体を詳しく調べなおせばわかるはずだ」

最原「そして……白銀さんはそれを『まだ』処分していない。いや、できていない。迂闊なところに放置できないからね」

最原「今まで特殊メイクが使われているという発想が出なかったことからも明らかだ。絶対に適当な場所には捨ててない」

白銀「……これのこと? 悪いんだけど、コスプレイヤーなら持ってて当然じゃない?」ヒョイッ

獄原「あ、あれ。普通に出しちゃってるけど」

最原「……ここまで来て、ハッタリをかませるのは凄いと思うよ。もう引っかからないけどね」

白銀「で。コレと赤松さんの傷口に使われたものが同じだという保証は? できるの?」

白銀「あははっ! できないよ! だってこれ私の研究教室からじゃなくって、倉庫から持ってきた何の変哲もない……」

巌窟王「カタログにそんなものは載っていなかったぞ」

白銀「……は?」

巌窟王「聞こえなかったか? 倉庫の備品カタログに、そんなものは一切なかったと言っている」

白銀「――」

最原「……余計な嘘を吐いても逆効果だよ。巌窟王さんの忘却補正があるから」

最原「白銀さん。それを僕たちに貸してくれないかな? もしも百田くんの剥がしたシールの裏側……」

最原「つまり粘着部分にちょっとでも、その化粧品のパウダーが付いていたとしたら」

最原「これで、この上ない証拠と言えるんじゃないかな?」

春川「今までシールを触った入間と百田には、ほとんど嫌疑がかけられないからね」

春川「……証拠の偽造の可能性はないよ。微塵も」



279:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/03(土) 17:51:17.71 ID:HyjLqUv40

白銀「ふふ」

白銀「ふふふふふふふふふ……」

白銀「あははははははははははっ」

白銀「あーっはっはっはっはっはっはっはっは!」

白銀「はいどうぞ」ペイッ

巌窟王「よし」パシッ

巌窟王「……」

巌窟王「ほとんど無臭だな……化粧品だというのに」

白銀「そこら辺が売りでさー」

巌窟王「百田。どうだ?」

百田「いやわかんねーよ。顕微鏡でもあれば話は別だけどよ」

獄原「あ。ゴン太に任せて。粒の形と色を見ることができると思うから。明かりが必要だけど」

キーボ「明かりなら任せてください!」ピカーッ

獄原「……ふむ……ふむふむ……」

獄原「こ、これは……そんなバカな!」ガビーンッ

赤松「ど、どうしたの!?」

獄原「色が一致したよ。間違いなくこの化粧品だね」

最原(紛らわしいよ!)



280:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/03(土) 17:59:08.68 ID:HyjLqUv40

巌窟王「デバイスさえ使えればBBの精査で更に確実に調べられただろうが……」

巌窟王「贅沢は言うまいさ。獄原の視力も規格外なことは間違いない」

白銀「視力6.0だもんね! アレもちょっと見えちゃってたみたいだし……」

獄原「アレ?」

白銀「ううん! なんでもないなんでもない!」

白銀「……さて。おめでとう、と言うべきかな? ついに辿り着けたね、最原くん!」ニコニコ

最原「やっぱりキミが犯人だったんだね」

白銀「……」

白銀「ああ。夢野さんの件に関しては今となってはどうでもいいでしょ」

白銀「大事なのは判明したもう一つの事実でさ?」

赤松「どうでもいい……? どうでもいいって……?」ガタガタ

白銀「どうでもいいよ」

茶柱「……許さない。転子は絶対に許しませんよ。何もかも……!」

白銀「そういうのも後でいいんだってー。ね? 最原くん」

最原「……白銀さん。本当にキミが首謀者なんだね」



282:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/03(土) 19:47:14.17 ID:HyjLqUv40

白銀「首謀者か首謀者でないか……それに明確に答えがあるとすれば、私はこう答えるしかないね」

白銀「はい! 白銀つむぎは、このコロシアイゲームの首謀者でーっす!」

ピコンッ

モノクマ「あ。キーワードが確認されたから、首謀者権限のロックが解除されたよ」

春川「え? あ、本当だ。なんか項目が増え……」

春川「……増えすぎだよ。調べるの時間かかりそう」

百田「待て! 今の今までかかってたロックが、なんで今解除されるんだ?」

天海「音声認証だからっすよ。つまり、今ので完全に確定っす」

天海「……白銀さん……!」

星「この学園生活において、アンタだけが正真正銘心の底から学園生活を楽しんでいた」

星「王馬に関しては言ってることと考えてることがまるでわからなかったから除外するが」

星「……なるほど。こういうことなら納得だな」

白銀「で? で? どうする? 何が聞きたい? 何を知りたい? 何一つとして答えないけどさ!」

白銀「……今更聞いたところで手遅れのことが多すぎるし」

巌窟王「いや。必要はない。そんな時間は後でいくらでも作ることができる」

巌窟王「……投票タイムだ。せめて貴様が作ったシステムで死ね」

白銀「本当にそれでいいの?」

最原「え?」

白銀「それならそれで構わないんだけどさ」

最原「……」

最原(どういう意味だ? まだ何かあるのか?)

最原(……いや。議論はこれで終わったんだ。コロシアイもこれで終わる……)

最原(終わるんだ……全部!)





アマデウス斎藤「聞くがいい! 俺の反論を!」反論!

最原「んっ!?」



283:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/03(土) 19:55:00.67 ID:HyjLqUv40

春川「これは……例のあの仮面!」

アマデウス斎藤「混迷を極めた裁判場、駆けつけかしこみ、オブジェクション」

アマデウス斎藤「いいや。投票タイムはさせないっす。まだ!」

アマデウス斎藤「確かに俺も白銀さんが憎い! コロシアイが憎いっす!」

アマデウス斎藤「だからと言って、ここで終わらせていいんすか!?」

最原「……!」

巌窟王「ほう。いきなり現れてご挨拶だな。アマデウス斎藤……十七人目の高校生よ!」ギンッ

最原「天海くんだってば!」

巌窟王「……!」ハッ

巌窟王「そうだったな」

アンジー「いけない。アンジーもすっかり忘れてたよー」

最原「……天海くん。それはどういう意味?」

アマデウス斎藤「アマデウス斎藤っす!」

最原「それはもういいから! 本当に!」



284:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/03(土) 20:00:49.40 ID:HyjLqUv40

アマデウス斎藤「そもそも、この裁判自体がおかしいっすよ!」

アマデウス斎藤「いきなり正体を現した首謀者が犯人で、しかも自分が用意したシステムで裁かれようとしている……」

アマデウス斎藤「俺たちを今まで脅かしていた害意の真価は、この程度のものだったんすか? 怪しすぎるでしょう!」

最原(一理ある……けど)

最原「……だからって代案があるの?」

アマデウス斎藤「それは……ないっすけど……」

アマデウス斎藤「それでもこの裁判をまともにやる価値があるとは思えないっす!」

アマデウス斎藤「コロシアイに勝つって、こういう意味じゃないっすよ! 俺が考えるコロシアイに勝つっていうのは、もっと……!」

アマデウス斎藤「……ゲームに則って勝つんじゃない。ゲームそのものをぶち壊して勝ちたいんす……!」

アマデウス斎藤「俺は……俺は……!」

最原「……」

最原「モノクマ。取引しよう」

モノクマ「ほえ? 取引?」

最原「このまま行けばコロシアイの首謀者である白銀さんは、おしおきか、さもなくば巌窟王さんに燃やされて死んでしまう」

最原「それはお前にとっても避けたい事態だろう?」

最原「だから、提案があるんだ。もうちょっとだけ猶予が欲しい」

巌窟王「最原?」

最原「……つまり、投票を保留してほしいんだ」

白銀「!」

モノクマ「具体的にいつまで?」

最原「……」






最原「三日。これしか考えられないな」



286:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/03(土) 20:07:16.23 ID:HyjLqUv40

モノクマ「……うぷぷ」

最原「……どう?」

モノクマ「残念! そんなに待てないよーだ!」

キーボ「は? いや、最原クンの要求も中々に無茶なのは百も承知ですけど」

キーボ「首謀者ですよ? 首謀者の白銀さんが死んだら、モノクマだって困るはずです!」

白銀「……」

最原「どうしたの白銀さん。さっきまでの薄ら笑いが消えてるよ?」

白銀「ッ!」

最原(この事件、まだ裏があるんだ。僕らが見えていない、何らかの裏が……!)

最原(冷静になれ。僕が目指しているものは、決して首謀者の打倒なんかじゃなかったはずだ! 目的と手段を見誤るな!)

最原「一度、この事件を整理してみよう」

最原「……ありがとう天海くん。ちょっとだけ冷静さを取り戻せた」

アマデウス斎藤「えっ?」

最原「……頭を冷やしたい。だからこの事件を一回振り返って……冷静になって」

最原「それからみんなで考えよう」

最原「この裁判の着地点をどこにするか。それを、みんなでさ!」



295:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/04(日) 17:48:47.50 ID:19Libjbb0

クライマックス推理

最原「すべての犯行を暴くためには、時間を巻き戻す必要がある」

最原「始まりは一昨日。その昼の間のことだ」

最原「巌窟王さんから聴診器をプレゼントされた夢野さんは、女子トイレで隠し扉を発見」

最原「昼の間だったということもあって、周囲の明るさに警戒心が緩んでいた彼女は中へと入ってしまった」

最原「それが悲劇の始まりだったんだ」

最原「そこで彼女は、今まで僕たちが図書室の向こうにあると思っていた隠し部屋の中を見てしまった」

最原「おそらく、すぐに誰かを連れてこようと思ったはずだよ」

最原「でもその部屋の主……つまり、首謀者がそれを許さなかったんだ」



296:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/04(日) 17:59:46.77 ID:19Libjbb0

最原「具体的に何が気に障ったのかはわからない。僕たちがあの部屋に入ったときとはきっと様相が違ったんだろうね」

最原「理由はともかくとして、夢野さんに口封じをする必要が出た犯人は最悪の手段へと移った」

最原「夢野さんを銃殺したんだ……」

最原「そのとき使った銃はM500のような常軌を逸した威力を持つものではなく、女性でも使えるような小型銃だったはずだよ」

最原「夢野さんの死体の損壊は、銃殺にしても小さかったからね」

最原「夢野さんを殺害した犯人は、特に慌てることもなく冷静に偽装工作を始めた」

最原「まず夢野さんの遺体を徹底的に腐敗させることから始めたはずだよ」

最原「そして次に、犯人は『通常の生徒では絶対にありえない方法』を使った偽装工作を開始したんだ」

最原「学園の監視を利用した犯罪……そう。犯人が首謀者だと思われる根拠がこれだよ」



297:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/04(日) 18:18:06.62 ID:19Libjbb0

最原「監視によって冤罪を被せられそうな生徒をリストアップした犯人は本格的に行動を開始した」

最原「まず夢野さんの遺体を損壊させた後で……」

最原「モノクマファイル作成デバイスを使って、偽の死亡推定時刻をでっち上げたんだよ」

最原「もちろん、監視したからと言って完璧に生徒の行動を予測できるわけじゃないから、ある程度は犯人自身が動くこと前提でね」

最原「ただし、おそらくモノクマ自身が腹に据えかねていたからか、一つだけ不自然なものがモノクマファイルの中に残った」

最原「第四の事件の記録……記入されることはなかった『入間さんの事件』のモノクマファイルのキャッシュだよ」

最原「犯人はターゲティングした人物にアリバイがないことを確認してから、ファイル作成デバイスを破壊した」

最原「もしも入間さんが死んでいたとしたら、この証拠も見れなかったかもしれないけど……」

最原「今回は違う。入間さんの計画は巌窟王さんのお陰で未然に防がれたからだ」

最原「でも、入間さんの計画に便乗するという犯人の工作自体は行われたけどね」



298:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/04(日) 18:27:24.36 ID:19Libjbb0

最原「犯人が動く以前に、巌窟王さんの行動が原因で赤松さんにアリバイができたことは幸運だった」

最原「でもその裏で、茶柱さんの方は犯人の予測した通りには動かなかった」

最原「後で秘密裏に作成するものもあった上に、茶柱さんがそれから先の時間にアリバイを作るのは避けたい事態だ」

最原「だから、犯人は茶柱さんにだけは直接働きかけたんだよ。『夢野さんを見た』という悪質な嘘でね」

最原「茶柱さんを寄宿舎に帰し、目撃の危険性も緩和したところで、犯人はあるものを作り出した」

最原「後で赤松さんに張る予定の、特殊メイクシールだよ」

最原「犯人は入間さんの計画が失敗したときのことも想定して、これを作っていたんだ」

最原「さて。犯人の計画の本番は、むしろここから先だった」

最原「その翌日、体育館に集められた生徒たちはモノクマから『外の世界の真実』のことを聞くと同時に……」

最原「そこでやっと『夢野さんがいない』という事実を認識することとなった」



299:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/04(日) 18:38:23.12 ID:19Libjbb0

最原「入間さんが計画を進めている裏、巌窟王さんが新世界プログラムを弄って殺人計画を破壊」

最原「監視技術を使いながら様子を眺めていた犯人は、そこで方向性を確定させた」

最原「その夜の内に事件を起こすことを決めたんだ」

最原「イリスアゲートエレクトボムの傍に、夢野さん殺害に使った銃を置き……」

最原「夢野さんの遺体の傍には、かなり筋力がなければ使えないM500を置いた」

最原「更に、タマゴが孵化しないタイミングを見計らってクロバエを散布し……」

最原「図書室の本棚に時限発火装置と、あらかじめ切り取っていた夢野さんの指を仕込んだ」

最原「そして、ゆっくりと新世界プログラムへと入る時間を待ったんだ」

最原「全員が新世界プログラムへと入って、現実の体の意識を失っている間に、犯人は最後にして最大の偽装工作を仕掛けた」

最原「そう。ただ傷を作るだけじゃない。赤松さんの傷を使った特殊メイクだよ」

最原「あらかじめシールという形で持ち込んだそれを使えば、かなりの時間短縮ができたはずだよ」

最原「……どちらにせよ、僕たち全員を騙すだけの技術力は相当だけどね」



300:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/04(日) 18:45:17.83 ID:19Libjbb0

最原「僕たちが外の世界の真実を知って意気消沈している内に、犯人のトリックは動き出した」

最原「正確には、入間さんが解除し忘れていた爆弾とタイマーだけど」

最原「午前三時、入間さんは超高校級のコスプレイヤーの研究教室へと走り……」

最原「僕たちはそれを追って、その途中で火事に気付いた」

最原「遅れてきた犯人は、それとなく同行していた茶柱さんをけしかけ、地下へと送り込む」

最原「……そう。犯人は事件を隠蔽することよりかは、事件を演出することに重きを置いていた」

最原「それが犯人を追い詰める最後の隙になったんだ」

最原「数々の冤罪と偽装工作を突破し、数々の証拠を揃えた僕たちは、やっとキミに辿り着けた……!」



301:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/04(日) 18:47:34.50 ID:19Libjbb0

最原「"超高校級のコスプレイヤー"、白銀つむぎ!」

最原「さあ。ここから本当の……」

最原「最後の議論を始めよう!」


バリバリバリッ ガシャアアアアアアアンッ!


COMPLETE!



303:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/04(日) 20:50:27.16 ID:19Libjbb0

白銀「……」

白銀「議論? まだ議論することなんてある?」

最原「白銀さん。やっぱり今から考えてみるに、この裁判はおかしいよ」

最原「さっき天海くんが言ったみたいに、いきなり本性を現した首謀者が犯人だなんて」

最原「しかも、さっきモノクマに対して取引を持ち掛けても一笑に付されただけだ。考える素振りすら見せてない」

白銀「……」

春川「……第一、事件そのものがとにかく『フェアすぎる』のも気になるよね」

春川「白銀。アンタ、本当に死ぬつもりある?」

白銀「!」

アンジー「それ関係あるかなー? 仮につむぎがどんな切り札を隠していたとして」

アンジー「……神様がいれば運命は一緒だよ。つむぎの命はここで絶対に終わらせてみせる」ギロリ

王馬「あらー。アンジーちゃんも超乗り気だねー」

アンジー「……」

アンジー「産まれて初めてかもしれないんだー。こんなに怒ったのは」

巌窟王「アンジー……」

赤松(あ。わかりにくいけど感動してるみたい……)



304:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/04(日) 20:57:16.19 ID:19Libjbb0

百田「でもよ。だからって代案があるわけじゃねーんだろ?」

最原「そうなんだ。そこが唯一の問題でさ……」

最原「……だから三日の時間があればベストだったんだけど」

巌窟王「俺のデバイスの回復する時間か?」

最原「そう。それがあれば確実に何かわかると思うんだ」

最原「天海くん。キミはどうするべきだと思う?」

アマデウス斎藤「……えっ?」

百田「えっ、じゃねーよ仮面ヒーロー。テメェが言い出したことだろ?」ニカッ

アマデウス斎藤「そ、それは……」

アマデウス斎藤「……」

スチャッ

天海「そうっすね。まだ効果的な対処方法はわからないっすけど」

天海「このまま行ったら俺がどうするかだけは、もう決めてあるんす」

星「それは?」

天海「投票の放棄っすよ」

白銀「……!?」



306:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/04(日) 21:04:25.91 ID:19Libjbb0

モノクマ「あれ? さっき言ったの聞いてなかった? 投票の放棄は……」

天海「死を意味する。わかってるっすよ。でも……」

天海「それでも納得ができないんす。全部!」

天海「この裁判自体が信用できなくって! だって首謀者が犯人なんすよ!」

天海「最悪、投票した後で『やっぱりやめた。ルールとか知るか』って俺たちに害を成す可能性だってある!」

真宮寺「極論だけど。僕たちがこうやって集められてコロシアイをさせられている理由が未だに不明だからネ」

真宮寺「まあ相手が首謀者である以上『アンフェアな手段』を疑うのは当然の論理ではあるか……」

白銀「……」

最原「否定しないの?」

白銀「……」ギリッ

最原「……やっぱりまだ残ってるんだよ。夢野さんの死の真相を暴いたところで、まだ何も終わってないんだ」

巌窟王「知ったことではないな」

最原「え?」

巌窟王「……俺は白銀を殺す。邪魔をするな探偵」

最原「……ちょ、ちょっと待ってよ。だって、まだ……!」

茶柱「転子も巌窟王さんと同意見ですよ」

最原「……!?」

茶柱「知ったことじゃないです……仮にどんなアンフェアな切り札を残していようが、転子は……!」

獄原「……虫さんを利用して、仲間を傷つけた」

獄原「ゴン太も、とてもじゃないけど許せない、かな」

最原「なっ!?」



308:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/04(日) 21:16:05.01 ID:19Libjbb0

百田「……おい。待てよ。確かにルール上はそれで問題ないかもしれねぇけどよ……」

キーボ「ルール上問題ないのであれば、ボクにも特に反論する材料がありません」

東条「……白銀さんの様子がおかしい、とは私も思うわ」

東条「でも、それだけを判断材料にするわけにもいかないでしょう?」

最原(……みんな怒ってる。当然だ。明確に、みんな傷ついて失って、悲しんでいたんだから)

最原(でも!)

最原「……」

最原「僕は天海くんに乗るよ」

天海「え……」

最原「僕も投票しない」

茶柱「まさか。本気で言っているわけじゃないでしょう? 最原さん。投票を放棄したら」

最原「……死ぬかもしれないね」

茶柱「あなた……そこまで狂ってしまったんですか? そこまで自分のことがどうでもいいんですか?」

最原「違うよ! 僕はただ……!」

茶柱「……今のうちに撤回してください。じゃないと転子は……転子も投票を放棄しますよ?」

最原「はっ!?」

茶柱「あなたがやろうとしていることは、こういうことです。無駄に命を散らさないでください!」

茶柱「……これ以上、悲しみを増やさないで!」

最原「茶柱さん……どうしてそこまで……!」

茶柱「……」



309:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/04(日) 21:22:23.93 ID:19Libjbb0

百田「……いいぜ。死出の旅路、付き合ってやろうじゃねーか」

春川「……百田。アンタまさか」

百田「俺も投票を放棄する!」

白銀「!」

百田「だってよ。実際、ムカつくしな。最後の最後まで首謀者の作ったゲームの上で踊らされるとかよ」

百田「俺の性に合わねーって」

春川「……本気?」

百田「おう! 本気も本気だぜ! 終一が撤回しない限りはな!」

茶柱「百田さんっ! 最原さんを煽るようなことを言わないでくださいよ!」

百田「いいんじゃねーの、別に。お前も付いて来ればよ」

茶柱「……はあ?」

百田「そんなに終一のことが好きならついてってやりゃあいいじゃねーか!」ニカッ

茶柱「ばっ……!?」カァァ

最原「も、百田くん! そういう余計なことは言わないでいいから……ほら! 茶柱さんも真っ赤になってるよ!」

茶柱「ま、真っ赤になんか……」モジモジ

最原「怒りで!」

茶柱「……」スンッ

春川(……茶柱……)

赤松(茶柱さんカワイソー……)



313:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/04(日) 21:29:50.35 ID:19Libjbb0

アンジー「別に、好きにすればいいんじゃないかなー。どうせコロシアイのゲームは白銀が死ねば終了でしょー?」

巌窟王「……首謀者が死んだところでコロシアイが終わる保証がないとは言え、コイツが死んでまでコロシアイを続ける義理もない」

巌窟王「投票を放棄した場合は死、というルールを施行しているモノクマごと破壊すればいいだけの話だ」

真宮寺「悪いけど、僕は巌窟王さん側に付くよ。こっちの方が楽しそうという理由でネ……」

星「……投票する方があからさまな安全牌だからな。いくら死んでもいい命だとは言っても、だからと言って今までの議論を無駄にするのも気が引ける」

星「疑って、疑われて……そうして勝ち取った真実だぞ?」

入間「へっ。真実の価値なんて俺様にはどうだっていいが……」

入間「テメェらみてぇな自殺志願者には付き合ってらんねーよ」

王馬「……」ニヤニヤ

最原(王馬くんだけは本当に読めないな……)

赤松「最原くん。本当に投票を放棄するの?」

最原「……」

最原「うん。もう決めたことなんだ。天海くんに乗る」

赤松「そっか。それじゃあ……信じるよ。最原くんのこと」

赤松「……」チラッ

茶柱「!」

茶柱(……ああ。そういうこと、ですか)

茶柱(赤松さん。あなたは……)



326:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/05(月) 18:18:24.89 ID:FTPqDoWn0

茶柱「……止められないと言うのならせめて、転子もそれに乗りますよ」

最原「!」

茶柱「最原さん。あなたは転子に死ねと言うんですね? それなら別に構いません」

茶柱「本当に死んだら地獄でしこたまぶん殴ってやります」

最原「……ははは。怖いな……本当に怖い」

最原「でも頼もしいよ」

茶柱「……いや本当に魂魄が消滅するくらい殴りますからね?」

最原「流石に死んだ後くらい容赦してよ!」

獄原「……本当に投票を放棄する気?」ゴゴゴゴゴ

最原「……え? ご、ゴン太くん?」

獄原「流石に無視できないよ。ゴン太には……ゴン太には理由を付けてみんなが逃げているようにしか見えない!」

獄原「生きることは綺麗ごとばかりじゃないんだ……!」

獄原「ここで最後まで戦うことを放棄したら、夢野さんの魂は? 悔しさはどこに行っちゃうの?」

東条「……考え直してくれないかしら?」

最原「東条さんまで?」

百田「……まあ、当然っちゃ当然かもな。なんの証拠もなしに『投票を放棄する』じゃあ単なる自殺行為だしよ」

春川「百田。私も東条たちと同意見――」

百田「ハルマキ! 悪い! 俺と一緒の墓に入ってくれねぇか?」

最原「ん!?」ガビーンッ

春川「――」

春川「うん」

最原(過去最高に素直に!?)ガビーンッ!

天海(言い方間違えて完璧にプロポーズになってましたもんね……)



327:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/05(月) 18:30:36.90 ID:FTPqDoWn0

アンジー「……」ジーッ

茶柱「……ん? あ、あの。アンジーさん。気のせいじゃなければ転子のこと睨んでません?」

アンジー「……神様ー。ちょっと気が変わっちゃった。投票を放棄するのならそれはそれでいいと思ってたけどさー」

アンジー「やっぱり無駄に危険を増やすべきじゃないよねー?」ギンッ

最原「え」

最原(……なんだ? アンジーさん。もしかして怒ってる?)

巌窟王「……ふん。私怨か。この期に及んで……いや、この局面だからこそか? 余裕だな、アンジー」

アンジー「なんのこと? アンジーはただ正しいことを言っているだけだよー?」

巌窟王「……そういうことにしておいてやろう」ニヤァ

巌窟王「最原。気が変わったぞ? 勝手な行動は慎んでもらおうか!」

最原「……なっ!?」

巌窟王「さて。意見はおよそ半々と行ったところか?」

巌窟王「モノクマ。わかっているな? 例のアレを起動しろ!」

春川「例のアレって……まさか」





モノクマ「世界は今、絶望に至る!」待った!



329:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/05(月) 18:42:46.21 ID:FTPqDoWn0

モノクマ「うぷぷ……うぷぷぷぷぷ……いやぁ、今回は出番がないと思ってたけど、まさかこの局面でお呼びがかかるとはねー」

モノクマ「お待たせしました! 才囚学園の誇る、変形裁判場が登場でーっす!」

百田「テメェ! 冗談じゃ済まねぇぞ、巌窟王! 俺たちに投票を強制するつもりか?」

巌窟王「クハハ! バカめ! 俺はいつも俺のやりたいようにやるだけだ!」

巌窟王「モノクマだけではない! 気に入らないと感じれば、貴様らにだって牙を剥こうさ!」

最原「そんな……!」

春川「……一人。二人。三人……?」

王馬「あれ? どうしたの春川ちゃん」

春川「いや。変形裁判場を使うのなら、意見が半々に割れてないとなって思ったんだけど……」

春川「放棄サイドの人数が明らかに足りてないなって」

王馬「あ。俺も放棄サイドだよ。楽しそうだし!」ヘラヘラ

春川「だとしてもあと一人いないと……」

白銀「ふっ。いるじゃないここに。神の才能を持つ女が……!」

春川「……アンタも?」

最原「なんのつもり? 冷やかしならやめてほしいんだけど」

白銀「ひ、酷いなぁ。まあ当然か。犯人だもんね」

白銀「最原くんたちの選択に敬意を表してちょっとだけ暴露しちゃうとさ。確かに投票の放棄は『予想外』ではあったんだよ」

白銀「でもま、首謀者として、裁判のバランスを取るのならこっちに付かざるを得ないかなってさ」

白銀「……ついでに言っておこうか。不本意だよ。私だって、こっちに付くのは」

最原「……」

最原(白銀さんの真意が未だに見えないな……撹乱か、ブラフか。それとも……)



333:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/05(月) 21:01:25.17 ID:FTPqDoWn0

白銀「さて。最原くん。少なくとも『全員を説得してすべての投票を放棄させる』のは不可能なのはわかるよね?」

白銀「ならこれから先の議論での争点はどこになると思う?」

最原「……投票の放棄という選択そのものの是非。つまり『邪魔するかしないか』のみだね」

巌窟王「……白銀はそちら側か?」

春川「当然でしょ。私だってイヤだけど、白銀が『自分で自分への投票を勧める側へ』ってのも更におかしいし」

白銀「そういう意味での、消去法」ニコニコ

巌窟王「……」

天海「うわあ。凄い苦い顔……」

最原(これから先、何が起こってもおかしくない。投票するかしないかは、この場においては既に重要な論点だ)

最原(少なくとも僕たちのやろうとしていることを、巌窟王さんたちに邪魔されないように説得しないと!)



334:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/05(月) 21:05:14.65 ID:FTPqDoWn0

意見対立


投票の放棄は是か非か?

非だ!
巌窟王
アンジー
東条

真宮寺
入間
獄原
キーボ

是だ!
最原
赤松
百田
白銀
天海
春川
王馬
茶柱


スクラム開始!



344:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/06(火) 18:43:49.75 ID:lCXhD0JL0

獄原「『夢野さん』のためにも、投票を放棄するべきじゃない!」

最原「赤松さん!」

赤松「『夢野さん』のことを復讐のダシにしちゃダメだよ!」

キーボ「今までもずっとこうしてきました。安全のためにも『ルール』は守るべきです!」

最原「百田くん!」

百田「首謀者が『ルール』を守る保証がどこにあんだよ?」

東条「あまりにも『危険』すぎるわ。考え直して頂戴」

最原「茶柱さん!」

茶柱「もちろん『危険』は承知です。でも止まる気はありません」

星「『白銀』は既に犯行を認めているんだぜ?」

最原「春川さん!」

春川「その『白銀』の様子がおかしいんだよ。様子見くらいはするべきだって」

真宮寺「『証拠』もなしに決めるべきことじゃないよネ?」

最原「天海くん!」

天海「『証拠』なら、裁判が終わった後で見つけてみせるっす!」

入間「いいから大人しく投票しろよ! 俺様に『迷惑』かけんじゃねぇ!」

最原「王馬くん!」

王馬「そもそも入間ちゃんの爆弾のせいでこっちは『迷惑』してるんだけどね?」

アンジー「もう『コロシアイ』は終わるんだよー? そんなに意地張る必要ないよねー?」

最原「白銀さん!」

白銀「本当に私が死んだだけで『コロシアイ』が終わる保証はないよねぇ?」

巌窟王「曖昧な推測のために、無為に『死ぬ』気か?」

最原(僕が!)

最原「『死ぬ』つもりはない! 僕は真実を見つけたいだけだ!」


全論破!


全員「これが僕(私)(俺)(転子)たちの答えだ!」


BREAK!



345:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/06(火) 18:52:58.25 ID:lCXhD0JL0

最原「……ごめん。そんなに深刻に考えすぎる必要はないんだ。保険だと思ってくれないかな?」

真宮寺「保険……?」

最原「コロシアイの目的が不明な以上、首謀者が命のかかった現状においてもルールを守る保証はない」

最原「最悪の場合、白銀さんに投票することそのものが致死性トラップである可能性もある」

最原「……あまりにも低い確率だとは思うけど」

百田「要は二手に別れるんだよ。テメェらは白銀に投票。俺たちは投票しねぇ」

百田「俺たちは裁判が終わった後、モノクマの制裁の手から全力で逃げる!」

百田「そのついでに、新しい証拠を見つけて来る!」

百田「巌窟王の方はデバイスの復活を待てばいい!」

入間「ふ、二手に別れるっつってもよ。そんな楽観的な考えでいいのか……?」

赤松「というより、楽観的に考えられる道が、これしか残ってないんだよね。だってモノクマが取引に応じないんだよ?」

最原「別に、罠でないならそれでも別にいいんだよ」

最原「……首謀者が負けたのなら、高確率でコロシアイは終わると思うし。そうなったら『投票の放棄は死』っていうルールも有耶無耶だよね?」

最原「だってそのルールはコロシアイの上で成り立つルールなんだよ? コロシアイが終わったら立ち消えだよ」

巌窟王「相変わらず口が回るな……」

最原「ただし、この場合において、どうしても協力してほしい人がいる」

アンジー「……神様でしょ?」



346:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/06(火) 19:00:11.00 ID:lCXhD0JL0

春川「モノクマの制裁の手から逃げるって言っても、あまりにも難易度が高すぎるしね」

春川「巌窟王の協力がなければ、この道も夢物語だよ」

最原「あと、白銀さんは何かを隠してる。もしも本当に白銀さんの投票に一切の罠が無くっても……」

最原「巌窟王さん。赤松さんや東条さんにしたみたいに、白銀さんを助けてくれないかな?」

巌窟王「!」

最原「わかってる! 白銀さんのことは僕も許せないよ! でも、彼女どう見てもまだ隠してることがあるよね!?」

最原「尋問もなしにサックリ終わり、というわけには絶対にいかないよ!」

巌窟王「……それが白銀の罠だったとしたらどうだ? 俺に助けられることを期待していたとしたら」

最原「それがわかったときに、どうにでもすればいいよ」

白銀「酷いなぁ。仲間だったのに」

最原「……どんな気持ちだったの?」

白銀「ん?」

最原「ずっと……僕たちを騙してて、どうしてあんな平気そうな顔で笑えてたの?」

最原「僕たちと一緒に泣いていたのも、怖がっていたのも嘘だったんだよね……?」

最原「なんで……どうして夢野さんを殺せたの?」

最原「流石に、ちょっとくらいは迷ったって言ってよ……!」

白銀「いや? 夢野さんを撃つのに躊躇なんかするわけないじゃん」

最原「……」

春川「クソヤロー」



348:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/06(火) 19:05:51.94 ID:lCXhD0JL0

アンジー「投票はするだけしておいて、つむぎのこともおしおきから助ける、とかじゃダメかなー?」

天海「百田くんの言っていた『保険』の意味がなくなっちゃうっすよ。それ」

最原「巌窟王さん。どう? 協力してほしいんだけど……」

巌窟王「……個人的にはハラワタが煮えくり返る思いだ」

東条「……それはどういう意味かしら? 個人的にはって言い方が気になるわ」

巌窟王「俺はサーヴァントだからな。最終的な意志決定は……」

最原(そこから先、巌窟王さんは口にしなかった。でも、そこまで言えば何を示したいのかはわかる)

最原「アンジーさん……!」

アンジー「……えー?」



354:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/06(火) 20:21:09.46 ID:lCXhD0JL0

最原「お願いだ、アンジーさん。元をただすと巌窟王さんが投票の放棄に反対したのはキミの意思だったからだろう?」

最原「僕にできることなら……その、結婚以外ならなんでもするからさ!」

アンジー「なんでも?」

最原「あんまり過激なのはやめてほしいんだけど……」

アンジー「終一ー。アンジーはね、寂しかったんだよー? だからさー」

アンジー「アンジー、終一の子供が欲しい」

最原「……」









最原「……アポ?」

巌窟王「……」ダッ

天海「あ! 巌窟王さん! どこ行くんすか!? 巌窟王さーん!?」

赤松「巌窟王さんが逃げた!」

百田「追え!」



356:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/06(火) 20:24:40.71 ID:lCXhD0JL0

茶柱「……ゑ? 今、なんと?」

アンジー「全部終わった後でいいからさー! アンジー、いっぱい欲しいなー! 終一との……」

最原「過激なのはやめてって言った傍からコレ!?」ガビーンッ



ガンッ ガンッ ガンッ



獄原「あれ? 何の音?」

真宮寺「錯乱した巌窟王さんが壁に頭を叩きつける音だネ」

巌窟王「……」ガンッ ガンッ ガンッ

天海「やめて! ちょっと! シャレにならない! シャレにならないっすよコレ!」アタフタ

百田「誰か巌窟王を止めろ! 死ぬぞコイツ!」

春川「駄目! 凄い力! 流石に無理!」

赤松「巌窟王さん! 戻ってきて! 現実にカムバーーーック!」



358:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/06(火) 20:34:49.13 ID:lCXhD0JL0

入間「ま、マジで言ってるわけじゃねーよなコイツ……さては手を繋いだだけで子供がコウノトリ便で運ばれてくると思ってやがるな?」ガタガタ

アンジー「にゃははー! そんなわけないじゃーん!」

アンジー「……そんなわけないじゃん。ねえ?」ドロリ

最原(人間の目ってここまでドロドロな闇色になるんだなー。知らなかったなー。知りたくなかったなぁ……!)

最原「あ、あの……他のことで、なんとか……譲歩を……」

アンジー「断ったら……」

最原「こ、断ったら……?」

アンジー「……仕方ないから無理やり」ボソッ

星「最原。マズイぜ、これは……目の奥に『漆黒の決意』めいた何かを秘めている」

星「俺の戦ったマフィアのボスもこんな目をしていた……!」

最原「そんな裏社会の首領的な貫禄なの!?」ガビーンッ

茶柱「あ、あの……最原さん……」

茶柱「もう不潔とか言わないんで……ご勝手に済ませても構わないので……」ヒキッ

最原「ここに来て見捨てないでよッ!」

茶柱「もうどうしようもないでしょうが!」ウガァ!

キーボ「あ……音が止みましたね?」

王馬「頭がやっと冷えたみたい」

巌窟王「」チーン

白銀「体が全体的に冷えているの間違いじゃない……?」

東条「治療開始よ」ダッ



359:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/06(火) 20:47:28.10 ID:lCXhD0JL0

アンジー「で。答えは? イエス? はい? 了承? シェイシェイ?」

最原(なんだ……? 何が起こってる? これはなんだ? 現実なのか……?)

最原(事件も終盤なのに何でこんなことになってるんだ?)

最原「あ、あの……巌窟王さんがなんて言うか……さ?」

アンジー「神様ー。意見はー?」

巌窟王「……」

巌窟王「ふん……やはり逃れられるものではないな。人間が死を克服できないように」

最原(なんとかしてくれ、巌窟王さん……!)

巌窟王「祝福しよう……」ズーン

最原(巌窟王さーーーん!?)ガビーンッ

天海「不屈の意思の体現みたいな人がガックリと肩落としてるっす……」

東条「まあ……娘が目の前で嫁いだみたいな心境でしょうからね」

赤松「常々否定はしてたけど、とにかく可愛がってたもんね……」



360:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/06(火) 20:52:12.47 ID:lCXhD0JL0

アンジー「で。後は終一の返事だけだよ?」

アンジー「……ねえ? ねえ? ねえ?」

最原「……」ガタガタ

百田「終一……」

最原「も、百田くん!」

百田「あの……その……なんだ……」

百田「精一杯支援はしてやっから……な?」

最原「」

春川「……ごめん。救えない」

最原「」

アンジー「……終一。返事」

最原「……」

最原「……は――」



prrrrrrr!


最原「ん?」

アンジー「ん?」

巌窟王「……謝罪しよう。こういうときはデバイスの電源を落とすべきだったな。今すぐ通話を切って……」

巌窟王「……」

巌窟王「通話?」

白銀「は?」

白銀「……ゲッ!」ガビーンッ



373:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/07(水) 18:29:26.17 ID:u5vE4xQd0

最原「……巌窟王さん!」

巌窟王「……」ピッ

巌窟王「誰だ?」

BB『……こちら……ルデア……王さん! ……の世……は……!』ザザーッ

巌窟王「……ノイズが酷すぎるな。まともに聞き取れない」

赤松「あ。コレ、大丈夫だよ。慣れれば聞き取れる。ちょっと私に貸してみて?」

春川「流石にサイコなだけあって耳はいいんだよね」

赤松「サイコ関係なくない……?」

白銀「な、なんで? 三日の間は大丈夫のはずじゃ!」

入間「一個破裂しなかったからって、俺様の通信妨害にそうそう簡単に穴が開くわけねーのにな」

入間「……あ。いや。例外があったな。『誰かがエレクトボムの位置を動かした場合』は別だ」

白銀「は……?」

入間「あのイリスアゲートエレクトボムで一番重要なのは数じゃなくって場所でよ!」

入間「一個でも位置がズレたら、多分こんな感じに妨害に穴が開くんじゃねーか?」

真宮寺「それ、一個だけ不発になるのとどう違うの?」

入間「波を打ち消しちまうんだよ。そうだな、例えば一個でも爆弾が下の階に移動していたとしたら……」

入間「下の階にある爆弾と上の階にある爆弾とで干渉を起こして、致命的でないにしろ爆弾の効果を打ち消しちまうんじゃねーか?」

入間「まあ、ここら辺の計算は全部『暗算』でやってたから確定で言えやしねーけどな! ヒャハハ!」

白銀「暗算……? つまり、私が見れなかった情報……!?」

最原「入間さん。それって本当?」

入間「ああ。でも今回は関係ねーだろ。だって破裂した爆弾は一個たりとも移動してなかったしよ?」

最原「あの爆弾って、服の下に隠して持ち歩けるかな?」

入間「ほぼ『証拠隠滅の薬液』と『サイレンサー』のせいでかさばってるだけだから、それを分解すればポケットに入れて持ち歩けないことはない」

入間「……とは思うけどよ? だから関係ねーって! 確かに溶けてたけど、爆弾は全部所定の位置で爆発してただろ!」



374:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/07(水) 18:38:52.71 ID:u5vE4xQd0

赤松「ええと……何かを繰り返し言ってるみたい」

赤松「……世界は……」

白銀「も、モノクマ! まずいよ、この展開は!」

白銀「投票タイムに行っちゃおう!?」

百田「お? なんだよ。急に慌て始めやがって……別に巌窟王のホームとの通信が回復しただけだろ?」

最原「……」

最原「あの時点でも変だと思ってたんだ。新世界プログラムから出たとき……!」

最原「あまりにも時間が経つのが速すぎた。気が付いたら午前三時だよ?」

春川「今更、何のこと?」

最原「僕自身もわからない。でも『時間』がずっと変だと思ってたんだ」

最原「何か……何か閃きそうな気が……!」

赤松「その世界は……?」

白銀「モノクマっ!」

モノクマ「え? やだ」

白銀「」

モノクマ「だって最原くん、まだアンジーさんに返事してないもん。気になるなー、この先の展開」

モノクマ「超楽しいじゃん」

白銀「……」ブチッ

モノクマ「……はいはい。わかったよ。しょうがないなー」



378:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/07(水) 19:51:38.28 ID:u5vE4xQd0

モノクマ「タイムアップ! タイムアップ! 投票タイムに移りたいと思います!」

星「タイムアップ……だと?」

真宮寺「今のやり取り見る限り、それ以前の何かが要因だよネ。誤魔化す気も皆無なのかな?」

獄原「……最原くんたちは、投票を放棄するんだよね?」

最原「うん。このまま逃げる!」

最原「……巌窟王さん。あの……」

巌窟王「……出口くらいは作ってやる。行くのならば勝手にしろ」

アンジー「……」

アンジー「返事はまた今度、ね?」ニコッ

最原「怖いよ!」

春川「最原。本音丸出しすぎ」

茶柱「同感ですがそれなりにオブラートに包んでください。愛情だけは本物っぽいので……」

モノクマ「投票の結果、クロとなるのは誰か!」

モノクマ「その結果は、正解なのか不正解なのかーーーッ!」

モノクマ「さあ! どうなんだー?」



379:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/07(水) 20:04:37.00 ID:u5vE4xQd0

モノクマVOTE

白銀:九票



結果は……



モノクマ「おっと。結果の発表の前に……どうやら投票を放棄した人がいるようですね!」

巌窟王「宝具限定解放……!」ボォゥッ!


ドカァァァァァァァンッ!


最原(天井に穴が開いた!)

巌窟王「ついでだ」

巌窟王2「人数分だけ分身を作ってやる」

巌窟王3「上まで連れて行ってやろう」

王馬「うわあお! 巌窟王ちゃんがいっぱい!」

百田「テメェこんな単細胞チックなマネができたのかよ!」

最原「あれ。待って。投票が九票?」

最原「白銀さん。律儀に自分に投票したの?」

白銀「いや。さっき最原くんに味方した手前、自分に投票するのも不義理かなって思って……」

百田「今更不義理もクソもねーだろ裏切り者」

王馬「……あれっ? じゃあ投票者の内訳は……」

茶柱「……やっぱり」

モノクマ「ちなみに投票者の内訳はこうなっておりまーっす!」


巌窟王
アンジー
東条

真宮寺
入間
獄原
キーボ
赤松



最原「……!?」

百田「赤松?」

赤松「……」



382:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/07(水) 20:13:57.17 ID:u5vE4xQd0

茶柱「赤松さん。どうせこんなことだろうと思いましたよ」

茶柱「最原さんの選択を信じるとは言っても、それに参入する気はさらさらなかったんでしょう?」

赤松「……まあ、ね」

赤松「あはは。忘れちゃった? 最原くん。私は最初から首謀者のことを許してなかったし……」

赤松「今もずっと彼女のこと殺したがってたんだよ?」

最原「赤松さん……!」

赤松「これが最原くんについていかない理由その一。もう一つは……」

赤松「うん。巌窟王さんたちが心配だから、かな」

春川「……最原。もう充分でしょ。行こう」

最原「……」

赤松「……『真実』よりも『復讐』を望む私は、おかしいかな?」

最原「……わからないよ」

最原(自分自身の正当性すら曖昧なんだから)

巌窟王「さあ。時間だ。上にお前たちを飛ばそう」

巌窟王「……その選択を無駄にするなよ」

最原「もちろん、そのつもりだよ!」



383:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/07(水) 20:19:12.63 ID:u5vE4xQd0

ビュンッ!

赤松「行っちゃった」

巌窟王「……さて。ここから先……貴様はどうする気だ? 白銀」

獄原「絶対に逃がさないよ。最原くんたちにも手は出させないし、必ず罪も償ってもらう」

白銀「……ところで赤松さん。通話の音声、聞き取れた?」

アンジー「……今はそんなことどうでもいいってー」

赤松「……どうでもいい、のかな?」

赤松「うーん……どうでもいいってことはないんじゃないかな……」

赤松「……なんで気付かなかったんだろ」

巌窟王「赤松?」

赤松「巌窟王さん。もしかしたら、こっちの方がハズレだったかもしれない」

赤松「通信の全文はこう。その世界は――」



384:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/07(水) 20:26:37.79 ID:u5vE4xQd0

最原「ぶへっ!」ベシャッ

百田「ぐほっ!」ベシャッ

春川「……地上に辿り着けた瞬間に消えたね。分身」スタッ

王馬「さて。それじゃあ最原ちゃん! どこに向かって逃げる?」ニヤニヤ

天海「……どこに向かっても学園から逃げられないのなら同じっすけどね」

茶柱「……ですよねぇ。本当、血迷った選択です」

最原「ひとまずスパコン室に向かわない?」

最原「……もしかしたらそこに何かがあるかもしれない」

最原「再度ログインしたら何かわかることがあるかも……!」

百田「ん?」

最原「……どうかした? 百田くん」

百田「いや。なんか……月が明るくねぇか?」

最原「月?」

春川「……いや? 待って。それ以前にさ。ありえないとは思うんだけど……」

春川「空に文字が浮かんでない?」

王馬「んー? なになに?」

王馬「GAME OVER……?」




ピカッ



387:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/07(水) 20:29:08.29 ID:u5vE4xQd0

カルデアの通信の全文



BB「届いてください! 誰か聞いてください! その世界は……その世界は……!」

BB「未だに『プログラムの中の世界』のままです!」

BB「あなたたちは誰一人として、外に出ていないんですーーーッ!」



401:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/08(木) 19:19:07.01 ID:cHh20ifN0

東条「この世界が……まだプログラムの世界?」

BB『……! ……!!』ギャーギャー!

赤松「えーと、なになに? 『頭の悪いチンパン一歩手前のあなた方人類にわかりやすーく言いましょう』」

入間「口悪ゥ」

キーボ「入間さんには劣りますよ?」

赤松「巌窟王さんと最後の通信をしたあの時点で、もうあなたたちはプログラム世界の中にいました」

赤松「でもまさか気付いてないとは思ってなかったんです。だってあの時点で私たちの視点では一目瞭然でしたから!」

赤松「何故なら……あっ! そう! そういうことね!」

赤松「ごめん! この辺りに関しては私の意思でボカすよ!」

BB『!?』ガビーンッ

アンジー「……神様のホームからの視点から一目瞭然……」

白銀「……ああ! アレのせいだね! 百田くんの持ってた……!」

巌窟王「百田の持っていた?」

白銀「……」

白銀「ボカす」

巌窟王「?」



402:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/08(木) 19:26:26.61 ID:cHh20ifN0

赤松(ああ。百田くんが『デバイスどこかに失くした』って騒いでたけど、こういうことか)

赤松(こっちの世界に持ち込んでなかったんだね)

赤松(で。BBさんは通信が切れる前に、デバイスの感知していた音声に差異があることに気付いた……)

赤松(つまり現実空間のデバイスは無音なのに、巌窟王さんの持っているデバイスには音……私たちの音声とかが入っていた)

赤松(同じ場所、同じ部屋に存在しているのなら確かにありえない差異だけど……)

赤松(私たちがいた場所が、スパコン室に似て非なる世界なら説明は付く)

東条「そんなまさか。信じられないわ。だって……!」

キーボ「この世界は現実と遜色がありません! これでプログラムの世界だと言うのはあまりにも!」

入間「無理、とは言い切れないかもしれねぇ……!」ガタガタ

キーボ「えっ?」

入間「プログラム世界の洋館に入った時点で、描画の質が明らかに上がってた」

入間「あのときのクオリティまんまなら、帰ってきたと思い込んでもおかしくはねぇ!」

星「待て。巌窟王だけは、その理屈では無理があるだろう」

星「コイツだけは正規の方法でプログラムに入っていない。プログラムによらず、自分自身の意思で出入りができる」

星「なら巌窟王が外に出た場合、そこは間違いなく現実の世界のはずで……」

星「……」






星「自分の意思で、出てなかったな。そういや」



411:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/09(金) 20:21:49.87 ID:E1Tsjr7h0

東条「……!」

東条「そうね。そういえば、そうだったわ。巌窟王さんだけは退去の仕方があまりにも不自然だった」

アンジー「アンジーの目の前から『消えた』……!」

巌窟王「なるほどな。確かにそれなら気付くものも気付くまいさ」

巌窟王「霊子の組成が現実とは違うことも、人が腎臓の不調に気づかないのと同じで、俺自身は気付けないからな」

キーボ「つまり全貌はこういうことですか?」

キーボ「ボクたちは夜八時にスパコン室にやってきて、そこで新世界プログラムへとログイン」

キーボ「そしてログアウトの手順を正式に踏んだ、と思いきや現実によく似た『別のプログラム世界』へと飛ばされていた……」

キーボ「なら本当のボクらの体は!?」

白銀「もちろん、まだ眠ってるよ」

白銀「さて。色々とヒントは仕込んでたんだけどなぁ? 入退室ログとか露骨すぎて、私自身やり過ぎかなって思ったくらいなんだけど」

白銀「割とバレないものだね?」

東条「……退出のログが無かったのは、誰かが消去したからじゃなくって」

入間「『あの時点で誰も新世界プログラムから出ていなかったから』ってことか……!?」ガーンッ



412:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/09(金) 20:33:09.55 ID:E1Tsjr7h0

真宮寺「でもプログラム世界の中での爆弾が爆発したところで、それはゲーム内での『設定』に過ぎないはずだよネ?」

真宮寺「なら最原くんが気にしていたことは実は的外れだったのかな?」

赤松「最原くんが気にしてたこと?」

真宮寺「時間がおかしいってこと。実は僕たちは『午前三時という設定の世界にいただけで現実ではそうでなかった可能性』だヨ」

真宮寺「実際に巌窟王さんのホームからの干渉を妨害するためには、現実世界で爆弾を破裂させないと意味がない」

アンジー「いや……終一はもう一つ気にしてたよねー?」

アンジー「……エレクトボムを持ち歩きできるかってさ」

真宮寺「あっ」

白銀「いやぁー。流石に仕掛けられた爆弾一個一個のタイマーを全部ズラすのは目立つかなって思ってさ」

白銀「『分解してコンパクト化した爆弾』を一つ、ポケットに忍ばせておくだけに留めておいたのは失敗だったな」

入間「なっ……!?」

巌窟王「……現実の世界の方は、午前三時などではなかったのだな?」

白銀「大正解! みんながプログラム世界に入った後で、持ち込んだエレクトボムのタイマー設定を弄ったんだよ」

白銀「で。それを基に、新世界プログラムのコンソールをちょいちょい弄って……」

白銀「『プログラム世界内の午前三時の時間』に『現実世界の爆弾が起爆するタイミング』を重ね合わせればOK!」

白銀「このイリスアゲートエレクトボムにとって大事なのは数じゃない。大量に揃えてるのは保険のため……ってことはわかってたからね」

白銀「まさか『場所をズラすと効力が弱まる』だなんて知らなかったけど」

入間「待てよ……じゃあ、今このタイミングに巌窟王のデバイスが復活したのは……後から爆発したヤツが現在広げてる力場を乱したってことだから!」

アンジー「『現実世界に存在する残りのエレクトボムが、本来の時間通りに起爆したから』かなー」

アンジー「……なら、今の本当の時間は……」

巌窟王「やっと午前三時になった、というところだろう」



413:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/09(金) 20:42:09.67 ID:E1Tsjr7h0

赤松「BBさん。どう?」

BB『……!』ギャーギャー!

赤松「体内時計が死んでいるあなたたちに悲報です。巌窟王さんとの最後の通信時点での、そちらの時間は午後十一時前後でした」

赤松「いちいち確認するまでもないことでしたから、こんなこと伝えるはずもないですけどね。私のせいじゃありませんよ!」

巌窟王「BB……!」ギロッ

赤松「ひっ! ちょ、ちょっと! 私を睨まないでよ! 代弁してるだけなんだから!」

巌窟王「ム……」

獄原「……本当に大したことをしてくれたね。白銀さん」

獄原「まさかゴン太の研究教室のクロバエさんまでトレースするなんて!」

白銀「細かいところまでキッチリやったんだよー? ゴン太くんのためにも、さ。泣いて喜んでくれる?」

獄原「……」

赤松「……やっぱりコレで終わりじゃないんだね?」

白銀「ん?」

赤松「わざわざ新世界プログラムの中におびき寄せたってことは、そういうことでしょ?」

赤松「具体的に何をするかはわからないよ! でもこんな大がかりな仕掛けをしておいて、何もせずに帰すわけもないよね?」

白銀「そうだなー……ま、そうだね」

白銀「余興」

赤松「は……?」



414:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/09(金) 20:48:46.56 ID:E1Tsjr7h0

白銀「実はさ。巌窟王さんを急いでこっちの世界に飛ばしたのは失敗だったかなって思ったんだよ」

白銀「細かいところは知らないけど、どうも巌窟王さんのホームの人たちはこっちを見てるわけだしさ……」

白銀「下手したら即座にバレる可能性すらあった。今回の場合は即座にバレてたからこそ、みんなに情報が行かなかったわけだけど?」

白銀「でもまあ、その場合でも別によかったんだよ。余興だったんだから」

赤松「何を……言ってるの?」

巌窟王「……お前の楽しみはどうでもいい」

巌窟王「夢野をどうした?」

赤松「!」

白銀「……」

獄原「え……? 夢野さんは白銀さんが殺したんでしょ?」

東条「いえ。これまでのすべてがプログラム世界内での設定なら、現実の方はどうかはわからないわ」

獄原「あっ!」

白銀「生きてるって言ったら、許してくれる?」

巌窟王「まさか」

白銀「……ま、だよね」

白銀「それに、どうでもいい仮説だったし! 実際に夢野さんは死んでるよー!」キラキラキラ

赤松「ッ!」

白銀「……ふふっ。まあ、学級裁判の効力を本物にするためには仕方なくって、さ」

白銀「ま、余興を裁判仕立てにしようって考えたのは後付けだけど」

白銀「元からみんなをプログラム世界に巻き込んで『こうしよう』とは思ってたところを見つかっちゃってさ」



416:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/09(金) 20:56:29.36 ID:E1Tsjr7h0

巌窟王「もういい。充分だ」

巌窟王「――死ね」



ゴオゥッ!


巌窟王「……!」

赤松(巌窟王さんの渾身の炎の一撃。それを放たれた白銀さんの前方には――)

赤松「エグイサル……!?」

白銀「オートパイロットだけど。実際にモノクマーズはこの中に入ってないからね」

白銀「現実の世界の方でやらなきゃいけないことがあって、さ」

巌窟王「バカめ。こんな鉄屑で今更……」

白銀「あと千台近くあるよ」

星「……今、なんて言った?」

白銀「容量不足の問題でこれ以上は用意できなかったけど、千台用意してる。流石にこれだけの物量なら、笑えないよね?」ニコニコ

巌窟王「……」

白銀「さて。それじゃあ、始めよっかな」

獄原「始める? 何を?」

白銀「間引き」

アンジー「間……えっ?」

白銀「おめでとう! あなたたちは見事に首謀者を打ち倒しました!」ニコニコ







白銀「なのでもう用済みです。後腐れなく消えて」



ピカッ



417:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/09(金) 21:01:25.99 ID:E1Tsjr7h0

赤松(瞬間、私たちは悟りました)

赤松(……私たちは負けたのだと)

赤松(……そして、そのことを忘れました)

赤松「え……?」

赤松「あ、あれ?」

赤松(思い出した。思い出したのです。私は第一の事件のクロでした)

赤松(そして、そのことをシロの生徒全員に指摘されて、おしおきされたのです)

赤松(私はそこで、ピアノを模した悪趣味な処刑装置に殺されて――)

赤松「あ、や、やだ! 何、これ! 違う。こんな記憶……!」

赤松「助けて! 誰か……!」

赤松(殺されて殺されて殺されて殺されて……)

赤松「いや……やめて! 消さないで! いやあ!」

赤松「あああああああああああああ!」





白銀「そこで終わり、だよ」



418:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/09(金) 21:08:00.32 ID:E1Tsjr7h0

裁判場


巌窟王「……!」

アンジー「え? 神様? なに? 何が起こったの?」

白銀「あらら。アンジーさんのことを咄嗟に庇っちゃったかー」

白銀「残念。全員一網打尽にできるはずだったのに、さ」

巌窟王「何をした?」

白銀「あははっ! わからないかな。思い出させてあげたんだよ」

白銀「みんなに。『自分が死んでいた』って記憶をね」

巌窟王「……」

アンジー「……何を言っているのか、わからないよー。だって――」

白銀「人間は死んだら終わり。思い出すのは生きた人間の特権。死んだ記憶を保持している人間なんていない……」

白銀「そうだね。そうだけど……」

白銀「……ま、これ以上は言う必要はないか」

白銀「とにかく思い出しライトの効力が一切ない巌窟王さんと、その巌窟王さんに庇われたアンジーさんだけは無事みたいだね」

白銀「今は……」ニコニコ

巌窟王「……」スタスタスタ

アンジー(神様は、アンジーから体を放して、地に落ちたデバイスを取りに向かっていく)

アンジー(楓の姿は……どこにもない)

巌窟王「……赤松たちをどこにやった?」ヒョイッ

白銀「さて。どこでしょう?」

アンジー「……!?」

アンジー(いない。どこにも。この裁判場に、アンジーと神様以外の誰も!)

アンジー(みんな、消えた……!?)



420:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/09(金) 21:13:01.55 ID:E1Tsjr7h0

白銀「さて。どこから説明しようかな。元から巌窟王さんはこの世界に閉じ込める手筈だったんだよね」

白銀「あなたなら絶対に最原くんと対立するだろうしさ」

巌窟王「何が目的だ?」

白銀「すべての真相をあなただけに教えてあげる」

白銀「……そのつもりだったんだけど、アンジーさん以外にも予想外のことがあったみたいだね。そっちも処理しちゃおっか!」



ゴウンゴウンゴウンッ


アンジー「エレベーター……? こっちに向かって誰か来てる?」


チーンッ


ガシャンッ


最原「はあっ……はあっ……!」ゼエゼェ

天海「……ふー……!」ハァハァ

アンジー「終一? 蘭太郎!?」

白銀「……なんでまだこの世界にいるの?」

最原「質問はこっちがする! 白銀さん!」

最原「僕の仲間に何をしたんだッ!」

巌窟王「……!」



426:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 17:56:32.03 ID:pLRq2WqO0

白銀「……間引き」

最原「はあ……?」

アンジー「それさっきも言ってたよねー。一体どういう意味?」

白銀「そのまま文字通りの意味だよ。今回の裁判は余興でさ。『ある一定のルールのもとに生徒をコロシアイから脱落させる』のが目的だったの」

天海「一定のルール……!?」

巌窟王「……最原。天海。他の連中はどうした?」

最原「わからない……わからないんだ。気が付いたら僕と天海くん以外、消えてたんだよ!」

天海「多分、あの光のせいっすね。月が妙に明るいと思ったらフラッシュを焚いて……気が付いたら全員いなくなってたんす」

巌窟王「思い出しライトか」

最原「……多分、そうだ。あの感覚は体に染みついてる」

天海「俺はそのときたまたま『月が眩しいな』って思ってて……ある行動のお陰で光を見ずに済んだんっす」

天海「ありがとう。アマデウスの仮面! キミには助けられてばっかりっす!」

アマデウスの仮面「」ババーンッ

白銀「そんなアホみたいな回避方法で!?」ガビーンッ



427:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 18:03:54.00 ID:pLRq2WqO0

最原「でもわからない。なんで思い出しライトを浴びたらみんなが消えることになるんだ……?」

白銀「一応言っておこうか。最原くんたちのチームの方は、そんな酷い目に遭ってないよ」

白銀「ただちょっと記憶をいじくらせてもらったけどさ。単純に外の世界に出しただけ」

最原「僕たちのチーム?」

最原「……あ、あれ。巌窟王さん。赤松さんたちは?」

巌窟王「こちらも似たようなものだ。思い出しライトを浴びたと思ったら消えていた」

最原「……」

最原(さっき、白銀さんはなんて言った? 『僕たちのチームの方は』って、どういう意味だ……!?)ゾッ

白銀「ま、いっか。どうせ忘れることになるんだから、全部ここで終わらせちゃおう」

白銀「かなり私の身勝手が含まれるから、おそらく推理は不可能だろうからね」

白銀「さて。今回の間引きは、一体何を基準にして行われたのか。それは……」

巌窟王「裁判に正しい答えを示した者でもなく、裁判自体に違和感を示した者でもないのだろう?」

巌窟王「おそらく『最原の選んだ方が問答無用で正解。俺に付いてきた者は間引きの対象』と言ったところか」

白銀「!」

最原「え……? 僕?」



428:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 18:08:14.63 ID:pLRq2WqO0

白銀「……凄いね。流石にこういうことなら最原くんより鼻が利くんだ?」

巌窟王「間引かれた者はどうなった?」

白銀「殺した」

最原「……」

最原「は……い……?」

白銀「……と言っても、巌窟王さんなら信じないだろうね。自分の目で見るまではさ」ニコニコ

巌窟王「ああ。もう俺は何も信じないことに決めたぞ」

巌窟王「……思い出しライトの『正体』にもアタリが付いてきたところだ。もう俺は迷わない」

巌窟王「必ず貴様を焼き尽くす」ゴオオゥッ

白銀「そっか。じゃあ下準備は完成かなぁ?」

最原(なんだ……? 何が起こってる? 殺された? 赤松さんたちが?)

最原(もうわからない。いや、何もわかりたくない……!)



429:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 18:14:56.91 ID:pLRq2WqO0

巌窟王「アンジー。正念場だ。ここで決着を付けねば、後に残っているのは悲劇だけだと心得ろ!」

アンジー「……うん。わかった」

アンジー「ねえつむぎ。もう絶対に許さないよ。ここでブスブスの黒ずみになっちゃえ」

天海「ちょっ、待って! まだ彼女には聞きたいことが!」

巌窟王「答えると思うか?」

天海「いやそうっすけど!」

巌窟王「さあ。エグイサルを呼ぶがいい。すべてを蹂躙してやろう!」

白銀「ん? あはは! ごめんごめん! これが私の切り札だと思っちゃった?」ケラケラ

巌窟王「なに?」

白銀「そんなわけないじゃん! ただの物量で巌窟王さんに勝てるわけないんだからさぁ!」

BB『……! ……!?』ギャーギャー

最原(ん? 巌窟王さんの持ってるデバイスから声が……)

最原(外の世界……? 熱源感知……?)

最原(動いてるヤツが……いる?)



ブシュッ



430:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 18:21:11.97 ID:pLRq2WqO0

アンジー「……お?」ポタッ

巌窟王「……アンジー?」

バタリッ

天海「アンジーさんッ!?」ダッ

白銀「ふっふっふー……『私は』何もしてないよ?」ニコニコ

アンジー「……? ……???」ガフッ

天海「や、やばいっすよコレ! 腹に穴が開いてるっす! 銃で撃たれたみたいな!」

巌窟王「!!」

巌窟王「バカな。この世界はそこまで荒唐無稽なのか?」

巌窟王「過程を経ずして結果が出る。銃を撃たずして銃創ができるとでも?」

白銀「もちろんそこまで滅茶苦茶な設定はないよ。ただ単に……」

白銀「リアルの方のアンジーさんの体が、誰かに撃たれただけ」

巌窟王「……!?」

天海「??」

最原「……ああ、そうか。完璧に理解した。やっぱりこの世界は……!」

白銀「あれ。言ってなかったっけ」

最原(いや。だとするとおかしい。白銀さん含めてみんなこの世界にいるんだ)

最原(外の世界でアンジーさんを撃てる人間なんているわけが……!)

最原「……」

最原「違う。そうか。わかったぞ!」






最原「キミは誰だ!?」



432:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 18:26:49.57 ID:pLRq2WqO0

天海「……え?」

白銀「……ハッタリのつもり?」

最原「ああ、そうだよ。ハッタリだ! ハッタリだった! でも『そういう反応をする』ってことは、やっぱり当たりなんだろう?」

最原「キミは白銀さんじゃない! ただのよくできたNPC……『アルターエゴ』だ!」

巌窟王「!」

白銀「あちゃー! 失態失態! ははっ、本当にやるねー最原くんはさ!」

白銀「流石は一番人気だ! キミを主人公に据えた甲斐があったよ!」ザザッ

最原「……ノイズが……!」

白銀「ふふふ……いや残念。こんな早く看破されなかったら『夢野さんは私の仲間だった』って嘘を流すつもりだったのにさ」

白銀「あはははははははは! あー、残念!」ザザザッ

巌窟王「……退室ログには何も無かったのではなかったのか?」

白銀「裁判中に抜け出したんだよ。ちなみに、本物の私は現実世界の方で悠々自適に、この裁判の様子を見ていたと思うよ?」

白銀「あ。そうそう。溶接した扉に関してはエグイサルで破壊でもしたんじゃない? こんなときのために中に入れなかったんだからさ!」



433:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 18:33:10.06 ID:pLRq2WqO0

アンジー「……関係ない」ググッ

白銀「へ?」

アンジー「……関係ないよ。この程度、なんてことない!」グググッ

白銀「ああ。そう。じゃあ、あと何発かブチ込む?」


ブシュッ


アンジー「あぐっ!」

巌窟王「アンジー!」

白銀「あはっ」

アンジー「……どうでもいい! どうでもいいんだよ! こんな痛み!」グググッ

白銀「……あれっ」

アンジー「アンジーは……みんなと一緒に外に出る……!」

アンジー「神様と一緒に外に出る!」

アンジー「出るんだからぁ……!」バッ

白銀「……這いつくばってなよ」



ブシュッ ブシュッ ブシュッ


アンジー「ぎゃうっ……!」フラッ

巌窟王「……アンジー」

アンジー「大丈夫。アンジーのことは、気にしないで。もう倒れないから……!」

巌窟王「……」

巌窟王「いいだろう。マスターの意思を汲み取り、俺はヤツを焼却する」

白銀「……いいの? アンジーさんに無理させたら死んじゃうんじゃない?」

最原「ッ!」

巌窟王「……」

白銀「……イヤだなぁ。その眼。まずいなぁ。負けちゃいそうだなぁ」

白銀「だから攻め方を変えよう!」キランッ



434:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 18:37:43.64 ID:pLRq2WqO0

ブシュッ

最原「は?」

天海「……え?」ポタッ

天海「お……俺……?」


バタリッ


アンジー「!」

白銀「あ。こっちはついで。大本命はこれからだよ!」ニコニコ


ブシュッ


最原「がっ……!?」

アンジー「あ……終一? 蘭太郎!?」

巌窟王「白銀……そこまでか? そこまで堕ちていたのか、貴様はッ!」

白銀「あはははははは……あー、楽しい。まさかモンテ・クリスト伯から『そこまで』とか言われちゃうなんてなぁ?」

白銀「……まだ『この程度』ってレベルなんだけど? まだまだこれからだよ?」ギロリ




ブシュッ ブシュッ ブシュッ


最原「がっ! ぐっ……ぎっ……ああああああああああッ!」

天海「さ、最原、くん……!」

アンジー「……」



435:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 18:41:39.77 ID:pLRq2WqO0

白銀「アンジーさん。これでいいの? アンジーさんの命とか私自身も本当どうでもいいんだけどさぁ」

白銀「このままじゃ大好きな最原くんが死んじゃうよ?」

アンジー「……あ、あう……!」アセッ

巌窟王「アンジー。今更迷うな」

アンジー「神様。で、でも、終一が……蘭太郎も……!」オロオロ

巌窟王「チッ……!」

白銀「あ。大丈夫。人質なんだからギリギリまで殺さないって」

白銀「私の要求もそこまで理不尽じゃないしね?」

アンジー「要求?」

巌窟王「アンジー! 耳を貸すな!」







白銀「令呪一画残ってたよね? それ使って巌窟王さんに命令してほしいな?」

アンジー「!」

白銀「……命令内容は『一切の行動を取るな』ってところ。大丈夫。これで誰も死ななくて済むから」



439:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 18:48:32.16 ID:pLRq2WqO0

最原「待……て! そんな命令をさせて、巌窟王さんに何を……!」

白銀「最原くんが気にすることじゃないよぉ! 巌窟王さんには死ぬより辛い目に遭ってもらうだけ!」

白銀「ははっ! 大丈夫! 死にはしないから!」

天海「あ、アンジーさん! 俺のことはいいっす! いや、ていうか巻き込まれただけっすからマジでどうでもいいと思うんすけど!」

天海「巌窟王さんと一緒なら、そんな要求飲む必要は……!」


ブシュッ


天海「あぎっ!」

白銀「……最後まで役立たずだったね。天海くん」

天海「ッ!」

白銀「ふふっ。本当、何もできないんだなぁ。キミは」

天海「……」

最原「アンジーさん……お願いだ。やってくれ。僕は大丈夫だから……!」

最原「巌窟王さんを手放したら、それこそ本当のお終いだ! やめてくれ!」

アンジー「で、でも……!」

白銀「……」

白銀「死なせるつもりは私もないけどさぁ?」

白銀「ちょこーっと派手に傷つけるつもりは、あるよ?」

最原「え?」


ブシュッ



最原「ぎゃうっ……!?」

天海「え。あれ。今、頭から血を噴出さなかったっすか?」

天海「……あれ? え? さ、最原……くん?」

アンジー「ひっ……!」



445:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 18:53:11.93 ID:pLRq2WqO0

最原「……だ、だい、じょう……ぶ……」

天海「そんな様子じゃないっすよ! コレ! 頭を思い切りぶん殴られて……!」

天海「これ、シャレになんないっすよ!」

最原「アンジー……さん……! やって……止まらないで……!」

アンジー「……」

白銀「私も本当に。本っ当ーに最原くんを殺したくはないんだよ? ないんだけどさ……」

白銀「それを引き換えにしても巌窟王さんは危険すぎる。だからどうしても制限したいんだ」

白銀「……わかってくれる?」ニヤァ

アンジー「……神様……アンジー……アンジー、は……!」

巌窟王「……」チラッ

最原(巌窟王さん……!)

巌窟王「……ふっ」

最原(……え? 笑った?)

巌窟王(仕方がない、か)



446:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 18:58:45.35 ID:pLRq2WqO0

巌窟王「クハハハハハハ! 白銀よ! 悪手も悪手……最悪手だぞ! これはァ!」ゴオオウッ

アンジー「神様?」

白銀「!」

白銀「あ、あれ。状況見えてないの? 今、二人も人質に……!」

巌窟王「バカめ! こんなものに俺が惑わされると思うか!」

巌窟王「もういい! この程度で! 情に絆されて役立たずになるようなマスターならば必要はない!」

巌窟王「俺の足手纏いになるならば、生徒なぞ知ったことか!」

巌窟王「死ね! 死ね! 殺したければ殺せばいい! その瞬間、貴様の命を終わらせてやる!」カツンッ

アンジー「や、やめ……やめて! お願い! 止まって神様……!」

巌窟王「うおおおおおおおおおおおおッ!」

白銀「ひっ……!?」

アンジー「――!」



447:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 19:00:23.55 ID:pLRq2WqO0

アンジー「令呪を持って命ずる! マスターの名において、我がサーヴァントに対し一切の行動を許可しない!」



ガキンッ



巌窟王「……」ギリリッ

最原「あん、じー……さん?」

天海「ああ……そんな……!」

最原(最後の、令呪が……)

アンジー「消えた……」ヘタッ



448:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 19:04:20.78 ID:pLRq2WqO0

巌窟王「……」

巌窟王「アンジー」

アンジー「……」ビクッ

巌窟王「俺を、捨てるのだな?」

アンジー「あ……あ……いや……」ポロッ

最原(……アンジーさんは、何度も首を横に振る。でも、巌窟王さんは振り向いてないから、わかってない)

最原(そして……アンジーさんは巌窟王さんの顔を見ていないから、巌窟王さんの表情に気付いてない)

巌窟王「……そうか」

最原(その顔は、この最悪な状況にしては似つかわしくないほどに……)

最原(安心しきっていた)





巌窟王(よくやったな。アンジー)



454:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 19:30:34.54 ID:pLRq2WqO0

巌窟王「……」

白銀「あービックリした……まったくもう。完全に人格は『白銀つむぎ』なんだから、私だって死にたくはないんだよ?」

巌窟王「俺をどうするつもりだ?」

白銀「ふふっ。お望み通りにしてあげる! 巌窟王さん、憎まれ口叩いていてもみんなのことが大好きでしょ? だから……」

白銀「……せめて、その道筋には放置してあげるよ。ただ当然代償は貰うけど」

白銀「腕一本くらい残ってれば、這うには充分じゃない?」

巌窟王「!」

白銀「やっちゃえ、エグイサル」




ガシャコンッ ガシャコンッ ガシャコンッ……



巌窟王「最原」

最原「……巌窟王、さん……!」

巌窟王「思い出せ。お前には武器をやっただろう?」

最原(え……?)

白銀「しょーたーいむ」




ブチッ


ブチブチブチッ


バシャッ グチャッ バリッ



巌窟王「ぐ……うおあ……ぐああああああああああああああッ!」



455:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 19:35:08.32 ID:pLRq2WqO0

アンジー「やめて……お願い。もうやめて……」

アンジー「なんでもするから……! 助けて……!」ガタガタ

白銀「ダーメッ。アンジーさんは助けないよ」

アンジー「え……?」

白銀「ふふ。サーヴァントの責任はマスターの責任。決めちゃった! あなただけは私が直々におしおきしてあげよう!」ニコニコ

最原「ッ!」

天海「な、なにを……こんな犠牲を払わせておいて、更にアンジーさんから何を奪う気なんすか!」

白銀「色々と。まだ残ってるもん、利用価値」

アンジー「……」

最原「逃げて……アンジーさん!」

アンジー「ごめん……」

最原「え」

アンジー「なんかもう……ここまでされて……それでも生きる意味が見つからないよ……!」ガタガタ

アンジー「逃げるって、どこに逃げるの……!? 教えてよ終一……! 神様……!」

アンジー「誰か……っ!」

白銀「バイバイ」

天海「!」バッ


ピカッ



456:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 19:40:25.96 ID:pLRq2WqO0

最原「……」

最原「また消えた……?」

最原(なんだ……どこに消えて……?)

白銀「アンジーさんだけは特別室にご案内。そして……さて。通行料を頂いた巌窟王さんは、暗い暗い地の底へとご招待!」

白銀「……アンジーさんも待ってるよ。助けるために頑張ってね。腕一本で」

エグイサル「……」ペイッ

最原「!」

最原(一瞬だけ見てしまった。赤い沁みが大量についた、ボロ雑巾のような何か)

最原(それがいつの間にか床に開いていた穴に、あっさりと落ちていく)

最原(……叫び声が聞こえない。おそらく気絶したのか。さもなくば……声を上げるだけの体力がもう残っていないのか)

最原「……何をさせようとしてるの?」

白銀「巌窟王さんだけが知ってればいいこと。あなたたちにはもう、どうでもいいでしょう?」

白銀「ていうか……」

アマデウス斎藤「……」ハァハァ

白銀「その仮面を被って思い出しライトを浴びないようにしている天海くんはともかくとして」

白銀「なんで最原くんは平気なの? 裸眼で見てるよね?」

最原「……?」



458:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 19:44:41.26 ID:pLRq2WqO0

最原(……いや。平気、というわけでもないのだけど……?)

最原(あの光を見るたびに、頭がボヤッとするし……)

最原(……あれ。僕は何か、大事なことを忘れているような……)




――はい。終一! アンジー、特にいらないからコレあげるよー!



最原「!」

最原(今の声……アンジーさんの……)

最原(そうだ。さっき巌窟王さんも言っていた。僕になにか『武器』を渡したとか……)

最原(心当たりはなくもないんだけど……クソッ! 思い出せない! あと少しなのに!)

白銀「ま、いっか。いくらでも見せてあげるよ。ちゃんと『上書き』できるようにね」

最原「え」

白銀「つむぎちゃんキーック!」カツンッ

天海「ああっ! 仮面が!」

白銀「……今度こそ、バイバイ。二人とも。天海くんにはそれなりに期待してたのになあ?」

天海「え……?」





ピカッ



459:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 19:47:47.08 ID:pLRq2WqO0

――大丈夫。思い出せる。


最原「……!」


――ちゃんと巌窟王から貰っただろ?


最原(黒い髪の少年……! キミは誰……?)

最原(……)








GAME OVER



461:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 19:52:32.75 ID:pLRq2WqO0

病院

最原「……ん……?」

最原「あれ。ここは……」

茶柱「あっ……! 最原さん! 最原さん、目が覚めたんですか!」

最原「え。茶柱さん? 無事だったの?」

茶柱「は……? 無事って?」

春川「……酷い傷だったからね。記憶が混濁してるのかも」

百田「しっかりしろよ終一! まだ死ぬには早ぇぞ!」

最原「……?」

最原「他のみんなは……?」

王馬「みんな? 何言っちゃってんの?」






王馬「六人全員、生き残ってる生徒は全員ここにいるけど?」

最原「……??」



462:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 19:56:11.49 ID:pLRq2WqO0

天海「ははっ……最原くん、俺なんかより随分と酷い手傷っすね」

最原「……あれ。なんでこんなことになったんだっけ……痛っ!」

茶柱「ああ、もう! 無理しないでくださいよ!」

茶柱「覚えてないんですか? あなた、ゴン太さんのおしおきの最中に飛び出して行って、一緒にハチの巣にされたんですよ?」

茶柱「……ゴン太さんに続いて、あなたまで失ったらどうしようかと……!」

茶柱「もうっ!」ベシッ

最原「痛ーーーッ!?」

最原(あ、あれ……? そうだったっけな?)

最原(なんか違和感あるような……?)

茶柱「でもよかった。ちゃんと生きてて……」

茶柱「本当に……よかった……!」ポロッ

最原「……」

最原「?」



465:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 20:00:21.14 ID:pLRq2WqO0

プログラム世界の中

ズルッ ズルッ


巌窟王「……」ズルッ

巌窟王「……」ズルッ

巌窟王(……平気だ。この程度なら、慣れている)

巌窟王「……」ズルッ







白銀「ふふっふー……さあって! いつまで行けるか見物だなぁ」

白銀「一応、理屈上は『助けられる』ようにはしてるんだよ。ゲームだし」

白銀「ただまあ……ゲームオーバーの条件もキチンと用意してるんだけど」

白銀「大したものだなぁ。腕一本だけで進むなんてさ」

白銀「……最初に誰のところに到達したとして、腕一本で何ができるのかもわからないけどさ」ニヤァ



466:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 20:03:10.77 ID:pLRq2WqO0

白銀「……おっと。そうだ。アレのことも忘れずに回収しないとなぁ」

白銀「百田くんのポケットに入れておいたヤツは……まあ処理は終了してるけど」

白銀「プログラム世界内に巌窟王さんが持ち込んだヤツはキチンとデリートしないと」スタスタ

白銀「お。落ちてた落ちてた。服の破片の中にちゃんと転がってた。エグイサル偉い」

白銀「よしよし、じゃあ回収して……」

BB『やばっ! トランスフォーム!』ガシャーンッ

白銀「は?」




ビシュンッ


白銀「……」

白銀「デバイスが飛行機に変形して飛んでったーーーッ!?」ガビーンッ!



467:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 20:06:54.54 ID:pLRq2WqO0

白銀「え、えーっ……予想外なんだけど……まあいいや。放っておこう」

白銀「じゃ。始めようかな……」

白銀「白銀つむぎプロデュース。アンジーさんに対するおしおきターイム」

モノクマ「悪趣味ー」

白銀「ははっ。いいんだよ、それで」

白銀「あ。モノクマ。ちゃんとアレ、細工しておいてくれた?」

モノクマ「もちろん! キーボくんに関してはぞんざいに扱うわけにはいかないし……」

モノクマ「……投票を放棄した生徒を、放置しておくわけにもいかないしね?」

白銀「ふふっふー。楽しみだなぁ……楽しみだなぁ……」

白銀「この絶望を、みんなはどうやって乗り越えてくれるのかなぁ……?」

白銀「あははっ。あははははははははっ……!」



468:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 20:10:02.45 ID:pLRq2WqO0

?????


セーッ……


ダセーッ……




夢野「うおおおおお! 出せーっ! ここからさっさと出すんじゃーっ!」

夢野「ていうか誰か気付けーっ! ウチはここにいるぞー!」ガンッガンッ

夢野「ふーっ……ふーっ……ダメじゃ! 開く気配がないのう! さてどうしたものか」



ヒュンッ


ガツンッ


夢野「ぎゃーっ! 後頭部に何か当たったーーーッ!」ガビーンッ

BB『ぎゃーっ! やっと現実空間に出れたと思ったらぶつかったー!』ガビーンッ

夢野「……」

BB『……』






夢野「んあっ?」

BB『あっ』



470:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/10(土) 20:12:52.10 ID:pLRq2WqO0

第四章
虚構殺人遊戯:才囚学園、改め、架空推理学園ダンガンロンパ


END


残り人数

六人(七人?)+〇騎



TO BE CONTINUED



忘れられた誰かの帽子を手に入れました!



483:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/11(日) 17:56:03.78 ID:k5V2pevP0

最原(白銀さんが赤松さんに殺され……赤松さんが処刑されて……)

最原(キーボくんがモノクマに逆らって処刑されて……)

最原(星くんが東条さんに殺され……東条さんが処刑され……)

最原(アンジーさんと夢野さんが真宮寺くんに殺され、真宮寺くんが処刑され……)

最原(入間さんがゴン太くんに殺され、ゴン太くんが処刑されて……)

最原(そして現在に至る)

最原(現在に至る……?)

最原「明らかに何か忘れているような……」

茶柱「何か言いましたか?」シャリ……シャリ……

最原「いや……」

最原「ところで茶柱さん」

茶柱「なにか?」

最原「ピーラーでリンゴの皮を剥くのは無理があるんじゃ……」

茶柱「安心してください。最悪手が滑って最原さんを殺すことになったとしてもリンゴは最終的にウサギになります」

最原「リスク評価って知ってる?」



第五章

Cosmos in the lostmemories

(非)日常編



484:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/11(日) 18:09:19.59 ID:k5V2pevP0

学園某所

BB『えー。では現状を整理しましょう。そう、あなたのために。デバイスの向こうのあなたのために!』

夢野「そんな『画面の向こうのあなたのためだけに』みたいなセコいやり口に引っかかるような年齢じゃないぞ」

BB『昨日の午後十一時、私たちはある事件に遭遇しました。そう、あの悍ましい夢野さん殺人事件に……』

BB『巌窟王さん含め、残りのメンバーたちは必至こいて証拠を収集。なんとか白銀さんが犯人だという真相に辿り着いたのですが……』

BB『そもそも夢野さんが死んでいたことどころか、世界観すらプログラムの中での設定でしかありませんでした』

BB『そう! 巌窟王さんたちは現実の世界にいた、と思いきや思いっきりプログラムの世界に囚われたままだったのです!』

BB『というのが、通信が大分復旧してから掴んだBBちゃんの情報です』

夢野「毎度毎度気になっておったんじゃが、そろそろ聞かせてくれるかのう」

夢野「巌窟王のホームはどうやって、この才囚学園の様子を見ていたんじゃ?」

BB『手段は二つほど。いや二種類と言った方がいいですかね』

BB『まず一つ目。このデバイスのマイクとカメラを使って遠隔から見ています』

BB『当然、百田さんが最近まで持っていたアレもキッチリ稼働していましたよ』

BB『そして二つ目が……あなたたちの傍にいた謎の喋るカメラくんです』

夢野「んあ? 喋るカメラ? そんなものいたかのう?」

BB『ええっと、確かみんなは彼のことをキーボだとか言ってましたね』

BB『アレなんだったんです?』

夢野「超高校級のロボットじゃが……」

BB『えっ。ああ! 十六人目の高校生って彼のことだったんですね!?』ガビーンッ

夢野(酷い)

BB『というのは当然冗談です』キランッ

夢野(酷さ倍化)



485:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/11(日) 18:16:37.25 ID:k5V2pevP0

BB『あの謎解きゲームの末、この学園の生徒は二つのチームに別れました』

BB『一方は裁判そのものに不信感を抱いた最原くん率いる現実組』

BB『一方は真実そのものを後回しにして復讐を遂げるために巌窟王さんが率いたゲーム組』

BB『なお命名はBBちゃん』

BB『白銀さんの言によれば現実組は記憶を弄った上で外に出したとのことでしたが……』

BB『ここから先は実際に調査しないとわかりませんね』

BB『まあだからと言ってゲーム組の全容もわかっているわけじゃないのですが』

夢野「ゲーム組は今どうしてるんじゃ?」

BB『それがBBちゃんでも片手間では調べられないどこかへと飛ばされちゃったようでして……』

BB『あの言動からすると、全員生きてはいるんでしょうが、巌窟王さんだけは死ぬより辛い目に遭っているはずです』

BB『いや……もしかするとゲーム組全員が……』

夢野「……なんとかできんのか?」

BB『さて。それを成すためにはどうしても夢野さんの協力が必要です!』

BB『脱出ゲームスタート! どうにかしてここから、一緒に脱出して学園へと戻りましょう!』

夢野「でもそれが白銀にバレたら、また閉じ込められるか、下手すれば殺されるかするじゃろうなぁ?」

BB『あ。大丈夫です。こちらにも奥の手がありますので……』

夢野「……?」



494:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/11(日) 20:36:13.42 ID:k5V2pevP0

病室

茶柱「できました! 可愛いウサギちゃんですよー!」

最原(過程は見るからに滅茶苦茶だったのになぁ)

最原「……食べるのがもったいないね」

茶柱「え?」シャクシャクシャク

最原「自分で食べちゃうの!?」ガビーンッ

茶柱「……冗談ですよ。キチンと最原さんの分もありますって」

茶柱「はい、皮の部分」

最原「嫁姑戦争並みの陰険さ!?」ガビーンッ

茶柱「……」

茶柱「いえ。本当はその……ちゃんとあげようと思ったのですが……」

茶柱「……」カァァ

最原「……」

最原(照れ隠しだったのか……!?)ガビーンッ



495:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/11(日) 20:42:53.42 ID:k5V2pevP0

茶柱「……東条さんがいればもっと早く治ったのかもしれないのですが」

茶柱「しばらくは病室で絶対安静ですよ。三日ほど」

最原「三日で治るの?」

茶柱「そんなわけないでしょう。ただ『三日経ったら最低限動ける』程度の話でしかありません」

茶柱「無理したら死にますよ」

茶柱「そして死んだら地獄まで追跡してグーパンしますよ」

最原「死んだ後くらい静かに眠らせておいてよ!」

最原「……」

最原「ねえ茶柱さん。なにか忘れてることないかな?」

茶柱「忘れてること?」

最原「なんか……人数が足りない気がして……」

茶柱「……忘れてませんよ。忘れられるわけないじゃないですか」

茶柱「この学園に来てからのすべてを、忘れられるはずが……」

最原「……」

最原(そうだよな。やっぱり疲れてるのかな?)



496:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/11(日) 20:49:23.87 ID:k5V2pevP0

最原「ごめん。頭がちょっとぼんやりしてるんだ。このまま寝ちゃうよ」

茶柱「ええ。おやすみなさい」

最原「……あ。その前に」

茶柱「その前に?」

最原「そこに飾ってあるぬいぐるみって誰が持ち込んだの?」

エウリュアレちゃん人形「」ドーンッ

ステンノちゃん人形「」ドーンッ

メドゥーサちゃん人形「」ドーンッ

茶柱「……さあ?」

最原「なんだろう。見てるだけで滅茶苦茶不安になるんだけど……」

茶柱「気のせいでは? 可愛いですよ?」



497:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/11(日) 20:57:02.73 ID:k5V2pevP0

天海の研究教室

天海「……」

天海の映像『これはキミ自身が望んだコロシアイっす。だから……』

天海の映像『絶対に勝たなきゃダメっすよ』

天海(ああ。思い出した。ちょっとだけ……断片的にだけど)

天海(そうだ。俺は望んでこのコロシアイに参加したんだった)

天海(……そうか。こんな階層に、しかも四回の学級裁判を経た後に、この研究教室が解放された理由がやっとわかった)

天海「もうこの時点で……生存者特典に大した理由はない。ほとんどの区画が解放されてるんすから」

天海「そして、今この段階で俺が才能を思い出しても……」

天海「全部、手遅れなんすね」

天海「……ははっ。あはははははははは……」




ガシャンッ


パソコン「」バキンッ

天海「……う、うお……おおおおお……!」

天海「ああう……うううううううううううう……!」

天海「うわあああああああああ……!」



498:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/11(日) 21:03:21.12 ID:k5V2pevP0

校舎の外

百田「……今日は調子がいいな! よしっ!」

春川「今日『は』?」

百田「なんでもねぇ! 今日もの間違いだ!」

百田「さぁって! 病室で暇している終一のために、図書室でなにかしら本を持ってきてやるぜ!」

春川(……妙に元気だな?)

春川「ちゃんとタイミングは見てよ?」

百田「お? おお……なんか最近茶柱と終一はいい感じだしな。空気は読むぜ。最低限」

春川「あと、変なのもちこまれたら困るから、私も付いてく」

春川「エ口本とか持ち込んだりして茶柱に見つかったら血の雨だよ?」

百田「……お、おう」ビクッ

春川(やるつもりだったな、コイツ)





図書室

王馬「えっろほーん。えっろほーん」ルンルン



500:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/11(日) 21:20:47.08 ID:k5V2pevP0

カルデア

BB「さあ女神のみなさん! 夢野さん大脱出作戦の始まりですよーーー!」

女神陣「イエエエエエエエエエエエエエエエエエイ!」

イシュタル「うわあ。随分とまあ視聴者が増えたわねー」

ナーサリー「今更だけど布教したことを凄まじく後悔してるのだわ」

BB「ひとまずアンジーさんに与えるはずだった加護を持て余しているみなさんは振るってご参加ください!」

BB「残っている女神系サーヴァントは……」

ジャガーマン「私かにゃあーん(猫なで声)」

BB「……」

セミラミス「一応神性はもっているが、我は加護なぞ与えんぞ」

BB「……」

酒呑童子「……」ニヤニヤ

BB「……」

BB「一番まともで使えそうなのが、なんとジャガーマンさんオンリー……!」ガビーンッ



501:逆転の人 ◆SxyAboWqdc 2018/02/11(日) 21:27:49.30 ID:k5V2pevP0

BB「ま、まあいいです。幸い、こういうことに関してはジャガーマンさんの得手でしょう! 奇しくもね!」

イシュタル「今更だけど、アンタの娘たちも確か神性持ちよね?」

BB「刺激が強すぎるので今回はパスさせました!」

ナーサリー「わあ家族思い」

イシュタル「違うわよー。これ間違っても主導権を奪われたら困るっていう美味しいとこどりの本能だから」

セミラミス「あさましいな?」

イシュタル「え? あなたが言うの?」

酒呑童子「うちは協力してもかまへんよ?」ニヤニヤ

ナーサリー「進言するわ。BB。多分アレを巻き込むと未成年の生徒たちに間違いなく悪影響なのだわ」

BB「ですよねー」

夢野『うおーい。まだかー?』

BB「はい! 大丈夫です! やれます!」

BB「……一緒にみんなのところに帰りますよ!」



最原「僕らが往くは恩讐の彼方!」 巌窟王「これで終わりだ!」【後半】
元スレ
最原「僕らが往くは恩讐の彼方!」 巌窟王「これで終わりだ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1515924300/
このエントリーをはてなブックマークに追加

  • 今週の人気記事
  • 先週の人気記事
  • 先々週の人気記事

        記事をツイートする

        記事をはてブする

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

        カテゴリ別アーカイブ
        月別アーカイブ
        記事検索
        スポンサードリンク
        スポンサードリンク

        • ライブドアブログ
        © 2011 エレファント速報:SSまとめブログ. Customize by yoshihira Powered by ライブドアブログ