地方大学に入学してまだ初めての独り暮らしに慣れてなかった頃、大学から知り合って数日の同じ一年A子と並んで自転車で帰ってた。
住宅街の車一台通れるくらいの道を並んで自転車で走ってたのでこちらも悪かった。
右に曲がり角がある辺りに差し掛かった時、同じく自転車に乗ったおばちゃんが後ろから右内側へ入ってきた。
突然の事で驚いている間に右に曲がりきれずに私の自転車と接触して二人して転倒
「すいませ・・・」
と言おうとした時、もの凄い剣幕でおばちゃんに怒られた。
「こんな道に二人して走って並んで!」
「自転車壊れたじゃないの!どうしてくれるのよ!」
見るとおばちゃんの古い自転車のカゴは倒れた衝撃でひし形に
「ここ怪我したわよ、膝!」
ズボンで見えなかったが怪我をしたという言葉に顔面蒼白になって、もうどうして良いか分からなくなった。
「こんな道を二人で並んで走って、どういうつもり?!自転車弁償しなさいよ!怪我の治療費も払ってもらいますからね!」
自分のせいで、自転車も壊して、怪我までさせて、もうどうして良いか分からなかった。
「大学生ね?親の連絡先を教えなさい!全部弁償させるから。早く教えなさい!」
せっかく下宿先を探してくれて、涙目でつい数日前に地元へ帰っていった母親に大学に入って数日でこんな事件起こしてお金を払わせなきゃいけない。
もうね・・・情けないのとパニックとで私はどうしようもない状態だった。
とそこで今まで黙っていた東京出身のA子が冷静に口を開いた。
「確かに二人並んで走っていた私たちも悪い。けれどもどうして内側から右に曲がろうとしたのですか?あなたが通るスペースは充分空いていたはずです。なのにわざわざ通るスペースもない内側から右に曲がろうとされた。私達も悪いですが、あなたも悪いです。」
「はぁ?!どういうつもり?!そもそも二人して並んで走ってたからこんな事になったんじゃないの!自転車壊して、怪我までさせて!この自転車どうしてくれるのよ!」
「えぇ、私たちも悪いです。すいませんでした」
A子はおばちゃんの自転車を起こして曲がったカゴを引っ張って元の四角に戻した。
「直しました」
おばちゃんは唖然。
「私達も悪いです。ですがあなたも悪いです」
おばちゃんは小声で何か言いながら自転車で去っていった。
呆然として口がきけない私の自転車を起こしてA子
「私も並んで走ってて悪かった ごめんね」
あの時は世間知らずの子供で何も分からなかった時だったから、冷静に対応したA子を心底尊敬した。