中学入学から1年半、夏休み前までの俺はクラスのいじめられっ子だった。
俺の天敵は3人。
いつも俺は奴らのおもちゃだった。
たとえて言えば、「お財布持参の買い出し係 兼 ストレス解消サンドバック係」という感じだろうか?
今年の夏休みが終わった始業式の日の朝。
ホームルーム前の教室で、いつもの3人がこれまたいつものように俺にちょっかいを出してきた。
「○○~(俺の名前)久しぶりだから殴らせろよ!」
俺はいつものように蛇に睨まれた蛙のごとく固まった。
周りはいつもと同じで、何も起きていないかのようにそれぞれが話しに夢中になっている。
A(一番弱そうだけど一番生意気なヤツ)が「おらおらおらおら」と何度も言いながら殴ってきた。
そのとき俺は怖かったが手を出した。
どうして反撃しようとしたのか憶えていないが、自分でも不思議なくらいに身体が軽く動いた。
カウンター気味に○足の顔に俺の拳がヒットした。
Aはその場にうずくまって動かなくなった。
B(痩せているが長身で口がうまい)が何かをわめきながら掴みかかってきた。
俺は何をしたか憶えていないが、気が付いたらコイツも顔を押さえてうずくまっていた。
何? こいつら弱い?
なんで、俺はこんなに弱い奴らにいじめられていたんだろう?
一瞬だがそんな風に思ったら、後は無我夢中だった。
完全に俺を押さえていた何かが吹っ飛んだんだろう。
いじめの中心人物Cに向かって一直線に走り、必死で抵抗する腕を強引に掴んで振り回し教室の入り口扉に叩きつけた。
Cは扉のガラスに腕を突っ込んで血まみれになった。
そこから先はよく憶えていないんだけど、戦意喪失した奴らに更に殴る蹴るを加えた上に、どうやら椅子を持って投げつけたりしながらこの3人を追いかけ回したようだ。
気が付いたら先生3人にホールドされて職員室に連行された。
俺は、今までのことを涙ながらに全部訴えた。
でも先生は、暴力をふるった俺が悪いと言う。
あいつらには親を呼んで厳重注意する事になったようだが、俺は転校処置。
治療費や見舞金もうちの親が払ったようだ。
母親からはこっぴどく叱られたが、父親は「ケガさせたのは良くないが頑張ったな」と言ってもらえた。
俺は隣の学区の学校で今を迎えている。
ここではいじめられていないし、その後あいつらが何かしてくることは無くなった。
自分で言うのも何だが、明るくなって友達もできた。
あの辛くて悲しい1年半は何だったのだろうか。