うちの向かいにすんげー迷惑な隣人がいたのよ。
50過ぎの爺さん婆さんで、住宅街のど真ん中で薪ストーブつけて異臭を放っていた。
薪ストーブは扱いに注意して専用の燃料を使えば、臭いも煙も最低限に抑えられるんだけど、そこん家は中国製のやっすい薪ストーブと乾燥してない廃材使ってたから、臭いや煙がすごかった。
そりゃあ洗濯物なんて干せやしない。
あとは廃材を切ったり、割ったりする音がうるさかったよ。
朝早くから始めるからゆっり寝てもいられない。
もちろんクレームなんて言ってもダメ。
終いには「敷地内に入ってくるな!」とか言いやがるの。
何回か市役所や区長にも相談したんだけどダメだった。
取り締まる法律がないからお願いしかできないんだと。
今までいろんな人間を恨んできたけど、あそこの住人以上に恨んだ奴はいなかった。
自分個人の問題ならいいけど、家族も日に日にノイローゼ気味になるし、両親はもう歳だったから、病気になるんじゃないかと毎日心配してた。
まあ、注目したのが一ヶ月に一回くらい孫を連れて帰省してくる娘。
帰省の頻度が多めだし、旦那を連れてきたこともないから気にはなっていた。
近所のおばさんの話だと、父親(薪ストーブ家のジジイ)がうつ病らしくて心配だからちょくちょく帰ってきてるとのこと。
俺はその時ノイローゼ気味になっててさ、娘は夫婦生活がうまくいってないからちょくちょく帰省していて、地元の同級生と浮気しているに違いない。
とかおかしなこと考えたんだよな。
それで、一人でかける娘を何回か尾行したんだよ。
それでついに娘と男が逢引してラブホテルに入るのを見たわけだ。
俺はその瞬間をカメラに収めた。
以降も尾行は行い、同時進行で娘の家も特定した。
娘は意外にも市内に住んでいた。
男と旦那さんが別人ということも発覚。
それで三ヶ月くらいかけてためた写真を、娘が帰省している時を見計らって娘宅のポストに投函。
嫌がらせ程度になればと思っていたが、一ヶ月後ぐらいして薪ストーブ家が売りに出された。
娘の不倫が発覚して旦那に慰謝料を支払うことになったらしい。
出所の分からない写真でも不倫の証拠になるもんなんだね。
それで実家を売りに出すことになったそうだ。
出来過ぎな結果に、これはさすがに驚いた。
そして、またしばらくして薪ストーブ家は地元の金持ち爺さんに買いとられ、今はアパートが建っている。
家族も日に日に元気を取り戻していった。