俺がまだ生まれて無い頃なんだが、自分のひい爺さんに当たる人が亡くなったときに、大層すごい遺産が残ってたそうな。
現金はもちろん、土地の権利とか、けっこう伝統もある家なんで骨董品類とかな。
一通り相続すれば、相続税を考えても美味しい額だったらしいんだが、よくある話で遺族連中が相続で揉めたらしい。
主に揉めたのは、爺さんの兄弟二人だったとか。
それを聞いて今の俺の家に婿にいってた爺さんが、実家に戻って家に上がりこむなり二人のとこに言って、「俺の分の遺産は、お前らに全部くれてやる。何もいらん。その代わり、兄弟でつまらん喧嘩なんぞするのはやめろ」
って言って、ホントに相続放棄の書面を書いて帰って来たらしい。
兄弟にここまでされたら骨肉の争いも止まざるをえなかったようで、その後は爺さんの実家も平和になったらしい。
俺が生まれた後でも語り草になっていた、そんな爺さんの武勇伝。
ちなみに、大金を兄弟の和のためにあっさり捨てた金銭欲の無い爺さんだが、別にそれが元で貧乏になったとかはなく。
爺さんが自分の仕事の業績で貰った、藍綬褒章やら瑞宝章やらの勲章が、今でもうちの応接間に飾ってある。