薬剤師「ジュラシック医薬品はいかがですか?」
- 2020年01月24日 22:10
- SS、神話・民話・不思議な話
- 9 コメント
- Tweet
青年「ありがとうございます」
薬剤師「ところで、あなた……ふむ、適性がありそうだ」
青年「適性?」
薬剤師「ジュラシック医薬品はいかがですか?」
青年「え? 聞き間違いかな……ジェネリック?」
薬剤師「ジュラシックです」
青年「は?」
青年「ロマンというよりパニックになりそうですけど」
薬剤師「そこで私は独自にこの薬を開発したんです。名づけてジュラシック医薬品!」
薬剤師「これを飲めば、少しの間ティラノサウルスになることができるのです!」
青年「は……?」
薬剤師「ただし、適性のある人じゃなきゃ飲んでも効果ないですし、そんな人なかなかいないですけど」
薬剤師「あなたならきっと大丈夫!」
薬剤師「おっと、ティラノサウルスはジュラ紀ではなく白亜紀の恐竜だなどと突っ込まないで下さいよ」
青年「いや、もっと突っ込みたいことが一杯あるんですが」
薬剤師「副作用はないですし、もし興味があったら飲んでみて下さい。あ、くれぐれも屋外で」
青年「はぁ……」
青年(ティラノサウルスになれる薬か……バカバカしい)
青年(だけどちょっとだけ気になる……飲んでみるか)パクッ
青年「……」
青年「別になんともならないな」
青年(この薬はビタミン剤かなにかで、きっとあれは僕をからかうための作り話だったんだ)
青年(人間が恐竜になれるわけが――)
青年「う゛!?」
青年「う、うおおおおおお……」
メキメキ… ミシミシ… メリメリ…
ティラノサウルス「ギャオオオオオオオンッ!」
ティラノサウルス「これは……!」
ティラノサウルス「どうしよう、本当にティラノサウルスになっちゃったよぉぉぉぉぉ!」
主婦「キャーッ!」
ティラノサウルス「あ……!」
「恐竜だーっ!」
「ママーッ!」
「助けてくれーっ!」
ティラノサウルス(どうしよう、どこか隠れないと……)ズシンズシン
ティラノサウルスダヨアレ!
ドコイッタ!?
ティラノサウルス(なんとかビルとビルの間に隠れられた……)
ティラノサウルス(“少しの間”っていってたし、元に戻れるまでこのままじっとしてよう……)
―学校―
青年「おは……」
女「おはよー!」ダダダッ
青年「わっ!」
女「ねえ、ニュース見た? 昨日この近くにティラノサウルスが現れたって!」
青年「ああ、あれ……」
女「現代にティラノサウルスがいるなんて夢みたい!」
女「他にもブラキオサウルスとかスピノサウルスとかアロサウルスとか出てこないかなー」
青年「アハハ……」
青年(さすが恐竜マニア、大喜びしてるよ)
女「だけど動画撮ってる人もいたのよ?」
眼鏡「誰かの作り物だって」
女「あんな大きいのを? どうやって?」
眼鏡「なにかトリックがあるのさ」
女「ねえどう思う?」
青年「え、僕? うーん、そうだなぁ……」
青年「もし現代に恐竜がいたらロマンがあるな、とは思うよね」
女「でしょでしょ!」
眼鏡「見つかるわけない……時間の無駄だよ」
級友「さすが恐竜マニア!」
女子「家に恐竜のフィギュアいっぱい飾ってる筋金入りだもんね」
女「もし写真撮れたら、みんなにも見せるからね!」
青年「と、撮れるといいね!」
女「うん!」
キャスター『住宅街でティラノサウルスが目撃されたとのことですが……』
専門家『おそらく、大型爬虫類の見間違いでしょう。恐竜は絶滅したんですから……』
学者『いいえ、恐竜はいまぁす!』
学者『長年私の唱えてきた“恐竜生存説”がついに実証される時が来たのです』
学者『私はどんなことをしても、ティラノサウルスを捕まえてみせる!』
学者『私が今までどれだけ界隈でバカにされてきたことか……! クックック、ついに見返す時が……!』
キャスター『はい、ここでいったんCMでーす!』
青年(すごい騒ぎになっちゃったな……)
青年(女さんには悪いけど、もうあのジュラシック医薬品は飲まないでおこう……)
―学校―
女「……」ズーン
青年「どうしたの?」
女「昨日、真夜中まで探したのに、ティラノサウルスは影も形もなかったわ……」
青年(それはそうだ。あれは僕なんだから)
眼鏡「ふん、だからいったろう? 恐竜なんかいるわけないって」
女「……」ズーン
青年(今日一日、ずっとこんな具合だったな……)
青年「……そんなにティラノサウルスに会いたい?」
女「会いたい! ティラノサウルスっていえば……恐竜の王様なんだから!」
青年「じゃあさ、今夜……9時頃、近所の公園に行ってごらん」
青年「もしかしたら……会えるかもしれない」
女「どうして?」
青年「いいから。行くか行かないかは、君次第だ」
女「……?」
―公園―
女「……」キョロキョロ
女「ティラノサウルスー、いるなら出てきてー」
青年(僕の言葉を信じて、来てくれたみたいだ)
青年(よーし……)パクッ
メキメキ…
女「えっ、ティラノ!?」
女「キャーッ、夢みたい! ウソでしょ! すごい!」
女「写真撮らなきゃ!」パシャパシャパシャ
ティラノサウルス(えっ、あっ……)
ティラノサウルス(ポーズ取っちゃえ)クイッ
女「うわっ、いいポーズ!」
ティラノサウルス(こんなに喜んでくれて……やってよかった……)
青年「どうだった? ティラノサウルスには会えた?」
女「あ、ホントに会えたよ! ティラノサウルス! 超ラッキー!」
青年「それはよかった。だけど……このこと、内緒にしといてくれないかな?」
女「どうして?」
青年「だって……えぇと、恐竜も住みにくくなっちゃうと思うし……」
女「うん、分かった。マスコミやドラえもんの恐竜ハンターみたいなのが押し寄せてきても困るし!」
青年「ありがとう」
眼鏡「どうだった? ティラノサウルスには会えたかい?」
女「ううん、ダメだった。やっぱり恐竜は絶滅しちゃったんだよ」
眼鏡「ほらね……恐竜なんかいるわけないんだ」
級友「だけど、やけにあっさり主張を覆したな……」
女「そりゃ間違ってたらすぐ訂正しないと。傷が大きくなるだけだし。ね?」チラッ
青年「う、うん。そうだね」
青年(本当は会えたのに、僕のいうとおりにしてくれた……)
ティラノサウルス「ギャオオオオオン!」
女「キャーッ! また会えちゃった!」
青年「どう? 今日も現れた?」
女「うん、今日も出たよ、ティラノサウルス! かっこよかったー!」
青年(いい笑顔だ……)
青年(僕はこの笑顔が見たくて、ティラノサウルスになってるのかもしれないな)
青年(ここんとこ、毎晩のようにティラノサウルスになってる……)
青年(薬剤師のいうとおり、特に副作用もないようだ)
青年(ティラノサウルスになってる限り、彼女はずっと喜んでくれるけど)
青年(このままでいいのだろうか?)
青年(このまま彼女を騙し続けて……いいのだろうか?)
ティラノサウルス「ギャァァァァァス!」ズシンズシン
女「キャーッ!」パシャパシャッ
女「今日もいっぱいいい写真が撮れた! 永久保存しちゃう!」
ティラノサウルス(よかった……)
女「どうもありがとう!」
ティラノサウルス「ギャオ!」
女「それじゃ……」
ティラノサウルス「うん!」
女「……やっぱり」
ティラノサウルス「……あ」
女「青年君だよね?」
ティラノサウルス「あ、いや、これは、その……」
女「時間と場所を指定したのは青年君だし、青年君とティラノサウルスが同時に現れたことないし」
女「いくら私でも気づくって!」
ティラノサウルス「だよね……。ごめん、全部話すよ」
ティラノサウルス「ごめん……」
女「ううん、だって私を喜ばせるためにやってくれたんでしょ?」
女「だけど、もうやらない方がいいよ。薬ってどんな副作用があるか分からないし」
ティラノサウルス「うん……」
女「今までありがと!」
ティラノサウルス「女さん……」
ティラノサウルス(気にしてない風を装ってるけど、彼女の顔はどこか寂しげだった)
ティラノサウルス「バイバイ……」
学者「……見たぞ。まさかこんな公園にティラノサウルスがいるとはな」
学者「しかもあの女……ティラノサウルスを完全に手なずけている!」
学者「ということは……クックック……」
スタスタ…
女「じゃあ、薬はもう残り少ないんだ」
青年「うん、だからどっちにしろもうすぐティラノサウルスにはなれなくなってたんだよ」
女「よーし、今日は今までのお礼に、私の恐竜コレクション見せてあげる!」
青年「え、いいの?」
女「うん、パキケファロサウルスについて熱く語ってあげる!」
青年(パキケ……? 聞いたことないな)
二人「!」
青年(この人、たしかテレビに出てた……)
女「あっ、あなたはたしか“恐竜生存説”を唱えてる……なにかご用ですか?」
青年(やっぱり知ってるんだ)
学者「君……私とともに来い」ガシッ
女「きゃっ!」
青年「いきなり何をするんですか!」
学者「私は見たのさ……。君が夜の公園で、ティラノサウルスと仲良くしてるのをね」
青年(見てたのか……!)
学者「君が力を貸してくれれば、私の“恐竜生存説”は必ず立証される!」
学者「私をバカにしてきた者どもを見返すことができるんだ!」
学者「さいわい私の研究所はすぐ近くにある……さあ、早く来い!」グイッ
女「は、はなして……!」
青年「待って下さい!」
学者「んん? 君如きに用はないんだが……」
青年「ティラノサウルスが見たいんでしょう? だったら見せてあげますよ」
女「ダ、ダメ! こんなところじゃ大騒ぎになっちゃう!」
青年「いいんだ。よぉく見てて下さいよ」パクッ
学者「薬を飲んだ……?」
青年「……?」
青年(あれ? ティラノサウルスにならない……?)
学者「なにがティラノサウルスを見せるだ。全然現れないじゃないか」
学者「やはり、カギを握ってるのは君の方らしいな」グイッ
女「やめてっ!」
青年「ちょ、ちょっと! なに考えてるんですか!」
学者「うるさい!」バチバチッ
青年「がっ!(スタンガン……!?)」
学者「さあ、私の研究所に招待しよう。なぁに、すぐ近くにあるから」
女「はなしてぇ!」
学者「いいか小僧、もし通報などしたらこの娘は殺してしまうからな!」バタンッ
青年「ま、待て……!」
ブロロロロロ…
薬剤師「ティラノサウルスになれなくなった?」
青年「はい……今までずっとなれたのに……」
薬剤師「おそらく、耐性ができてしまったのかもしれませんね」
薬剤師「やはり、あのジュラシック医薬品は不完全だったか……うーん、残念」
青年「どうにかならないんですか!?」
青年「なんとか僕がティラノサウルスだったって証明して、彼女を助けないと……!」
薬剤師「んー……一つだけ方法があります」
青年「これは……?」
薬剤師「この錠剤は“超ジュラシック医薬品”とでもいうべき薬品です」
薬剤師「ただしこれを飲んだら、もう人間には戻れないと思った方がいいでしょう」
薬剤師「どうしますか?」
青年「……」
青年「ください! 僕は彼女を無事助けられればそれでいいんです!」
学者「さあ、ティラノサウルスを呼んでくれ!」
学者「きっと君はティラノサウルスを自在に呼ぶ術を持ってるんだろ? 私には分かってるんだ!」
学者「いいや、きっと他の恐竜だって呼べるはずだ! 間違いない!」
女「だから、なんのことだか……」
学者「しらばっくれる気かい? まぁいい、そっちがその気なら……」
学者「君を眠らせて、君の身体を外側から内側まで勝手に調べさせてもらうことにしよう」
学者「そうすれば、君の体からなにか恐竜に繋がるものを発見できるかもしれない」
学者「いいや、絶対発見できる! さっそく麻酔薬の用意だァ!」
女(目が血走ってる……。この人、常軌を逸してる……!)
青年(よーし……さっきもらった超ジュラシック医薬品を……!)
青年「……」パクッ
青年「……」
青年「……」
青年「何も変わらないじゃないか!」
青年(どうしよう……。やっぱり警察に……)
青年(だけど彼女が中で何されてるか分からないし……このまま突入するしかない!)
青年「よっと」バッ
ドーベルマン「ガルルルル……!」
青年(番犬!? こんなの飼ってるのか……!)
青年(襲いかかられたらひとたまりもない……逃げるか!?)
青年(いや、彼女を救うなら、もうためらってる暇はない!)
青年(僕は……ティラノサウルスだッ!!!)
ドーベルマン「ガウッ!」ビクッ
青年「グオォォォォォォォォォォン!!!」
ドーベルマン「……!」
青年「ギャオォォォォォォォォォォォォォォォン!!!」
ドーベルマン「グルルルル……」ヘタ…
青年「伏せてくれた……ごめんよ、ありがとう!」
学者「これを打ったら、おそらくもう正気には戻れないだろうけど、かまやしないだろう?」
学者「それで“恐竜生存説”を証明できるんだから……!」
女「やめて……やめてぇぇぇぇぇっ!」
ドンドンッ!
学者「……む?」
女「え!?」
青年「ギャオオオオオッ!!!」
学者「な、なんだ!? こいつはさっきの――」
女「青年君!?」
青年「ギャァァァァァァァァス!!!」
学者「ひっ……!」
青年「女さんを……返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
青年「ギャオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!」
学者「うわああああああっ! 恐竜だぁぁぁぁぁっ!」
青年「もう大丈夫だよ」
女「ありがとう……!」
青年「さあ、約束通り、君の恐竜コレクションを見せて欲しいんだ」
女「うん!」
女「今の青年君は……ティラノサウルス並みに迫力があって……かっこよかったよ」ニコッ
青年(この笑顔はあの時と同じ――)
青年「そ、そうかなぁ? アハハ……」
青年「勉強させてもらうよ!」
薬剤師(手助けに来ましたが、どうやら必要なかったようですね)
薬剤師(ちなみに、さっき渡した薬はただのビタミン剤です)
薬剤師(それにしても……現代にもあの青年という恐竜がいたと分かって、嬉しい限りですよ)
―おわり―
「神話・民話・不思議な話」カテゴリのおすすめ
- 面接官「面接を始めます」就活娘「あなた、もしかして……お兄ちゃん!?」
- 男「二人目の彼女を愛せるか」
- メイド「だから愛しています”ご主人様”」
- 女「あ、あのね・・・男君、S●Xって・・・したことある?」男「」
- 人工知能「コレデ“詰ミ”デスネ」 プロ棋士「ううっ……」
- 猫「ふざけんな!」シュレーディンガー博士「すまぬ…すまぬ…」
- 「その昔…ケツは割れておらず、一つの山であった」
- 婆「桃から男の子が!」爺「竹から女の子が!」
- 男「人を襲うモンスター……」魔物娘「……ち、ちがう」
- 大学「さぁ~やって参りました!受験生!では第一回受験!」
- 女神「あ、貴方が落としたのはこの健全な画像zipですか?」
- 男「寺生まれのTさんVS壁殴り代行」
- たい焼き「らめぇ・・・僕和菓子だよぉ」
- ユニクロ「おいしまむら死ねよ」しまむら君「……」
- 一橋「何でコイツとペアみたいな位置づけなの?」 東工「ヌホww」
「ランダム」カテゴリのおすすめ
- 星奈「夜空のゲロ、家に持って帰ってきちゃったわ」
- モバP「鬼は外!」茄子「福は内♪」
- J( ’ー`)し「カアチャンと契約して社会適合者になりなさい」
- 渋谷凛「シェアハウスの恋敵」
- 火憐「それじゃ私、歯磨いて寝るね……」
- 一夏「あァ!?俺がISの適合者だと!?」(CV:藤原啓二)
- シンジ「最近アスカが彼女面してうざい」
- 女騎士「くっ・・・殺せ!」にゃんちゅう「オウ!」
- 戒斗「アラガミアームズだと?」
- P「意味はないけど」
- セキセイインコ「テメエのドジの落とし前」
- モバP「飛鳥が可愛い」
- 岡部「離合集散のアンフィビアン」
- 海馬「トイレに紙がないだと!?」
- 一夏「学園での様子をテレビで喋ったら大変なことになった」
コメント一覧 (9)
-
- 2020年01月24日 23:01
- 蛇足やなあ
-
- 2020年01月24日 23:35
- 対抗CO!
私もティラノサウルスです!!
-
- 2020年01月24日 23:37
- ディエゴ「スケアリーモンスターズ!!」
-
- 2020年01月24日 23:44
- 蛇足
-
- 2020年01月25日 00:03
- なんJに同じようなネタあったぞ
-
- 2020年01月25日 00:10
- なんか男が女性専用車両に乗って警備員に注意されると
「トランスフォーマーなんです」といって警備員が納得しちゃう動画があるんだけど
ジェネリックよく知らん年寄りに
「ジュラシック薬品だから良いよ~」
とか言うと納得しちゃうんかな
-
- 2020年01月25日 00:13
- >>6
前半の話草
-
- 2020年01月25日 00:32
- >>6
その前半の話をkwsk
-
- 2020年01月29日 21:34
- >>6
youtubeか?ニコニコか?
教えてくれや